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<東京怪談・PCゲームノベル>


今夜は朝までパワフルポーカー

●VS因幡恵美【1C】
 あやかし荘の管理人室――ではなくて、全く別の部屋。ここにはテーブルを囲む5人の姿があった。まず、そのうちの1人はあやかし荘の管理人である因幡恵美だ。他の4人を順番に紹介してゆこう。
 恵美から見て右隣、そこには相変わらずほえほえとした笑顔を浮かべているファルナ・新宮が座っていた。背後にはメイドであるファルファの姿もある。
 今度は恵美の真正面、そこには眠た気な目を擦る奉丈遮那が座っていた。昨夜から延々と続くポーカー大会に、眠さもピークに達しつつあったようである。ちなみに最初からずっとこの部屋に居たというのは、公然の秘密である。
 そして最後は恵美の左隣、そこにはおっとりとした雰囲気を漂わせる、ポニーテールで眼鏡をかけた少女が座っていた。大曽根千春である。
「こんなに来るとは思ってなかったです」
 カードをシャッフルしながら、恵美が言った。恵美の言うように、一番人が集まったのがこの部屋であった。
「私もぉ……ここに来るとは思ってもみなかったですぅ」
 千春がゆっくりと言った。こんな言葉が出るのも無理もない。気付いた時には、千春はすでにあやかし荘に来ていたのだから。誰が連れてきたのか、さっぱり分からないままに。
「うふふふふ……楽しいですねえ〜」
 ファルナが会話に加わってきた。が、徹夜モードに入ってしまったせいなのだろう、いつもの笑みに見えるのだが妙に目が据わってしまっていた。
 そんな2人に挟まれた遮那はというと、眠た気な目をしながらもじっと恵美がシャッフルする様子を見つめていた。何をいわんや、である。
「じゃあ、配りますね」
 シャッフルを終えた恵美は、ファルナ、遮那、千春、そして自分という順番でカードを1枚ずつ配っていった。
 全員に5枚ずつ行き渡った所で、皆一斉に目の前のカードを手に取った。
「あのぉ、どういった順番なんですかぁ?」
 千春が手札に目を通す前に、他の者たちに尋ねた。
「ファルナさんから順番で、最後があたしです」
 手札から顔を上げ、答える恵美。
「わたくしからなんですね〜」
「僕は2番目ですね」
 ファルナと遮那が口々に言った。さあ、ゲームの始まりである。

●カードチェンジ・千春1回目【2E】
「ポーカーというのも面白いですねぇ☆」
 千春がのほほんとした調子でそう言った。視線は手札ではなく、皆の顔の方に向いていた。
「順番回ってますよ?」
 自分の順番を千春が忘れているのかと思い、恵美が話しかけてきた。
「あ……私の番ですかぁ」
 この反応から察するに、忘れていたか気付いていなかったかの可能性が高いと思われる。ともあれ千春は、手札に目をやった。

〈ダイヤ   A〉
〈ハート   2〉
〈ハート   9〉
〈ハート   3〉
〈スペード  Q〉

「……どこかで見たことある手札ですぅ」
 ぼそっとつぶやく千春。実はこの手札の内容、昨夜の『夢』で見ていたのだ。
 いや、手札だけではない。今居る建物、あやかし荘まで昨夜の『夢』で見ているのである。それゆえ、ポーカーよりも建物の方が気になっている部分も多少はあった。
 で、何を場に捨てるかである。現在の役はノーペアだが、ここからストレートやフラッシュを狙うことも不可能ではない。下地は十分にある。
 少し思案をした千春は、結局手札から2枚選んで場に捨てると、山札から新しくカードを引いた。

捨て札:〈ダイヤ   A〉
捨て札:〈スペード  Q〉

●カードチェンジ・恵美1回目【3C】
ファルナ捨て札:〈クラブ   2〉

遮那捨て札:〈ダイヤ   3〉
遮那捨て札:〈ダイヤ   4〉

千春捨て札:〈ダイヤ   A〉
千春捨て札:〈スペード  Q〉

 3人がカードチェンジを終えた所で、よいよ恵美の順番が回ってきた。その途中に、ファルナが『やっぱりハートのストレートフラッシュが綺麗ですよね〜』などと言っているのが少々気になる所ではあるけれども。
「うーん、どうしよう」
 眉をひそめ悩む恵美。どうやら選ぶのが難しい手札内容のようだ。
「もう何か役が出来ているんですか〜」
 ファルナが何気なく言ったが、恵美は何も言わずに苦笑するだけだった。
「えっと、じゃあこれで」
 しばし悩んだ末に、恵美は手札から1枚選んで場に捨てると、山札から新しくカードを引いた。

恵美捨て札:〈ダイヤ   K〉

 これで1回目のカードチェンジが全員終わり、次から2回目に突入することになる。

●カードチェンジ・千春2回目【4E】
「僕の順番、終わりましたよ」
 ぼうっとしていた千春に、カードチェンジを終えた遮那が話しかけてきた。
「あぁ……もう私の順番なんですかぁ」
 千春はにっこりと微笑むと、手札に目をやった。気のせいか、一瞬きょとんとした表情を見せる千春。それから何故か手札から視線を外し、やおらに指折り数え出した。
「ツモ上がりですか〜?」
 ファルナが話しかけてくる。ちなみにこれは麻雀ではなくポーカーである、念のため。
 が、その言葉が聞こえているのかいないのか、千春は何も答えずまだ指折り数えていた。そしてようやく数え終えると、手札を置いてこう言った。
「えっとぉ……このままでぇ」
 皆が一斉に千春の顔を見た。カードチェンジしないということだ。すなわち、それなりの役が出来ていると思われる。さて、何の役が出来ているのか……非常に気になる所ではある。

●カードチェンジ・恵美2回目【5C】
ファルナ捨て札:〈スペード 10〉

遮那捨て札:〈ダイヤ   J〉
遮那捨て札:〈スペード  6〉

 ファルナが1枚、遮那が2枚各々カードチェンジし、恵美に順番が回ってきていた。ちなみに千春は2回目のカードチェンジを行わなかった。
「うーん……」
 1回目同様、眉をひそめている恵美。しかし1回目とは違って、手がすっと動いている。そしておもむろに手札から1枚つかむと、それを場に捨てた。

恵美捨て札:〈ハート   Q〉

「全員終わりましたね〜」
「終わったんですかぁ」
「終わ……あふ……」
 恵美が山札からカードを1枚引いたのを見て、ファルナ、千春、遮那が口々に言った。もっとも遮那に関しては、あくびが出て言葉が尻切れとんぼになってしまっていたが。

●ショーダウン・VS因幡恵美【6C】
 さあ、いよいよショーダウンとなった。最初に手札を開くのはファルナである。
「こうなりました〜」

〈クラブ   4〉
〈ハート   5〉
〈ダイヤ   6〉
〈クラブ   7〉
〈ハート   6〉

 ファルナの手札はワンペアが成立していた。少なくとも勝つ可能性はあるということだ。
 次に手札を開くのは遮那だ。
「えっと……僕はこうです」

〈クラブ   5〉
〈クラブ   6〉
〈クラブ   9〉
〈スペード  A〉
〈スペード  4〉

 遮那は手札を開くとがっくりとうなだれた。
「勝ちたかったなあ……」
 遮那の手札はノーペア、何の役も出来ていなかった。今の所、ファルナが暫定トップである。
「あのぉ……開けばいいんですよねぇ?」
 3番目、千春はそう言いながら1枚ずつ手札を開いていった。

〈ハート   2〉
〈ハート   9〉
〈ハート   3〉
〈ハート   K〉
〈ジョーカー  〉

「フラッシュだ……」
 恵美が驚いたように言った。
「あら〜、ハートばかりでいいですね〜」
 うらやましそうなファルナ。何も言わない遮那も、千春の手札をうらやましそうに見ている。だが当の千春は、ただにこにことしていた。
「あーあ、負けちゃったなあ」
 恵美は溜息を吐き、自分の手札を開いた。

〈スペード  J〉
〈スペード  2〉
〈スペード  8〉
〈スペード  7〉
〈ダイヤ   5〉

 恵美の手札はノーペアだった。この時点で勝者が決定した。最後のゲームに勝ったのは意外や意外、千春であった。

●連鎖反応【7C】
「勝っちゃいましたねぇ」
 千春がぽつりとつぶやいた。勝者は簡単な内容を1つ命令出来る。他の皆は、千春の言葉を待っていた。
「そうですねぇ……」
 上目遣いになり、思案する千春。唇に自然と指が触れていた。やがて千春が決めた命令の内容は、次のような物であった。
「……肩が凝ってるのでぇ、肩を揉んでもらえますかぁ?」
 千春がにっこり笑顔で言った。無難な内容といえば無難であろう。
「あ、はい。じゃああたしから揉みますね」
 すくっと立ち上がり言う恵美。そして千春の背後に回ると、そっと肩に手を置いた。
「このくらい?」
 恵美が千春の肩を揉み始めた。力加減を尋ねる恵美に対し、千春は小さくこくこくと頷いていた。ちょうどいい感じらしい。
「……順番で揉んでゆくんですよね、これって?」
 そろそろ眠さも限界なのだろう、遮那が両手を目に押し当てたまま尋ねた。
「順番ですか〜。なら、次はわたくしが揉みたいですね〜。スキンシップは大切ですから〜」
 ファルナはそう言うとゆっくりと立ち上がり、とことこと千春の方へ近付いていった。
「あら〜?」
 が――徹夜のためか、それとも何かにつまずいたのか、ファルナの身体が前に向かって倒れていった。
「ひあぁっ!」
「きゃっ!」
 前に居るのはもちろん千春と恵美。横からファルナに倒れ込まれた2人は、まるでドミノのように真横に倒れていった。
「わわっ!」
 ファルナが倒れ込んだのを見た遮那は、当然のごとく千春と恵美が倒れるのを阻止するため、支えようとした。しかし、かかってくる体重は少女ばかりとはいえ3人分。小柄な遮那はひとたまりもなかった。
 かくして、一瞬にして遮那は3人に押しつぶされる形になったのである。不幸中の幸いと言えるのは、遮那の直接上に倒れていたのが恵美だったことだろうか。
 あやかし荘中に響き渡る三下の悲鳴を耳にしたのは、ちょうどそんな時であった――。

【今夜は朝までパワフルポーカー 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
  / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト 】
【 0158 / ファルナ・新宮(ふぁるな・しんぐう)
              / 女 / 16 / ゴーレムテイマー 】
【 0170 / 大曽根・千春(おおぞね・ちはる)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0249 / 志神・みかね(しがみ・みかね)
                    / 女 / 15 / 学生 】
【 0332 / 九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)
                / 男 / 27 / バーテンダー 】
【 0506 / 奉丈・遮那(ほうじょう・しゃな)
                   / 男 / 17 / 占い師 】
【 1207 / 淡兎・エディヒソイ(あわと・えでぃひそい)
                   / 男 / 17 / 高校生 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ゲームノベル あやかし荘奇譚』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全39場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせいたしました、変り種なポーカー大会の模様をようやくお届けいたします。過去何度かやったことのあるポーカー依頼ですが、実際にカードを使いながら書いているので結構手間がかかっていたりします。
・今回は参加者が分散しましたので、4つの部屋で1対1の戦いとなりました。ちなみに誰も行かなかったのは柚葉の部屋でしたね……恐らく待ちくたびれて、眠ってしまったことでしょう。
・結果についてはご覧の通りです。部屋によってお話は異なっていますね。まあちょっとした共通項が存在してはいるのですが。
・大曽根千春さん、初めましてですね。無心の勝利……とでも言うんでしょうか、これは? ともあれおめでとうございます。ちなみに戦術が見当たりませんでしたので、設定などを参考にしてこちらで決めさせていただきました。あと、OMCイラストをイメージの参考にさせていただきました。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。