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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡線・仮面の都 札幌>


調査コードネーム:激突! 魔スイミング!?
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :界境線『札幌』
募集予定人数  :1人〜3人

------<オープニング>--------------------------------------

 夏がきた。
 宝石の如き季節。
 ごく短期間しかない北の島の短い夏を謳歌するため、多くの行事が催される。
 積丹遠泳大会も、その一つだ。
 美国の海岸を出発し、沖合1キロに浮かぶ宝島まで。
 ご意見無用のサバイバル水泳大会。
 ついたあだ名が、魔遠泳。
「よーし。今年もがんばるぞー」
 砂浜で屈伸運動などをしながら新山綾が言った。
 流れるような茶色い髪と黒いビキニが眩しい。
「気合いが入ってますね」
「こんにちわー☆」
 近寄ってくるふたつの影。
「あら? 奈菜絵ちゃんに絵梨佳ちゃん。あなたたちもでるの?」
 かつてのオリンピック日本代表と、現在の代表と、代表候補が顔を揃えた。
 どういうものか、全員がビキニである。
 まあ、それぞれに身体には自信があるのだろう。
「プールと海は違うわよ〜? 簡単には負けないんだから」
 ガッツポーズを作ってみせる綾。
「判ってますよ」
 奈菜絵が苦笑する。
「そうそう☆ 水着が流されちゃったりねー☆」
 絵梨佳の言い分は、なんだか不穏当だ。
「もしかして絵梨佳ちゃん。それ狙ってる?」
「どうかかなー?」
 絵梨佳が笑う。
 ケケケ☆ と、評したくなるように笑いだった。
 小悪魔めいた少女に、きっと何人かの女性参加者が泣かされるのだろう。
 きっと。
 積丹ブルーの海と熱砂が、スタートの時をいまや遅しと待っていた。








※ひさびさの魔シリーズです。
 もちろん、パラレルです。
 できれば女性キャラはビキニで参加してくださいね☆
 男性キャラの水着は、どうでも良いですけど(爆)
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日にアップされます。
 受付開始は午後8時からです。



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激突! 魔スイミング!?

 燦々と輝く太陽。
 積丹ブルーと呼ばれる真っ青な海。
 絶妙のコントラストを見せる白い砂浜。
「さあ! 今年もやってまいりました積丹遠泳大会。優勝の栄冠は誰の頭上に輝くのでしょうか!?」
 実況艇の上から黒髪蒼眸の女性の声が響く。
 CNNのキャスター。シュライン・エマだ。
 優美な肢体にヒョウ柄のビキニが似合っている。
 べつに彼女が泳ぐわけではないのだが、これほどのプロポージョン隠すのは罪悪以外のなにものでもなかろう。
 号砲が鳴り響き、選手たちが一斉に走り出す。
「トップを行くのは、槙野奈菜絵選手っ! 続いて新山綾選手に芳川絵梨佳選手!! 新旧オリンピックトリオです! まずは予想通りの展開ですね。解説の草間さん」
「そーですねぇ。三人ともなかなかのプロポーションです。エリカ嬢の胸とお尻は物足りないですけど、今後発展の余地が充分にありそうですし」
 解説者席に座った草間武彦氏がのたまった。
 何を解説しているのか、かなり微妙である。
「‥‥‥‥」
「お。あのゼブラのマイクロビキニの娘もいいですねぇ」
 鼻の下が伸びまくっている。
 スケベ親父を絵に描いてコンピューターグラフィックスで動かしたような状態だ。
 ごすっ、と、音がして。
 一瞬、放送席が静かになる。
「えー 大変お聞き苦しい点があったことをお詫び申し上げます」
 まるで何事もなかったかのように実況を続けるシュライン。
 草間氏の声は、なぜか途絶えていた。
「さて、トップ集団を追走するのは、南宮寺天音選手。ゼブラ柄のマイクロビキニが目印です。ちょっとサービスしすぎですね」
 波間に浮かぶ形の良いお尻がセクシーだ。
 きっと視聴率も鰻登りだろう。
 と、画面が切り替わる。
 猛然と上位に迫る男性選手の姿をカメラは捉えていた。
 巫灰慈。
 新宿のトビウオと呼ばれる選手である。
 まあ、新宿に海があるのかどうか微妙なラインだが。
「パワフルな泳ぎですね。解説の嘘八百屋さん」
「男に興味はありませんね。それより女性を重点に撮すことを推奨‥‥」
 水音。
 大きな水柱が実況艇の近くに上がっていた。
 きっとバカが突き落とされたのだろう。
「えー 大変お聞き苦しい点があったことをお詫び申し上げます」
 ふたたび、何事もなかったかのように実況を続けるシュライン。
「巫選手。天音選手。ともに上手く潮流を掴んだようです。みるみる首位との差が縮まっていきます」
 プールとは違い、海には流れがある。
 これに上手く乗ることで、実力以上の加速が得られるのだ。
 このあたりが海でのレースの面白いところだろう。
「綾さぁん。このままじゃ追いつかれますよぉ」
 絵梨佳が情けない声を出す。
 トップ集団である。
 海での泳法は基本的に抜き手、つまり平泳ぎであるため、会話にさほど困難はない。
「潮流に乗られちゃどうにもならないわね。ここから潮流の方に進むとロスになるし‥‥」
 トップ集団の位置から見て、潮流は左三〇メートルあたりである。
 これに乗ろうとするなら、大きく軌道を変更しなくてはならない。
 むろん、進路を変えている間にも潮はどんどん流れている。
 ということは、乗ったときには差が開いてしまっているかもしれないのだ。
 賭博的要素がかなり強い。
「でも、このままでも結果は同じです。どうせ勝負に出なくてはいけないなら、少しでも余力のあるすべきでしょう」
 言った奈菜絵が、ぐっと軌道を変える。
 どよめきが実況艇から起こった。
「おおっと!? 奈菜絵選手と絵梨佳選手が進路を変更しました! これは潮流に乗るつもりのようですね。解説のブラックファラオさん」
「ええ。完璧な計算です。さすがはボクの奈菜絵クンです」
「あの‥‥ここであまり個人的な関係を暴露されては‥‥」
「いいじゃないですか。奈菜絵クンはボクのラマンなんですから」
「‥‥元、ですけどね」
「しくしく」
「勝手に泣いていてください。いっそ帰ってもかまいませんよ?」
 突き放しておいて。
「レースはそろそろ中盤に差し掛かろうとしています。トップでは熾烈な駆け引きが続いておりますが、中断より後でも潰し合いが起きているようですね。現場の零さん」
「はい。こちらピッチサイドレポートの草間零です。いまのところ脱落選手は一二名ほどです。男性水着と女性用ブラが、次々と海岸に打ち上げられています」
 何のレポートをしているのだろう。
 ピッチとはなんだろう。
 ここはサッカースタジアムなのだろうか。
 そもそも、どうして水着が打ち上げられるのだろう。
「‥‥‥‥」
 無数の小さな疑問がシュラインの脳裏を駆けめぐり、沈黙が実況席を支配した。
「えーと‥‥」
 零の間が持たなくなる。
 仕方がないので、ぎこちない笑顔を作り、
「‥‥ポロリもあるよ☆」


  〜〜CM〜〜


「へっ! やるじゃねぇかっ!」
「あんさんこそ、なかなかやりまんなぁ」
 巫と天音が言葉を交わす。
 現在、トップの二人である。
 潮流に乗って、ぐんぐんと突き進む。
 中間地点も過ぎ、絶好調だ。
「それにしても流れを掴めるなんて、ついてるぜ」
「うちは幸運の申し子ですから」
「なかなかいうじゃねぇか」
「ふふ‥‥」
 婉然と笑う黒い髪の少女。
 一六歳という年齢にそぐわぬ色気だった。
 彼女は、巫のようなストリートスイマーではない。
 もちろん、綾や奈菜絵や絵梨佳のように水泳の選手というわけでもない。
 タダの素人である。
 この大会に出場したのだって、ちょっとした手違いがあったからだ。
 でなければ、マイクロビキニなんかで泳ぐはずがなかろう。
 どう考えても泳ぐのに適した構造をしていないのだから。
 ちょっと動いただけでも、かなりきわどい状態になってしまう。
 まあ、海の中にいればそうそうは覗かれないだろうが。
 では、そんな天音がどうして上位どころかトップに立っているか。
 ひとえに運の良さに起因している。
 レース開始直後に掴んだ潮流。
 これによって、一挙に前に躍り出すことができた。
 そうでなければ、後方の潰し合いに巻き込まれて、ポロリの快感とやらを味わう事になっていたのは疑いない。
 だが、
「悪りぃが、俺は先に行かせてもらうぜ」
 巫が加速する。
 中間地点を過ぎ、そろそろスパートをかけても良い頃合いだ。
 ここまで体力を温存できたのだから、充分な速度が得られるだろう。
「そうは問屋が卸しまへん」
 天音も速度をあげる。
 体力を温存しているのはこちらも同じだ。
 たしかに地力では差があるだろうが、上手く追走すれば差は開かない。
 勝ち易きに勝つ。
 それがギャンブルの鉄則である。
「やるな‥‥っ」
 感嘆の声を絞り出す巫。
「勝負は時の運。まだまだどうなるか判りまへんで」
 ぴったりと追走する天音。
 そして。
「掴まえたー☆」
 後方三メートルから、若々しい声が聞こえる。
 絵梨佳だ。
 その横には奈菜絵。
 やや遅れて綾。
 ついにオリンピックトリオが追いすがってきたのだ。
 速めに動いたことで距離的なロスを最小限に抑え、なおかつ潮流が真っ直ぐに流れていないことを利用して。
「さあ。デッドヒートになってきました。どう思われます? 解説の稲積さん」
 放送席でシュラインが白熱した実況を続けている。
「潮流の角度を利用したスウィングバイですね。もっとも理想的な角度で潮流に乗ったため、本来の推進力を殺すことなく加速を得ることができたわけです」
「なるほど。では‥‥」
「はい。現状では、追走する三選手の方が有利でしょう」
「ですが、先頭の二選手は体力を温存しているはずですが」
「ええ。そのあたりが勝負の行方を左右するかと思われます」
「では、レースの方に注目しましょう」
 感涙を浮かべながら、死闘に目を移すシュライン。
 四人目にして、やっとまともな解説者が現れてくれた。
 こうでなくてはいけない。
 たとえ言ってることが意味不明だろうと、ホントにその説明で合ってるのか? と、突っ込みたくなろうと。
 これが正しい姿だ。
 まったく、数珠のように繋がれて実況艇に曳航されているバカ三人など、その辺に捨ててしまいたいくらいだ。
「海洋汚染になるから、捨てないけど」
 けっこう酷いことを考えている蒼眸の美女だった。


「てやー☆ うに爆弾〜」 
 どことなく間抜けな絵梨佳の声。
 ぽこぽこと飛んでくるウニ。
 ここ積丹は、北海道でも有数のウニの産地である。
 とくに宝島周辺は文字通り宝庫といって良い。
 絵梨佳が武器に用いるのも、まあ、納得できる話だろう。
「甘ぇぜっ!!」
 手刀一閃。襲いくる高級食材を叩き切る巫。
「いだだきます」
 きれいに剥かれたウニが、どういうものかすべて天音の口に消えてゆく。
 なかなかに理不尽な光景だった。
 巫にとって。
「俺の分は‥‥?」
「ありまへん」
「しくしくしくしく‥‥」
 怒濤の涙が海に溶けてゆく。
 料理人と試食人は異なる、ということで良いのだろうか。
「はいはい。あんさんがウニと遊んでる間に追い越されましたで」
「なにぃっ!?」
「なにぃじゃおまへんがな」
 やや呆れた顔をする天音。
「というか。なんでおめぇ付き合って残ってるんだ?」
「食べ物を粗末にしたらバチがあたりまんがな」
「そうだよ。俺の分はどうなったんだっ」
「だから、ありまへんがな」
「しくしく‥‥」
 漫才をしている場合でもないように思うが、ボケとツッコミは世界の合い言葉だ。
「遊んでる間にちょっと差が開いちまったな‥‥」
 巫がふと我に返る。
「せや。あんさんのせいや」
「俺だけのせいかよ!?」
 冗談を飛ばしつつ、ぐんぐんと加速してゆく二人。
 とはいえ、なかなか差が縮まらない。
 さすがはオリンピックトリオというところだろう。
「このままじゃ追いつけそうもあらへんなぁ」
 天音が嘆息する。
 潮流に乗っている以上、この五名の地理的条件は互角だ。
 ということは、スイマーとしての実力がそのまま出てしまうということである。
「いや。まだ手はあるぜ」
「拝聴しまひょ」
「つまりな‥‥」
 不敵に笑った新宿のトビウオが説明を始めた。


「おおっと! 巫選手と天音選手の姿が海面から消えましたっ!!」
 実況艇がトップを追尾しいてる。
 ゴールまで二〇〇メートルを切り、いやが上にも放送に熱が入る。
「勝負に出たようですね」
 解説の稲積氏が告げる。
「というと?」
「海流というものは、海面より海中の方が強いんです。ずっと」
「なるほど! それで一気に追い越すつもりなんですね!」
「ええ。ですが」
「ですが?」
「これは賭博です。潜っている間は息ができませんから」
「それはたしかに‥‥」
「潜行が長時間になればなるほど体力を消耗します。永遠に潜っているわけにはいかないのですか」
「分の悪い賭けですね‥‥」
「ここで、前半戦に体力を温存したことが意味を持ってきます。ラストスパートに使う体力だけ残せば良いんですから。あの二人は」


 仕掛けるぞ。
 承知。
 アイキャッチでコンタクトを取り、一気に浮上してゆく巫と天音。
 潜行中にオリンピックトリオを抜き去ることはできなかった。
 敵も然る者、といったところだ。
 このまま浮上しても並ぶだけ。
 それでは圧倒的優位は確立できない。
 であれば‥‥。
「こぼこぼっ!(ゲットだぜ!)」
「がぼがぼっ!(とったりー!)」
 高速で接近した巫と天音が下方からの奇襲に成功し、戦利品を大きく後方に投げ捨てる。
 ブラジャーだ。
 つまり、奈菜絵と絵梨佳だ綾の水着だ。
「きゃー!?」
「いやぁぁん!?」
「うそんっ!?」
 悲鳴を発して脱落してゆく三人。
 勝負の世界は非情なもの。彼女らが自分の水着を回収する頃にはすでに優勝者は決まっているだろう。
 それは、
「俺だぜっ!」
「うちやっ!」
 昨日の友は今日の敵。
 ここからは個人戦だ。
 ゴールまで残り一〇〇メートル。
 意地と意地がぶつかり合うデッドヒート。
 潮流の勢いをも借りて突き進む。
 優勝はこの二人に絞られた。
 果たして、勝利の女神はどちらに微笑むのか。
 大会史上に残るであろう名勝負を繰り広げながらゴールを目指す。
 あと三〇メートル。
 指呼の間だ。
 と、そのとき。
 ふたりの身体が、がくんとぶれる。
「なっ!?」
「これは‥‥?」
 島から遠ざけられるように流れる。
「反射流です」
 冷静に稲積氏が解説していた。
「負けねぇ!」
「負けまへん!!」
 最後の力を振り絞って島へと泳ぐ巫と天音。
 強い流れに逆らいながら。
 やがて、ふたつの影が宝島に上陸する。
 よろよろと砂浜を歩み、ゴールテープを切った。
 ほぼ同時に。
 写真判定になるだろうか。
 だが、もう結果などどうでも良い。死力を尽くして戦ったのだから。
 ごく自然に巫の手が天音の手を掴み、高々と振り上げさせた。
 好敵手を讃えるように。
 フラッシュが一斉に焚かれる。
 まるで、マルス神とヴィーナス神のようであった。
 ‥‥いろいろな意味において。
 反射流にむりやり逆らって泳いだ二人の水着は、とうの昔に流れ去っていたからである。
 まあ、マイクロビキニやビキニブリーフが無事なわけがないのだ。
 フラッシュの雨。
 完走の興奮に酔いしれる二人。
 それは、自分たちがオールヌードであると、巫と天音が気づくまで続いていた。


  エピローグ

「えー ただいまゴールからの映像が乱れており、お茶の間の皆様にはプレイバック映像をお楽しみいただいております」
 ぎこちない笑みのシュラインが放送を続けている。
「稲積さん。今回の大会の総括をお願いします」
「そうですねぇ。天音選手の胸はなかなかのモノで‥‥」
「貴様もかっ!!」
 大きく蹴り上げられる解説者の身体。
 夕暮れの迫る空に。
 キラリと輝く。
 きっと星になったのだろう。
 めでたしめでたしだ。
「放送中、不適切な表現があったことをお詫びします。実況はCNNシュライン・エマでした。それでは、興奮さめやらぬ積丹からお別れします。ごきげんよう。さようなら」












                          終わり


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0143/ 巫・灰慈     /男  / 26 / フリーライター 浄化屋
  (かんなぎ・はいじ)
0086/ シュライン・エマ /女  / 26 / 翻訳家 興信所事務員
  (しゅらいん・えま)
0576/ 南宮寺・天音   /女  / 16 / 高校生ギャンブラー
  (なんぐうじ・あまね)

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■         ライター通信          ■
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お待たせいたしました。
「激突! 魔スイミング!?」お届けいたします。
相変わらず、無茶苦茶な魔シリーズです。
しかも、今回はちょっとえっちですねー
楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、またお会いできることを祈って