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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


心から・・・

0.オープニング

「お願いがあるんですが……」
 男は開口一番そう言うが、そんな物はお見通しである。初対面のましてや興信所に来て、世間話をする奴など居はしない。それでも
草間は、冷静に席を勧める。
「それで?どうしました?」
 キャーキャーとやたら表が五月蝿いのは仕方が無い。何せ草間の目の前に居るのは、超有名バンドのヴォーカリストである。ある意味、そんな人物が来る事が信じられない草間であるがそんな素振りはまるで見せない。
「実は、デートコースの見立てをお願いしたいんです……」
「………………は?」
 やおら赤面しているヴォーカリストとは対照的に草間はあっけに取られている。
「実は、デートに誘いたい子が居るんですけど、俺そう言うのやった事無くて……」
 気恥ずかしそうに頭を掻く男に対して草間は沈黙……いや、固まっている。興信所にて、デートコースの相談など受けた探偵がこれ
まで居るかと言えば、恐らく皆無。草間の対応は頷ける。
 流石に固まってばかりも居られない草間は口を開くと一言告げる。
「友達に聞いて下さい。きっと無償で良いコースを見つけてくれますよ。」
 笑顔がわざとらしいのが自分でも分るが、人間出来ない事は出来ないのだ、草間の笑顔は今は精一杯の誠意だろう。
「駄目なんです!在り来たりなのじゃ!そんな物じゃ……」
 懇願するような瞳に、草間は真摯な顔になると問い掛ける。
「何故でしょう?」

 昼の喧騒が嘘の様に静まり返った夜更け、青白い光を放ちながら少女は現れた。
「君だね?彼の言う子は?」
 暗がりから、煙草を口に咥えて現れる草間の問い掛けに、少女は微かに頷いた。
 スラリと長いロングの髪は腰まで伸びており、楚々とした印象を現し、儚げな雰囲気をかもし出す。何処と無く憂いを帯びた表情が、神秘的とさえ思える。
「話しは聞いたよ?それで良いのかい?」
「ええ、あの人の本当の歌を聞きたいの。それが聞けるなら……」
 儚げで弱々しい笑み……本当は違う想いを抱いているのだろうがその心は既に決まっている様である。
 彼からの依頼は、『彼女の最後に、彼女の為だけの最高の演出の中で、自分が歌い始めたばかりの頃の歌を歌ってあげたい。』と言
う物であった。それが望みか知る術の無い草間は、こうして少女に会う事で引き受けるかどうかを保留にしていたのだ。
「分った……彼には俺から連絡しよう。最高のデートを演出してあげるさ。」
 微笑みかける草間に、少女は少しはにかみながら、深々とお辞儀をした……


1.アイデア

 机に肘を突き、顔の前で手を組んだ草間の目の前に、三人の男女が居る。今回のデートコースを相談するのに集まって貰った面々だ。まあ、草間が洒落たデートコースなんて作れる訳が無いのは、草間自信良く分っている。だからこその、面々だ。
「お任せ下さい。わたくしがこの運命のタロットカードで、最高の演出をして差し上げますわ。」
 優しい微笑みを浮かべて、カードを引くその姿は妖艶にして神秘的……垂れた前髪を掻き揚げながら、エスメラルダ 時乃は草間を見詰める。その仕草にメロメロに成っているのは、目の前の草間ではなく隣りに座った時司 椿その人である。
「あ〜姐さん、素敵っす☆」
 眼に星を輝かせて見詰める椿を、時乃は横目で見ながら見てない振りをする。そんな二人を横目で見るのは、応仁守 瑠璃子。こちらは、二人を見やってどうしたら良いのかと言う感じだ。
「と、取り敢えず、どう言うのをすれば良いのか考えよう。私は、彼が誰の目も気にする事無いような時間を上げて、それをデートとすればいいと思うんだけど?」
 瑠璃子の考えは、財閥の系列会社の内が一つ、応仁電機のイメージCMをデートに置き換えてしまおうと言う物であった。
「へ〜それ面白そうじゃん。」
 椿は感嘆の声を漏らす。様々なデートスポットを知っている椿も、こればかりは思いつかなかった様だ。椿は、知っているデートスポットを時乃に教えてその場所の良し悪しを占って貰っている。
「ちょっと、椿くん。なんで貴方そんなに詳しい訳?」
 椿がリークしたデートスポットの情報は、情報誌よりも正確で緻密だった。時乃でなくとも、疑問に思うのが普通だろう。
「えっ?ああ〜ちょっと色々有ったんですよ。」
 誤魔化し笑いが情けない感じではあったが、何とか場を取り繕う。訝しげな視線を投げ掛けながらも、時乃はそれ以上追求する事はせず占いに集中した。
「じゃあ、私は掛け合ってきますね?」
 席から立ち上がり、草間に問い掛ける。だが、草間の反応は無い。
「草間さん?」
「す〜……す〜……」
 規則正しい息遣いと、閉じられた眼。
「「「寝るなよ!!」」」
 草間が飛び起きたのは、言うまでもない……


2.成せば成る

「ほぅ……それは面白いかも知れんの?」
「でしょ?やってみる価値はあると思うの?どうかな?」
 瑠璃子は、祖父と父と母を前に、自分のアイデアを説明していた。家族が応仁守財閥の役員と言う事もあり直接的な手が打てるのは、瑠璃子にとって見れば生かすべき特権である。個人の力で出来る事では無い提案であるが故に、この話が纏まらなければ瑠璃子の提案は水泡に帰す、失敗は許されない交渉であった。
「だけど、準備期間は?」
 専務である母からの言葉、予想の内である。
「準備期間は、後二日。場所はこっちで探してるから。」
「じゃあ、場所なんかは考えなくて良いのね?」
「ええ、それは手伝ってくれる占い師さんが選んでくれてる筈だから。」
 瑠璃子の言葉に、皆が一様に押し黙る。目配せした祖父に、頷く父と母。瑠璃子は、畳み掛けるように口を開く。
「最高のシチュエーションで、最高の思い出を作って上げたいの。話題性も申し分ないし、絶対良いから。」
 その言葉が終わると同時に、瑠璃子の祖父は微笑んだ。


 ぺラリ。
 時乃の手により捲られるカードを、椿は固唾を飲んで見守る。現在決まっている場所は二つ、二十個案を出してたったの二つである。
「どっどうですか?姐さん。」
 捲られたカードを見詰めて、時乃は溜息を吐いた。
「椿くん……」
「はっはい!」
 緊張する椿にカードを見せながら、時乃は微笑んだ。
「此処は大丈夫よ。入れておきましょう。」
 その瞬間、椿はガッツポーズを作ると飛び跳ねた。時乃は微笑みそれを見詰める。
「良かったー!結構出したのに、全然だったから心配しちゃいましたよ姐さん〜。」
「それなりに良い場所なんでしょうけどね。最高のシチュエーションと言うには至らなかったのよ。でも、この三つなら間違い無く最高のシチュエーションになるわ。」
 その時、時乃の携帯が鳴る。相手は草間だ。
「もしもし?」
『時乃か?応仁守の方は話が付いた様だ。やれるそうだ。』
「そう、出来るんですね?此方も、大体の場所は決まりましたわ。」
 隣で、仕切りに頷く椿は得意満面だ。
『それなんだがな、一つ場所を追加して欲しいと応仁守が言っているんだが?占えるか?』
「え?それは構わないですが、場所は?」
 草間から場所を聞く時乃は、素早くメモをし椿に見せる。メモを見た椿は、へ〜と感嘆の声を上げた。
「占って結果が出たら連絡しますわ。」
『頼む。』
 草間との通話を終えた時乃は、早速メモの場所を占う為の準備を始める。
「此処は絶対良い場所ですよ!ちょっと遠かったから入れて無かったですけど、絶対問題ないと思うな〜♪」
 メモの場所を見た椿の感想はそうだった。
「それは、占ってみないと分りませんわ。」
 真剣な表情の時乃は、ゆっくりとカードをシャッフルし始める。緊張が高まる中、椿の喉が鳴るのが聞こえる。そして、時乃はカードを捲った……


3.プランニング
 
 多忙であるにも拘らず、彼はやって来た。自分の事であるのだから、当然来るのが普通ではあるが、ビックイベントが間近に迫っているにも拘らずこうして現れる、それは一重に想いの強さだろうと、一同は思う。
「すいません、お待たせしてしまって。」
 謝りながら席に近付く彼に、一同は立ち上がる。
「こちらこそ、お忙しいのにお呼び出しなどしてしまって申し訳有りません。」
 一同を代表して草間が謝意を述べる。彼は、少しだけ微笑むと腰を下ろす、それと同時に一同も腰を下ろした。
「それで、出来たそうですが?どのような形に?」
 早速本題に入る彼。焦っている様な素振りは無い、恐らく気になっているのだろう。
「応仁守、説明頼めるか?」
「はい。まず第一に、貴方は応仁電機のイメージCMに出演が決まりました。」
「えっ?それはどう言う事です?」
 最初の説明を受けて、訝しげな表情になる。確かに、デートコースとCMはどう考えても結びつかない。
「応仁電機のイメージCMと言う形を取るという事です。本来貴方は注目される立場の人間です。しかし、撮影と言う形を取る事で周囲を作り替えてしまう事は可能な筈ですから。」
 自信満面の瑠璃子の言葉。彼も驚嘆したのか、眼をぱちくりさせている。
「大胆ですね。でも、面白そうかも知れない。」
「明日には、連絡が入ると思います。撮影は彼女の事も考えて夕暮れから夜にかけて、完全望遠にて行います。」
 そこまで話した、瑠璃子は時乃に目配せする。時乃は、頷くと口を開いた。
「それでは、場所の説明ですわ。椿くんの情報を元に私が占ったコースですわ。まず最初は、公園での散歩と成ります。これは心身共にリラックスさせる為でもありますわ。ついで、芸術鑑賞ですわ。かなり人気の高い公演をなさってるそうですの。野外ですから、開放感もあり良いかと思いますわ。終わりましたら、海岸通りをドライブですわ。海風を感じながらのドライブは最高だと思いますわ。最後に……ウォーターフロントの公園で、貴方の歌が最高のシチュエーションを出してくれると思いますわ。」
 紙面上のプランを確認しながら、彼は微笑む時乃に頭を下げた。
「有難う御座います。俺はこういうのが分らないですけど、なんだか不思議と凄いシチュエーションな感じがします。何て言ったら良いのか……」
「当然だよ。俺がピックアップした所は、有名な場所ばかりさ。そして、それを姐さんが絞り込んだ。最後の場所は応仁守さんが提案した場所。俺達が考えた最高のシチュエーションだぜ?」
 椿は笑顔で言った。彼もまた、口元に笑みを浮かべていた。
「そうですね……皆さん有難う……」
 再び頭を下げる。今度は一同に対してだ。それぞれ、笑顔で受け取る時乃・椿・瑠璃子。
「あっ、そう言えば補足があるんだよ。当日は俺が、影武者になってあんたのバンドと一緒に動くからな。」
「えっ!?いや、それは出来ないよ。そこまでは頼めないし……」
「完璧にしたいんだ。それが依頼だしな。それに、姐さんにも頼まれてんだ。」
 ウインクと共に親指を立てる椿に、彼は再び頭を下げた。
「本当に有難う……」
「まだだぜ。これからなんだからな。」
「そうですわ。明日が本番ですわ。」
「その通りです。しっかり場所を覚えてくださいね。」
 微笑む三人の視線を受けながら、彼は頷いた。その瞳に、決意の色を浮かべながら……


4.心から

 夕暮れ、彼は一人待ち合わせの公園で待っている。普段の感じとは違い、何処か解放された様な自然な表情がそこにある。その彼の前に、少女が歩み寄って来た。彼は、ふっと笑みを浮かべ手を差し出す。少女ははにかみながら、その手を握り返した。
「実体化したんだ。でも、あれは凄くきつい筈じゃ……」
「覚悟があっての事なのですわ。」
 望遠で撮られる映像の中に、彼と彼女は映っている。少女は実体の無い幽霊で有った筈なのに、その姿がはっきりとモニターに映し出されているのだ。絵的に、問題が無くなったとは言え、この展開は少々予想外だった。だが、幕はもう開いたのだ、今更戻れはしない。モニターに映る二人を見詰めながら、時乃と瑠璃子は祈るしか出来なかった。
 
 同時刻、イベント会場となったホールは熱気に包まれて居た。そのステージの上では、椿が彼に扮装して一生懸命彼を演じている。黄色い嬌声と歓声に多少酔いしれながらも、必死に口パクする椿。出来るだけ顔を見せない様に激しく頭を振りながら……
 こうなるとは予測していなかった訳では無いが、やはりなってしまうと厳しい物がある。それほど大きく無いイベントではあるが、一般人にとってこれは十分な規模であると言える。椿は一般人であり、こういうイベント自体来る事も余り無い部類だ。その思考は常に当惑しっぱなしだ。だが、彼の為にそして、時乃の為にと必死でやっているのである。
『頼むぜ〜俺の苦労を無駄にしないでくれよ〜』
 カンペ通りに、椿はギターの弦を一気に打ち鳴らした。

 夜の帳が下りて来た公園を抜け、二人は野外公演であるミュージカルを見ている。このミュージカルもまた恋がテーマであるらしく、ライトアップする壇上の役者達は華麗に激しく演技を魅せる。二人は、真剣にその演技を見詰め、時折何やら会話もして居るのかお互いに楽しそうな笑顔を見せている。時間にすれば、2時間程の公演では有るのだが、二人にとって貴重な時間であるには間違いなかった。
「楽しそうですね。良かったです。」
「ええ、それにしても、椿くんが何でこんな洒落た物を知っているのかが不思議ですわ。」
 時乃の感心はそこに在るらしく、首を捻っている。瑠璃子は苦笑いを浮かべて、またモニターへと視線を戻した。楽しそうな二人の時間が、そこには映っていた。

 海岸通りを走る車の撮影と言うのはかなり難しい物がある。音を立てずにとなると更に難度は跳ね上がるのは当然だった。そこで取られたのは、要所要所の場所にカメラを設置すると言う物だった。絵的には良い物が撮れるかは微妙だがこの際それは言いっこ無しである。海岸通りを、走り去るオープンカー。左手には海に映える夜景の煌びやかさがとても眩しく美しい。時折映し出される映像に、時乃と瑠璃子は微笑む。
「彼女、凄く幸せそう。」
「彼もですわ。」
 優しい笑顔が車中の二人からは見て取れる。幸せそうな時に包まれ、車は向かう……最後の場所へと……

 車が最後の場所へと向かう頃、椿もまたイベントを終え、最後の場所へと向かっていた。
「運転手さん飛ばしてくれよ!俺だって聞きたいんだから!」
「分っては居ますけど、こう混んでては仕方ないですよ。少し落ち着いて下さい。」
 運転手は椿を優しく諭す。彼のマネージャーなのだが、気持ちは同じらしかった。彼をこの世界に引き込んだのは、マネージャーだからだ。椿はしょうがないとばかりに、腰を落ち着け背凭れに背を預け眼を閉じる。
『頼む!俺にもその歌を聞かせてくれ!』
 心の中で祈る椿は、眼を開けると窓の外の夜景を見詰めていた。

「すっ凄いですわ!?」
 時乃が声を上げるのも無理は無い。そこには、応仁重工の防音技術の粋を尽くした技術、アクティブ防音装置が備え付けられていた。防音とは言っても、雑多な音を殺すだけで、人の声等は通すと言う優れ物である。
「当然です。応仁重工の技術はトップレベルですから。」
 何気に自慢気に語る瑠璃子に、時乃は素直に頷いていた。それ程の技術の粋が集まった中での撮影ならと想っていた時乃の前にあるモニターから光が消える。
「どうしたんですの?」
「此処から先は、撮れませんよ……それは野暮って物でしょ?」
 時乃の顔を見詰め微笑む瑠璃子に、時乃もまた微笑み「そうですわね。」とだけ呟くと、遠くから二人を見詰める。
『駄目じゃない、私は秘密結社の冷徹な戦闘隊長、の筈なのに……』
 心の中の呟きを悟られぬ様、時乃から顔を背けた瑠璃子であった。
 ポロン……ポロン……
 静かにギターの音が成り始める。バラードだ。夜の静寂の中、優しく淡く広がるその音に、少女は座り眼を閉じていた。彼もまた眼を閉じて、歌い始める。更なる演出を、時乃がカードの魔力を解放し彩る。正に、その場は幻想的な雰囲気に包まれ夜の中に在った。 詩の内容は、出会った恋人達の切なく儚い恋の詩。まるで心の中に染み渡るようなその曲は、何時も彼が歌っている曲とは全く違う物……時乃と瑠璃子も眼を閉じて聞いていた。
 不意に少女の瞳から涙が零れる。静かに一筋だけ零れた涙が、地面に落ちると同時に少女の体は透け始める。
『有難う。最後に聞けて良かった……』
 その言葉は、彼を含め時乃・瑠璃子・椿にも聞こえた。眼を開けた時乃と瑠璃子が見詰めた先には、彼が一人だけ余韻を残し立っている。その瞳には涙が光り、頬を濡らしていた。


5.その心と共に

 一同が会した喫茶店の片隅で、彼はぽつりぽつりと話し始める。
「出会ったのは、俺がまだ一人でやってた頃でした。毎日聞きに来てくれました。名前も知らないんですよ?笑っちゃうでしょ?」
 自嘲的に笑う彼を見ながらも、一同は押し黙ったまま先を待つ。
「分ってたんですよ。最初からこの世の人じゃ無いって。でも、やっぱり聞きに来てくれたら嬉しいじゃないですか……だから、歌ったんですよ。あの頃の俺は、彼女の為に歌っていたと思います。でも、何時しか有名になっちゃって気が付けば周りが好む歌を作って行きました。デビューしてからもそうでした……」
 ふぅ、と溜息を吐く。
「ずっと会えなかったけど、二週間前に来てくれたんです。彼女、本当は生きてたんですよね。ずっと入院していたらしいんです。でも……亡くなってしまって。だから、最後にお願いがあるって……それが今回の依頼でした。まあ、デートコースは俺の本心でしたけどね。」
 苦笑いを浮かべる彼を、一同は優しく見詰めた。
「それで?これからどうするんだ?」
「勿論歌っていきます。彼女の心も一緒にね。」
 微笑みながら椿の問いに答えた彼の顔には、迷いは無かった。
「そう。彼女もそれを望むかもね。でも、貴方らしい事が条件だと思うけどね?」
 瑠璃子はウインクしながら彼に指を突きつける。
「厳しいな、応仁守さん。」
 苦笑いする彼に、時乃が問い掛けた。
「何でしたら占って差し上げますわよ?未来でも何でも。」
「結構です。」
 その瞬間、一同から笑いが漏れる。安堵と達成感が場を満たしていた。
「あっ!そうだ。報酬なんだけどさ、俺とツーショットで写真撮ってくれないかな?」
 不意な椿の言葉に、彼は笑顔で頷いて答える。
「構いませんよ。皆さん一人ずつとツーショットしましょう。そして最後に、皆で撮りませんか?」
 その提案に、一同から歓声が漏れる。
「本当に!?これは凄いかも知れない!」
「うひゃー!やったぜー!」
「まあ、それは素敵ですわ。」
 草間も、襟を直したりとイソイソしているのだが……
「草間さん!カメラマン宜しくな!」
 椿の一言が、草間をどん底に叩き落し、がっくり肩を落とした。そんな草間を見て、一同はまた笑う。この喜びと共に、歩ける事を素直に喜びながら……
 後日、撮られた写真に写った五人の顔は、この上ない笑顔に彩られていた。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0305 / エスメラルダ 時乃 / 女 / 25 / 占星術師

0314 / 時司 椿 / 男 / 21 / 大学生

1472 / 応仁守 瑠璃子 / 女 / 20 / 大学生・鬼神党幹部

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■         ライター通信          ■
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 皆様初めまして、凪蒼真です。

 最近、少しダークな路線ばかりだったので、ちょっと息抜き気分で軽めのお話をと想い、出しました。如何だったでしょうか?
 デートのコースなんかを考えるのは、結構大変だったりしますね。おいらもこの話しを書く時に、デートスポットガイド何て言うページを検索して、何処かモチーフに成る様な物は無いかと探したりしましたが、こうバシッと来る物は無いもんですね。(汗)
 夏はデートスポットが沢山在りますね。機会があるなら、色々回りましょう♪今年のおいらは、夏コミに行く予定です♪(爆)

  それではまたお会い出来る事を願って……この度は、誠に有難う御座いました。(礼)