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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


季節はずれのHalloween

●オープニング

 その騒ぎは、ある日突然始まった。
 どこからともなく石が降って来たり、朝起きたらある家の前にうずたかくゴミが積み上がっていたり、近所の別の家の中に大量の虫が放り込まれたり。
 かなり悪質ではあるが、これらはまだ、ただの悪戯の範囲内と言えよう。
 もちろん被害を受けた人たちは悪戯の犯人を探そうと警察にも届けた。
 だが犯人の手掛かりひとつ見つからず。悪戯は絶える気配もなく、ますますエスカレートしていくばかり。
 そして・・・・・・今度は、不可解な悪戯が起こり始めた。
 しっかり戸締りをした家の中で、ほんの数分目を離した隙に畳から雑草が生えていたり、ベッドが泥だらけになっていたり。

 その話は、ゴーストネットの掲示板でも噂されていた。

 ――私もやられたよー。部屋で勉強してたらね、イキナリ上からザバって。水が降ってきたの。
 ――僕も僕も。なんか頭がちくちくして目が覚めてさあ、枕の中身が刺々の葉っぱに入れ替えられてんの! 寝る時は普通だったのに、いつの間に入れ替えられたんだろ・・・。

 こんな感じの被害者の書き込みと、それに対するレスが並ぶ掲示板の書き込みを見て、雫は目をきらきらさせた。
 普通、いくら愉快犯でも他人の家に不法侵入し天井裏に潜んでまで水をぶっ掛けるような悪戯はしない。
 その他もろもろの悪戯にしたって、あまりにも見つかるリスクが大きすぎる悪戯ばかりだ。
 それなのにこうまで犯人の影も見えないということは・・・・・・・。

 早速雫は、調査協力者を探すべくキーボードを打ち始めた。


●妖精の悪戯?

 掲示板の書き込みを見た時、茉莉奈はすぐさまこれは妖精の仕業ではないか? と疑った。
 とはいえ確信があるわけではなかったから、やはり正体を見極める所からはじめなければと、茉莉奈は待ち合わせの時間より早めに家を出て、聞き込みをしつつ雫に教えてもらった集合場所に向かっていた。
「聞けば聞くほど、妖精っぽい感じだよねぇ」
 性質は悪いもののまったく目的の見えない、愉快犯としか考えられない悪戯内容。
 だけど、何故急にそんなことが起こったのかがわからない。最近移り住んできたのか、それとも何かきっかけがあったのか?
 そんな事を考えながらなんとなく呟くと、すぐさま答えが返ってきた。
『うん。まあ、もし現場を見れれば茉莉奈だったらすぐにわかるよ』
 腕の中に抱きかかえていたマール――茉莉奈の友達で、可愛らしい黒猫だ――は、くりんっとした瞳で茉莉奈を見上げていた。
 イロイロと考えながら到着した集合場所には、すでに先客がいた。
 茉莉奈よりも少し下の、小学生くらいの少女。
「あの子も?」
 子供というだけならばともかく、不思議なのは何故か背負っている掃除機。
『話し掛けてみれば?』
「うん、そだね」
 マールの言うことももっともだと、茉莉奈は早速少女に声をかけた。

●被害マップをつくろう!

 今回のメンバーは全部で三人。
 かなり張り切っていたらしく、また今回の悪戯はお化けの仕業だと言って何故か掃除機を準備してきた今回の最年少、海原みあお。
 黒猫を連れてやってきた、この悪戯の犯人は妖精ではないかと疑っている楠木茉莉奈。
 一番最後に合流した、今回の最年長の天薙撫子。
 茉莉奈が用意した地図には、先に調べていた情報がある程度書いてあった。
 そこに、撫子が調べた分の情報を書き加えていく。
 ある程度被害状況の分布図が出来たところで、撫子が一つの法則性に気付いて地図の一箇所を指差した。
「・・・時間と日にちを合わせていくと、いつもここから始まってここで終わっているみたいですね」
 言われて、二人は日にちと時間を順番に追って被害状況を確認してみる。
「あ、ホントだ」
 悪戯が起きる場所はほぼランダム。被害も一度とは限らない。
「みあお、ここ知ってるよ。小さい公園があるの」
 毎日一番最初はその公園の近くのどこかの家。方角にも道筋にも法則性は見つからないが、昼過ぎ辺りまでは被害箇所は公園から離れていって、陽が傾き始めると公園近くに戻ってくるのだ。
「では、ここで張ってみましょうか」
 撫子の案に、二人は元気に頷いた。


●公園に現われる者

 本当に、小さな公園だった。
 遊具といえば滑り台と砂場、それからブランコが二つ。公園を囲むようにたくさんの木が植えられていて、夏はセミの鳴き声がさぞや煩いことだろうと想像できた。
 入り口は二つあるが、悪戯の犯人が人外である可能性が高いことから考えれば、入り口だけを見ているわけにはいかない。
「ねね、どこに隠れよっか?」
 キョロキョロと公園内を見渡して、みあおが楽しそうに聞いてきた。
 茉莉奈もぐるりと公園を見まわして、隠れられそうな場所を探す。
 ・・・・・・隠れられそうな場所は数カ所。
 全員で一箇所に固まるわけにはいかないが、まだ子供であるみあおを一人にしておくのも少し不安があった。
「えーっと・・・マールはあっちお願いね」
『おっけー。まかせて』
 マールにも頼んで、それから、さっきから何かの作業をしていた撫子の方へと振り返った。
「撫子さんはどうしますかー?」
 呼ばれて、撫子は少し考える様子を見せてから答えた。
「そうですね・・・。とりあえず、妖の者が近づけばすぐにわかるようにこの公園の周囲に結界を張りましたから、来たらすぐにわかりますけど」
「んじゃ、どっから来ても良いように、皆ちょこっとずつ離れて見張ろーう♪」
 みあおが元気な笑顔で宣言した。
「うん、私もそれが良いと思う」
 三人は、近すぎず遠すぎずの適当な距離をとって、それぞれ公園の片隅に見を隠した。

 ・・・・・・日暮れまで、あと十数分。
 やってくるのはどんな者だろう?


●陽が沈んだあと

 辺りが薄闇に染まった頃・・・。
「来ました」
 言葉と同時、撫子がその場に立ち上がった。
 茉莉奈とみあおが、撫子に少し遅れて立ちあがる。
 撫子の視線を追った先には茉莉奈の予想通り――透き通る薄い羽根をはばたかせて飛ぶ、二人の小さな妖精の姿があった。
「君たちが悪戯の犯人ね!」
 途端、妖精たちはパッと表情を輝かせた。
「当たり、アタリ。あったりっなの〜!」
「のーーっ♪」
 二人は何故か浮かれた様子で、甲高い声を響かせた。
 同時に、彼女らの存在感が濃くなっていく。
「うわあ。妖精さんだ〜v」
「この方たちが、犯人なのですか・・・?」
 どうやら、二人にも姿が見えるようになったらしい。様子からして、さっきまでは意図的に姿を消していたのだろう。
 みあおがパタパタと楽しげに駆けて来る。妖精たちの目の前でピタリと立ち止まり、にっこりと笑顔を向けた。
「初めまして、妖精さん。ねね、妖精さんたちが、最近の悪戯の犯人なの?」
 妖精たちは小躍りしつつ、ハイテンションに宙を舞う。
「ハーイ♪」
「でもでも、ただの悪戯じゃないの〜♪」
 ピタリと静止し、妖精二人は視線を交わして、
「ねーっv」
 ぴったり同じタイミングで言って可愛らしく小首を傾げた。
「目的があったんですか?」
 少し控えめに――彼女らの勢いに押されてるのかもしれない――撫子が声をかけた。
 途端、妖精たちはさらにテンションを上げてアクロバット飛行で応えた。
「探してたの〜」
「大事なの〜〜」
 要領を得ない返答に三人は疑問の表情を顔に浮かべる。
 それから、一つ一つ地道に質問していくこと数十問。一時間近くもかけて、三人はようやっと今回の事件の全貌を知った。
 彼女らはもともとここに住んでいたのだが、つい先日、彼女らの大事な宝物が風に飛ばされて行方不明になってしまったらしい。
 探しがてら人間にも聞いてまわっていたのだが、たいていの人間は彼女らの姿にビックリして逃げる者が大半で会話にすらならない。
 仕方なく姿を消して探索しつつ、ついでに遊び半分の悪戯を繰り返していたらしい。
「悪戯しないで探そうよ・・・」
 思わず納得してしまったその理由に、茉莉奈はちょっと苦い笑みを浮かべた。
「なんでー?」
「答えてくれたらしないよー」
 ・・・・・どうやら、質問に答えてくれなかった仕返しも兼ねていたようだ。
「でもでもっ。その悪戯で困ってる人もたくさんいるんだよ」
「アタシたちも困ってるもーん」
「でも助けてくれないんだもん〜」
 まったく困っているようには見えない口調で、妖精たちはくすくすと笑った。
「なら、私がお手伝いしますから」
「みあおも手伝う〜」
「うん。皆で探せばきっとすぐに見つかるよ」
 きょとんとした表情で、妖精たちが笑いを止めた。
「わーいっ♪」
「助かるのっ。ありがとうなの〜〜v」
 そして妖精たちは、さっきまでのからかうような態度を消して、無邪気な笑顔で答えた。

 
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号|PC名  |性別|年齢|職業
【1415|海原みあお|女 |13|小学生
【0328|天薙撫子 |女 |18|大学生(巫女)
【1421|楠木茉莉奈|女 |16|高校生(魔女っ子)

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■         ライター通信          ■
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 こんにちわ、日向 葵です。
 
 はじめましての茉莉奈さん、毎度お世話になっておりますのみあおさん、撫子さん。
 この度は依頼に応えていただきありがとうございました。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 相変わらずライター通信が一番苦手です。
 なら書かなきゃいいのにと思いつつ、何も挨拶がないのはやはり淋しいので(^^;

>みあおさん
 いつも可愛らしいプレイングをありがとうございます。
 今回も楽しませていただきました♪

>撫子さん
 妖斬鋼糸、使わせていただきました。
 術とか好きなので、プレイングに妖斬鋼糸が出てくると結構嬉しかったりしますv

>茉莉奈さん
 猫・・らぶですv
 本当はもっとマールと会話してもらいたかったのですが・・・実力不足でした(涙)


 今回のお話はどうだったでしょうか? 少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
 それでは・・・ご縁がありましたらまたどこかでお会いしましょう。