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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


魔界探検への案内


------<オープニング>--------------------------------------


「魔界に行く方法?!」
 片翼の悪魔ルートは、サイトに書かれている方法に飛びついた。悪魔のくせに人間に化けて、こんなところまでやってくるルートと瀬名・雫はいつの間にか仲良くなっていた。
「サイトを過信しちゃダメだよ〜。そんなのどこでも書いてあるってば。」
「でも、なんか内容が行けそうな気がする!」
「どれどれ?」
 画面を覗き込んだ雫は、内容を読んでみる。
「えーと、新月の真夜中に行うこと。必要なもの1、処女の生き血。2、マンドラゴラ。3、生贄(大きいほどよい。兎や犬など)。4、ろうそく。続いて、魔方陣の書き方……。ちょっとー普通にやばそうじゃん。」
「いや、きっと行けるはずだ。魔界に行くぞー!!」
「真偽も調べないでー。もー。」
 ルートは雫の話も聞かずに飛び出していってしまう。
「気が済むまで相手してあげてもいいけど、なーんかやばそうなのよね、内容が。仕方ないから付き合ってあげよっか。」
 1人では対処できないかもしれないので、他にも誰かを連れて行くことにしよう。雫は携帯電話を取り出した。


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「大丈夫ですの?」
 一連の流れを見ていた榊船・亜真知(さかきぶね・あまち)が雫に声をかけた。日本人形と見紛う程の見目鮮やかな振袖姿をしている。
 亜真知は千年の眠りから目覚め、様々なメディアから『今』を学んでおり、その中でもインターネットを一番気に入っている。現在ネットカフェに出入りして、雫やルートと知り合って仲良くしていた。
「うーん。どうなんだろ。分からないや。」
 雫はほとほと困り果てている。亜真知はルートが見ていたサイトを覗き込んだ。
「これ、真偽はどうなっているんでしょうか?」
 亜真知はサイトの周囲を探り始めた。
「ルートは興信所の方に行ったみたいだわ。」
「とりあえず、魔方陣とサイトアドレスだけでもメモして行ってみましょうか。」
「そうね。それがいいと思うわ。ルートを捕獲してないと、何しだすか分からないし。」
 雫と亜真知は溜息と共に行動を開始した。



「はあ? 魔界に行く?!」
 一方某興信所では、驚愕の声が上がっていた。
「ルートさんってすごいですね。故郷に帰りたいという気持ちは分かりますし、あたし、手伝える範囲で手伝います。」
 海原・みなも(うなばら・みなも)がきらきらと瞳を輝かせてルートを見た。
「ルート、そんなに魔界に行きたいの? ある意味里帰りみたいみたいなものなんでしょうけど。……不安ねぇ。」
 シュライン・エマが慌てて、ルートを覗き込んだ。真意を尋ねたかったが、瞳はわくわくしていた。誰が何と言おうと魔界に行くつもりだろう。今まで育てた自覚のあるシュラインは、なんだかちょっと寂しい気がする。成長したら自力であちらとこちら行き来もできそうだ、と自分を慰めてみたりした。
「魔界だと? おいおい、また問題か?」
 ルートの騒ぎに巻き込まれたことのある江戸崎・満(えどさき・みつる)が、言葉と裏腹に楽しそうに声をかけてくる。
「問題じゃないって満。魔界に行くんだよ。処女の生き血とマンドラゴラ、生贄にろうそくがいるんだけど。」
「ちょ、ちょっと、駄目よ生贄なんて。犯罪だし、何より可哀相じゃないの。猟奇的なまねしないで。」
 シュラインが悲鳴を上げる。
「……何処から手に入れるつもりなの?」
 綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)が不穏な空気を漂わせて問い掛けた。返答しだいによってはルート自体を封じる気だ。そして、それが最も手っ取り早いのは明らかだった。
「うーんと、どうしよう。処女の生き血とか、貰わないとないだろ。何もないところから生産できないし。」
「処女の生血はあたしでもいいですけど、人魚の生血なんで微妙ですよね。」
「みなもちゃん?!」
 爆弾発言をするみなもに、シュラインと汐耶は眩暈を覚えた。さらにみなもの発言は続く。
「生贄は人間を使われたら困りますので、お姉様にお願いしまして、ミンククジラを宅配してもらいましょう。」
「みなもちゃーんーーーーっ!!」
「おおー、さっすが、みなも。すげぇな。ろうそくは買うとして、あとはマンドラゴラだな!」
「こればっかりは、あたしは専門外ですね。」
 みなもが申し訳なさそうに、頭を下げる。シュラインと汐耶に至っては燃え尽きていた。
「マンドラゴラねー……実は俺の家の裏庭に畑の野菜の如く生えていたような……。」
「マジで?! 満んとこ、訳分かんねぇなー。」
「ああ。あの神がな……勝手に栽培してやがるんだ。待て、こっちに呼んでみよう。奴ならお前を突然殺そうとしたりはしないだろうからな。」
「何それ! 満の友達って危ないのな!」
 ルートに罪はないが、悪魔なのが悪いとはさすがの満も言えなかった。電話で簡単に訳を話すと、ダージエル・ーはこっちに来ると行って切られた。



 マンドラゴラを持ってダージエル・ーが不機嫌な顔をしてやってきた。
「江戸崎から聞いた。魔界の門? ったく、前に大阪の門を封印したってのに。」
 じろじろとルートを眺める。本能的に危険を察知して、ルートは警戒して身体を強張らせていた。
「悪魔なんぞ本当ならば封印たい所だが……色々と役に立っているらしいので様子を見ようか……。」
 呟きつつ、周囲を見ると、「役に立つ」という部分に同意している顔を見ない。聞いていることと違うのか?とダージエル・ーは少し不安になった。
「でも処女の血の方はどうするんだ? 場合によっては人一人分という可能性があるぞ?」
「ええ?! そんな……。少量ならば、あたしの血をあげようと思ってたんですけど。」
 1人分では、さすがのみなもでも困る。意外な話の進み方にダージエル・ーも眉を顰めた。
「ところで、儀式の方法はどうなんだ?」
 全ての材料が揃ったので、満はこれらをどうするのかを尋ねる。
「……………………忘れた。ちゃんと見てなかったし。」
 ルートはあっさりと答えた。全員ががくっと肩を落とす。
「何それ。儀式を行った者のみを魔界に送るだけなの?とか、魔界への門を開けるの?とか、開けたら向こうの魔物こっちにくる可能性は?とか、聞いても無駄ってこと?」
「うん。知らないし。」
「魔界と行っても様々だぞ? 地獄やら奈落やら冥府やら伏魔殿、忘却界にアストラル界等々。どこに行く気だ?と聞いても同じだな……。」
「そりゃそうだろ。魔界は魔界だ。地獄とは違う。」
 ダージエル・ーは溜息を付いた。
「話にならないわ!」
 汐耶が顔を顰める。本当に何も知らないらしいルートにシュラインは頭痛がしてきた。満はやれやれと笑っている。
「適当にすれば大丈夫だって。」
「そんなアバウトな。」
「さすがルートよね。」
 シュラインもとうとう諦めの溜息を付く。当のルートはあまりへこたれた様子もない。
「どうするつもりよ?」
「また、そのサイト見てみればいいじゃないか。」
「どこだったの?」
「………………どこだっけ?」
「本当に話にならないわね!」
 シュラインと汐耶はがっくりと肩を落とした。ダージエル・ーが目を細めて、満を振り返った。こんなものだと、満は肩を竦めて見せる。
「こんにちはー。」
 そんな中、雫と亜真知が興信所にやってきた。
「ルート忘れ物よ。」
 亜真知が魔方陣とサイトアドレスのメモをルートに渡す。
「ああ、これこれ。」
 無邪気に喜んで、ダージエル・ーに手渡した。全員で中身を覗き込む。
「みなも、血を煮て、その中にマンドラゴラをみじん切りにして入れるらしいぞ!」
「ええと、量が書いてませんけど、みじん切りしたマンドラゴラが全部浸るくらいだったらいいんでしょうか?」
「これを生贄に降り掛けるから……全体に降り掛けるのか? 一部でいいのか?」
 ルートとみなもは真剣に呼び出す方法を議論し始める。
 他はいまだに無言を通していた。
「……魔界に行く方法というより、悪魔を呼び出す儀式なんじゃないかと思うんだけど……。」
 誰もが思っていた内容を、シュラインがぼそっと口にした。
「まあ、その悪魔に願えば魔界に行けるって言うなら、ある意味嘘ではないんだけど……?」
「俺は、悪魔を召喚し『儀式を行った者か生け贄の「命」を魔界に連れて行く』モノではないかと考えているのだが?」
 満の予想も十分不吉である。しかし、ルートとみなもの楽しそうな会話を見ていると、否定してやるのも哀れになってくる。
 汐耶だけはぷつんとキレ、ルートを振り返った。
「ルート、これ、本当にやるつもり?」
「あったりまえ!」
「ええい、そこに直りなさい。私が説教してやるわ。こんな、何か分からないものを簡単にやろうとするんじゃないの! 自分たちが言ってるように、詳細な説明すらないじゃない! 下手なことしたら封じるわよ!!」
 汐耶に正座させられ、ルートは目を白黒している。このまま数時間は拘束できそうだ。
「その間に真偽を調べてみましょうか。」
 亜真知がメモをぺらぺらと振って見せた。



 その魔界の行き方が書かれていたのは、サイトの中でも、BBSにあたる場所の1通行人が書いたものだった。メールアドレスなど残しているはずもなく、真偽の問い合わせが出来ない。
 管理人に聞いてみようにも、そのサイトは2年ほど放置されているらしかった。メールアドレスもすでにないプロバイダのもので、連絡が取れない。
「しょうがないですね。他に内容の類似するものがないか調べてみましょう。」
 亜真知は表裏のネットから検索をかけていく。
「魔界に行く方法なんてどこにもないね。」
 雫が横から覗きこんで、溜息をつく。
「そうですね。類似のものは悪魔を呼ぶ召喚儀式としてよく載ってますけど。」
「やっぱりニセ情報だったのね。」
「書いてある場所からしておかしいからねー。」
 シュラインと亜真知がせっせと調べている横で、雫は汐耶のお説教の様子を眺めている。
 満も同じように交互に視線を動かしながら、ダージエル・ーに声をかける。
「ダージエル・ーはなんで黙ってるんだ? お前ならすぐ分かるんだろ?」
「まあ、やらしてみればいいさ。」
「大して害がないってことなのかな?」
「奴は悪魔だ。どんなに反対されてもやるときはやるだろう。」
 諦めの境地に立っているのか、何か策があるのか。どっちも混じっているのだろうな、と満は判断した。



 結局汐耶の小言は功をなさず、ルートは嬉々として儀式の準備を進めていた。みなもは念のために霊水を懐に忍ばせておいた。雫は興味深そうに儀式の行方を見守っている。
 亜真知はみなもに頼んでミンククジラをただのぬいぐるみに取り替えた。さすがに人魚の血では効果がないんじゃないか、というシュラインの誘導によって、血だと嘘をついて赤い色水にしておいた。
「これで魔方陣が正しくても、実際に悪魔を呼び出したりは出来ないわね。」
「悪魔が悪魔を呼び出したらどうなるんだろう。」
 疲れきった汐耶がぽつりと疑問を口にする。
「さあな。前例がないわから分からんな。」
 ダージエル・ーはルートの代わりに魔方陣を書いてやっている。一応メモに書いてある通りに作っている。どうせ、いろいろなものが複合されていて、実際に機能はしそうにない。
「よしっ! 揃ったな! 呪文は何だ?」
「そういえば、呪文は書いてませんでしたね。」
 みなもが心配そうにルートを覗き込む。
「んん? なんだこれ。間違ってるぞ、この魔方陣。」
 ルートが眉を顰めながら、さっさと魔方陣を直していく。げっ、とダージエル・ーが口の中で呟いた。この陣では、本当に魔物が呼び出されてしまう。
「なんで魔方陣が間違ってるって分かったの?」
 シュラインが不思議そうに尋ねた。ルートはえへんと胸を張る。
「だって、他にもいろいろサイトを覗いて勉強したからな! なあ、亜真知もいろいろ教えてくれただろ。」
「……それは本当?」
 汐耶が嫌な予感をひしひしと感じながら、亜真知を振り返った。
「あら。そうだったかしら? あたくしが調べている横で覗いていたのでしょう。」
「そうそう。」
「じゃあ、呪文も知ってるわけだ?」
 満は1人で興味深そうだ。何が起こるかわくわくしている。
「任せろ!」
 ルートは魔方陣に向き直り、なにやら口の中で呪文を唱え始める。
「何が起こるんでしょうか……。」
 みなもは霊水を握り締めて、ルートの行動を窺っている。
 呪文は魔方陣に力を与えていく。危険な兆候が全員に感じられた。
「魔界の門よ、開け!」
 ルートが叫んだと同時に、亜真知が動いた。『理力変換』で魔方陣の力を反転させ、『浄化陣』に書き換える。
「うわっ!」
 鈍く黒く光っていた魔方陣が、突然白い光を帯びた。自分と相反する力に、ルートが悲鳴を上げる。
「痛い痛い痛いっ!!」
「ルート?!」
 亜真知がしたことが分からなかったシュラインがルートに駆け寄ろうとする。
「本当に危ない奴だな。」
 その前にダージエル・ーが立ちはだかり、痛みに転がるルートに術をかけた。
「何するんだよっ!」
 気付いたルートが噛み付くが、すでに放たれてしまっている。
「危ないからな。その魔方陣に関する記憶を奪わせてもらった。」
「ええっ?!」
 汐耶とシュラインで倒れこんだルートを助け起こした。直前の記憶まで奪われ、ルートはぼんやりしている。
「なんか酷いことしてるように見えるな〜。」
 満は暢気に感想を述べた。
「ルートさん、お茶会しましょう。」
 みなもがにっこり笑ってそう提案した。
「お茶とお菓子を持ってきたんです。ちょうどいい時間ですしね。お月見をしながら……。」
「今日は新月だけど?」
 びしっと汐耶が突っ込むが、亜真知がすぐにそれに賛同する。
「いいですわね。あたくしにもお茶を淹れさせて下さいな。」
「お湯を沸かしましょうか。」
 シュラインは心得たとばかりに行動に移す。
「美味いのを頼むよ、二人分。」
 満がダージエル・ーの分までオーダーを頼む。
「お茶会?? してたっけ?」
 ルートは不思議そうに首を傾げた。その背中をばしばしと雫が叩いて目を覚まさせる。
「世界が平和だってことよ。」
「俺は悪魔だぞ。平和なんかに興味はねえよ。」
「まあ、ほどほどにするんだな。次やったら封じるからな。」
 ダージエル・ーの本気に気付いて、ルートは距離を置く。記憶はなくても、身体は先ほど何をされたのか覚えているようだ。
「まだまだ躾けることが多そうね。」
 汐耶が危険な瞳で笑った。
「お茶淹れましたよ〜。」
 殺伐とした儀式の空気が一掃され、賑やかなお茶会が始まった。


 *END*


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1593 / 榊船・亜真知(さかきぶね・あまち) / 女 / 999歳 / 超高位次元生命体:アマチ・・・神さま!?】
【1252 / 海原・みなも(うなばら・みなも) / 女 / 13歳 / 中学生】
【1449 / 綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや) / 女 / 23歳 / 司書】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【1300 / 江戸崎・満(えどさき・みつる) / 男 / 800歳 / 陶芸家】
【1416 / ダージエル・ー(だーじえる・ー) / 男 / 999歳 / 正当神格保持者/天空剣宗家/大魔技】
(受注順で並んでいます。)

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、龍牙 凌です。
この依頼に参加していただき、本当にありがとうございます。
納期のぎりぎりになってしまって申し訳ありません。
儀式に必要なものが全て集まったことがびっくりでした。(都合により使われませんでしたが)
ルートはこれからも人の迷惑になることを続けることでしょう。
如何でしたでしたか? 満足して頂けたら幸いです。
それでは、また機会があったらお目にかかりましょう。