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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


まぁだだよぉ
●序章
 その日、ゴーストネットOFFのHPでチャットを楽しんでいたメンバーの所へ、招かねざる客が入室してきた。

マスター:ユウヤが入室しました。いらっしゃいませ。
 ユウヤ:ねぇ、かくれんぼしよう?
   雫:君は誰?
 ユウヤ:ボクはユウヤ。ねぇ、かくれんぼをしようよ。
   雫:いきなりどうしたの? 誰かの知り合い?
 ユウヤ:ボクが隠れるから、みんな、ボクを見つけてね。場所は……

 勝手に流れていくログ。それを瀬名雫は無言で見つめた。他にも参加者はいたが、固唾をのんで見守っているように会話はない。
『ユウヤ』が指定してきた場所は、ゴミの集積所だった。大型の粗大ゴミが置かれている場所。

 ユウヤ:それじゃボク、待ってるからね。

 入室者のメンバーから『ユウヤ』が消える。ROMの人数も0になっている。
 それを確認した雫は、手早く打ち込む。

   雫:誰か、行く?

●本文
 亜真知:気になりますね♪
   雫:亜真知ちゃん、行ってくる?
 亜真知:そうですね。行ってみようかな。雫様チャットのログを調べさせて     貰ってもいいですか?
   雫:いいよー。カフェ来られる?
 亜真知:行きますぅ〜。

「あれ? 撫子さんも来たんだ」
 雫に言われて天薙撫子は頷いた。横には撫子とはまた違った雰囲気を持つ美少女、榊船亜真知が立っていた。
 そして雫の隣には海原みそのの姿がある。
 雫以外の3人の待とう雰囲気は『和』
 その3人が一同にかいすると圧巻というかゴージャスである。
 みそのはチャットに参加せず、雫がやっているのを見ていた。それで『ユウヤ』の存在に興味をひき、亜真知達がいくなら一緒に行ってみようかな、と思った。
「んでチャットのログの方だけど」
 と亜真知と雫が話始め、亜真知は別のパソコンを借りて調べだした。
「わたくし達もなにかした方がいいですわね」
「そうですね。知り合いで何か知っている方がいらっしゃるかもしれませんから、そちらに伺ってみますわ」
 みそのに答えた撫子は電話を借りる。
「……情報収集で役に立つ事はできませんけど、『ユウヤ』様を捜す時は全力をつくしますわ」
 海の底の色を切り取ったかのような黒い瞳に光をのせ、極度の運動音痴を棚にあげまくり、みそのは緩く拳を握った。

 その本性『超高位次元生命体』である亜真知は、本来の星船の機能を使って強力なネット捜査を始めた。
 最初はチャットのログから『ユウヤ』の進入経路や退路を調べてみる。
「あら……」
 口元を押さえて呟く。
 チャットのログから辿ってみたが、『ユウヤ』の痕跡はいきなり現れいきなり消えている。
 それはまるでここだけに一点に飛び込み、そこから直接出て行ったかのように。
 仕方がないので今度はゴミ集積場周辺の地理を確認し、そこで今まで事件や事故などがなかったか、を各方面のデータベースをコッソリ片っ端からあたりはじめる。
 情報にブロックがかかっていても関係ない。その上アクセスした形跡は一切残らない。
「これかな…」
 ひっかかったのは警察のデータベース。半月程前の事件だった。未解決の場所に書かれたそれは、確かにゴミ集積場の事も載せていた。
 公園で隠れんぼしている最中に行方不明になった男の子。名前を杉沢祐哉(すぎさわ・ゆうや)。その時公園内に置かれていた粗大ゴミがなくなっていた事から、それを集めた業者をあたり、ゴミ集積所を捜索したが見つからず。他の事件に巻き込まれた可能性が高い、という事で捜査本部は縮小しつつ続けられていた。
「名前一致するなぁ」
 呟きながら事件の内容を頭に書き込んだ。

「はい。はい。それで……」
 撫子は知り合いの警察関係者に集積場の担当エリアで何か事件がなかったかどうか尋ねる。
 本来ならば教えてはならない事なのだが、撫子の人柄のせいか、それとも霊的な物が関わっているせいなのか。知人はあっさりと教えてくれた。
 内容は亜真知がデータベースで調べた事と変わらなかった。

 3人は情報を手に入れると集積場へと向かった。
「……みその様、その格好で捜されるのですか?」
「はい」
 にっこり笑ったみそのの格好は、つぎはぎだらけのボロボロの黒い洋服に長手袋。
 しっかり頷かれてしまった為、撫子はそれ以上突っ込みをいれるのはやめ、苦笑だけ浮かべた。
 みそのはその格好のせいなのか、はたまた歩き方が変なのか天然なのか。先ほどから数歩歩くたびに転び、そのうち歩く、というより流れるような、歩く、というより移動、という感じにかわっていた。
「ここね」
 集積場の入り口に立ち、中を見回す。
 入って右手に事務所があるようだった。
「一応話しておいた方がいいかな」
「信じて頂けるでしょうか…」
「…わたくしがお話してきますわ」
 言って撫子は事務所を訪れ誠実に話をすると、一応管理人も首を縦にふってくれた。
「手分けして捜した方がいいかもね。わたくしが中継役になるから、エリア分担しよ」
 亜真知は空間コンソールを開いて地図を確認する。それをおおまかに3つに分け、二人に説明する。
「見つけたら亜真知様にお知らせすればよろしいんですね?」
 従妹に「さま」を付けるのは撫子の性格故だろう。
「わかりましたわ。それでは……」
 みそのは大きく息を吸い込んだ。
「もういいかぁ〜い」
 集積場の端から端まで響き渡る声で、しかし不快に感じない声の大きさでみそのは呼びかけた。
 そしてそれには返答があった。

 ── もういいよぉ〜 ──

 どこから聞こえたのか特定する事は出来ない。直接耳に聞こえたような感じでもあり、ゴミで反響してしまっているかのようでもあった。
「居る事は確かね。捜してあげよう♪」
 亜真知の言葉に二人は担当エリアに向かった。

 撫子は霊的な波動を感じつつ捜していた。時間を気にしつつ大型の冷蔵庫や金庫の様な人などが隠れられる物を重点的に捜す。
 念の為に『妖斬鋼糸』(神鉄製の鋼の糸、妖などの切断・捕縛や霊的結界張る術具も兼ねる)数本と御神刀『神斬』を持ってきていた。
(誰かの悪戯だった場合は……きついお仕置きも必要ですわよね)
 撫子は先ほどの声から感じた霊波を辿り、黙々と捜し続けていた。

 一方みそのも先ほどの声から感じた“流れ”を頼りに捜していた。
(もし奥の方や底の方に居られたらどうしましょう……)
 心配しつつ流れるような動きで移動していく。
(ユウヤ様が楽しみたいのか、捜して欲しいのか、人ではないのかわかりませんが……ともかく捜してみれば判る事ですわよね。理由はご本人にお聞きすれば良い事ですし)

 亜真知は時折空間コンソールを開いて地図を確認し、二人の報告から気配が無かった部分を灰色で消していく。
(ユウヤくんはきっと、自分を見つけて欲しくてチャットの闖入者になったのね。……でもなんで『今』なのかな…)
 眉宇を寄せて考える。
 事件があったのは半月くらい前。
 死んですぐ頃、ならまだわかる。
 でも何で『今頃』なのかがわからない。
(……本人に聞けばいいかな)
 ネットに向けて霊的干渉を行えるのなら、自分とも話が出来るはず。
 亜真知は自分が捜した箇所も灰色に消しつつ捜していた。

「「「あ」」」
 3人は同じ場所で顔を合わせた。
 そこは集積場の奥の方で、スクラップにする工場の近くだった。
 みそのはもう一度叫んだ。
「もういいかぁい?」

 ── もういいよぉ ──

 その波動は確かにこの場所から来ていた。
 しかしそれはかなり奥の方で、ぎっちり積み上げられたゴミの山をどかすのは至難の業だ。
 近くにフォークリフトを見つけるが、動かせるものはいない。
 否、亜真知ならばすぐに動かせるだろう。例え一度も動かした事がなくても。
「わたくしの出番ですわね」
 前に立ったのはみその。
 情報収集で役に立たなかった分、ここで、と。
 みそのはゴミの“流れ”を加速させて燃やしていく。
 ひとつずつ燃やしているので時間がかかるが、手でどかすよりははやい。
「……あの冷蔵庫でしょうか?」
 ゴミの山から顔を出した冷蔵庫を撫子が指さした。
 そこから確かに何かを感じた。
 みそのは冷蔵庫の周りのゴミを焼きつくす。
「ドアが錆ついちゃってるわ」
 開けようとした亜真知が振り返る。
「少し下がって下さいませ」
 すいっと前に出た撫子は、舞うような仕草でくるっと両手を動かした。
 瞬間、すぱっと何かに切断されたかのように冷蔵庫のドアだけが切り離された。本来は妖を切る為に持ってきたものだが、意外なところで役にたった。
 すると中から男の子が照れくさいような顔で出てきた。
「見つかっちゃった」
「みーつけた♪」
 その言葉に亜真知が応え、みな笑みを浮かべる。
「おねえちゃん達ありがとう」
 純粋に笑ったその笑顔。しかし3人ともわかっていた。すでにこの男の子がこの世の物で無い事が。
「行く場所はおわかりになられますか?」
 撫子の問いに男の子は悲しそうに頷いた。
「そうですか…それでは途中までお送り致しますわ」
 そっと撫子は男の子を抱きしめる。撫子と男の子の身体が淡く光る。
 みそのも手伝うように傍らに立つと、みそのの身体も光に包まれた。
「ありがとう」
 笑みを浮かべて細めた瞳から、涙がこぼれた。
 と同時に、男の子の姿は空気にとけるように消えた。
 そして残された冷蔵庫には、腐乱していてもおかしくない時期にもかかわらず、生前の姿をとどめたまま、冷蔵庫の中で丸くなって隠れている男の子の姿があった。

 その後聞いた話によれば、男の子が入った冷蔵庫があったあたりは、来週早々スクラップにされるところだった、という事だった。
 これにより亜真知の謎はとけた。
 ユウヤは自分の身体がスクラップにされる前に見つけて欲しかったのだ。
 3人は警察への連絡を管理人に任せ、集積場を後にした。

●終章
 ゴーストネットに戻ると、3人は雫に話をした。
「そっかぁ…」
 肩を落としてさみしそうに呟いた。
「無事、見つけてあげられる事が出来てよかったです」
「うん。やっぱり悲しそうだったけど、笑顔でいけたしね」
「きっと、またどこかの家に生まれて幸せに暮らせますわ…」
 撫子に続けて亜真知、みそのが言う。
「ここがあったおかげでユウヤ様は思いを果たす事が出来たんですから」
 みそのは付け加えて微笑む。
「生きている時に救えればいいですけど、それが出来ない場合は、せめて魂を救って差し上げたいですね…」
 慈愛を含んだ撫子の言葉に、雫は小さく頷いた。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0328/天薙・撫子/女/18/大学生(巫女)/あまなぎ・なでしこ】
【1388/海原・みその/女/13/深淵の巫女/うなばら・−】
【1593/榊船・亜真知/女/999/超高位次元生命体:アマチ・・・神さま!?/さかきぶね・あまち】

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■         ライター通信          ■
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 初めまして&お久しぶりです。こんにちは、夜来聖です。
 この度は私の依頼を選択して下さりまして、誠にありがとうございます。
 みそのさんと亜真知さんは初めまして。
 撫子さんはお久しぶりです。いつもありがとうございます。
 今回のお話はパラレルで書かせて頂きました。
 イメージ違うぞ、という場合は遠慮無くいってくださいね。
 それではまたの機会にお会い出来る事を楽しみにしています。