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殺人予告は夢で見る
■件名:夢の話 投稿者:ディープ■
今朝凄い怖い夢を見て、気晴らしにと思ってこちらに来てみて驚きました。
皆さん同じ夢を見てるんですね。
同じような書き込みがたくさんあってホッとしました。
それでまとめてみたら以下の共通点が………。
・誰かに殺される夢。
・逃げ切れずに殺さた所で目が覚める。
・凶器はナイフで、犯人の男は深緑のトレーナーに黒いジーンズ着用。
・場所は木の沢山生えている、山か公園。
これだけ解ってれば捕まえられそうですよね、犯人。まあまだ実際に事件が起きた訳ではないですが。
■件名:私も見ました 投稿者:シュガー■
ナイフを何回か刺された瞬間に目が覚めましたが、凄く怖かったです。
実際に殺された人もいるという話を聞きました。
警察も動いてるらしいと聞きましたが……これは流石に噂でしょうか?
■件名:予知夢らしいです 投稿者:Lily■
私もきっと同じ物を見ましたた。
家族には痛みと被害者の恐怖心も感じたと言って気分が悪くなって寝込んでます。
話を聞いてみると、精神感応能力や霊力と言った特殊な能力を持っている人によりハッキリ夢を見やすくなっているらしくて。
『予知夢』なのではと言っていました。
本当だったら、これから起きる殺人事件を防げる事になりますよね。
誰か一緒に調べてくれる人は居ませんか?
早ければ早いほうが良いと思うので、連絡待っています。
【天薙・撫子】
神社の境内で掃き掃除をしている時のこと、なにやら必死にお参りをしていた高校生ほどの少女を目にする。
熱心にお参りしていたようだったが、御子服を着た……つまり関係者だと一目でわかる格好をした人物。天薙撫子(あまなぎ・なでしこ)と目が合うなり駆け寄ってくる。
「あのっ! 助けてください!!」
「どうなさったんですか?」
青ざめた様子に落ち着かせる方が先だと考え、ひとまず本堂に招き休ませる事にした。
静かに注がれた緑茶を一口飲んで、少しは落ち着いたようでゆっくりと事の顛末を話し始めた。
なんでも殺された夢を見たという。
それだけならよくある話だと続けてから、彼女はまるで自分が殺されたかのような恐怖と……痛みを感じたというのである。
「痕も残ってるんです」
そういって一つ二つボタンを開いてみせられた肌には、みみず腫れのような線がいくつか残っていた。
「刺し傷、でしょうか」
「はい、夢で刺された位置と同じなんです。それに………私一人が見たんじゃないみたいなんです」
暗い表情。
霊の類は感じられなかったが、このままほおっておいたらあまり良い事にはならないと判断する。
「一人ではない?」
「ゴーストネットでも書き込みがあったばかりだから、怖くって……」
「解りました、調べてみますのでお待ち下さい」
その晩の事だった。
追ってくる、逃げなければ。
強い強迫観念に上手く動かない足を無理矢理動かし、木々の中を走り続ける。
実際にはそんないいものですらなかった。 ろくに動かない足は、ケガをしているのかも知れない、回りの景色も同じような光景ばかりでさっきからほとんど変わって居なかった。
もっともそれは、客観的な視線で見るならの話だ。
(これは、夢だ)
夢だと理解できる夢は珍しいかも知れない、だが夢の中の終われている彼女はそれほど楽観視していられる状況ではないようだった。
「誰かっ!」
助けを求めるその声が、どうしようもなく恐怖に引き連れ……追跡している男に髪を捕まれ引きづり倒される。
「離し……っ!」
抵抗したおかげでギリギリ捕まりはしなかった物の、バランスを崩し硬い土の上へと叩き付けられてしまう。
これではもう、逃げられない。
「………ぁ」
「助けなんかこねぇよ!」
醜く歪む視界の中、怒鳴り散らす男が鬼々迫った表情で首に手をかける。
「ーーーーーっ!!!」
足を動かし、手の甲を掻き……言葉通り必死の抵抗に男が一度手を離す。
「げほっ、ごほっ!!」
「くそっ!」
激しく咳き込む体を蹴り上げ、ジーンズのポケットからナイフを取り出し刃をぎらつかせる。
何てもどかしい、こんな時に自分だったらこんな暴力に屈したりしないのに。
動けない、のだ。
傍観者でしかないのだから、どんな言葉を発しても、逃げようと藻掻いてみても……それらはすべて無意味な行動だった。
無情にも男は這いずる体にのし掛かり、ナイフを振り下ろす。
ドッ!
目の前が真っ黒に染まり………そこで目が覚めた。
「夢……」
多少早まる動悸と呼吸を落ち着け、ひとりごちる。
結果は同じ、あれは………きっとあれこそが相談を受けた夢なのだろう。
彼女のように痛みこそ感じなかったが、あれだけリアルなものなのだから恐怖を感じても当然だ。
「ゴーストネット……」
外を見れば僅かに空が白くなり始める時刻。
あの夢を見た後で寝る気にもなれなくて、撫子はこの件を調べ始める事にした。
ネット上での情報は、更に細分化されていて誰かが流しているに違いないという納得しそうになる物や、見たら死ぬらしいなんて言う物まで飛び交っていて……どれが真実かまでは判断できない事になっていた。
夢を見た人は都内に限定されている事がせめてもの救いだろう。
やはりもう少し確かだと思える情報が欲しい。
髪をまとめ、単衣の薄い青が目に鮮やかな着物を着付け細やかな細工のされた青藍の帯でまとめる。
シャンと背筋を伸ばして歩く姿は着物だというのに、誰が見ても涼しげだった。
「こんにちは」
「撫子さん、どうしました?」
知り合いの刑事がこころよく向かえてくれる。
「姿を見かけたものですから、熱い中ご苦労様です」
「ありがとうございます。いやあ、もう本当に忙しくって困りますね」
手でパタパタと風邪を明くるのを見て、撫子はニコリと微笑む。
「最近は怖い事件が多くて大変でしょうね」
「そうなんですよ、まあ所轄は聞き込みでおっきな事件なんて回ってこないですがね」
「でもわたくしたちの安全を守ってくださるから安心してられるんですよ」
「それほどでも〜」
照れたように笑う彼に、少しだけ声を潜ませ本当に本題に入る。
「そう言えば最近噂になっている、夢で見るという近連続刺殺事件が起こってるそうですけど……怖い話ですね?」
「あれですか、こっちでも噂になってますが……大丈夫ですよ! 心配しないでもすぐに捕まりますから」
ドンと胸を叩いて、自信たっぷりに言う。
まあ事実だと思っていいだろう。
「やっぱり頼りになりますね」
「それほどでも〜」
「それでは頑張ってくださいね」
丁重に頭を下げ、撫子はその場を後にした。
こうなったら実際に起こっている事件だと考えてもいいだろう。
そうなると夢で見たあの場面は、起こってしまった事かこれから起こる物どちらかと考えるべきだ。
もっと情報が欲しい。
昨晩見た夢は大半の人がそうであったように、感情やヒントになるような物は少なかったが……こちらが調整すればもしかしたらもう少し深く見れる筈だ。
想像だけの理論だが、やってみるだけの価値はある。
寝所に結界を張り、護身に妖斬鋼糸を懐に眠りにつく。
ゆら、と景色がかすむ。
流れる景色に、上手く夢が見れたのだと安心する。
走っているのは同じだけれと、二度目となると肌に感じる感覚がやけに蒸し暑い事を知った。
そして、彼女の荒い息づかいの他に近くを流れる水音。
(……暑い?)
その事に気いてしまった時はもう遅かった。
津波のように恐怖感が押し寄せてくる。
怖い、怖い、怖い。
何時捕まるか解らない恐怖感。
ここに至るまで何度か転んでしまったのか、足や掌が痛い。
このままでは危険だ。
しかしまだ決定的な情報は何一つ手に入れていない。
「誰かっ!」
引きつるように叫んだ喉が痛かった。
犯人に追いつかれ、昨晩のように無力な彼女は土の上へと引き吊り倒される。
痛みはあった、恐怖感も……それを必死に意識の外に外し、情報をかき集め続けた。
そして……動かなくなった体を見て動きを止め、男が立ち去る。
遠くで……車の音がした。
男の物ではない。
やたらと大きな音がする、大量に車が通る場所が近くにあるのである。
そこで、完全に意識は途絶えた。
「ーーーーっ!」
目を開き、大きく息を吸う。
まだ喉や胸にヒヤリとした感触が残っているようだっだ。
痛みに気付いてから大半は防ぐようにしたが、僅かでも気分がいいものではない。
寝込んでいるという人も聞いたが、解る気がする。
汗だくになった額を拭い、体を起こす。
苦しい思いはしたが、その甲斐はあったのだ。
場所が解ったのである。
都内であれほどの自然が残っていて、すぐ近くに川があり大量の車が通っているところ。
それだけの情報と思われるかも知れないが、耳を澄ませた時の車の音が普通じゃなかったのだ。
夜更けにあれほど騒げるのは環八通りしかない、何せニュースで取り上げられるぐらいの場所なのである。
その近くで川が通っているところと言ったら、等々力渓谷しかない。
時刻はすでに夕方に差し掛かり始めている。
「急いだ方がいいですね」
素早く身支度をを出かける準備をするが、他にも調べている人が居たようだったから匿名で情報を残して行こうと考えパソコンを起動させた。
「あら?」
どうやら真相にたどり着いたのは自分だけではないらしい。
集まりは今日で、もうネットカフェを後にしたような事柄が書いてあったのである。。
「今から行けば向こうで会えますわね」
今度こそ家を後にして、撫子は等々力渓谷へと急いだ。
今日ではないかも知れない、だがここで犯行を行うなら下見ぐらいはしているかも知れないと考えたのだ。
到着して、暗い道が続く中ゆっくりと先に進む。
こんな時間に来ている人なんて居ないから、確かに犯人にしてみれば都合はいいだろう。
暗い中を足下とや周囲に注意しながら歩いてみる。
遊歩道のように平坦な道ならいざ知らず、一歩木々の中に入ってしまえば普通の女性には辛いだろう。
暗い上に木の根に足を取られて、逃げるに逃げられない。
視線を森の奥から遊歩道に戻すと、反対側から三人の少女達が歩いてくる。
不釣り合いな光景に目を疑うが、直ぐに夢の事を追っている人が他にいた事を思いだした物の念のために声をかけてみる。
「こんな遅くに、どうしたのですか?」
急すぎたのか彼女たちは驚いたように振り返ったが、直ぐに撫子の姿を見つけてホッとしたようだった。
話を聞いてみると、やはり書き込みをしたのは彼女たちだったらしい。
「では皆様も犯人を追っているのですか?」
光月羽澄(こうづき・はずみ)に大曽根つばさ(おおそね・つばさ)、それから呼びかけをしたLiryこと三日月リリィ。
「いまは手分けしてるんだけど……」
そこで羽澄は会話を中断させて携帯電話をとりだし話し始める。
「えっ!」
「どないしたん?」
驚いた声に、つばさの疑問は当然の事だったが……。
「犯人がこっちに逃げたって」
「ええっ!!!」
ざっと視線を来た方へと注意する。
「女性は向こうで保護したそうだから」
「後は捕まえれば解決やな!」
「一人で行っては危険ですつばさ様」
ここまでは真っ直ぐにここに来たのだから、森の中に入りさえしなければ挟み撃ちに出来るはずだ。
「どうする、このままじゃ逃げられちゃうかも!」
「しっ!」
羽澄の静かにと言う合図で黙り込む直ぐ後に騒々しい足跡が響く。
「来よった……」
「なっ!」
呼吸の荒い男が前を立ちふさがる一同を見てスピードを緩めるが、女性ばかりだと気付くと左手でナイフをちらつかせ陳腐な言葉で脅してくる。
「どけよ……さもない……」
「あのナイフ間違いありません!」
「ほんまや、左利き!!」
それに極めつけ……。
「ださい時計!!!」
ピタリと声が重なった。
「本当にセンス無いわね」
「貴様らぁ!!!」
ナイフを振りかざし向かってくる動きは何処までも素人の物だった。
その上激高している相手の動き程度は簡単に予測できる。
「わあああああ!!!」
ナイフを振り回した時点には間合いをとっており、かする事すらなかった。
それどころか瞬時に展開した鈍く光る壁を利用して高く飛び上がり、さながら映画のワンシーンのような跳び蹴りが炸裂する。
「残念やったなぁ、あんたの犯罪はもう年貢の納め時やで!!!」
眼前に根を突きつけた途端、男の体が唐突に引きずり倒され何メートルも引き吊られていった。
「!?」
地面の上に胴が這う後を5メートルほど残した後、木の上へとつり上げられる。
「後悔、していただきましょうか?」
「高く上がりましたのですね?」
何処までもほがらかな声。
その二人が、同行者……九尾桐伯と海原みなものだと聞いたのは後になってからだった。
「桐伯さん……」
誰かが呟く。
今は只つり上げられたまま、もがき続ける男を見上げる。
「すいません、警察ですか?」
そんな冷静すぎる羽澄の声を聞きながら、この事件は終わりを告げたのだった。。
【終わり】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0328 / 天薙・撫子 / 女性 / 18 / 大学生(巫女)】
【0332 / 九尾・桐伯 / 男性 / 27 / バーテンダー 】
【1282 / 光月・羽澄 / 女性 / 18 / 高校生・歌手・調達屋胡弓堂バイト店員 】
【1388 / 海原・みその / 女性 /13 / 深淵の巫女 】
【1466 / 大曽根・つばさ / 女性 / 13 / 中学生・退魔師 】
NPC
【三日月・リリィ / ハンドルネーム『Lily』ネットで呼びかけをしたのが彼女】
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■ ライター通信 ■
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殺人予告は夢で見るに参加していただきありがとうございました。
今回も例によって個別に別れている箇所がありますので、そちらも会わせて読んでいただければ幸いです。
そして内容はと言いますと……。
夢を見た原因を見事に言い当てられた方がいらしたのがうれしかったです。
犯人が只の素人と当てられた方もいました。
ありがとうございます。
それでは、楽しんでいただけたら幸いです。
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