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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


調査コードネーム:白物語「熊」
執筆ライター  :北斗玻璃
調査組織名   :ゴーストネットOFF
募集予定人数  :1〜5人

------<オープニング>--------------------------------------
┌────────────────────────────┐
 [1054]僕の熊、知りませんか?                   
 from:トミー[Mail][URL]              
                             
  僕の熊を見掛けた人が居たら、教えて下さい。
  色は茶色、目と鼻が黒くて、肉球はありません。
  普通の熊と変わらなくって見分けがつかないかもしれない
  ですけど、一目見たらすぐ分かると思います。

  声がかけれるようだったら、ゴメンなさいと伝えて下さい。 
              
                             
 Reply?                         
                             
└────────────────────────────┘

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 何故に熊。

 日々、店の売り上げに貢献している自負も満々に暇を余してネットカフェに入り浸る面々は、仲良くひとつのディスプレイを覗き込んで言いしれぬ沈黙を分かち合っていた。
「熊……?」
「……熊?」
沈黙の位置に「クマクマ」となってしまい、異口ながら同音が適わなかったのは、十桐朔羅と神薙春日の両名である。
「はぁ、熊さんですね」
男二人に疑問の位置を取り違えた海原みなもが肯定するのに、今まさしく話題の中心でこそないが、どこか誇らしげに瞳をきらりと光らせたエリオットをセシリア・ローズがぎゅっと抱き締める。
「わぁ。エリオット熊さんだって!お友だちだね」
セシリアの胸に抱かれたエリオット…テディベアは加えられた力に胸を張った。
「ね?面白そうでしょー?」
店内の知人を呼び集めた雫は首をくるりと回して、それぞれの反応を楽しげに見遣った。
「……笑い所はないようですが」
控えめに朔羅の背後に控えていた桐守凛子が、和装の袂を押さえて繊手を口元に添えての意見に雫がチチチッと指を振る。
「ダメダメ凛子さん☆想像力を筋骨隆々に逞しくアピールポーズまでビシバシッと決めれるようにならなきゃ世の不思議に対応しきれないよ♪この二人の間に果たして何があったのか!この少ない文面の中に隠された血湧き肉躍る愛憎のドラマに興味がないなんて言わせないよッ☆」
言います。
 と大人げなく告げはしないが、凛子の興味は「御主様」と呼び掛ける朔羅に始まって朔羅に終わるのでドラマが入り込む余地はない。
 何度も文面を読み返して首を傾げる春日に応じる朔羅。
「本気……?」
「こんな街中で熊が出ようものなら騒ぎになるはずだが……」
至極真面目に現実的に事態を受け止めている二人のみ、なのが何だか涙ぐましい気がする。
 だが、一目で分かる熊とはどんなモノなのか、根本的な問題は解決していない。
 故に……、
「さーぁ、ミンナで考えよーぅ♪」
雫が片拳を振り上げた。
「やはり生き物の方ではなく、テディ・ベアやおもちゃの類か?」
常識論を一瞬で捨てた朔羅にセシリアが大きく首を傾げた。
「でもなんで『ごめんなさい』なのかな?」
「まぁ、『僕の熊』だしな、捨てちまったぬいぐるみだと思うんだけど」
春日は最もらしい推理に深く納得した風に何度も頷く。
「トミーさん、熊さんと喧嘩して逃げられた金太郎さんのようですね」
「みなもちゃん、いい線ついてる♪」
書き込みに明示されていたURLを辿った雫が、サイトを示してみせる…それはぬいぐるみ作家の個人サイトで、掲載している作品を小規模ながら通信販売も行っているというその住所が明記されていた。
「神奈川県って金太郎伝説あるんだよねー。ア〜シガラヤマの〜♪って童謡知ってるよね。トミーくんはサイト主さんの息子さんみたい…ホラ、プロフィールのトコに写真があるよ」
何か手芸展の受賞式らしい…ふっくらとした女性が小学生くらいの少年と一緒に精一杯の盛装をして賞状と盾を手にしている。
「何にせよ、訳ありの様子だな」
朔羅はマウスを操作し、頁を開いて行く。
 作品紹介を主としている為、さほど込み入った階層の作りはしていない…右へ、右へとスクロールして作品を紹介していくのは素人技を露呈して見難さが目立つが、それを別とすれば家族の事などが日記に記されたほのぼのとしたムードのサイトだ。
「お探しの熊がナマモノだとは思えませんし、どこかで落とされたりしたのならばご自分がよくお分かりのはず」
「親子仲が悪いワケでもなさそーだよな…普通、失くしモノなんざまず親に泣きつきそうなモンだけどな?」
凛子と春日の言に…雫が腕を使ってわくわくとした心情を体現する。
「そこが気になるんじゃない☆」
「ここはやはり当事者同士を付き合わせての劇的な展開が盛り上がりの秘訣よね〜ッ♪」
「……それに私自身気にもなる。熊探し、私も手伝おう」
不謹慎、とはいえ基本の行動概念が好奇心、な雫に今更、と諦め気味に朔羅が同意すれど、当然の如く凛子も倣う。
「御主様がお怪我でもされたら大変ですわ。わたくしもご一緒致します」
「お手伝いしてあげたいですね」
続くみなもは全くの善意からの意思表示だ。
「本物の熊だったら……俺はこいつを殴りたい……」
固めた拳を掌に打ち付ける春日だが、その表情は楽しげだ。
「エリオット、私達も探しに行こう!」
テディベアと向き合ってセシリアもやる気満々である。
「よーし……」
力強い仲間達(?)に囲まれて、雫が威勢よく音頭を取った。
「皆で熊狩りにレッツゴー☆」


 ハズが。
 今、雫を欠いた五人はとある遊園地を訪れていた。
「ふ、流石雫ちゃん……」
春日が遠い目になる……煽るだけ煽っておいて、今日は怪談ライヴの予定があるから〜♪と、とっとととんずらなさったのである。
「……それにしても、雫さんもこのトミーとやらも……ご自分で出向かないで人様に探させようなどと、さぞかしお育ちが良い方なのでしょうね」
そう小さく笑った凛子だが…何やら言に棘を感じる。
「小中学生に何求めてんだよ……」
春日のツッコミに凛子はニコリと微笑んだ。
「年齢の些少はどうあれ、人としてあるべき姿を求めております」
その意は御主様のお心を悩まして素知らぬふりとはいい根性だなワレ、であるかも知れない。
「セシルちゃん、掲示板の様子はどう?」
ベンチでモバイルノートを抱え、トミーの書き込みを呼び出すセシリアにみなもが問うに、横から覗き込んだ朔羅が言葉を失った。
 レス数は、既に50を越えている。
 怪奇情報を扱うサイトでは日本で一、二を争う程のHIT数を誇るゴーストネット、利用者の数も半端じゃない。
 親記事だけを見せる事で、巧みに面々を熊捕獲に誘き出す…情報提供者が多ければ多い程、主観が重なれば重なる程、真実から遠ざかりがちなのがネット社会の常、虚実の見極めは知人に託した雫の計略家としての意外な一面には、まんまと舌を巻かされしまった一行である。
 セシリアはカタカタとモバイルノートのキーボードを叩き、掲示板のデータを洗う。
「ウン、やっぱり携帯からのアクセスが多いねー」
凛子の提案にレスの内容が…見掛けてすぐの代物であるのか、その日の話題、のつもりでのレスなのかIPアドレスを洗いながらの情報収集中である。
 順に追って行けば、『見ました見ました!』『熊発見』『逃げ足早いぞ熊!』『歌舞伎座の怪熊』と、とりどりだ…正しい情報の取捨選択からが既にツライ。
 突拍子のない物は別として…ある程度の移動速度を感じさせての目撃情報だが、どれも熊自体の姿を明記したものはない…それと解る、という一語への拘りが微妙に情報を伏せさせているものと見える。
 そんな中、みなもは記事のひとつにしきりと感心している。
「スゴイですね、この熊さん……へいっ、タクシー!って車に乗ってったんですね……」
ちょっとカルチャーショックに最早感心するより術はない…が、それが真実である証拠もない。
「携帯からのアクセスに……的を絞って一番最近のレスは?」
「コレだな、15分ほど前。やっぱりここの敷地内か」
曰く、赤い風船を持って歩いてたけど怖くて近寄れなかったと…。
 それでも、場所の絞り込みが当日中に出来ただけ僥倖か。
「すごいねー、エリオット。この熊さん、一人でここまで来たんだねー」
ちなみにトミーの最初の投稿から既に三日が経過している。
「……さて、探すにしても闇雲に探す訳にはいかぬ」
「手分けするか」
面倒くさげに頭を掻いて、春日が準備運動めいて伸びをした。
 園内を巡るメインストリートは三本、当然の如く手は分けた方が早い。
「聞き込みが必要ならわたくしが致しますわ。御主様よりは効率が良いでしょうから」
既に朔羅と行動を共にするのは決定事項に凛子が、何気にきつい評を交えながら和装の袂を押さえて軽く挙手する。
「じゃぁ、セシルちゃん、あたしと一緒に園内を探してみようか?」
「うんッ!」
こちらはみなもとセシリアでコンビが出来る。
 ぽつねんと乗り遅れて一人寂しい春日に、セシリアは逡巡の後、決意にこくんと大きく頷くと、エリオットを高く掲げた。
「春日おにーちゃんは、エリオットと一緒してね?」
少女の精一杯の気遣いに、心中に思わずほろりとなりそうな春日だが、そんな大切な代物を借りるワケには行かない。
「うん、あんがとなセシルちゃん…でも俺は一人で平気だから。エリオット、ちゃんとセシルちゃんとみなもちゃんを守るんだぞ?」
ポンポン、と亜麻色のテディベアの頭を軽く撫でる春日に、エリオットは嬉しそうに破顔したセシリアと共にそれは大きく頷いた。


 円を縦横に四分割したメインストリートを進んで行けば何れ再会するのは運命よりも確実だ。
 その中央地点で一度落ち合い、そこで情報交換をして残り半円を制覇、が現在の予定である。
 円弧を描く右のコースを選んだのは朔羅、凛子がそれに否やあるハズもなく、遊園地に目立つ事この上ない和装の二人は途中、何故か写真撮影を乞われつつ、情報収集に勤しんでいた。
「そう簡単に事は運びませんわね……」
嘆息に幾組目か数えるのも虚しい聞き込み…何せ質問が「熊を御覧になられませんでしたか?」では、問われた相手の困惑も大きい。
 その度に色や大きさ、どんな熊?と判で押したような質問にこちらも半端な返答しか持たずに苛立たしいばかりだ。
「御主様……」
嘆息に乗せて傍らに呼び掛ければ、その姿はなく、道すがらに植えられた茂みの奥にガサゴソと入り込みかける背が見えた。
「御主様、何をなさっておいでですかッ?」
慌てて引き留める凛子に、髪や羽織に木の葉をつけながら朔羅は答える。
「生き物ならば森の中に居はしまいかと……」
熊・ナマモノ説の懸念に動植物園とイベントエリアであるこちら側を選んだ朔羅、道なりに進むよりは直接探した方が早いと考えたらしい。
「姿を隠しているかも知れないだろう」
「あぁ、お召し物にこんなに葉が……御主様がご自分でなさらなくとも、命じて下されば凛子がします」
人の為というのも不本意だが、それが朔羅の意でさえあれば、従うに否やない凛子の主義は徹底している…過保護な感がなくもないが。
 朔羅の着物の塵を取りきった凛子は、朔羅が入ろうとしていた低木に足を踏み入れた…その足の裏に妙に柔らかい感触に一瞬、総毛立つ…そして、恐る恐ると足下を見れば、何か毛の固まりのような物を踏んでいたのに安堵し、次に一歩引いた。
 その毛はそれだけでなかった…視線を少し上げれば茶色い小山のような毛の固まりがむくむくと動き、向こう側にぴょこりと赤い風船が見えた…三角帽子に繋がれて。
 その下、毛むくじゃらの中に黒い目と鼻に逆三角形を作るシンプルな構造の顔の……熊。
「御主様……」
凛子の強張った声に、朔羅も茂みを覗き込み、沈黙する。
「……凛子、逃げるぞ」
即断した朔羅の前で、熊は後ろ足で立ち上がり、2mはあろう巨体を誇示した。


 追う者と追われる者。
 一頭の部外熊を除いてそのどちらもが関係者だとは、その追跡劇を見守るしかない人々に予想がつく筈もないだろう。
「戦えったってどう戦えってんだ!」
「貴方の拳はただの飾りですか。男気の見せ所に本領を発揮出来ないとは……最近の若者の軟弱化が進んでいると耳にしていましたが、ここまでとは……困ったものですわ」
走りながらの会話にわりと余裕があるのは、朔羅、春日、凛子を追う熊・ナマモノがよくよく見れば肥満な体型ででっぷりと脂肪と皮を揺らしながらの走りに速度が出ない為だ。
「貴方のステキな未来をちょっと覗いてみせたり出来ても、箸の上げ下ろししかした事のねー温室育ちな俺に無茶ゆーな!」
喧嘩上等、行く手を遮るどんな輩も問答無用でぶっ飛ばして生きている美少年は、厚かましすぎる主張にまるで非暴力主義者であるかの如く、肉食獣との相対を固辞した。
「情けない……」
これみよがしな溜息に、春日の額に浮いた青筋がぷちりと音を立てかける…が、追われるままに正面ゲートに向かう三者の前に、また別の熊、今度はぬいぐるみが現れた。
「トミーさんの熊さん、待ってッ!」
その後を少女二人が追ってくるのに朔羅が足を止め、続く二人もつられて止まる…行く手を阻まれ、足を止めた熊・ぬいぐるみに対峙する大人二名、学生一名。そして迫り来る熊・ナマモノ。
 前門の熊、後門も熊。特に背後からのナマモノが少女達に怪我を負わせないとも限らず、必要に差し迫られて戦端を開く覚悟が漸くついた春日がバキボキと指を鳴らす。
「……動物の急所って目だっけ?」
「鼻もですわ……」
凛子が帯の間に挟まれていた鈴を取り出す。
 足を止めた人間達を訝しんでか、熊・ナマモノはのっそりと立ち上がってこちらの様子を伺う。
「骨は拾って差し上げます。存分になさい」
鈴を繋いだ組紐を指に絡めれば、リリンと澄んだ音が響いた。
 戦意を剥き出した両者に気圧されてか、熊・ナマモノは四つ足を地につくと、怖じたようにじりと腰を引く。
「……待て」
その前に、す、と朔羅が出た。
「なりません、御主様……!」
凛子を片手で制し、朔羅は躊躇なく歩を進めると、熊・ナマモノの前に立った…その気になれば熊の固い爪が身に届く位置に。
 赤い風船のついたとんがり帽子を被って愛らしさをアピールしていても、所詮は動物、危険に代わりはない。
「御主様……!」
凛子のせっぱ詰まった声に、発端まで把握出来ないまでも、腰が引けてるとはいえ熊・ナマモノの前に身を晒す危険は容易に想像がつき、みなもが水場を探すが、咄嗟に見当たらない。
 周囲の焦りの中、熊・ナマモノを見下ろした朔羅は、袂を押さえ、片手を差し出した。
 薄い唇が吐息の形に開く…。

「……お手」

熊・ナマモノは条件反射にその繊手にでっかい肉球のついた手を添えた。


「いやー、人懐っこくてびっくりしたでしょー」
遊園地内の今月のイベント、ふれあい大サーカスの座長がまるまってもでかい熊・ナマモノをぺしぺしと叩いて笑う。
「ビックリどころの騒ぎじゃねぇ……ッ!」
ちよっぴりサバイバルな命の危機を味わってしまった春日が、遣り場のなくなった怒りに拳を固めた。
「歯ァ食いしばれ!」
 その怒気をまともにぶつけられた座長は、歯並びの良さを自慢するかのようにニッと噛み合わせてみせるのに、闘志が萎える。
「熊さん、おっきいねー、エリオット♪」
「トミーさんの熊さんも本物の熊さん見るのは初めてですか?」
「……立派な肉球ですわね」
女性陣がわいわいと、実は大人しかったラズベリー嬢(メス)を囲む輪の中に、さり気なく混ざったテディ・ベアは、嬢の肉球をぷにぷにと押していた。
 …なんだか哀愁が漂っている様に、周囲は顔を見合わせる。
「……トミーからの伝言、ゴメンなさいってさ」
それでも座長の胸倉を掴んだままの、春日の言にテディ・ベアがぴくりと反応した。
「熊さんはトミーさんのとこに行かないの?帰りにくいなら一緒に行ってあげる」
そう覗き込むセシリアとエリオットにテディ・ベアは俯く。
「そうですわ、ご一緒しますわ……これだけ御主様に手間をかけさせて、よもやご自身で探すのが億劫だとか仰られるようでしたら、少し根性を入れて差し上げないと…ホホホ」
微笑む凛子だが、目だけが笑っていない。
「戻りにくいなら、トミーさんを呼びます。だから、ね?」
 案じて集まった面々を大きな動きで見回し、テディ・ベアはその内の一人と見つめ合った。
 言葉はなく、ただ眼差しを交わすのみの無口な相手の瞳に何かを見出したのか、テディ・ベアはきゅぅ、とその体を抱き締めた。
「わー……エリオットもてもてじゃーん」
ある意味一番正しい理解者か。
 テディ・ベア同士の抱擁を春日がげんなりと評する。 
「それじゃ、一緒にかえろう?皆心配してるよ」
エリオットを抱かせてやったままのセシリアの提案にはまだ躊躇する風のテディ・ベアに、新たな声で呼び掛けられた。
「ラリー!見つけた!!」
道の向こうから駆け寄るのは、サイトに載っていた少年。
 じり、と後退しかけたテディ・ベア…ラリーの背を、緩く朔羅の手が押し、彼は一歩を踏み出した。


「で、結局何がどーだったの?」
オレンジジュースを飲み干した雫がわくわくと問いかける。
「下らないケンカが元だったんだとよ。んで、口論になってトミーが『肉球もないクセに!』ってったらラリーが切れて家飛び出して……」
「人の身体的特徴を責めてしまったトミーさんも悪いとは思いますが、ずいぶんと心配されていたようですし」
みなもが続けるのに、セシリアはエリオットを抱いて足をぶらぶらとさせた。
「トミーくんとラリーくんと仲直り出来たし、セシルは後でミンナと遊べて楽しかったな♪」
「そうですわね、わたくしも満足ですわ」
あれだけ静かに根深く怒っていたのにどういった心境の変化かと思えば、ぽつりと「ステキな肉球でした……」と思い返してうっとりとした呟きに、まあ本人が納得しているならいい、と誰も敢えてツッコミはしない。
「ラリーってどんな熊だったの?電動のおもちゃ?やっぱぬいぐるみ?」
面々は顔を見合わせた。
「……一目でトミーの熊だって解ったな」
「そうそう、見たら直ぐに理解出来ます」
「エリオットとも仲良しになったんだよー♪」
「そういえば、雫さんとも一度じっくりとお話したいと思っていたのですが……」
悪戯っぽく笑い合う当事者達に、雫がテーブルをぺちぺちと叩く。
「何よそれ、全然ワカンナイじゃないーッ」
一人、我関せずとPCに向かっていた朔羅は、検索サイトに項目を打ち込み、目的のURLを呼び出すとふ、と笑んだ。
 自作のテディ・ベアの作品紹介の頁、そのトップに……きらきらと光を撒くメリーゴーランド、白い木馬に乗ったセシリアとみなも、黒い木馬に些か憮然と跨る春日、そして仲良く茶色の木馬に一緒に跨るトミーと…着ぐるみ姿に、小脇に熊の頭を抱えた少年が楽しげな写真が掲載されていた。

 その写真をよく見れば、着ぐるみの掌には糸で縫い込まれた肉球があるのに気付く事が出来るだろう。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1252/海原・みなも/女/13歳/中学生】
【0867/神薙・春日/男/17歳/高校生・予見者】
【0579/十桐・朔羅/男/23歳/言霊使い】
【0615/桐守・凛子/女/19歳/結界師】
【1174/セシリア・ローズ/女/11歳/情報提供業】

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■         ライター通信          ■
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申し訳ありません…<m(__)m>(平伏)

多くを語る余力は残っておりませんが、皆様が少しでも楽しんで頂けたらと切に願う次第で御座います。
そして意表をついてたりしたらいいな、とも思いつつ。

ご参加ありがとうございました。
それでは、また時が遇う事を願いつつ。