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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


殺人予告は夢で見る


■件名:夢の話 投稿者:ディープ■
 今朝凄い怖い夢を見て、気晴らしにと思ってこちらに来てみて驚きました。
 皆さん同じ夢を見てるんですね。
 同じような書き込みがたくさんあってホッとしました。
 それでまとめてみたら以下の共通点が………。
 ・誰かに殺される夢。
 ・逃げ切れずに殺さた所で目が覚める。
 ・凶器はナイフで、犯人の男は深緑のトレーナーに黒いジーンズ着用。
 ・場所は木の沢山生えている、山か公園。
 これだけ解ってれば捕まえられそうですよね、犯人。まあまだ実際に事件が起きた訳ではないですが。


■件名:私も見ました 投稿者:シュガー■
 ナイフを何回か刺された瞬間に目が覚めましたが、凄く怖かったです。
 実際に殺された人もいるという話を聞きました。
 警察も動いてるらしいと聞きましたが……これは流石に噂でしょうか?


■件名:予知夢らしいです 投稿者:Lily■
 私もきっと同じ物を見ましたた。
 家族には痛みと被害者の恐怖心も感じたと言って気分が悪くなって寝込んでます。
 話を聞いてみると、精神感応能力や霊力と言った特殊な能力を持っている人によりハッキリ夢を見やすくなっているらしくて。
『予知夢』なのではと言っていました。
 本当だったら、これから起きる殺人事件を防げる事になりますよね。
 誰か一緒に調べてくれる人は居ませんか?
 早ければ早いほうが良いと思うので、連絡待っています。

【大曽根・つばさ】

 追ってくる、逃げなければ。
 強い強迫観念に上手く動かない足を無理矢理動かし、木々の中を走り続ける。
 実際にはそんないいものですらなかった。 ろくに動かない足は、ケガをしているのかも知れない、回りの景色も同じような光景ばかりでさっきからほとんど変わって居なかった。
 もっともそれは、客観的な視線で見るならの話だ。
(これは、夢だ)
 夢だと理解できる夢は珍しいかも知れない、だが夢の中の終われている彼女はそれほど楽観視していられる状況ではないようだった。
「誰かっ!」
 助けを求めるその声が、どうしようもなく恐怖に引き連れ……追跡している男に髪を捕まれ引きづり倒される。
「離し……っ!」
 抵抗したおかげでギリギリ捕まりはしなかった物の、バランスを崩し硬い土の上へと叩き付けられてしまう。
 これではもう、逃げられない。
「………ぁ」
「助けなんかこねぇよ!」
 醜く歪む視界の中、怒鳴り散らす男が鬼々迫った表情で首に手をかける。
「ーーーーーっ!!!」
 足を動かし、手の甲を掻き……言葉通り必死の抵抗に男が一度手を離す。
「げほっ、ごほっ!!」
「くそっ!」
 激しく咳き込む体を蹴り上げ、ジーンズのポケットからナイフを取り出し刃をぎらつかせる。
 何てもどかしい、こんな時に自分だったらこんな暴力に屈したりしないのに。
 動けない、のだ。
 傍観者でしかないのだから、どんな言葉を発しても、逃げようと藻掻いてみても……それらはすべて無意味な行動だった。
 無情にも男は這いずる体にのし掛かり、ナイフを振り下ろす。
 ドッ!
 目の前が真っ黒に染まり………そこで目が覚めた。
 明るい髪に、黒い大きな瞳。
 それらが確かに自分の物であると確認し、多少早まる動悸と呼吸を落ち着け、ひとりごちる。
「夢……」
 結果は同じ、あれは………夢なのだ。

 大きく息を吐き、肩の力を抜く。
「なんやあの夢!」
 この時はそれで終わったのだが、それだけで終わらないと解ったのはその翌朝の事だ。
 どうやらネットで同じ夢をみた人が何人もいるらしい。
 しかもすでに起こっている事件か、これから起こるかも知れない事件だというのである。
 それは紛れもなくつばさには許せない事だった、力のない女性を追い詰めてあの仕打ちなのだから、それは当然の感情である。
 こうして動く事で、あの夢の中の誰かが救えるならそれにこした事はない。
「あんなに逃げとったのに、何て酷い奴やゆるさへんで! うちが絶対に捕まえたる」
 その場でつばさは自分も参加するという書き込みをする。
 すでに他の人が待ち合わせをする予定を立てていたから、つばさはそれに会わせてゴーストネットに行けばいいだけの話だ。
「もう二度と犯罪なんか出来へんようにしたる!!」


 そんな意気込みでゴーストネットにきたが、どうやら少し早かったようである。
「なんやおっそいなぁ、犯人何時動くかわからんのに」
「ずいぶん物騒な話ですね」
 背後からの声に振り返ると、そこに立ってたのは長身の男性。九尾桐伯(きゅうび・とうはく)がたって居た。
「あっ、もしかしてこの事件の!?」
「そうですよ、あなたもですか?」
「せや、よろしくな」
 人のいい笑みで笑うつばさに桐伯も笑い返し、他のメンバーが集まるまでの話題は自然と夢の話に移っていく。
「内容は大体同じようですね」
「まあうちらはましなほうやろうね、酷い人は痛みや感情まで感じたって聞いたし」
「それはそうでしょうね、」
 夢で見たとおりの苦痛や不安を感じたのなら、それはその時点で相当な苦痛に違いない。
「……つばささんはどう考えます?」
「え?」
「どうして同じ夢を見たのかですよ、同時期に、何人もの人間が同じ夢を見るなんて普通はありません」
「確かに……」
 考え込んだつばさに、桐伯が考えていた仮説の一つを口にする。
「囮、かも知れません。例えば『どこか』や『なにか』催眠暗示のような物をかけられていて、夢を見た人間をおびき出しぐさり、とね」
「うわ、えげつない手やなぁ」
 だがこうして集まっている人間が確かにいる以上、その考えもない訳ではないだろう。
「でももしかしたら被害者が見た予知無かも知れへんで、TVみたいに誰かが放送しとる番組を受信してみとるんやないかな?」
「ああ、それも考えられますね。まあ結局は本人に確かめるしかないと言う事ですか」
「ならなおさら事件解決せぇへんとやな」
 グッと握り拳を作って意気込むつばさに、桐伯も同意して頷いた。
「そうですね、犯人にはそれなりの目には遭っていただきましょう」
 ニッコリと微笑む笑顔は、解る人が見れば敵には回したくないと判断させるには十分な物だったのだが……まあ今現在は関係のない話である。
「な、なんか喉渇いたなぁ。うち飲み物こおてくるけど、どないする?」
「いいですね私もお付き合いしますよ」
 そうして一度店を出て再びゴーストネットに戻ってきたのだが……。
「あっ、きたきた!」
 手を振る少女の姿。
「こんにちは、私がLiryこと三日月リリィです」
 ペコリと頭を下げるのに習い、二人も挨拶を返した。
「そろそろ集まる頃だとおもうから、待たせちゃったみたいでごめんなさい」
 手にしていた買い物袋を見てそう判断したのだろう。
「お気になさらず、ちょっとした買い物ですから」
「ええって、それより早よ犯人捕まえへんとな」
「確かに」
 そして集まっていると言うところにきたのだが、そこにはリリィの言ったとおりに海原みその(うなばら・みその)と出かけていた間にきたらしい光月羽澄(こうづき・はずみ)が揃っていた。
「あっ、羽澄ちゃん入れ違いだったんだね」
「これで来るっていった人は集まったみたいね」

 まずは簡単にお互いの持っていた情報を交換してから、本格的な話し合いに移る。
「そうですね、さてどうしましょうか皆さん?」
「決まってるやろ、犯人を見つけてとっちめるんや!」
「やっぱり犯行現場に先回りするのが一番手っ取り早いのよね」
 それが問題なのだ、やっぱり特定できそうな鍵を握っているのは夢を見ている桐伯とつばさ、それからリリィの三人だけなのだ。
「時刻は……日暮れ後でしょうかね」
「で、場所が……回りは木ばっかでようわからんかったんやけど、自然公園かなんかやと思うねん」
「自然公園?」
「ほら、書き込みにあったやろ。うちはそこまで見てへんけど『山か公園』って、だからそお思ったんや」
 思い出すというのは、実際にこうして似たような経験で話した方が簡単に出来る事らしい。
 場所に関しての情報を羽澄がまとめて、現場を絞り込んでいく。
「犯人は見れば解ると思うのよね、変な時計してたし」
「うちも見た!!! すっごい趣味悪いと思った!!」
「ああ、確かに……所で場所ですが、範囲はどの当たりだと思います? 日本全国なんて事になったら流石に問題がありますよ」
 桐伯の言葉にギョッとする。
 考えなかった訳ではないだろうが、それは勘弁して欲しい事だ。
 そうだった場合、特定なんてできない。
「あっ、それは平気みたい。夢を見た人は東京限定みたいだから」
 それならとホッと肩の力を抜くが、場所が解ってないのは同じ事なのである。
「うーー、早よせな次が起こってまう」
 クシャリと髪を掻き回すつばさに、それまで黙っていたみそのがようやく口を開いた。
「よろしいですか?」
「なに、みそのちゃん」
「思念や集団無意識下の“流れ”を探ってみたのですが、大まかな場所は特定できたのでお伝えしようと思いまして」
 そう言って微笑むみそのに、全員は一気に事件が進展した事を悟り顔を見合わせる。
「ええと、どの方向か解る?」
「南西の方角、近くに水が多く流れているようですね」
「世田谷当たりですかね」
「そこで川っちゅう事は……」
 カタリと、羽澄がキーボードを叩く手を止めた。
「等々力渓谷で間違いないわね」
「急がな!」
 ガタリと椅子から立ち上がるつばさ。
「そうね、間に合わなくなる」
 みそのは言ったのだ、流れが特定できたのだと。
 つまり……夢を流した人物はもうそこにいると言う事だ。
「今は4時半だから……」
「時間無い〜!!!」
「私の車で向かいましょう」
 まさに鶴の一声。
 桐伯のひと言で五人は等々力渓谷へと向かう事になったわけである。



 車から降り、渓谷にはいると熱帯林のような蒸し暑さが全身にまとわりつく。
「暗いから視界が悪いわね」
「うーん、見て回ってみた方がええんと違う?」
 確かにここでこうしてても何も進展しないだろう。
「とりあえず二手に分かれますか」
「そうだね、じゃあ……」
 出来る事なら戦力に偏りはなくしたい。
「桐伯さんとみそのちゃが一緒で私とつばさちゃんとリリィちゃんが一緒でいい?」
 みそのは運動音痴だそうだが桐伯が何とかしてくれるだろうし、こちらは女性ばかりだが主戦力が二人もいるのだから心配はいらない。
「解りました、では行きましょうか?」
「わたくしも何か解ったら連絡致します」
「ほなうちらも行こか?」
 歩き始めていくらかもすれば更に日は落ちてきて足下は危うげだったが、羽澄とつばさの二人は平然と歩いていく。
「大丈夫、リリィちゃん?」
「うん、ここは普通の遊歩道だから……所でつばさちゃんは平気なの?」
「……ああっ!!! で、電話しといた方がええやろか!?」
 まだ五時過ぎだが、事によってはもう少しかかるかも知れないのだから連絡はしておいた方がいいだろう。
「ご両親が心配するからその方がいいと思うわ」
「ほなちょっと……」
 携帯電話をとりだし、つばさが自宅に連絡を入れる。
「リリィちゃんは平気?」
「うん、基本的には放任主義だし出かける前に言って来たから」
「ならいいけど」
「もう平気や、あんまり遅なりなって言われたけどな」
 つばさが戻ってきたところに、声をかけられる。
「こんな遅くに、どうしたのですか?」
 唐突に着物を着た女性、天薙撫子(あまなぎ・なでしこ)に声をかけられ驚きはした物の、話を聞いて直ぐにホッとする。
「では皆様も犯人を追っているのですか?」
 話を聞いてみると、彼女も独自に事件を追っていたらしい。
「では皆様も犯人を追っているのですか?」
「いまは手分けしてるんだけど……」
 そこで羽澄は会話を中断させて携帯電話をとりだし話し始める。
「えっ!」
「どないしたん?」
 驚いた声に、つばさの疑問は当然の事だったが……。
「犯人がこっちに逃げたって」
「ええっ!!!」
 ざっと視線を来た方へと注意する。
「女性は向こうで保護したそうだから」
「後は捕まえれば解決やな!」
「一人で行っては危険ですつばさ様」
 ここまでは真っ直ぐにここに来たのだから、森の中に入りさえしなければ挟み撃ちに出来るはずだ。
「どうする、このままじゃ逃げられちゃうかも!」
「しっ!」
 羽澄の静かにと言う合図で黙り込む直ぐ後に騒々しい足跡が響く。
「来よった……」
「なっ!」
 呼吸の荒い男が前を立ちふさがる一同を見てスピードを緩めるが、女性ばかりだと気付くと左手でナイフをちらつかせ陳腐な言葉で脅してくる。
「どけよ……さもない……」
「あのナイフ間違いありません!」
「ほんまや、左利き!!」
 それに極めつけ……。
「ださい時計!!!」
 ピタリと声が重なった。
「本当にセンス無いわね」
「貴様らぁ!!!」
 ナイフを振りかざし向かってくる動きは何処までも素人の物だった。
 その上激高している相手の動き程度は簡単に予測できる。
「わあああああ!!!」
 ナイフを振り回した時点には間合いをとっており、かする事すらなかった。
 それどころか瞬時に展開した鈍く光る壁を利用して高く飛び上がり、さながら映画のワンシーンのような跳び蹴りが炸裂する。
「残念やったなぁ、あんたの犯罪はもう年貢の納め時やで!!!」
 眼前に根を突きつけた途端、男の体が唐突に引きずり倒され何メートルも引き吊られていった。
「!?」
 地面の上に胴が這う後を5メートルほど残した後、木の上へとつり上げられる。
「後悔、していただきましょうか?」
「高く上がりましたのですね?」
 何処までもほがらかな声。
 その二人が、同行者……九尾桐伯と海原みなものだと聞いたのは後になってからだった。
「桐伯さん……」
 誰かが呟く。
 今は只つり上げられたまま、もがき続ける男を見上げる。
「すいません、警察ですか?」
 そんな冷静すぎる羽澄の声を聞きながら、この事件は終わりを告げたのだった。。



    【終わり】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0328 / 天薙・撫子 / 女性 / 18 / 大学生(巫女)】
【0332 / 九尾・桐伯 / 男性 / 27 / バーテンダー 】
【1282 / 光月・羽澄 / 女性 / 18 / 高校生・歌手・調達屋胡弓堂バイト店員 】
【1388 / 海原・みその / 女性 /13 / 深淵の巫女 】
【1466 / 大曽根・つばさ / 女性 / 13 / 中学生・退魔師 】

NPC
【三日月・リリィ / ハンドルネーム『Lily』ネットで呼びかけをしたのが彼女】

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■         ライター通信          ■
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殺人予告は夢で見るに参加していただきありがとうございました。
今回も例によって個別に別れている箇所がありますので、そちらも会わせて読んでいただければ幸いです。

そして内容はと言いますと……。
夢を見た原因を見事に言い当てられた方がいらしたのがうれしかったです。
犯人が只の素人と当てられた方もいました。
ありがとうございます。

それでは、楽しんでいただけたら幸いです。