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<東京怪談・PCゲームノベル>


夏だ!海だ!草間兄妹の海水浴 2日目

■2日目午前
朝、涼しい風に起こされ、朝食を取って自由行動になった。
海で遊ぶのは時音と零、草間ぐらいらしい。
それぞれ、思っている所を散策するそうだ。
「いってらっしゃいませ」
夏美が笑顔で皆を送り出していった。


●シュラインさんは紅葉さんと座談会
シュラインは皆とちがって、民宿「深淵」を散策することにした。感覚的にあやかし荘を思い起こさせる。
奥深い雑木林も中庭も…。まるで、あやかし荘が豪華になって海に移転した感じだ。
「開かずの間もありそうよね」
と呟いてみる。
「ええ、有りますよ」
後ろに夏美がいることに吃驚した。彼女は全く気配を感じさせなかったので…
(ただ者ではないわ…この人)
と、思うシュライン。
「あ、どうも…とても大きなお屋敷なもので、散策を」
「ありがとうございます。どうぞゆっくりして行ってくださいね」
微笑みながら、夏江はしずしずと立ち去ろうとするところ、シュラインは彼女を止めてこう尋ねた。
「本当にあるのですか?開かずの間…」
「ええ、紅葉さまから堅く開けてはいけないと言われてます」
ニコニコと答える夏美。
「あと〜この地域について色々聞きたいのですけど…」
「あ、それなら紅葉さまと直也さんが詳しいですよ。今は応接間でお茶を楽しんでおいでです」
夏美が笑って答えた。
「ありがとう。またね」
シュラインは会釈してから応接室に向かった。
応接室に、紅葉と眼鏡をかけた少年がお茶を飲みながら和気藹々と話をしている。
「おはようございます」
シュラインが2人に挨拶をした。
「おはようございます、シュライン様」
紅葉が礼儀正しく挨拶した。少年も
「おはようございます。ようこそ民宿「深淵」へ。俺は紅葉の兄の直也といいます」
ならって挨拶。
「あの、お話に入っても宜しいかしら?」
「はい、どうぞ。一緒にお茶を」
と、紅葉は笑ってシュラインを招き入れた。
最初は世間話、そしてシュラインは
「開かずの間を聞いたのですけど…」
「はい、事実あります。」
と紅葉。
「この屋敷に地下室がありまして…かなり前の主が魔物を封印したと云われています。なので私たちは、其れを監視する役目を継いでおります」
「そして、俺が僅かに感じる「魔物」の臭いを嗅ぎ付けた輩を追い出している…といったところです」
「なるほど…」
暫く、今までどんな輩を追い出したのかこの兄妹と召使い達の話で盛り上がった。陰陽師や妖怪と様々だったらしい。
シュラインはまた質問した
「此処に神様が祀られているそうですけど?」
「鯨さまの事かしら?」
シュラインの質問にいつの間にか参加している夏美が答えた。
「鯨さま?」
鯨の神様?
話によるとその鯨さまというのは…空を飛ぶという。鯨がこの地域の人間や生き物に言葉や文化を与えたと云われているそうだ。大飢饉の時に、鯨は自分の肉を人々に分け与えて死んだ。生き残った人々は感謝の意を込め祀っているという。
「…その影響は、人以外の生き物にも影響が出ていますよ。一部喋る動物がいますから」
紅葉が笑いながら答えてくれた。
(たしか…海の家でかわうそ?が商売をしていたわね…)
シュラインは、茶を啜りながらそう思った。


■肝試し報告と昼間
「肝試ししないか?」
深淵に一度帰って昼食中に草間は皆に言った。
「丁度良い洞窟があってな。奥に祠がある。焔が教えてくれた」
草間の頭に乗っている紅い猫が不安げな声でにゃーと鳴く。
「面白そうですわ」
亜真知はうきうきしているが、焔の様子がおかしいと気づいていた。
「もしかして…」
撫子は今朝のことを思い出す。あの洞窟かしら…と。
「鯨の神様『鯨さま』を祀ってる所かしら…?紅葉さん?」
シュラインは紅葉に訊くと彼女は頷いた。
「夏江達やこの地域の皆さんによって祀られていますから問題はないですよ」
と、紅葉は皆に麦茶を淹れて答えてくれた。
「では問題ないな。ルールは後で話す」
草間は決まりと言わんばかりに食事を再開する。
「わたしは肝試しの準備をするわ」
シュラインは昼の日程を決めた。
みなもや焔寿も七式も昼は何をしようか考えているようだ。


■肝試しスタート
夕食を済ませた後、皆はロビーに集合し、洞窟に向かった。歌姫は赤子の世話で旅館に残る。
草間は焔の足跡をつけた石ころを袋に詰めている。そして近くの売店で買った蝋燭。
「ルールは簡単だ、蝋燭の明かりだけであの洞窟を進む。そして祠にこの石を置いていくというものだ」
「でも、蝋燭だけじゃ消えると大変だから、この懐中電灯を持っていってね」
シュラインが皆に懐中電灯を渡した。
「あと、ずるはしないことな。瞬間移動などは禁止だからな」
草間が付け加える。
七式が手を挙げて言った。
「わたくしは視界が自動的に変わるために参加出来ませんが、皆さんの安全のためにこの場で待機します。洞窟にはいる時はこの発信器をつけてください」
と、ブローチの発信器を見せた。
「はーい」

まずくじ引きでペアを決めた。
1.みなも、零
2.撫子、焔寿
3.時音、亜真知
4.草間、シュライン

1番 みなも、零
「零さん、お願いしますぅ」
みなもは今にも泣きそうな顔で零の腕にしがみついていた。霊感が無くても雰囲気が怖いのだ。零はちょっとだけお姉さん気分に浸っている。
「いってらっしゃ〜い」
2人は洞窟の中を進んだ。
零は一言
「何かでそうな予感ですね」
「い、言わないで〜」
岩が滑りやすい為、慎重に進む。蝋燭の明かりが消えないように。
祠に着いた。蝋燭を近づけると、祠の中に確かに鯨を祀っている証である像が見つかる。
石を置いて、2人は戻っていった。

2番 撫子、焔寿
「いきますか」
「はい」
「にゃ〜」
女の子2人と猫2匹が中に入る。撫子は朝顔が鮮やかに染め抜かれている浴衣姿で焔寿は活動的な七分丈のパンツ姿に、足元は素足に何故か草鞋、猫達に彼らが何処にいるか分かるように淡く発光する布、七つ道具の一つ蛍光布を首輪に括り付けている。
「いたずらしちゃだめだからね」
焔寿はアルシュ達に言った。チャームは怖いためか彼女の肩に乗っている。アルシュは焔と違って気にもせず先に進んでいる。
確かに2人からしても「念」が強いと思う。しかし、悪意はないようだ。
「祠ですね」
撫子は蝋燭の明かりで確認した。そして、石を置く。
「こら!アルシュ!」
紫色の猫は祠の上に登って如何にも
『わたしゃ神様にゃ』
と言わんばかりの態度を取っていた。
「次の人を威かす気満々みたいですね、アルシュちゃん」
撫子はふと口にする。
実は焔寿も次のペア…特に草間ペアを…驚かしたかった。
2人はヒソヒソと話をして笑って頷く。
「ちゃんと戻って来るのよ、アルシュ」
「は〜い」
アルシュは祠の裏に隠れた。
撫子は形代でアルシュに似た式神をつくり、洞窟を後にした。
そして2人は戻ってきた。

3番 時音、亜真知
2人はさくさくと洞窟を進む。
亜真知はこの洞窟に充満する念のことは知っている。それに空鯨との接触は無理だった…。
その謎は未だ解けていない。
「只の伝説なのかしら?」
首を傾げながら時音と進んだ。
時音はというと…未だに加持の気を感じており…別の不安を抱えていた。
「きゃっ」
亜真知が滑りやすい岩に足を取られ転ける所を時音が上手く支えた。
「ありがとうございますぅ」
「危ないから気をつけてね…」
しかし…辺りは真っ暗…支えた拍子に蝋燭を落としたようだ。
「仕方ない…懐中電灯を使うか」
時音は懐中電灯を灯す。目の前…何かが向かって来た!
「うわぁ!」
無意識に亜真知を抱いて時空跳躍で回避。
「何だったのだろう?」
すると…どこからともなく…有名なスパイ映画のオープニングが流れ…
「はっはっは、時音君久し振りだね!」
「加持隊長!」
スパイ映画の主人公のまねをして、歯を輝かせて加持葉霧が立っていた。
「しかし、特殊能力を使うとはルール違反だね、時音君。亜真知嬢は見逃すけど…時音君にはお仕置きだ」
ぱちんと指を鳴らすと。時音は瞬く間に消えた。
「時音さん!」
「はっはっは!大丈夫さ。〈風雲☆時音城・改〉でS級なスリルを味わう為に其処に移送しただけだよ!」
いきなり現れた、変な男は高笑いをしていた。
「助けてくれた時音さまを…酷いですね!」
「え?」
亜真知は怒り…洞窟の「念」をも利用して…加持を持ち上げる。
「時音さまはずるなんかしてませーん!」
「念」も共鳴して…加持を地面に叩き付ける。
(心優しい人をいじめる輩は容赦しない…)
「念」はそう言っていると亜真知は感じた。
(「なるほど…人々の「念」が強すぎて焔ちゃんは怖かったのね…」
加持は彼女の能力により、洞窟の天井に奥深く封印された。
一方…時音はというと…時音城・改の人間ロケットで沖まで飛ばされていたのだった。
亜真知は急いで戻って、撫子に抱きついて怖い人がいたと泣いた(嘘泣きっぽいが)。
一部始終見ていたアルシェが怯えながら出てきたとこを誰も知らない…。

4番 草間、シュライン
「最後は私達ね」
「ああ」
「兄さんいってらっしゃ〜い」
シュラインと草間は洞窟の中に入る。
亜真知が怖がって逃げてきた(?)理由は…地面に加持の名刺が落ちてあった事で…察しが付いたようだ。
「コイツ、鮫のエサになったハズなんだがなぁ…」
「気にしないで行きましょ」
2人は苦笑して先を進む。
シュラインは草間と腕を組み、体を寄せていた。
「ゆっくり行くか」
「ええ」
草間はシュラインが転ばないようにゆっくりと歩いた。勿論自分も。
洞窟の雰囲気はやっぱり不気味だった。其れが又おもむきがあって良い。
無事に祠にたどり着き、石を置く。
「よし、終わりだな」
シュラインは祠に手を合わせ
「お騒がせして済みません」
と、謝罪と感謝の念を込めて祈った。
草間もそれに倣う。
「行きましょう、武彦さ…きゃぁ」
シュラインが、祠を後にしようと歩こうとした時…足を滑らせて草間に抱きつく。
「おっと‥うわっ」
何とか彼女を受け止めた草間もそのまま転んでしまった。
お互いの唇に暖かい感触。
蝋燭の明かりは消えたまま。
2人はしばらく動けなかった。
我に返った2人は、ゆっくりと起きあがりしばらくは顔を合わせられなかった。
多分…お互い凄く赤面しているだろうと。
「行くか」
「う、うん」
草間がシュラインの手を取って、懐中電灯でゆっくり彼女を連れて歩いて行った。

鯨神様の「悪戯」か、それとも「お礼」なのかは分からない…。
が、一寸恥ずかしいくも楽しい思い出となったことだろう。


■空鯨
皆が深淵に戻って来ると、加持の所為で沖まで飛ばされてリタイアしていた時音が出迎えてくれた。危うく鮫のエサになりかけたという。
暫く、皆で雑談を楽しみ、そろそろ就寝時間の頃だった。
紅葉が皆を呼んだ。
「なんだ?なんだ?」
紅葉は微笑みながら空を指さす。
白い大きな…鯨が楽しげに空を泳いでいる。
焔はそれをみて逃げ出す。
「鯨さまは喜んでいるようです」
と、紅葉が言った
「そうか…其れは良かった」
草間は煙草をくわえ空を眺める。

空鯨は一声鳴くと…夜空から消えた。


3日目に続く



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0328 / 天薙・撫子  / 女 / 19 / 大学生】
【1219 / 風野・時音 / 男 / 17 / 時空跳躍者】
【1252 / 海原・みなも/ 女 / 13 / 中学生】
【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 /天翼の神女】
【1376 / 加持・葉霧 / 男 / 36 /謎の指揮官A氏(自称)】
【1510 / 自動人形・七式 /女 /35 /草間興信所在中自動人形】
【1593 / 榊船・亜真知 / 女 / 999 / 超高位次元生命体:アマチ…神さま!?】


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■         ライター通信          ■
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こんばんは
滝照直樹です。
『海水浴2日目』に参加してくださりありがとうございます。
色々サービスある方や、とんでもない目に遭ってる方がおられますが、楽しく書かせて頂きました。
あと1日お付き合い下されば幸いと存じます。

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝