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<東京怪談・PCゲームノベル>


夏だ!海だ!草間兄妹の海水浴 1日目 

■外伝?
水瀬夏紀は剣客の天空剣・新路開闢(しんろかいびゃく)により、過去の忌々しい記憶を失ったが…能力は持っていた。かなしみを無くしたことから、光刃の制御は可能となっていたし、具現剣の危険性も理解した。「退魔」という血筋故、自分の使命というモノを自覚することは時間を要することはなかった。
ただ、彼の性格は「殺人マシーン」として覚醒した。
過去の悲しみと想いは、零が持っている緑の宝石の首飾りに封印されている。

しかし、この世界の神様とやらは、「退魔」には厳しいらしい。
町中で、退魔以外でのバイトでも見つけようかと色々回ったところ…。
ある男に退魔家業のスカウトされたのだ。
物腰は、有名なスパイ映画の主人公をまねているのだが…どうも似合ってない。顔の方は合格点なのだが…。
そんなこんなで、普通のバイトの他に彼の部下となった。
真剣に任務をこなす真面目な彼に…この上司は最悪きわまりないものだろう…。


■海岸沿いでの仕事と出会い
夏紀は上司の命を受け、ある海水浴場近くにある廃屋に潜む魔と結託した術師を始末する事になった。
式神を使うことから陰陽師とらしい。数は多勢だ…幸い光刃の制御補佐能力をもつ短刀(柄は、刀のソレと同じ大きさだが)で、体力精神力は保てた。
しかし、一瞬隙が生じ、別の魔物が襲ってくる。
「しまった!」
しかし、何とか避けて、魔物を始末した。
怪我はないのでそのまま…先を急ぐ…。
そして、術師を斬り捨てて、血の海の後始末のみを済ませば仕事は終了だ。
その直後…メールが届く。着信音は…上司の好きな映画のオープニングだった…。
「…何だ?『裏の海岸に製作時間十五分で『風雲たけ●城』な巨大砂城を構築した勇者が居る?諜報員魂が刺激されるので是非挑戦してくれたまえ?』…」
彼はこめかみにしわを寄せ…暫し沈黙した後…
『我忙しい。余所を当たれバカ』
と、返信する。
また着信…。
「なんだ?また?『すまない自信がないとは知らなかった。代わりに僕が君の名で挑戦し、水着のお嬢さん達に愛のすばらしさを伝導して…』…するな!」
メールに突っ込んでしまう。
「分かったよ!行く。つまり城のアトラクションを突破して、制作者と握手すれば良いだけだろ?問題は無いはずだ」
ソレが、地獄の一丁目だとは知るよしもない。


■強力な砦
確かにこれは…15分で作れるものではない…
崖からその砦を見ていた。
12メートル平方、高さ9メートルの砦…。その上に…何処かで見た「剣士」がいる。
「アレが勇者か…」
赤子を抱いて、水着姿の女性を隣に共に高笑いしている男。
なんて呑気なのだろう…。
あらかじめ用意していた高性能モバイルで写真を撮り、上司に送った。
「兎に角…やるしかないな」
穴場の海水浴場に、大きな砦。その異様な光景…。
海の家にはかわうそらしき生命体…。
慌てている者がいるようだが…、一緒にいる女性達はなんとも思っていないらしい。
「ったく…呑気なものだな」
夏紀は血なまぐさい戦いの後に、こんな間抜けな仕事をするなんて、と溜息をついた。
まず、門をくぐる…。
見た目は…只の砂の城の通路…。
そのまま歩いていくと…天井から…不気味な生き物の固まりが!
「な!?」
釣りのエサになるゴカイにまみれる夏紀。
「いきなりこれか!」
虫の山から叫んで飛び起き、虫たちを光刃で一掃する。
(何なんだ?この要塞は?)
夏紀はかなりの精神ダメージを喰らっていた。
「はははっ!いきなり不注意は禁物だよ!」
上から「勇者」が高笑いをあげている。
くそー。
中庭らしき所に出てきた。中には…鶏が一杯いた。
「砂の鶏か?」
それにしてもリアルすぎる…。近寄ってみると…
殺気を帯びた鶏が…目を光らせて襲いかかってきた!
「コケー!!」
数羽程度なら問題ないが…蹂躙してくるほどの数およそ140羽…退魔能力を有しているのか…かなり訓練を受けている鶏たち…。
夏紀は…鶏につつかれ、足蹴にされて沈黙…。
これほどの屈辱は無い…。
光刃フルパワーで140羽をヤキトリにした…。
中庭は香ばしい香りで充満した…。
「くそー」
溜息一つのあと、何かを踏んづけたようだ。カチリと音がする…
轟音とともに…巨大な手が地面から現れ、大きな蝿たたきでたたきつぶされた。
「俺は蝿じゃねー!」
と叫んで見ても、すでに蝿たたきの手の姿はない。
その代わり…マッチョな人型をしたクレーンが夏紀を掴んだ…。
完全にクレーンに芸術級の関節技を決められており…身動きが取れない…。
「マテこの離せー!」
もがけないほど強力。万力のようだ。
そして、クジャクのはねを持った「こびとさん」が一杯集まってきて…夏紀をくすぐり倒す。
「わははははははは!く…くるしいい!や…やめろ〜!」
笑いで死にかけ寸前の夏紀…。
クレーンは何かの台に彼を置いて…何かを始めた…。
すでに反抗する力も残っていない夏紀…。
歯車がきしむ音…何かの弦が引っ掛かる。
それだけを意識朦朧の中…聞いている。
明かりがまぶしい…
何処に?
気が付けば…簀巻きの状態だった。
しかも「失格」という紙切れまで貼られている。
「また来るんだね!若き退魔の少年! …坊や、全てに罠が有るんだよ…見破らないとこういう事になるだ」
バリスタに乗せられた簀巻きの夏紀…。
ま、まさか…。
そのまさかだった…。
「ファイヤー!」
砦の主は叫んだ。
夏紀はバリスタでかなり遠くにとばされた…。
その加速度は…時間待ちなど関係ないジェットコースター。
Gと摩擦で…体力と精神力が燃やされていく…。
加速した所為で、海面に接触する時の恐怖はしっている。コンクリート級に堅くなるのだ。
豪快に海に落ちた音と、水柱…。
普通なら…死にます…。
そのまま失神して潮に流されていく…若き退魔剣士…。

気が付いた時は…かわうそ?の海の家だった。
すでに夜…。
砦はまだ存在していた。
誰もいない様だが…。攻略するのが仕事。止む得ない…。
しかし、何度も挑戦しても…
バリスタ、カタパルト、極めつけは某有名ロケット…。
先を読もうにも、毎度新しいトラップが作られており…全然ゴールまでたどり着けない。
たしか…数人の女の子もとばされていたよな?
ひょっとして…俺だけ酷い罠の餌食か?
怒り狂う夏紀…
「良いだろう!絶対にクリアしてやる!」
闘志を燃やす夏紀…勇んで挑戦する。
海の家にいるかわうそ?は白いハンカチを振っていた。
そして、やっと屋上にたどり着いたとおもいきや…シュートトラップでまた、バリスタに乗せられた…。
そのバリスタの操縦者がかわうそ?だった。
彼はニヤリと笑う。
「いいかげんにしてくれーーーーー」
ソレが夏紀の最後の言葉だった。


■後に上司は語る…。
あの砦は、最高のアトラクションだよ。流石の僕も彼の作ったトラップには叶わないな。
素晴らしいよ…勇者くん、成長したな。あの夏紀君をここまで懲らしめることが出来るなんてね。
さて、夏紀くん…次の指令だが…。
「もうイヤだ」
では僕が…君の…。
「分かったよ…行けばいいのだろ…」
涙をこらえ…上司の指令を聞く…。
彼は生き方を間違えた。
しかし、自分で決めた(?)道なのだから、存分に上司の良いなりになるしかないだろう。
幸せは無いと思ってくれたまえ。


End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1109 / 水瀬・夏紀 / 男 / 17 /若き退魔剣使い】


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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
ご希望通り散々な目に遭わせましたが如何でしたでしょうか?
また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝