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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


殺人予告は夢で見る


■件名:夢の話 投稿者:ディープ■
 今朝凄い怖い夢を見て、気晴らしにと思ってこちらに来てみて驚きました。
 皆さん同じ夢を見てるんですね。
 同じような書き込みがたくさんあってホッとしました。
 それでまとめてみたら以下の共通点が………。
 ・誰かに殺される夢。
 ・逃げ切れずに殺さた所で目が覚める。
 ・凶器はナイフで、犯人の男は深緑のトレーナーに黒いジーンズ着用。
 ・場所は木の沢山生えている、山か公園。
 これだけ解ってれば捕まえられそうですよね、犯人。まあまだ実際に事件が起きた訳ではないですが。


■件名:私も見ました 投稿者:シュガー■
 ナイフを何回か刺された瞬間に目が覚めましたが、凄く怖かったです。
 実際に殺された人もいるという話を聞きました。
 警察も動いてるらしいと聞きましたが……これは流石に噂でしょうか?


■件名:予知夢らしいです 投稿者:Lily■
 私もきっと同じ物を見ましたた。
 家族には痛みと被害者の恐怖心も感じたと言って気分が悪くなって寝込んでます。
 話を聞いてみると、精神感応能力や霊力と言った特殊な能力を持っている人によりハッキリ夢を見やすくなっているらしくて。
『予知夢』なのではと言っていました。
 本当だったら、これから起きる殺人事件を防げる事になりますよね。
 誰か一緒に調べてくれる人は居ませんか?
 早ければ早いほうが良いと思うので、連絡待っています。

【海原・みその】

 全ての物に流れがあり、それを”見た”り感じとる事はとても興味深い事であった。
 特に流れが乱れている箇所や、混沌としたわだかまりが出来ているような箇所には面白い話を多く聞く事が出来る。
「こんにちは、雫様」
 穏やかな微笑みに受ける柔らかい印象。
 年は少女の物なのに、見た目から受ける印象は大人の女性のそれであり長い黒髪が更にそれを際だたせていた。
 そこに黒いピエロの衣装とフワフワと漂う風船、メイクまでしっかりと施されていて……普通なら遠巻きにしてしまいかねないのだが、彼女の場合は幻想的なイメージでまとめられている。
「あっ、みそのちゃんこんにちは、ちょうど面白い書き込みがあってね」
 楽しげに話す雫に誘われるままに画面の前につれてこられたが、触った事がないためによく解らない。
「雫様。わたしくはその『ぱそこん』がよく解りませんので、お手伝いしていただいてもよろしいでしょうか」
「うん、ちょっとまっててね」
 カタカタと響く音。
 この目がはっきりと物を写す事はないのだが、音や流れで周囲を認知できると言ったように別のなにかで補う事はいくらでも出来る。
「えっとね、殺された夢を見たって人が沢山居るの。しかも同じ夢みたい……一緒に捕まえませんかって募集してる人もいるよ」
「興味深いですね」
「あっ」
 驚いた声がして、手が動いていた音が止まった。
「Liryの最新の書き込み時間5分前になってる、彼女ここでよくネットしてるからまだいるかも、そしたらもっと詳しく聞けると思うから探してみるね」
 雫は立ち上がるなりゴーストネットの中を見て回る。
 そうして探して回る事少々。
「リリィちゃん」
「え? どうしたの雫ちゃん?」
「夢の事を聞きたいって」
 近づいてくる少女にニコリと微笑み綺麗な仕草で頭を下げる。
「こんにちは海原みそのです」
「こんにちは三日月リリィです」
 リリィもそれにならい頭を下げてから、ポンと手を打つ。
「ええと、聞きたい事だったのよね」
 多少なりとも緊張しているのか、動揺しているのが解ったがすぐに落ち着くにいたった。
「はい、ゆっくりでどうぞ」
 そこからはしっかりとした口調で、自分が見た夢の内容と家族が見たという夢の話を合わせて聞かせてくれた。
 リリィの場合はすぐに夢だと言う事が解ったそうだが、そうでない場合もあるらしい。
 予知無という話で、その殺されるという女性の感じた五感や痛み、そして感情や恐怖までシンクロしていたという。
「だから私はまだいい方よね、シンクロが強いと本当に気分悪そうだったし」
「……不思議な物ですね、人は何故夢を見るのでしょう」
「確かに、科学的な証明は出来るけど……」
 考え込むリリィに、みそのはやはり変わらぬ穏やかな微笑みでゆっくりと続ける。
「それに予知夢だとしても、誰もが見れるはずではないでしょう……だとしたら、誰かが流していると言う事にはなりませんでしょうか?」
「あっ……」
 それは、確かに考えられる事だ。
「リリィちゃん、書き込みの返信来てるよ。これからこれる人がいるみたい」
「そう、じゃあとりあえずこっちに呼ぶから待っててね」
 そうしてリリィが店の外に出て、みそのはしばらくその場でのんびりと待つ事になったわけである。
 そこに来たのは光月羽澄(こうづき・はずみ)だ、彼女は回りを見渡してからみそのの姿を確認すると真っ直ぐにこっちへと歩いてきた。
「こんにちは、ええと夢の書き込みの集まりで間違いない?」
「はい、間違いありません。いまは他のかたを向かえに行ったそうで、しばらくしたら戻ってくるそうです」
 おっとりした口調に、こんな殺伐とした事件をほおって居るというのにどこかなごやかな空気が流れるが、みそのはそのままの口調で問いかけてくる。
「羽澄様は、どうして夢を見ると思います?」
「夢? そうね、科学的には寝ている間の脳の整理のためだって話は聞いた事があるけど……今回は予知夢って話だからちがうわね」
「そのようですね」
「予知夢ってどうしたら見れるのかしら、私は見た事がないから解らないのよ」
「予知無を見る事に普通という言葉はおかしいかも知れませんが、今回は少し違う気が致します。こんなにも沢山の方が予知夢を見るという事は、自然現象ではおこりえないことでしょう?」
 そう、滅多にいないからこその特殊能力であり……予知夢を見ると言う事は特殊な事だ。
 それが更に数多く存在するとなれば、それは誰かが介入していると言う事になる。
「つまり誰かが夢を流してるって事?」
「そうなりますね」
 誰かまでは解らないが、関係者であると考えてもいいだろう。
 そうでなければ誰かが殺される夢を見せる意味がない、まあ只の愉快犯だというなら話は別だが。
「やっぱり犯人がどうのより、事件が起こる場所を特定しないと駄目ね」
「戻ってらした様ですね」
 みそのの言葉に振り返ると入り口当たりからこっちへと向かってくる三人組が見えた。
「あっ、羽澄ちゃん入れ違いだったんだね」
「これで来るっていった人は集まったみたいね」
 手を振るリリィに九尾桐伯(きゅうび・とうはく)と大曽根・つばさ(おおそね・つばさ、これで待ち合わせの全員が揃った訳である。
 まずは簡単にお互いの持っていた情報を交換してから、本格的な話し合いに移ったのだか、その間にみそのは流れを見てみる事にした。
 意識を集中し、無意識という思念を意図的にゆがめている箇所を探す。
「そうですね、さてどうしましょうか皆さん?」
「決まってるやろ、犯人を見つけてとっちめるんや!」
「やっぱり犯行現場に先回りするのが一番手っ取り早いのよね」
 それが問題なのだ、やっぱり特定できそうな鍵を握っているのは夢を見ている桐伯につばさにリリィの三人だけなのだ。
「時刻は……日暮れ後でしょうかね」
「で、場所が……回りは木ばっかでようわからんかったんやけど、自然公園かなんかやと思うねん」
「自然公園?」
「ほら、書き込みにあったやろ。うちはそこまで見てへんけど『山か公園』って、だからそお思ったんや」
 思い出すというのは、実際にこうして似たような経験で話した方が簡単に出来る事らしい。
 場所に関しての情報を羽澄がまとめて、現場を絞り込んでいく。
「犯人は見れば解ると思うのよね、変な時計してたし」
「うちも見た!!! すっごい趣味悪いと思った!!」
「ああ、確かに……所で場所ですが、範囲はどの当たりだと思います? 日本全国なんて事になったら流石に問題がありますよ」
 桐伯の言葉にギョッとする。
 考えなかった訳ではないだろうが、それは勘弁して欲しい事だ。
 そうだった場合、特定なんてできない。
「あっ、それは平気みたい。夢を見た人は東京限定みたいだから」
 それならとホッと肩の力を抜くが、場所が解ってないのは同じ事なのである。
「うーー、早よせな次が起こってまう」
 クシャリと髪を掻き回すつばさに、それまで黙っていたみそのがようやく口を開いた。
「よろしいですか?」
「なに、みそのちゃん」
「思念や集団無意識下の“流れ”を探ってみたのですが、大まかな場所は特定できたのでお伝えしようと思いまして」
 そう言って微笑むみそのに、全員は一気に事件が進展した事を悟り顔を見合わせる。
「ええと、どの方向か解る?」
「南西の方角、近くに水が多く流れているようですね」
「世田谷当たりですかね」
「そこで川っちゅう事は……」
 カタリと、羽澄がキーボードを叩く手を止めた。
「等々力渓谷で間違いないわね」
「急がな!」
 ガタリと椅子から立ち上がるつばさ。
「そうね、間に合わなくなる」
 みそのは言ったのだ、流れが特定できたのだと。
 つまり……夢を流した人物はもうそこにいると言う事だ。
「今は4時半だから……」
「時間無い〜!!!」
「私の車で向かいましょう」
 まさに鶴の一声。
 桐伯のひと言で五人は等々力渓谷へと向かう事になったわけである。



 車から降り、渓谷にはいると熱帯林のような蒸し暑さが全身にまとわりつく。
「暗いから視界が悪いわね」
「うーん、見て回ってみた方がええんと違う?」
 確かにここでこうしてても何も進展しないだろう。
「とりあえず二手に分かれますか」
「そうだね、じゃあ……」
 出来る事なら戦力に偏りはなくしたい。
「桐伯さんとみそのちゃが一緒で私とつばさちゃんとリリィちゃんが一緒でいい?」
 機敏に動くなんて事は苦手だから、そこは桐伯が手助けをしてくれるだろう。
 あちらは女性ばかりだが、主戦力が二人もいるのだから心配はいらない。
「解りました、では行きましょうか?」
「わたくしも何か解ったら連絡致します」
「ほなうちらも行こか?」
 歩いていく背中を見送ってから、少しばかり。
 この時動くかどうかの考えは合ったのだが、こちら側から犯人が来れば確実に会う事が出来るだろうし、あちら側なら追い詰めるのを迎え撃つ事も可能だろう。
 そしてその読みは正しかったらしい。
 ちかくに、ここの場所を特定する時に感じた気配が近づいてくるのがハッキリと解った。
「桐伯様、近いようです」
「誰かっ!」
 女性の悲鳴。
 ふらつく足は僅かに男の目から逃れるように森の奥に入りそうだったが、桐伯とみそのの姿を見つけると方向を変え真っ直ぐに駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?」
 桐伯が女性の体を受け止めた後は、自然と視線は後を追ってきた男の方へと移る。
 ハッキリと確信し、二人は場違いなほどに艶やかな笑みを送った。
 方やおみやげ話を見つけたみその。
 方や獲物を見つけた桐伯。
「ーーーーーっ!!!」
 男は人並みには勘がよかったらしい、声にならない悲鳴を上げ逃げ出した。
「逃がしませんよ」
 携帯を取りだし、犯人が向こうに行ったと連絡を入れておく。
「さあ、追跡がてら話をお伺いしましょうか」
「私も夢のお話がお話が伺いたいです」
「……はい」
 女性は、うなずくしかなかった。
 向こうに彼女たちが居るからには逃げられる心配はない。
 歩きがてら彼女、夢宮の事情を聞く事になった。
「夢を流したのは夢宮様ですね」
「助けを求めたんですか?」
「はい、そうです。ご迷惑をおかけしてしまってごめんなさい」
 申し訳なさそうに謝る物の納得できない事はある。
「もし間に合わなかったら、ましてや私たちが来なかった場合あなたは殺されていたんですよ」
「何故、殺される夢なのでしょう?」
 助けを呼ぶのならば、そう言えばよかったのだ。
 不気味がって何もしなかったと想定した場合、どうにも彼女の行動が納得できない。
「私は、視たんですよ。こうすれば一番上手く行くって」
 なるほどと思う。
 起こってない事件は警察には相手にしてくれない、だったら必然的に護衛を必要とするところを、彼女は自分の力を信じ……人の善意、つまり無償でそれを手に入れたのだ。
「やりますね」
「ごめんなさい、今月苦しかったんで」
 困ったように笑う女性にみそのが尋ねる。
「夢を見た人に違いがあったようなのですが、それはどうしてなのでしょう」
「あっ、そうみたいですね。出来るだけ痛みや感情は感じないようにしたんですが……可能性としては『視る』能力が不安定だったり、無防備だとそうなるんだと思います」
 サラリと言ってしまう当たり、流石と言うべきだろう。
 にわかに騒がしくなった事に気付く、どうやら追いついたようだ。
 軽く腕を上げ、鋼糸を繰り男を絡め取り引きずり倒す。
「後悔、していただきましょうか?」
 声も上げられないまま引きずられ、続けざまに僅かに腕を上げると高くつり上げられた。
「高く上がりましたのですね?」
 何処までもほがらかな声。
「桐伯さん……」
 誰かが呟く。
「すいません、警察ですか?」
 そんな冷静すぎる羽澄の声を聞きながら、この事件は終わりを告げたのだった。。



    【終わり】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0328 / 天薙・撫子 / 女性 / 18 / 大学生(巫女)】
【0332 / 九尾・桐伯 / 男性 / 27 / バーテンダー 】
【1282 / 光月・羽澄 / 女性 / 18 / 高校生・歌手・調達屋胡弓堂バイト店員 】
【1388 / 海原・みその / 女性 /13 / 深淵の巫女 】
【1466 / 大曽根・つばさ / 女性 / 13 / 中学生・退魔師 】

NPC
【三日月・リリィ / ハンドルネーム『Lily』ネットで呼びかけをしたのが彼女】

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■         ライター通信          ■
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殺人予告は夢で見るに参加していただきありがとうございました。
今回も例によって個別に別れている箇所がありますので、そちらも会わせて読んでいただければ幸いです。

そして内容はと言いますと……。
夢を見た原因を見事に言い当てられた方がいらしたのがうれしかったです。
犯人が只の素人と当てられた方もいました。
ありがとうございます。

それでは、楽しんでいただけたら幸いです。