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<東京怪談・PCゲームノベル>


あやかし荘奇譚 恵美さんと温泉旅行

●お誘い中〜
チケットもちゃんと4人ね…
さて…混浴だけど…(ぽ)誰を誘うかしら…
−電話中
「もしもし、天薙です」
もしもし、撫子さん?恵美ですけど。
「はい、いつもお世話になっております」
こちらこそ、お世話になっております。
あのー温泉旅行いきませんか?
「ええ、喜んで」
でも…混浴なんですよ…
「え…(ぽ)いいですよ♪」
でわ、お待ちしてます。
ガチャ
一人は撫子さんっと。

「おんせんですか〜いいですねぇ」
ファ、ファルナさんいつの間に!
「お邪魔しますと挨拶しましたけど、お話で盛り上がっていましたから〜」
は、そうですか…
「私も是非参加しますわ」
はい、…喜んで♪

しばらく後…
ほんとは…あの人と行きたいんだけどなぁ。
お土産や行ったり、卓球したり……そして…ぽっ
わ、私何考えているのかしら、あせあせ。
あと一人だわ。

「管理人さん」
あ、時音君どうしました?
「ファルナさんから聞いたのですが、また『箱』に温泉旅行があったって本当ですか?」
はい、そうですよ?
「あの…歌姫と一緒に参加出来ないでしょうか?」
ごめんなさい、もうチケット1つしかないの…
「う〜ん…」
後ろで歌姫さんが楽しんでいらっしゃいとジェスチャーしてるわよ
「…ごめんね、歌姫…埋め合わせは必ず…」

参加者は決まったけど…決まったけど…
ちょっと…ぐすん。


●馬車が来た
出発当日、あやかし荘に馬車が来た。
恵美たちはこの時代遅れな乗り物を前にきょとんとする。
2頭の馬は透明で、馬車は貴族が愛用するような屋根付きだ。所々、傷んでいるが。
御者は、とんがり帽子にフードローブで顔は見えない。中に二つ光が灯っているようである意味不気味だ。
「お待たせ致しました、ファンタジィ露天風呂への送迎馬車です。馬車は闇を抜けて素晴らしい世界に向かいます」
と御者は言った。
「ファンタジィですか?」
撫子が訊ねた。
「ええ、剣と魔法の世界です。この企画した社長は、いつもご愛用になっている皆様の為に私たちにオファーを…っと、これ以上は企業秘密なので…では…どうぞ」
恵美、ファルナ、撫子、時音と馬車に乗る。
「はっ」
馬が嘶き、馬車がゆっくりと動く。
「どこまで行くのでしょうね?」
ファルナが楽しそうに言った。
「異空間に行くみたいですけど…」
時音がいう。
「でも温泉行けるなんて嬉しいですね〜」
「ですね〜」
「色々珍しいお土産買って楽しみましょう」
恵美達は、和気藹々とおしゃべりする。時音はその話しについて行けない…。
トンネルのような闇に入った。馬車内が綺麗な光で照らし出される。まさに幻想的…。

一時間も経っていないのだろう…闇を抜けると、空気がおいしく且つ、そこら中、森が生い茂る自然豊かな景色をみた。中世ヨーロッパの藁葺き屋根の集落や、鎧を着込んだ騎士らしき団体、徒歩で歩いている冒険者のような団体…本当にファンタジィの世界だ。
「あ、みてください!」
空を見上げた時音が叫んだ。
大空に、金色に輝く黄金竜が飛んでいる。
「すごーい」
皆はその美しさに見とれていた。
馬車は、宿場町に入っていき…ある一角の大きな宿屋で止まった。
「つきましたお客さん」
馬車から降りた皆は、この宿屋を一度見たような気がする。
「これって…何かの小説で読んだような…」
恵美が考えた。
周りは、舗装されていない道、それに沿って、酒場やら宿屋、旅の者らしき人々が会話をしている。
宿の看板は全く分からない言語で書かれている。
中から、美しいエルフが出てきた。だいたい150cmほどの華奢な体つき…。
「いらっしゃいませ異世界の方々。ようこそクローズの〈エルフダンス〉亭へ。四名様ご案内〜」
言われるままに、4人は中に入っていく。
ロビーというものではなく、いきなり酒場の雰囲気だった。全て木造で、乱雑な作りに感じるが細かい所(角が丸い、トゲがない)に気を配っているかなり仕事の凝った物だ。
中には、エルフの他にドワーフ、小人属、人間、そして半鬼族などが和気藹々と酒を飲み交わし、噂話に耳を傾けている。
「本当にゲームみたいなファンタジィ世界だ」
時音は感想をもらした。
「ですね〜こんなにすごいとはファルファさんも連れてくれば良かったです〜」
ファルナはそう言った。
手続きは迎えてくれた謎の人物が済ませており、一度テーブルに腰掛けるよう促してくれる。
「果実酒か、ワイン…エールと特製グリーンティがありますが如何なされます?」
とハーフエルフのウェイトレスが訊ねた。
「お水などは?」
「この『世界』では、浄水施設がしっかりしていないことと、近くに火山があるため子供達も果実酒を飲むのですよ。不衛生で住みません」
「いえいえ、そうなんですか」
皆はグリーンティを頼み、それぞれ用意したおやつなどで雑談をする。
撫子の手作り「花林糖」と「べっこう飴」、ファルナは超高級メロンパンだった。
時間的には、まだ風呂に入る事でもないのでノンビリと周りの散策をすることになった。


●露天風呂
そして、散策も終わり、面白いお土産などを手にして宿屋に帰ってくる。

しかし…

少しブルーな時音君…
其れもそうだ、歌姫を誘えなかったのだからしょんぼりする。
ま、それは管理人さんにも言えたことなのだが…。

まず荷物を部屋に置き、風呂の道具を用意する。
途中で、黒いコートに灰色マフラーで、褐色肌のハーフエルフに会い、相手が会釈をするので此方も会釈した。
「良き旅を」
と彼は言った。なかなか礼儀正しい。
後ろ姿にギターケースみたいな物を背負っていた。
「吟遊詩人かな?でも地味だなぁ…」
首を傾げるも、ま、いいかと時音は露天風呂に向かった…。

一方、女性陣は和気藹々と風呂場に向かっていた。
更衣室は男女に分かれている。
丁度時音と出会った。
「あ、お待ちしてました〜」
ファルナが微笑む。
「あ、はい、では楽しんでください」
と時音はそそくさと更衣室に入っていった。
「あの…ファルナさん?時音さんに此処のこと教えたんですよね?」
時音の言葉に疑問を持った、恵美と撫子が聞いた。
「ええ、教えましたよ?」
「此処が混浴ということは?」
「あはは〜、お伝えするの忘れちゃいました〜」
恵美と撫子は…頬を赤らめてしまった。

彼の受難の始まりである。

時音は、腰に布を巻き露天風呂を眺める。流石火山に近いらしく、一番高い火山が見える絶景だ。
一番風呂といったところで。これほど運が良いのも悪くはない。ただ、仕切りがないのが疑問に思った。
まず、桶で体を流してつかろうとすると、
「時音さ〜ん」
と可愛い声がした。
「え?」
振り向けば、バスタオルも何もつけていないファルナが駆けだしてくるではないか!
不意打ちで…時音は混浴のことを知らない…。
歌姫の裸すら見たこと無いのだから、女性の体に対して免疫はない…
そのまま彼は頭が停止しうっすらと鼻から赤い液体を垂らして…温泉に落ちた…。
バスタオルで体を捲いてやってくる撫子が急いで時音を風呂から引き上げる。
「だ、大丈夫ですか」
時音は何とか大丈夫という言葉を出したようだ。
まぁ彼女に悪意はないのだろう…。しかし、純真な彼には刺激が強すぎた。

気を取り直し、女性陣は露天風呂で気持ちよさそうにする。時音はというと…
今までの戦いの疲れか何故か知らないが…ぽけ〜っとして夢心地になっている。
心配して恵美が声を変えても、から返事だ。
「とても気持ちよさそうですね〜」
ファルナはにこやかに時音に近づく。
「お背中流しましょうか?」
と彼女は言うと、
「うん」
何も考えていないのか承諾した。なされるがまま、の時音。
のぼせているのかと心配になるほどの状態だ。

そして…撫子と恵美はその光景を苦笑しながら、世間話に花を咲かしていた。
念のために、妖斬鋼糸で結界を張っているので、不埒物を察知するのは至極簡単だ。
しかし、結界の反応が其れと異なった。
かなり強力な魔力を持っている反応。
「確かファンタジィ世界だから…すごい魔法使いがお風呂に入るんでしょうね」
と自分に言い聞かせる。
一人やって来た。褐色肌でハーフエルフの男性だった。
「こんばんは。ご一緒しても宜しいですか?」
と彼は女性陣に訊ねる。
魔力反応は彼からだった。用心することも必要だが…何も感じない。風呂に浸かりに来て、会話したいだけのようだ。それに堂々と入ってくるのだから其処まで疑心暗鬼になることもない。
なので撫子も恵美も
「いいですよ」
と言った。ファルナに至っては言わなくても分かるものだ。

男性との楽しい会話(時音はもう反応出来ない)をした後、
「酒場の夕食時に会えると良いですね。では失礼します」
と、先にあがった。
「なかなか礼儀正しい人ですね」
「すごい魔法使いの様でしたね」
と彼の好印象ぶりを述べる恵美と撫子。
ファルナは、話が一旦止まった後に…恵美にすり寄ってこう言い出した。
「いつも管理人さんのお仕事大変ですね〜それにしても、本当綺麗な肌ですね〜」
「え?はいありがとうございます」
戸惑いながら、礼をいう
「お背中流しましょうか?」
人の好意は甘んじて受けてしまう恵美だ。二人あがってまずはファルナが彼女の背中を流し始めた。
「やぱっり、すべすべしてますね〜羨ましいなぁ」
「そんな…ファルナさんこそ綺麗ですよ」
「えーそうですか?恵美さんのほうが…とくに」
と、ファルナは恵美の胸の方までタオルを回し洗い始める。
「きゃ!なにを?」
「いいじゃないですか〜。お風呂は・だ・か・の・おつきあいです」
「だからって、きゃあ」
恥ずかしがって抵抗するも流石にファルナは謎のテクニックを知っているのか、逆らうことの出来ない恵美。苦笑して自分が被害に遭わなかったことを幸運に思う撫子だった。

近くで、アホーとドラゴンの咆吼が聞こえた気がした(烏じゃないのか?)。

●ハーフエルフの吟遊詩人
未だに夢心地な時音、ファルナにいぢめられて赤面な恵美にご機嫌なファルナ、そして、撫子は酒場に向かった。
ディナーはかなり豪勢である。
鳥の丸焼きなんか自分の世界で出ることはほとんど無いし、新鮮な果物とサラダ。
ワインや、果実酒なども色とりどり。
貸し切りだったりする。

「美味しそう」
ディナーマナーは気にしなくても良いようなので(冒険者の酒場兼宿屋だから)普通に乾杯して食べる。
また先見話などで話が盛り上がっていった。

酒場を切り盛りしているガッチリした体格の親父がやって来て、
「楽しいかい、お嬢さん方とのぼせた若造」
と訊いてきた。
「ええ、もちろん楽しいです。こんな美味しい料理や露天風呂は初めてですよ」
と皆が答える。
「そう言われたら、こっちも腕の振るい甲斐があった。ありがとうよ。おっと、あまり此処では娯楽はないが、強いて言えば吟遊詩人の詩だな。詩には興味有るかな?」
「はい」
「今回は幻の吟遊詩人を招いてだ。この「世界」では英雄の親友として名高いぞ。おい出番だ」
と酒場の親父が、大声をだした。
「大声出さなくてもわかるって……出番ね。あ、先ほどお会いしましたね」
やって来たのは露天風呂で出会った褐色肌のハーフエルフだった。チュニックにズボン、ブーツといった姿だ。
「あのときの!」
4人は驚く。
「会えてよかったよ、まさか貴女達が来賓だったとはね…私はDark Grassと言われている吟遊詩人だ」
社交礼で自己紹介する。
「どんな詩がありますか?」
「色々あるが…女性方なら恋愛の詩の方が良いかな。すこし歌に近いけどね」
「きになりますねぇ〜」
「お願いします」

では、と吟遊詩人はリュートを取りだし歌い始めた。

時を越えて語り継ごう 安らぎに満ちた物語を 
愛を誓って結ばれた 2人の勇気ある道のりを

すれ違い 勘違い 喧嘩を繰り返す
欲望が渦巻く戦乱の世
離ればなれになって やっと気づく
一人ではいられない
男は戦いに剣を取り 女は人を癒し励ました
亦巡り会えると信じ続け

皮肉な運命が 2人を導く 互いに敵同士となって
引くことはならず 戦うことも出来ず
男が 剣を棄て 戦うことを止めた 
君を斬れないと
女は涙した 悲しさよりも嬉しさを
2人は 生きるために別れた

男が諸悪の権化をうち倒し
運命から解き放たれた
お互いに戦い 生き抜いてきた
そして 再び巡り会う

時を越えて語り継ごう 安らぎに満ちた物語を 
愛を誓って結ばれた 2人の勇気ある道のりを


魅了されたように聞き入る4人。拍手喝采。
そして、この男と一緒に詩や食事、話に盛り上がり、一夜は終わりを告げた。


●あやかし荘に…
翌日。
朝食を済ませたあと、馬車が迎えに来た。
親父やエルフの案内人、そして吟遊詩人と別れを告げる。
「楽しかったです。ありがとうございました」
恵美達はお礼を言った。
「何、大したことはしていない」
親父がガハハと笑う。
「また来たい時に来ればいいさ、そっちに悪友が遊びに行っているからな」
「え?」
吟遊詩人の言葉に恵美と撫子、時音が驚きの声を上げる。
「ひょっとしてまさか?」
其れは誰かと訊ねたかったが…馬車は走り出して、相手には聞こえなかった。
「偶然か…意図的か…のどっちかかな…」
時音は呟く。
「吟遊詩人でもあそこまで魔力を…すごい人なんでしょうね」
撫子はあの吟遊詩人を考えた。
其れはあやかし荘に帰ってから、本人に訊けばいいかと…思った。
「たのしかったですね〜また行きたいです。誘ってくださいね〜」
ファルナはご機嫌だった。

結局『箱』を持ってくる黒幕(?)は分からなかったが、このサービスもなかなか悪くはない。
そう思った4人だった。


End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0158 / ファルナ・新宮  / 女 / 16 / ゴーレムテイマー】
【0328 / 天薙・撫子  / 女 / 19 / 大学生】
【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
『あやかし荘奇譚 恵美さんと温泉旅行』に参加してくださりありがとうございます。
初の温泉ネタでしたが…如何だったでしょうか?
ファルナ様初参加ありがとうございます。
撫子様、時音様、いつも参加ありがとうです。

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝