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<東京怪談・PCゲームノベル>


河川敷の花火大会

■梅雨が明けた…
TVの天気予報で梅雨明け宣言がされた、7月の初旬。
このときから夏が始まったとも言っても良い。
様々な事件があったが、殆ど丸く収まり、心の春もあり、平和である。
燕も巣立ちして、そろそろ旅立つ時だ。
そして、夏初めの祭り…河川敷の花火大会が催されるのだ。

●従妹?
いっぽう、天薙撫子の実家には一人の少女が縁側で暇を持て余していた。
「撫子姉さま、また出かけちゃった…」
彼女は榊船・亜真知。高次元生命体の仮身で本体の器は次元結界にいる。正体といえば、神なのだ。つい最近覚醒、降臨し、この天薙家との縁から居候している身である。
行き先は、撫子の祖父から聞いていたので、其処に向かうことにする。リハビリと暇つぶしを兼ねてだ。
そう、あやかし荘に。
「久しぶりの体は動かしにくいよう〜」
とか呟きながら、あやかし荘に到着した。
雰囲気やここの特有な地場が、彼女を魅了する。
「わぁ…撫子姉さまこんな素晴らしいところ知ってたんだぁ」
笑いながら、中に入っていった。

エルハンドは将棋を終えた時に、新たな神格を感じ取った。思わず戦闘体勢に入ってしまう。
「嬉璃…そこで待っていろ」
と彼は厳しい顔をして部屋から出た。
「半神程度のようだが…実体は上級神だな…」
と、感じ取った先にいたのは美少女。
「はじめましてですぅ。天薙撫子の従妹、榊船亜真知です〜」
と少女は行儀良く会釈した。
エルハンドは彼女の落ち着いた姿に安堵した。
「此方こそ初めまして、エルハンド・ダークライツです」
このところ物騒故に気が張りつめているのだろうと剣客は考え直す。
「あの〜撫子姉さまは何処におられますかぁ?」
「ふむ…もう来ていたのか、おそらく管理人さんと一緒かも知れないな。管理人室に居ないなら…」
と言葉を続けようとした時…。
「エルハンドよ、なに急いで出て…って?誰ぢゃ?この娘は」
と嬉璃が不思議そうに後から出てきた。
「あー可愛い♪ね?ね?一緒に遊ぼ!」
「な、なんじゃ〜?剣客何とかせぬか!」
「彼女は久々に降臨した神だな。おとなしくした方が安全と思うがね」
「そんな事を訊いているんぢゃない!」
亜真知に腕を引っ張られて困っている嬉璃にとノンビリ返答するエルハンド。
そんなことを玄関でやっているのだから、管理人室に嫌でも聞こえる。
恵美と撫子が顔をだした。
「どうしたの、嬉璃ちゃん?」
「どうなされました?って亜真知さま!」
「あー姉さま!ずっるーいこんな良いところ教えてくれなかったでしょ!」
「あーそのーこれは…」
嬉璃の手を離さずして撫子に寄る亜真知。どう理由を言えばいいのか困る撫子。
撫子とエルハンドが実際遊びに来ているわけではない事を説得するのに、時間がかかったのは言うまでもない。
落ち着いた後、恵美から花火大会のことを聞いた時には、
「やっぱり遊びに来ているんじゃない〜」
と、プンプン拗ねている。
ところが
「わたくしもいく〜花火ー♪」
と、いきなりご機嫌になった。


■当日
屋台のほうは花火が始まる前に河川敷に作られている。
川に架かる橋から見る人々もいれば、岸でゆっくりと眺める家族もいる訳で。
あやかし荘では相変わらず三下が場所取りで佇んでいた。
すでに、時音と歌姫が居るので、悲しいこともない。時音は跳躍で荷物を運び、歌姫はそれを丁寧に置くというわけだ。三下は茣蓙をひいて重しのように座っているだけである。
大きな移動は、剣客が「門」をあけてくれるそうだ。

待ち合わせ場所は、あやかし荘である。
一番に到着したのは、ゆゆだ。白地に鈴蘭の模様が入っている浴衣が、彼女の長い髪の美しさに負けていない。玄関先でばったりあったエルハンドは彼女の可愛さ、美しさについ見惚れてしまった。
「どうしたの?」
あまりにも珍しい表情のエルハンドを不思議そうに見るゆゆ。
「可愛いな…」
「ありがとう♪」
満面の笑みでゆゆは礼を言った。
撫子と従妹の亜真知がやって来た。撫子は涼しげな水色に少し川の流れのような模様の浴衣姿で亜真知は青地に可愛い向日葵の模様だ。流石天薙家、浴衣を着こなしている。撫子の荷物は弁当の重箱を包んでいる。恵美達も浴衣姿に着替えていた。祖母からの手ほどきを受けていたので、浴衣の着こなしは上手だ。遮那も落ち着いた感じの浴衣で登場する。
嬉璃も浴衣姿になっているが、あまり変わらない。

「皆さん揃いましたね」
恵美が確認をする。
エルハンドが時音と連絡をとり…空間移動用の「門」を開けた。
「かなり人も混むから、こうした方が良かろうと思ってね」
「花火にLet’s go〜♪」
ゆゆと亜真知が腕を上げて門をくぐっていった。それに続く参加者達。

すでに人は混み合っており、花火が始まる前に色々と屋台で楽しむ人々がいる。
「まだ小一時間はありますね」
撫子が時計を見る。
「場所はこの茣蓙で、一番見晴らしが良いと管理人さんが言ってましたし」
時音が言った。
「でえとの時間はたっぷりあるわけぢゃ」
と、にやけ笑いの嬉璃。それに頬を染めるカップル二組。
「では、「カップル」の為にしばらく自由行動だな」
エルハンドが微笑んだ。
「「カップル」を強調して言わないでください!」
と遮那と時音が顔を真っ赤にして突っ込んだ。
其れを、皆は微笑ましく笑う。恵美と歌姫を除いてだが。

そして花火が始まるまではそれぞれ自由行動となった。


●撫子と亜真知、嬉璃
花火見物する場所から少し離れたところ。
撫子は亜真知と嬉璃が岸で遊ぶ姿を眺めていた。
すっかり仲の良くなった二人をみていると、昔を思い出すものだ。
従兄とこうやって遊んだなぁっと。
「遠くに行っちゃ行けませんよ〜」
「「は〜い」」
何があっても大丈夫だが、念のため声をかける。
嬉璃も亜真知も可愛いから誘拐されうる可能性はあるのだ。
はて、亜真知さまを心配する必要だろうかと思ってみる。
姿に惑わされ、返り討ちに会う不埒者が多くなるだろう。
彼女の遊んでいる姿を見て、昔を思い出すというのも決して悪くはない。
(わたくしは花火が始めるまでゆっくりさせて頂きましょう)
と、冷やし飴を一口飲んだ。

亜真知は嬉璃と石投げをしている。
石がどれだけ水面を撥ねて、投げた距離を競い合っているのだ。
結構難しいものなのだが、コツを知ると簡単なこと。
そして、それに飽きたら、撫子に買ってきて貰った水風船で遊ぶ。
パシャパシャと風船の中の水が鳴る。
亜真知は長い歳月のことを殆ど知らないので全て新鮮に見えた。
「今の時代って、こんなに楽しいのがあるんだ〜」
感心している亜真知。
「まだまだこれからぢゃ」
嬉璃にしても、遊び友達が増えたことが嬉しい。
無邪気な子供の遊びは、あっという間に過ぎていく。
「そろそろ、時間ですよ〜」
と撫子の声。
「はい、今行きま〜す」
と、亜真知は返事をした。
嬉璃と手を繋いで、撫子の元にかけていった。


■花火
一発目の花火が夜空を照らした。
轟音なのに心地よい音、興奮する気分。
「すご〜い」
ゆゆと亜真知は感動し声をあげた。
撫子と恵美が作ったお弁当を食べながら、大人達は竹の銚子で冷酒を、未成年は冷やし飴で花火見物を楽しむ。
「花火が上がった時、たまや〜って言うのですよ」
恵美が二人に教えた。
エルハンドは酒を飲みながら花火を眺め、遮那と恵美が帰って来るのをまった。
5分ほどして彼らは帰ってきた。かなり良い雰囲気で戻ってきた。
「遅れて済みません」
「良いですよ、二人っきりは楽しかったですか?」
「え、あ、はい」
「若いもんわいいのう」
「青春というのはこうでなくてはな…」
「もう、からかわないでくださいよ」
話のネタにされるのも、恥ずかしいが、これはこれで悪くはないものだ。
頬を赤らめる二人の初々しさもまた、心を和ませるものだったりする。
もう一方、時音と歌姫にいたっては、花火の音で無く赤子をあやすので忙しそうだ。しかし、時音にかかれば、彼女はまた無垢な微笑みと変わった。時音も、歌姫も花火の美しさとこの平和な一時を楽しんでいる。赤子は興味津々で亜真知達を眺めている。花火にも興味を示しているのでどちらを取るか悩んでいるようにも見える。
気にはしていたわけではないが、場所取りでずっと座っていた三下が居ないのに気づく。
用事が終わったから帰るわけでもないのだが。
すると彼は、戻ってきた。
「足りないと思って飲み物買ってきました〜」
「おお、ありがとう」
なかなか気が利くようだ。しかし何か別の袋を持っている。
「それは何でしょうか?」
時音が聞いた。
「其れはまだ秘密です」
とあっさりかわす。

そして、皆で他愛のない会話をしながら、花火を眺めていた。
夏の始まりを告げる祭り。

■たけなわ
最後の花火が打ち上げられ、祭りは終わりを告げた。
しかし、これからが印象に残ることとなる。
ゆゆが、感謝を込めて、幻想的な花火の幻影を周りの者に見せたのだ。
「おお、今年はすごいな」
「たまや〜」
その喜ぶ姿を眺めるゆゆは満足した。術を使用したと分かった剣客が彼女の頭を撫で、こういった。
「ありがと」
と。
興奮さめやらぬなか、皆は帰り支度を始め、歩いてあやかし荘に戻ることにした。

一旦、あやかし荘に戻ると、
「じゃじゃーん♪」
三下が先ほどの袋から花火セットをとりだした。
「あー!」
「実は、場所取りの役目が終わった後、花火が始まるまで時音君と歌姫さんを二人っきりにしようと思ったので…コンビニまで買ってきたのです」
と、胸を張って彼が言った。
「柄にもないことすると…明日は雨ぢゃ」
「そんな言い方はないでしょう〜嬉璃さん」
「お主にしては、気の利いたことぢゃな。せめて雪にするか」
「悪化させてどうする、せいぜい台風にするべきだ」
「どっちもどっちですぅ〜」
剣客と嬉璃の言葉に半泣き状態にはなる三下。
恵美ははっと気が付いて、
「時間もありますし、スイカを食べながら、三下さんの買ってくださった花火をしましょう」
「さんせー!」
「最後は線香花火だよね!」
まだまだ、祭りは終わらない。
花火は終わったが、夏の祭りは始まったばかりなのだ。


End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0328 / 天薙・撫子  / 女 / 19 / 大学生】
【0428 / 鈴代・ゆゆ / 女 / 10 /鈴蘭の精】
【0506 / 奉丈・遮那 / 17 / 占い師】
【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】
【1593 / 榊船・亜真知 / 女 / 999 / 超高位次元生命体:アマチ…神さま!?】


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■         ライター通信          ■
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『河川敷の花火大会』に参加して頂きありがとうございます。
もうすぐしたら7月ですね。スーパーではすでにスイカや花火セットが売られていますね。
私の地域は、丁度8月に花火大会があり、そのときは周りが渋滞です。駅前では浴衣姿の人々を見かけます。

皆さん夏ばてにはご注意下さい。

また機会がありましたらお会いしましょう。

滝照直樹拝