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季節はずれのHalloween
●オープニング
その騒ぎは、ある日突然始まった。
どこからともなく石が降って来たり、朝起きたらある家の前にうずたかくゴミが積み上がっていたり、近所の別の家の中に大量の虫が放り込まれたり。
かなり悪質ではあるが、これらはまだ、ただの悪戯の範囲内と言えよう。
もちろん被害を受けた人たちは悪戯の犯人を探そうと警察にも届けた。
だが犯人の手掛かりひとつ見つからず。悪戯は絶える気配もなく、ますますエスカレートしていくばかり。
そして・・・・・・今度は、不可解な悪戯が起こり始めた。
しっかり戸締りをした家の中で、ほんの数分目を離した隙に畳から雑草が生えていたり、ベッドが泥だらけになっていたり。
その話は、ゴーストネットの掲示板でも噂されていた。
――私もやられたよー。部屋で勉強してたらね、イキナリ上からザバって。水が降ってきたの。
――僕も僕も。なんか頭がちくちくして目が覚めてさあ、枕の中身が刺々の葉っぱに入れ替えられてんの! 寝る時は普通だったのに、いつの間に入れ替えられたんだろ・・・。
こんな感じの被害者の書き込みと、それに対するレスが並ぶ掲示板の書き込みを見て、雫は目をきらきらさせた。
普通、いくら愉快犯でも他人の家に不法侵入し天井裏に潜んでまで水をぶっ掛けるような悪戯はしない。
その他もろもろの悪戯にしたって、あまりにも見つかるリスクが大きすぎる悪戯ばかりだ。
それなのにこうまで犯人の影も見えないということは・・・・・・・。
早速雫は、調査協力者を探すべくキーボードを打ち始めた。
●お化けを探せ!
雫を介して決まった集合場所と時間に、逸早く到着したのは今回の最年少、海原みあおだった。
何故だか掃除機を背負って、ワクワクとした表情で他の面子を待つこと数分。
「こんにちわ」
黒猫を抱えた少女が、とびきりの笑顔で声をかけてきた。
「こんにちわー」
みあおもそれに負けないくらいの明るい笑顔で答える。
「あなたも雫さんの依頼を受けたの?」
「そーだよっ。みあおって言うの。よろしく〜♪」
友達の握手にと手を差し出すと、少女はニッコリ笑って握手を返してくれた。
「私は楠木茉莉奈で、こっちはお友達のマール。よろしくね」
短い自己紹介の後の短い沈黙。
茉莉奈の視線が背中の掃除機に向いていることに気付いて、みあおは自慢げに胸を張った。
「お化けを探すには掃除機背負って歌いながらという掟があるのだ! みあおね、ぜーったい、お化けの悪戯だと思うんだ。茉莉奈はどう思う?」
「うーん。私は妖精の悪戯だと思うんだ。でも、どっちにしても、まずは正体を見極めないとね!」
そう言って茉莉奈は、バサリっと周辺地図を広げた。
●被害マップをつくろう!
今回のメンバーは全部で三人。
かなり張り切っていたらしく、また今回の悪戯はお化けの仕業だと言って何故か掃除機を準備してきた今回の最年少、海原みあお。
黒猫を連れてやってきた、この悪戯の犯人は妖精ではないかと疑っている楠木茉莉奈。
一番最後に合流した、今回の最年長の天薙撫子。
茉莉奈が用意した地図には、先に調べていた情報がある程度書いてあった。
そこに、撫子が調べた分の情報を書き加えていく。
ある程度被害状況の分布図が出来たところで、撫子が一つの法則性に気付いて地図の一箇所を指差した。
「・・・時間と日にちを合わせていくと、いつもここから始まってここで終わっているみたいですね」
言われて、二人は日にちと時間を順番に追って被害状況を確認してみる。
「あ、ホントだ」
悪戯が起きる場所はほぼランダム。被害も一度とは限らない。
「みあお、ここ知ってるよ。小さい公園があるの」
毎日一番最初はその公園の近くのどこかの家。方角にも道筋にも法則性は見つからないが、昼過ぎ辺りまでは被害箇所は公園から離れていって、陽が傾き始めると公園近くに戻ってくるのだ。
「では、ここで張ってみましょうか」
撫子の案に、二人は元気に頷いた。
●公園に現われる者
本当に、小さな公園だった。
遊具といえば滑り台と砂場、それからブランコが二つ。公園を囲むようにたくさんの木が植えられていて、夏はセミの鳴き声がさぞや煩いことだろうと想像できた。
入り口は二つあるが、悪戯の犯人が人外である可能性が高いことから考えれば、入り口だけを見ているわけにはいかない。
お化けに見つからないように、尚且つお化けをきちんと見つけられるように隠れないと・・・・。
みあおは張り切って公園内を見渡して、隠れるのにちょうど良さそうな場所をいくつか発見した。
とりあえず、何かの作業をしているらしい撫子は後回しにして、すぐ隣にいた茉莉奈に声をかける。
「ねね、どこに隠れよっか?」
ワクワクと弾んだ声で聞くと、茉莉奈はぐるりと公園を見まわして、足元で茉莉奈を見上げているマールに目を向けた。
「えーっと・・・マールはあっちお願いね」
マールはにゃあと一声鳴いて、茉莉奈が言った通りの方へと駆けて行く。
それから茉莉奈は、さっきから何かの作業をしていた撫子の方へと振り返った。
「撫子さんはどうしますかー?」
呼ばれて、撫子は少し考える様子を見せてから答えた。
「そうですね・・・。とりあえず、妖の者が近づけばすぐにわかるようにこの公園の周囲に結界を張りましたから、来たらすぐにわかりますけど」
「んじゃ、どっから来ても良いように、皆ちょこっとずつ離れて見張ろーう♪」
みあおが元気な笑顔で宣言した。
「うん、私もそれが良いと思う」
三人は、近すぎず遠すぎずの適当な距離をとって、それぞれ公園の片隅に見を隠した。
・・・・・・日暮れまで、あと十数分。
やってくるのはどんな者だろう?
●陽が沈んだあと
辺りが薄闇に染まった頃・・・。
「来ました」
言葉と同時、撫子がその場に立ち上がった。
茉莉奈とみあおが、撫子に少し遅れて立ちあがる。
「あっち?」
撫子の視線を追った先には、だが何の姿も見えない。
とりあえず掃除機の準備だけはしておこうと、背負ってた掃除機を手に持った。
「君たちが悪戯の犯人ね!」
突然響いた茉莉奈の声に、みあおは思わず彼女のほうへと振り返った。
茉莉奈の視線は、しっかりと誰かを見つめていた。
直後、何もいなかったはずの場所に、透き通る薄い羽根をはばたかせて飛ぶ、二人の小さな妖精の姿が現われた。
「うわあ、妖精さんだ〜v」
言うが早いか、掃除機を放置してパタパタと駆け出して行く。
可愛らしい妖精二人組にキラキラと目を輝かせて近づき、にっこりと笑顔を向けた。
「初めまして、妖精さん。ねね、妖精さんたちが、最近の悪戯の犯人なの?」
妖精たちは小躍りしつつ、ハイテンションに宙を舞う。
「ハーイ♪」
「でもでも、ただの悪戯じゃないの〜♪」
ピタリと静止し、妖精二人は視線を交わして、
「ねーっv」
ぴったり同じタイミングで言って可愛らしく小首を傾げた。
「目的があったんですか?」
少し控えめに――彼女らの勢いに押されてるのかもしれない――撫子が声をかけた。
途端、妖精たちはさらにテンションを上げてアクロバット飛行で応えた。
「探してたの〜」
「大事なの〜〜」
要領を得ない返答に三人は疑問の表情を顔に浮かべる。
それから、一つ一つ地道に質問していくこと数十問。一時間近くもかけて、三人はようやっと今回の事件の全貌を知った。
彼女らはもともとここに住んでいたのだが、つい先日、彼女らの大事な宝物が風に飛ばされて行方不明になってしまったらしい。
探しがてら人間にも聞いてまわっていたのだが、たいていの人間は彼女らの姿にビックリして逃げる者が大半で会話にすらならない。
仕方なく姿を消して探索しつつ、ついでに遊び半分の悪戯を繰り返していたらしい。
「悪戯しないで探そうよ・・・」
茉莉奈が、ちょっと苦い笑みを浮かべて提案した。
「なんでー?」
「答えてくれたらしないよー」
・・・・・どうやら、質問に答えてくれなかった仕返しも兼ねていたようだ。
「でもでもっ。その悪戯で困ってる人もたくさんいるんだよ」
「アタシたちも困ってるもーん」
「でも助けてくれないんだもん〜」
まったく困っているようには見えない口調で、妖精たちはくすくすと笑った。
「なら、私がお手伝いしますから」
「みあおも手伝う〜」
「うん。皆で探せばきっとすぐに見つかるよ」
きょとんとした表情で、妖精たちが笑いを止めた。
「わーいっ♪」
「助かるのっ。ありがとうなの〜〜v」
そして妖精たちは、さっきまでのからかうような態度を消して、無邪気な笑顔で答えた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号|PC名 |性別|年齢|職業
【1415|海原みあお|女 |13|小学生
【0328|天薙撫子 |女 |18|大学生(巫女)
【1421|楠木茉莉奈|女 |16|高校生(魔女っ子)
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■ ライター通信 ■
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こんにちわ、日向 葵です。
はじめましての茉莉奈さん、毎度お世話になっておりますのみあおさん、撫子さん。
この度は依頼に応えていただきありがとうございました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
相変わらずライター通信が一番苦手です。
なら書かなきゃいいのにと思いつつ、何も挨拶がないのはやはり淋しいので(^^;
>みあおさん
いつも可愛らしいプレイングをありがとうございます。
今回も楽しませていただきました♪
>撫子さん
妖斬鋼糸、使わせていただきました。
術とか好きなので、プレイングに妖斬鋼糸が出てくると結構嬉しかったりしますv
>茉莉奈さん
猫・・らぶですv
本当はもっとマールと会話してもらいたかったのですが・・・実力不足でした(涙)
今回のお話はどうだったでしょうか? 少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
それでは・・・ご縁がありましたらまたどこかでお会いしましょう。
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