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真夏の海と水着ギャル
ジリジリと暑さを増しつつある、夏のある日のこと。
唐突に、探偵は言った。
「海に行くぞ!」
たまたま遊びに来ていた御崎兄弟・守崎兄弟総勢4名は、ちょうど入れ違いで依頼人が帰っていったことを思い出す。
まだ青年と言っても差し支えない程の若い男だったが、背中に影を背負っていたように思える。
「新しい依頼?」
尋ねると、草間武彦は深々と頷き、一枚の写真を差し出す。
そこには、派手な柄のビキニを身につけたグラマラスな美女が写っていた。
「彼女はな、千葉のとある海水浴場にいる詐欺師なんだそうだ」
話によれば、『写真とって貰えますか?』と近づいてきて、話し込んでいると、そのうちに海の家でいろいろな物を大量に奢らされるのだという。そして最後は素性も明かさずに帰っていく――
それってただ単にカモられてるだけなんじゃ、と思ったが、やたらと気合いの入っている草間にそんなことは言えず、黙って話に耳を傾ける。
「この女を捜して、渡して欲しい物がある――というのが今度の依頼だ」
「それだけ?」
「ああ。簡単だろ?だからついでに海水浴でも楽しんでこようかと思ってな。どうだ、お前も行くか?」
手がかりは一枚の写真と、出没する海水浴場の場所だけ。
さて、どうしたものか――?
4人は肩をすくめ、水着ギャルの豊かなバストに、ぼんやりと目をやった。
「どうするよ?」
北斗が尋ねると、啓斗は渋面を見せる。
「おまえは……あっさり引っかかって奢りそうだからな……」
「俺は本命でもない女にホイホイ奢ったりしないっての!」
「なぁ、おっさん。調査ってことは、もちろんおっさんの奢りなんだろ?」
喜々として質問する月斗に、おっさんよばわりされた草間は片眉を跳ね上げた。
「まぁな。行き帰りの交通費と食い物くらいは、こっちで負担するぞ」
「なら、久しぶりに行くか、海!光夜も行くだろ?」
「もっちろん!夏休みだし、遠出したいじゃん。へへへ、久々の海だな〜♪楽しみだぜっ」
話を振られた光夜も、諸手をあげて賛成する。
そうなると、引率していく者が必要になるだろう。
「なら俺も。一応、最年長だしな……」
「兄貴が行くなら俺も行くぜ?」
こうして、兄弟たちの海行きが決定した。
◇
――8月某日。
今まで出番がなかった分を一気に放出するような熱線に照らされながら、草間興信所の一行を乗せたミニバスは国道を走り、千葉県南部は天津小湊に辿り着いた。
メジャーすぎず、かといってマイナーすぎもしない海水浴場である。
総勢10名の探偵助手たちは、浜辺にだだっぴろいスペースを陣取ると、思い思いに行動を開始した。
◇
さて、守崎兄弟と御崎兄弟の場合はといえば。
ベースからやや離れたところ、岩場に近い砂浜で、啓斗と北斗はごろんと寝そべっていた。
啓斗は唯一持っていた緑色のビキニタイプの水着にパーカーを羽織っているが、北斗は兄と同じ時に購入した紺色のビキニの水着で、上半身は素肌をさらしている。
ふたりとも、華奢なわりに筋肉のついたしまったからだをしており、近くを通る若い女性達は例外なく『あら、アイドルみたいに可愛い男の子達!しかも双子よっ』とひそひそ囁きあっていった。
「あっちー……何が悲しくて、海まで来て仕事しなきゃなんだよ」
手でひさしを作って、北斗は溜め息混じりにひとりごちる。
「おまえの食費をもう少し抑えられれば、仕事を請けなくてもいいんだがな」
「はいはい、すいませんね育ち盛りでッ」
涼しげな様子の啓斗に苦笑いを返し、北斗は寝返りを打った。
と、一緒にやってきた友人――というかくされ縁の御崎兄弟が、こちらに向かってきているのが目に入った。
スイカ割りをするんだと張り切っていた光夜は、右手にスイカの入ったネットをぶらさげ、左手には手頃な棒きれを持っている。
買ったばかりだと自慢していた、ちょっと派手なトランクスタイプの水着は目をひくが――それよりも。
隣を歩く御崎家長男・月斗のほうが、明らかに目立っていた。
「なんだ、ありゃ!?」
素っ頓狂な声をあげる北斗に、啓斗も身体を捻ってそちらを向き、片眉を跳ね上げる。
笑いはしないが一寸呆れている、といったところだろうか。
だが、通行人の多くは大爆笑だった。ウケを狙ってやっているのだと思って、俺もやれば良かったなどと騒ぐ者さえいる。
しかし――月斗は本気だ。
本気で、真っ白な褌を身につけていた。
「月斗、それ、どうにかなんねーの?」
「は?どうにかって、何がだ?」
一房だけ金に染まった髪をピンと弾いて、月斗は首を傾げる。
無言で啓斗に褌を指さされ、さらに月斗は困惑した。
水着など買ったことがないので、修行用の褌でも差し支えないだろうと判断してのことだったのだが、やはり変だっただろうか?
助けを求めるように光夜に視線を送ると、弟は肩をすくめて、こう言った。
「別にいいんじゃん?なんか月兄ぃらしい気もするし」
◇
「式招来、天仙娘々!」
月斗が真言を唱え、式神を召喚した。チャイナ服を纏った小さな少女の式神は、月斗の命を承けて女詐欺師を捜しに行く。
「さて、これでたっぷり遊べるな」
腕組みしてニヤリと笑うと、月斗は弟と友人達に視線を送った。
北斗は頭の後ろで手を組むと、
「だな。たまには思いっきり遊ぶのもいいだろ。な、兄貴?」
隣に立つ啓斗に同意を求める。啓斗はひょいと肩をすくめて、諭すように言った。
「羽目を外しすぎない程度にはな。それと北斗は、無駄遣いも禁止だぞ」
この4人の中ではいちばん年長なので、保護者――とまではいかなくとも『しっかりしなくちゃいけない』と肝に銘じている。
北斗は聞き慣れた兄の小言に「へいへい」と舌を出すと、ダッと走り出した。
「とりあえず、あそこの岩場まで競争しようぜ!行くぞ、光夜!」
「よし。絶対負けねぇぞ、北斗!」
手にしたスイカを実兄・月斗に預けると、光夜は慌てて北斗を追う。大人びてはいるが、この辺りはやはり12歳の少年だった。
北斗は北斗で、なんだかんだといいつつ5歳下の月斗と光夜を、弟のように可愛く思っている――のかもしれない。
走っていった弟たちを見守るように、兄たちはのんびり歩いてそれについていく。
岩場についた4人は、ちょうどいい具合に水たまりになっているところにスイカを置いて、奥――この場合、浜ではなく沖に近い方――まで探検を開始した。
褌姿の月斗は、どんどん沖に近いほうまで岩を伝って歩いていき、やがて岩が少なく水が多くなってきたところで、水中に入る。
「おーい。誰か、沖のほうまで泳いでいってみないか?」
振り返り手を挙げると、啓斗が反応した。
「俺がいこう。向こうで、どこまで潜れるか試してみるのも面白いしな」
光夜と北斗は、あそこにカニがいるとか、ここは滑るから気を付けろとか言いながら盛り上がっている。
弟たちは大丈夫だろうと判断して、兄たちは沖に出た。
啓斗は水泳が得意だし、月斗も運動神経は悪くない。あっと言う間に沖のほうまで出ると、互いに顔を見合わせ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「どっちが永く潜ってられるか、勝負だ啓斗」
「わかった。負けた方は、どうする?」
「……帰りに、4人分の荷物を全部持つ。っていうのでどうだ?」
ふたりとも家計のやりくりには苦労しているので、金銭が絡む勝負事はしない。
「それでいい。いくぞ――」
まずは、啓斗が水中に姿を消した。続いて月斗も身体を沈める。
わりに透明度が高い海で、ゴーグルをしていなくても目を開ければ海底の様子が一通り見渡せた。
月斗は海底――だいたい水深3メートル程度のところに手を伸ばし、ヒトデをつまみ上げる。
少し離れたところで、啓斗はウニのトゲトゲを注意深く掴んで、持ち上げていた。
しばらくして、ふたりはほぼ同時に水面に顔を出す。
「なんだよ、引き分けか?」
「だったら、再戦するか?」
普段はクールなふたりだが、気の置けない者同士、心から楽しんでいるという笑顔を浮かべた。
そのあと、浜に戻った4人はスイカ割りを始める。
月斗と啓斗のふたりは、持ち前の運動神経から良い線はいっていたが、惜しくもスイカに棒を当てることができなかった。もしかしたら、弟たちのためにわざと外したのかもしれないが。
「月兄ぃ、もう疲れたのかよ〜?」
そう言ってケラケラと笑う光夜はといえば、目隠しをしてその場で方向をわからなくするのに回る際、調子に乗って回りすぎてしまい、まったく見当はずれの所に進んでいってしまった。
それを見て爆笑したのは、もちろん北斗である。
「よしよし、俺が華麗に決めてやるぜ」
ふくれっ面の光夜から目隠しと棒を受け取り、北斗は前進を開始する。
「右右、右だってばー」
「もう少し前だな」
「いや、あと1歩だけでいいだろ」
「左に2歩くらいずれた方が良いんじゃん?」
残りの3人から助言が飛ぶ中、狙いをつけて棒を振り下ろす――と。
「痛ってぇッ!」
ガツッという音と共に北斗が叩いたのは、岩場の岩のひとつだった。対象が割れるどころか、逆に北斗の手が痺れている。
目隠しを外した北斗が見たものは、スイカを抱きかかえて笑う光夜の姿だった。
「お〜ま〜え〜…ふざけんなっ!」
「北斗のバーカ!」
途端に始まる追いかけっこに、月斗と啓斗は肩をすくめた。
◇
草間興信所一行のベース地からいちばん近い海の家は、この海水浴場に何軒かあるなかでも、いちばん規模の大きいものらしい。
理生芽藍川(ことおめ・あいかわ)――『雨男』こと雨の精霊は、テーブルに両肘をついて足をブラブラさせていた。
アイスキャンデーを口にくわえ、にこにこ笑顔を保ったまま、周囲をそれとなく観察している。
彼の視線の先には、シュライン・エマの姿があった。
草間興信所の事務員兼、調査員。彼女は、女詐欺師の写真を海の家のスタッフに見せて、聞き込みをしていた。
「おーい、シュラインのお姉さん!こっちこっち!」
ここに来るまでの車の中で、簡単な自己紹介は済ませている。
藍川が手を振ると、シュラインは視線で『ちょっと待って』というように訴えてきた。
(ん?もしかして、何か情報をゲットできそうなのかな?)
とはいっても藍川は、依頼のことより――どちらかといえば、楽しく海水浴できればいいなという思いのほうが強かったりもする。
しばらく待っていると、シュラインが笑顔でやって来た。
「理生芽くん、成果はどう?」
「うーん、イマイチかな。それより、俺のことは『藍川』でいいよ♪」
「オッケー、藍川くん」
日除けに使用していた帽子をテーブルの上に置いて、シュラインは頷く。
ここの海の家は、ファミレスのように席までスタッフがオーダーをとりにくる形式のもので、シュラインはアイスティーを注文した。
藍川も、かき氷を追加で注文する。
「ところで、シュラインさんこそ成果はどうなの?なにかめぼしい情報はあった?」
「それがね――……」
声のトーンを落とし、顔を近づけてシュラインが囁く。
――と、視界の隅に良く知る人物を見つけて、一旦顔をあげた。
声をかけるか否か逡巡して――やはり、声をかける。
「榎真くん、みかねちゃん!」
よく知る声に呼ばれて、直弘榎真(なおひろ・かざね)と志神みかね(しがみ・みかね)のカップルは、キョロキョロと辺りを見回した。
海の家はほどよく賑わっており、パッと見ただけでは知り合いがいても気付きにくい。
「……あ。シュラインさんだ。それと、理生芽」
榎真が指さした方向に、シュラインと藍川の姿が見えて、みかねは笑顔を浮かべた。
藍川とは今日が初対面だが、行きの車の中で少し話をした。気さくな好青年だったので、榎真もみかねも好印象を持っている。
ふたりはシュラインたちと同じテーブルにつき、かき氷を頼んだ。
「どう?楽しくデートしてる?」
揶揄するようなシュラインの言葉に、榎真もみかねも顔を赤くする。
「もう、シュラインさんまで……でも、楽しいです。来て良かったなぁって。ね、榎真さん?」
「うん。……ところで、忘れてたわけじゃないけど、依頼のほうはどうなってるの?」
ゴホンと咳払いして榎真は――実は忘れかけていた依頼の話を振った。
そこで、シュラインと藍川の頼んでいたアイスティーとかき氷が届き、会話は一時中断する。さっそくシャクシャクと氷の山を崩しながら、藍川は肩をそびやかした。
「俺は成果なしだけど、シュラインさんは何かあるみたいだよ」
「そうなのよ。さっきも言いかけたんだけど……」
と、再び声をひそめるシュライン。
だが、またしても会話は中断せざるをえなくなった。店の中で、ちょっとした騒動が起きたからだ。
「母ちゃん、かき氷買って〜」
「な、なによこの子!アタシはまだ『母ちゃん』なんて歳じゃないわよ!」
一房だけ銀色の髪をした少年の隣に立っていたグラマラスな女性が、激昂したように叫んだ。
一瞬、海の家の中が静かになり、店中の注目がふたりに集まる。
女性はとてもではないがこの場にいられなくなったらしく、そそくさと出ていった。が、少年のほうはペロッと舌をだして笑っている。
「光夜〜……あんまり恥ずかしいコトするなよ」
少し離れたところにいた連れ、守崎北斗(もりさき・ほくと)が頭を掻きながら、光夜――御崎光夜(みさき・こうや)の後ろ髪をキュッと引っ張った。
「だったら北斗が何か買ってくれよー」
「馬鹿、あとで兄貴に怒られるだろ」
――と、そこで彼らは近くのテーブルに知った顔が集まっているのに気付いて、手をあげる。
「よぉ、シュラインさんたちじゃん。そっちに行ってもいいか?」
「ええ――……」
そうして、幾分疲れたような表情の4人のテーブルに、北斗と光夜も合流した。
それから肩で息をひとつして、シュラインは三度きりだす。
「写真を見せて聞き込みをした結果なんだけど、やっぱり『女詐欺師』はこのあたりに現れてたみたいよ」
「現れ……てた?」
なぜ過去形なのかと、榎真は問う。
なんでも話によれば、ここ数日その女は姿を見せていないのだそうだ。美人でグラマーな女のことを、スタッフはよく覚えていた。
「ここ数日……依頼人の人が興信所にきたのって、たしか数日前だよねぇ?」
藍川が、かき氷を口に運びながら、のんびりと発言する。
この符号は一体、なにを意味しているのか?
「でもさ。それだったら、もうその女の人はいないかもってことだよな?」
「だな。じゃなきゃ、近辺のホテルとかペンションまで当たってみねーと駄目かも」
光夜と北斗が、いつの間に頼んだのか焼きそばをつつきながら頷きあった。
「そうですね……詐欺師さん、もういらっしゃらないのかも……」
みかねの言葉に、シュラインもため息をつく。
そう――これだけ探しても見つからないとなると、依頼を完遂することは難しいかもしれない。というより――日帰りの予定で来ているが、それでは無理だ。
一旦、作戦を練り直す必要があるだろう。
「ちょっと武彦さんに相談してみるわ。もうしばらく自由にしていて良いから、あとでみんな集合して頂戴」
シュラインがそう言うと、榎真とみかねはかき氷を手に再び浜辺へ戻っていった。
北斗と光夜は、岩場のほうにいるという彼らの兄を迎えに行くという。
残ったシュラインと藍川は、ひとまず草間のところに戻ることに決めた。
だが、そのころすでに他のメンバーの手によって、事件は解決していた。
のちほどベースに戻った面々は、拍子抜けしたような安心したように微妙な気持ちで、夕方のバーベキューの開始を待つこととなる――。
◇
鉄板の上で、野菜やシーフード、肉などが香ばしい匂いを醸しながら焼けている。
草間を含む11名で鉄板を囲んで、わいわいと『解決編』が行われることになった。
「要するにな。依頼人は、その『女詐欺師』に惚れちまったわけだ。で、預かりものはラブレターってわけ」
缶ビール片手に、すでに出来上がりつつある草間が言うと、何人かはすぐに合点した。だいたい、そんなところではないかという予感はしていたのだ。
「でも、それにしては依頼人、あんまり暗すぎじゃなかった?」
食べ物を小皿に取り分け配りながら、シュライン・エマが尋ねる。仮にも依頼人の姿を見たわけだから――当然の疑問ともいえる。
「そうだね。何か思い詰めた感じだったし――って、事情はそれぞれだから、俺はあんまり気にしないけどねっ」
そのシュラインから小皿を受け取った理生芽藍川(ことおめ・あいかわ)は、小首を傾げて微笑んだ。
依頼さえきちんとこなせれば、余計な詮索はしなくても良い――それが、彼のスタンス。
実際、女詐欺師と遭遇した橘姫貫太(きつき・かんた)が、新たに鉄板の上に焼きそばを投入しながら言葉を継いだ。
「そうですね。でも、草間さんは何かご存じなんでしょう?」
「それを俺たちに隠してたというのは、気に入らないな……」
もぐもぐと口を動かしながら、守崎啓斗(もりさき・けいと)も頷き、肯定する。
データをきっちり調査員に報告して、それで調査に当たるように指示をするのが、リーダーの役目のはずなのだ。
「いや……隠していたというか。俺もどちらかと言えば、海水浴を楽しむ方が目的だったからな。どうせなら大勢引っ張ってきた方が楽しいだろ?詳細を全部伝えてたら、この中で何人かは確実にパスしてただろうしな」
そう言って笑う草間に、確かに何人かは否定できない気持ちだった。
「ま、おかげで俺はよりどりみどりの水着ギャルを観察でき……ぐはっ」
「た・け・ひ・こ・さ〜ん……?」
草間の鳩尾にシュラインの肘鉄がクリーンヒットする。それを見て、全員が爆笑した。
しばらくしてすっかり日が落ちると、バチバチと色とりどりの火花が舞う。
「こら光夜、花火振り回したら危ないだろ」
「大丈夫だって!こうしたほうが綺麗だしさ、月兄ぃもやってみなよ!」
御崎月斗(みさき。つきと)、光夜(こうや)の兄弟が、普段は見せない無邪気な様子で花火に興じていた。
その少し向こうでは、直弘榎真(なおひろ・かざねと)と志神みかね(しがみ・みかね)が線香花火に挑戦している。
すっかりふたりの世界で、誰も入り込む余地はない。
「そういやさ。なんで依頼人は、あんなに暗かったわけ?」
ビール片手の草間の横で、ノンアルコールの炭酸飲料とつまみを堪能している守崎北斗(もりさき・ほくと)が尋ねた。
草間に付き合っている真名神慶悟(まながみ・けいご)も、
「女のほうも、手紙を読むまでは暗い感じだったな。どういうわけなんだ?」
「つまり、両方『恋患い』だったってわけさ」
草間が言うには――男のほうは、女が詐欺師だという噂を聞いて泣く泣く帰ったものの、やはり諦めきれず。女のほうも、一目惚れした男のことが忘れられず。
「まぁ…夏を満喫できただけでも儲けものか。巡る四季を楽しまないのは…やはり勿体無い話だしな」
溜め息混じりに、慶悟は苦笑した。
こうして、真夏の海と水着ギャルの事件は幕を閉じた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0231/直弘・榎真/(なおひろ・かざね)/男/18歳/高校生】
【0249/志神・みかね(しがみ・みかね)/女/15歳/学生】
【0389/真名神・慶悟(まながみ・けいご)/男/20歳/陰陽師】
【0554/守崎・啓斗(もりさき・けいと)/男/17歳/高校生】
【0568/守崎・北斗/(もりさき・ほくと)/男/17歳/高校生】
【0720/橘姫・貫太(きつき・かんた)/男/19歳/『黒猫の寄り道』ウェイター兼・裏法術師】
【0778/御崎・月斗(みさき・つきと)/男/12歳/陰陽師】
【1270/御崎・光夜(みさき・こうや)/男/12歳/小学生(陰陽師)】
【1746/理生芽・藍川/(ことおめ・あいかわ)/男/999歳/雨男・ところにより時々高校生】
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■ ライター通信 ■
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大変お待たせいたしました。
担当ライターの多摩仙太です。
お盆休みをはさんでしまったこともあり、お届けが遅れてしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。
今回のノベルは、オープニングを含め15の場面で構成されています。
全部で10名にご参加いただきましたが、ほとんど顔を合わせていないキャラクター同士もいますね……そのぶん個別や、お友達との場面が増えているとは思うのですが、もう少し絡められたら良かったかなぁなんて思います。
きちんと説明されていない箇所もいくつかあると思いますが、そのあたりは自由に想像して楽しんで下さい。
自分がどの行動をしている間に、他の人がどうなっていたか――そんなことを照らし合わせてみても良いかも知れないです。
それでは、今回は個別のメッセーシを書けなくて大変申し訳ないのですが、これにて失礼いたします。
年内はぽつぽつ窓口を開けていると思うので、また見かけたらよろしくお願いいたします。
最後になりましたが、今回は発注どうもありがとうございました。また出逢えることを祈って。
2003.08 多摩仙太
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