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大阪怪奇事件簿その4 〜そして〜
全て終わった。
門を再封印した大阪は今までのことがなかったかのように活気づいている。
封印時に倒し損ねた魔物共はこの地の関係者(旧MIA、IO2など)がやりそうなので草間兄妹にとってゆっくり大阪見物をしたい所である。
大阪に来たのも久しぶりだから…しばらく遊んでも罰は当たらないだろうな…と思ってみる草間武彦。
今は帰っても特に用事はないし…。
久々に大阪を歩き回ろうと思った武彦だった。
■それぞれの1日
●草間兄妹とシュライン・エマ
「まずは…あいつが眠った場所だな…」
四天王寺の亀の池をしばらく見ていて、そう考えていたのだろう。
亀の池は、恐ろしいほど亀が多い。その亀は動いているのかないのか分からないほど、じっとしているが、甲羅干しが終わって水に入ろうとした亀が他のあがった亀ごと巻き込んで池に入っていく見ていて何となく楽しい。
「そうね…報告しなくちゃね」
一緒に亀を眺めていたシュラインが言った。
「ところで他の3人はどうした?」
「たしか、皇騎君は本家に後始末の仕事をかり出されていたみたいよ。みそのさんはいろいろ買い物をしたいって…ダージエルさんは良く分からないわ」
「そうか、まずは3人でいくか」
「ええ」
鳩に餌をやっていてた零を呼び、冥府の門封印地に向かう…和泉市に。
目的地に着いた。今は自衛隊にも閉鎖されておらず、すんなりと入ることが出来た。
冥府の封印石は完全に埋められ、近くに積まれた小さな石の山がある。これが奈緒子の墓石なのだ。
シュラインは目の前に座って
「全て封印できたわ。奈緒子さん」
と墓に告げた。
草間は、何も喋らない。しかし、手には奈緒子が好きだった花束を備えた。
しばし沈黙。
「次は、聖徳太子さんね」
「そうだな、彼が鍵を渡してくれなかったら全て封印は出来なかった。確か八尾だったな」
シュラインの言葉に頷いて、施設跡を去っていく
そのときに、
「ありがとう…シュラインさん…」
シュラインは奈緒子の声を聞いた。
呪縛から解かれて安堵した声、そしてシュラインに草間を託す想いを込めた一言だった。
シュラインは、ニコリと微笑み草間の手をつかんで
「聖徳太子さんと安部晴明の神社に向かったら、色々回って思いっきり遊びましょ」
「あ、ああ」
と、シュラインは草間兄妹を引っ張っていった。
急ぐ必要はない…1日でも2日でも大阪を満喫すればいいのだから。
●書き置き残してトンズラ:宮小路・皇騎
大がかりな活動故、その後始末や事後処理…要は封印時に帰り損ねた魔物を帰還・封印隊の指揮を任されノンビリと休むひまも無い宮小路・皇騎。いまでは実家には書類の山。現場では怪奇現象の傷跡の処理、魔物との戦いに明け暮れていた。
「このままでは、体が持たないし…第一」
草間さん達にお礼が出来ないではないか。
現在現場で陣頭指揮を執る立場を利用し、隙をついて書き置きを残して姿を消した。
「一息ついてきます」
彼には自分の指揮している班が慌てふためいている風景がリアルに想像できた。
草間の悲しい定めというのも気にしていつもの術具は持ってきている。
さて、あの人はこの表向き平和な大阪になにを持ってきてくれるだろか…とそっちを心配している。
自分が実際食べ歩いて調べたお気に入りの食い倒れMAPを片手に早く合流しなければと、駆けていった。
まず携帯は、宇宙(そら)から監視されているので昔の機種を持っていく。
宮小路家の捜査能力は甘く見てはならない。自分が良く行使しているのだから。本家と追いかけっこという妙なスリリングを楽しみ大阪を満喫するのは楽しそうだと、笑いそうになる皇騎だった。
●衣装をかいます:海原・みそのとダージエル
人魚の巫女は、ひとまず大阪にある洋服店で様々な衣装を買うことだった。しかし彼女は生粋の人魚でいまは人間の姿をしているが、陸の上では何処でどう転ぶか分からない。其れを心配しているのか自然とダージエルが付いてきている。
「済みません、お買い物に手伝っていただいて」
「かまわぬさ…たくさん買い物をするというのを「視た」以上はな…」
異界の神と最も神に近い巫女の奇妙な買い物が始まった。
その服はゴスロリから艶めかしいものまで、実際巫女が必要なモノなのかと?流石のダージエルも疑問に思う服を選び買っていくみその。物持ち担当になりはてるダージエル。とはいっても、買った品物が入っている紙袋を自分が所持している異空間倉庫に入れるので、彼自身が荷物持ちだという印象を与えるベタな風景では無かった。
ダージエルがみそのに何故そんなに買うのか尋ねると、
「世界の巫女達に一歩リードするのです」
とクスクスわらった。
ああ、なるほど。と、ダージエルはこれ以上彼女に訊くことをしなかった。
買い物が終わった後、まとめて空輸手続きと、海辺で待機していた竜宮の使いたちが荷物を受け取り、自宅に運んで貰った(一人だけカワウソがいて「濡れますが良いですか?」と訊いてきた事が至極印象的である)。
のべ数百着の衣装。人間(否人魚)の価値観を無視できるダージエルでなければ手伝えることはなかっただろう。
■2日目:合流
翌日…。
なんばCITYにあるロケット広場。ミナミでは待ち合わせスポットとしては有名なところだ。何故か待ち合わせ場所が此処だった。誰が言ったのかは分からない。
「色々回るには、ミナミからの方が良いだろう」
草間は呑気なことを言った。シュラインがそうなの?と首を傾げる。
みそのとダージエルが、やって来た。
「大阪行脚をオタク行脚にするのかね?」
ダージエルが訊ねた。
「おいおい、千日前、道頓堀とりっぱな所があるだろう。何故日本橋を言う」
草間が反論する。
「ほう、オタク=日本橋というか。さすが大阪にしばらく居ただけのことはあるようだ」
「…」
やぶ蛇…妙に詳しいぞ、この神…。と、草間は思った。
「ダージエル様にはお買い物につきあっていただきまして」
みそのがにっこりという。
そう、先日二人は日本橋に買い物に行っていたのだ(みそのがコスプレ衣装やオタク衣装がどうしても欲しいということで)。
息を切らして宮小路皇騎がやってきた。
「遅れまして済みません」
「お疲れ様、色々大変みたいね」
息を切らしてやって来た彼をシュラインがねぎらいの言葉をかけた。
「全員そろったよな?」
ダージエルが点呼する。
「昼飯で良いところないものか…時間的に…あそこだ」
「それは、よく知ってます。流石草間さん。通でないと分かりませんよ」
草間が頭にあるグルメマップと皇騎のグルメマップはピッタリ当たったようだ。
「よし問題ないな。そこに行こう」
二人の案内のもと、昼食を摂りに行くことにした。
■ひと騒動
昼食をとったあと、徒歩でなんば〜心斎橋を目指すことにきまった。地下鉄一駅分の距離、体力がある者ならさほど気にすることはない。いろいろな店があるなら歩くが一番だ。
アメリカ村、ヨーロッパ通り、船場と心斎橋には様々。老若男女問わず迎え入れてくれる街。
しかし、平日だろうと混んでいるという宿命…。
途中アイスクリームカフェで休憩してから、いろいろなモノを買っていく。
大阪にあって東京にはない物…意外に探すのは難しい。
シュラインと零は楽しく軽いステップで店を回って楽しんでいる。
男性陣はそれに追いつくような形で歩いている。
「神」属性の二人は少し離れたところ。
みそのが人酔いをしているので、ダージエルが付き添う形になる。
二人にはある「気」を感じている。そのためでもあるが草間達と距離を置いている。
それは、はぐれた「デーモン」の気。
ターゲットは草間。「かけら」を持っているので当然である。
数は9、暗殺者タイプ。皇騎が武器を所持しているのは分かっている。
周りに、皇騎の部下術者達が周りを固めているのも分かる。皇騎発見で少し慌てているようだ。
皇騎も、零も「デーモン」が近くにいることを感じとり…草間を庇うように囲む。
草間も殺気を感じ、探偵独特の勘で戦闘態勢をとる。
「まだ残っていたか…残党が」
「みたいですね…こまったものです」
「楽しく遊ぶ計画を邪魔されたわね…」
「お仕置きですね」
人混みの中で…殺戮をするのか敵は?それとも草間だけか?
殺気がにじり寄る。草間達は極普通に歩いているように心がける。
人混みで派手な行動は取ることは出来ない。路地裏で戦うか…
ダージエルは未来を「見た」…。路地裏までいってそこで戦うようだ。
みそのの人酔いを放っておく訳にはいかないが…。
微妙な時間差をどう埋めるか考えた。
しかし、神格の力を感じ取った数人もこちらに来る。
ばらければそれだけ楽か…。
みそのは、我慢しますという表情。
では決まりだ。
路地裏まであと5.4.3.2…1
草間達は路地裏に駆け込んだ。追いかける魔物その数4
5人は逃げた。神自体を相手にするなど愚かだ。
4人は、草間達と皇騎の部下により瞬殺された。
ダージエルもその5人を見逃すはずはない。
時間を止めた後…約3分で残りを斬り捨てていた。塵すらも残さず。
心斎橋はいつも通りのにぎやかさだった。
さて、部下に見つかった宮小路皇騎は…彼らに小言を言われ、ズルズルと引っ張られて〜即ち強制送還〜されていった。
「埋め合わせは必ず〜」
と言い残して。
「抜け出してきたのね…」
感謝とともに連れ去られていく姿がおかしく笑ってしまった。
■帰り
大阪(梅田)で、シュラインが目当てだったワッフルを食べながら(土産の分も当然確保)、草間兄妹とキタ行脚を楽しんだあと、そのまま新大阪まで地下鉄に乗る。大阪の銘菓というのはたぶん茶菓子ではないかな?と良いモノを見繕うシュライン。ダージエルは謎のジュースを一箱持っている。噂に聞くアレ?みそのも妹たちが喜びそうな土産を探しているようだ。
ノンビリと過ごした大阪の数日間、色々な事があった。
常に人は人を想い続けること、
常に待っている人がいること、
宿命を持ってる人がいること、
助けてくれる仲間がいること、
宿命といえば…草間武彦…。怪奇探偵としての宿命はまだまだ続きそうだ。
シュライン達は彼を見て、微笑んだ。
「な?何がおかしい?」
「ううん、何となく、ね」
「そうだな、何となく」
「ええ、何となく、ですわ」
草間は彼女らの笑う意味が分かったのか、拗ねたように窓を眺める。
新幹線グリーン席(個室)での出来事だった。
新幹線は皆の住み慣れた街、東京に向かっていく。
大阪怪奇事件簿 完
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0461 / 宮小路・皇騎 / 男 / 20 / 大学生(財閥御曹司・陰陽師)】
【1388 / 海原・みその / 女 / 13 / 深淵の巫女 】
【1416 / ダージエル / 男 / 999 / 正当神格保持者/天空剣宗家/大魔技】
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■ ライター通信 ■
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滝照です。
『大阪怪奇事件簿』最後まで、参加してくださりありがとうございます。
私自身、此処まで話が続けられたことは皆様の参加有ってこそ、と思い、感謝しております。
ではまたの機会がありましたらお会いしましょう。
滝照直樹拝
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