コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


Imagination From The Other Side

――――――――――――――――――――――――――――――
投稿者:想像者
俺の「夢」が逃げだしたんだ。
誰か俺の「夢」を探してくれないか?
大変な事になる!

Re:投稿者:アキラ 
どんな「夢」だったんだ?

Re:投稿者:柚子
眠っている時の?それとも将来の?

Re:想像者
なんていうかな、「夢」に存在する不思議の国や、魔法使い達が…
俺から逃げていったんだ…。



「はぁ…」
溜息をつく雫。
「「夢」ねぇ…」
その後ろに、つい最近知り会い、今と微妙な関係である織田義昭がいた。
「どう思う?」
雫が訊いた。
「彼の想像した「夢」が現実化して、自分ではどうしようも出来なかったか、夢は幻だったと解って失望したかだね」
と、彼は答えた。
「前に調査したドリームランドのような?」
「多分…君の体験から聞けば…それに近いかも…この投稿者が解ればいいのだけどね…」
「コンタクト取ってみるね…織田さんは周りで変化があったか調べて欲しいな♪」
「わかった。茜は…消極的だろうけどな…」

数日後、町中での魔法使いをはじめ、ファンタジーやSFに出てくる登場人物を見かける噂が広まった。
毒リンゴを配っている魔女が警察に逮捕されるなどという噂。

実際に被害にあった者もいるらしい

投稿者(抜粋)
全身鎧の騎士を国道●号線でみたよ。
自動車をみてさ…「悪しき竜覚悟!」といって、突撃していった。勿論車に返り討ち。
其れを延々繰り返していたな…。

ばあさんが売っていたリンゴくったら腹下した!
今でも入院中。食中毒でもないんだって…。

ソーセージが「ランチョンミートと俺どっちが旨い」と訊いてきた!
当分俺肉食えないよ…(Tд⊂)

猫が…「俺は空手の達人だ!」とかいって勝負申し込まれた!
強かったよ…恐るべし…猫パンチ(;´Д`)ノ
結果?俺の負け(爆

妙なにぎわいを見せ始める掲示板。

そしてメールが雫に届いた…想像者からだった。
「急いで「夢」を捕まえてください…。俺は…動けないんです……。
理由は●■精神病院の解放病棟に入院しているからです。
少しの時間だけ外出でることが出来ますが「夢」を捕まえるほどの力がないのです。
どうかお願いします」

「やっぱり本当だったんだ…」
彼女は急いで、掲示板を一緒に見ていた義昭と共に仲間達にメールを送った。

――――――――――――――――――――――――――――――――――



1 Follower
集まった仲間は、義昭と雫にとってよく見知った人々だった。
大曽根つばさ、田中祐介、天薙撫子、そして海原みそのだった。
義昭としては、顔見知りや幾度か地面に関わっている人物との行動がよかったと安堵する。
しかし…
「またメイド趣向の先輩といっしょかぁ」
「会っていきなり、ソレはないでしょう」
「まぁまぁ落ち着いて」
つばさと祐介が何か言い合っているのを宥めている撫子。
みそのにおいては…漆黒のサーカス空中ブランコの花形レオタードでご登場…。
「妹が、お土産話をほしがるものですから」
と、笑って答えた。
このメンバーの力は義昭も雫も知っている訳だが…
…うまくいくのですか?
と悩んでいた。

しかし、義昭の不安は杞憂に終わり、作戦は纏まっていく。
解決方法は「想像者」との面接で、原因と「夢」を本人に見せるのか「破壊」するのかを聞き出し、
みそのが流れを読み、原因である「想像者」と具現化した「夢」とのリンクをたどる。後、夢たちをまとめて、一網打尽にすることだった。
詳しい捕縛方法は、まず想像者に訊ねる事になる。
精神病院に赴く。

念のためメールで「想像者」と会いに行く約束を取り付けると、病院の外で待っていると返事が来た。
「開放病棟は、制限はあるけど外に出かけることは可能みたいだよ」
と、義昭が言った。
「なら、面会の手続きとかは要らないんやね」
「そうだね。このメールのやりとりも外でやっているかも」
つばさが訊くと義昭はそう答えた。
東京区内から少し離れたところに「想像者」が入院していると思われる精神病院に着いた。皆は、ああ成る程と納得する。近所にネットカフェがあったのだ。おそらく彼はそのネットカフェを使って、書き込みやメールのやりとりをしているのだろう。
幾度かメールのやりとりをすると、ネットカフェからかなり痩せ細った青年がトレーナー、サンダル姿で現れた。
「初めまして、「想像者」の佐山宗治です」
端から見て普通の青年に見える。
雫たちが自己紹介を終えたあとに本題に移った。
「夢が逃げたというのはどういう事かお話ししてください」
と訊く。
「私は幻覚、幻聴で…架空の人物やお話の登場人物と会話することで入院していました。しかし、その幻覚をある日を境に…さようならと告げてしまったのです」
「それは、薬やカウンセリングでその症状が治った証ではないのかな?」
祐介が訊いた。
「普通ではそう解釈できるのですが…どうも俺…空想を実在しているかの様にできるみたいなんです…」
「空想を実在しているように、ですかか…」
みそのは彼の言葉には嘘偽りはないという風に呟く。
「たとえば、何か食べたいとかこういう「物」があれば良いよなと強く願ったら、出てくるんです」
「空想具現化…すごい能力やな…」
つばさが興味深そうに宗治を見つめていた。
「そや、ためしに何か出して」
つばさは宗治に言った。
「いいですが…何を想像して出せばいいのです?今は夢たちが逃げて…力はあまり無いのですが…」
「できる、できないは気にせんで良いさかい…えとな…かわいい犬!」
つばさの注文どおり宗治は念じると…たしかに目の前にタキシード姿のチワワが現れた。かなり細部まで見事に具現化している。
「可愛い!」
つばさがソレを捕まえようとしたとたん…想像されたチワワは消滅した。思いっきり地面に顔をぶつけるつばさ。
「いった〜!」
「大丈夫かい?」
義昭が彼女を起きるのを手伝った。
宗治はどうも力を使ったせいで息が苦しいようだ。
「なぜか分からないのですが…逃げた「夢」たちは僕の命とリンクしています…なので…発見したらその場で破壊してください…知性を持つ「夢」なら…理由を聞いてほしいのです」
「わかりました。貴方は病室にお戻りになった方が…」
「はい、ひとりで大丈夫です。ありがとうございます」
撫子が優しく宗治にいった。それに従い病院に戻る宗治。

ただ、霊能力のある皆は…宗治の後ろ姿が陽炎のようにぼやけているように見えた。
「気になるな」
祐介はこの事件の実態が「夢」以外に関係あるのかもしれないと思い始めた。

2Dream Hunter
「うちは…ドン・キホーテのおっちゃんのところ行くわ!」
つばさは意気揚々と自分の行動を伝えた。
「確かに知性はある「夢」だけど?たしか…原作では…風刺小説だったような」
撫子は首をかしげる。
『ドン・キホーテ』はスペインの有名著籍である。絵本レベルならば、文明的な時代において時代錯誤な騎士になって…風車に立ち向かった話だ。少年文学の場合、これに加えて様々な冒険をしているが、晩年になって今までは騎士物語に熱中しすぎたため自分が騎士であると思いこんで様々な迷惑をかけた事を認めるという話だ(ドン・キホーテの行動は一部の裕福な者にとって、退屈な貴族生活に刺激を与えることで一役かっていた…彼を話の笑いのネタにして)。今でている「彼」では…会話になる物かどうか怪しい…。現に国道で車に向かってはせ細った馬にまたがり、返り討ちにあっているのだから…。
「俺は良いと思うよ」
義昭は同意した。
「しかし…間違って…」
撫子は2人を止めようとするが、義昭をみるや、話を止めてしまった。
「え…えっと「彼」が車を竜と勘違いしているというなら…つばささんはどこかの村娘かなにかに見られそうですけど?」
「魔女の呪いにかかった姫君とか…」
と雫
「最悪な場合、魔女か悪魔?」
とみその。2人はくすくす笑っている
「だから、あのおっちゃんにどう見られるかが楽しみやねん!流石に宿敵の魔女に見られるのはかんべんやなぁ…せめて従者のサンチョがいいわ」
「ひょっとして…騎士になって一騎打ちしたいのかな?」
義昭が訊く
「ま、そうや♪」
「うまくいけばいいのですけど」
撫子は少し不安になっていた。

他の「夢」達はまとめて破壊して、ドン・キホーテはつばさに任すことにした。
「問題なのは空手使いの猫だな…」
レスの中で一番やっかいなのはこいつだと祐介は言う。
雫がレスナンバーを見て…
「14…いやだなぁ」
あたかも狙った数字…。偶然であったほしいと思う雫。
「数字は結構意味を持つね」
義昭は、ぽつりといった。


3a Knight of Adventure
国道、そこで極端にやせた馬と騎士の姿をした老人が居た。
どうも、霊感のない者には見えないようだ。
「竜の次は悪しき帝国の軍団か!」
と、駆けていっては、車に轢かれてしまう姿。すこし、アメリカのカートゥーンが入っており…平べったくなって空に舞うドン・キホーテ。
IO2、も地元退魔機関もたいした害もないと判断したのかは知らないが、面白い見せ物として放置されている。
この様子を遠くから眺めていたつばさと雫。
「確かに…空想具現のドン・キホーテやね…「想像者」さんの力をかんじるわ」
「事故になっていないのがふしぎだよ?」
「運転手には見えないんじゃない?」
たしかに、こう目立っていてはおかしな物だ。特定の人間にしか見えないのだろうか?
「ま、実行しよう」
つばさは、元気よく遍歴の騎士に向かっていった。
「ああ、これはかの高名な騎士ドン・キホーテ!巨人をなぎ払い、悪しき軍隊に立ち向かうという雄々しき騎士に巡り会えるとは!いかに感激か!」
と大仰に、しかも芝居かかって騎士に声をかけた。
彼の反応は非常に面白かった。
「おお!ワシの冒険譚を聞いて、はるばるこの戦乱の荒野に赴いたるか、可憐な少女よ。しかしだな…ココは危険だ。あの高台で身を潜め、ワシの勇姿をみるがよい」
可憐な少女と言われ
(ま、わるくないか♪)
とご機嫌なつばさ。
しばらく、騎士の姿を見物する。相変わらず車に轢かれて、ペッタンコになって宙に舞う騎士。
そして、つばさは休憩に入ったドン・キホーテに再び駆け寄った。
騎士はかなり上機嫌である。丁度、車が1台も見なくなったからだ。
「今回ワシは、あの軍勢を見事打ち倒した!見てくれたか可憐なる少女よ!」
ココは調子に合わせてあげるのが一番である。つばさは、彼の冒険譚に耳を傾ける事にした。
「遍歴の騎士様、戦いでお疲れでしょう…こちらで今までの冒険の数々を教えてください」
「うむ、分かった。お主の心配り感謝する」
(なんか恥ずかしいわぁ)
いつも関西弁で礼儀作法など考えてもなかったので、この演技の言葉でも歯が浮きそうな気分のつばさである。しかし、我慢した甲斐もあり、簡単に人通りのない広場に騎士を移動させることができた。

空き地には馬の張りぼてで覆った自転車がある。
雫が、紅茶やお菓子を用意してくれていた。
改めて自己紹介をすませて、騎士の冒険譚を聞く。ほとんど話し通りだ。
そして、つばさが口を開いた。
「いきなり、変なこと聞くけど…おっちゃん、どうして宗治って人からさよならをつげたんや?」
その質問で、ドン・キホーテは項垂れる。
そして、涙を流しながら口を開いた。
「ワシは、本来架空の存在じゃ、あの者は空想という「夢」から永遠に目覚めないほど重度の空想家なのだよ。本を読んでいるなら分かるとおもうが、実際、本で描かれている騎士のワシはただのおかしい年寄りだ。君たちが話を合わせてくれたので、実際のワシを取り戻せた。今も「彼」はベッドの上で闇の中を彷徨っているだろう…」
「どういうこと?」
「簡単なことだ…「彼」は…世間をおそれている…。世間に笑い者になろうとも己の生き方を貫くことに憧れを抱いているのかもしれぬ。だから…「鏡の騎士」との一騎打ちのように打ち負かせてくれ。ルールは簡単だ。騎乗試合で落馬したならば…敗者は勝者の言うことを何でも聞くと…」
「…」
現実と夢の狭間で引きこもっている「想像者」。そのことを知らせたいが故、彼の元を去った夢達…。
「わかった、騎乗勝負やったろう」
つばさは立ち上がって板と棍を召還した。

騎馬試合が始まった。
実際のところドン・キホーテには騎乗の戦闘力は皆無だ。つばさの戦闘能力であっさりと破れる。
つばさは騎士を起こしてあげた。騎士も物語通りに進んでいることに満足しているようだ。
「では、敗者はこう守ってもらおうか…、『夢から覚めろ』と「主」に伝えに戻ることを」
「わかった。可憐で勇ましき騎士よ…。ありがとう…」
とドン・キホーテは霞のように消えていった。



4 ALIVE 
ちょうど、つばさと雫が戻ってきて…情報交換をする。
「残るは…宗治君の姿をした「夢」…いや…自分を変えようとしたい「願望」ですね」
祐介が言った。

丁度、「彼」はやってきた。
「良かった…本当にありがとう」
「これで良いのかい?」
礼を述べる「宗治」に対して義昭が訊ねた。
「そうや、能力があろうとなかろうと…心を閉ざすのはあかんで!しっかりせなあかん!」
次につばさ、
「辛いこともあるでしょうけど…心に背負った傷は決して無くなりませんが…癒すことができます…」
撫子が
「人を楽しませようと、そして「夢」たちは貴方の本体のことを本当に心配しておりますよ」
とみその
「能力が怖いのか?」
義昭がまた訊ねる。
「彼」は口を開いた。
「この力…実は俺なんだ。本体は…俺のせいで人を信じなくなった。空想の世界にずっといようと閉じこもった…でもそれでもだめだって僕は言い続けた。しかし空想の世界もだめだと本体が思ったときに…俺が先に…だから…俺が…」
「その先を言うな」
祐介は「彼」を止める
「能力を封印する力はあると言えばある。しかしそれで何が得られる?お前自身もしっかり考えろ」
と言い続けた。
「力ってのはな…、普段の日常では用はないかもしれんけど、存在する以上、この世界でその力が必要なわけや。でもさ、深く考えんでも良い。あんたの力は本体の才能でもある。それに面白い能力やん」
つばさがわらって答えた。
撫子が宝石を「彼」に渡し、
「本当の宗治さんに、これを見せてあげてください。貴方を心配し励ましている「夢」、そして彼らが見た楽しい「世界」が詰まってますよ」
といった。
「ありがとう…」
「彼」は涙を浮かべながら封印石とともに消えた。



後に、宗治本人が心を開き、開放病棟に移った。その知らせが雫の掲示板にかかれていた。

投稿者:想像者
題名:ALIVE
我に返りました。本当にご迷惑をおかけしてすみません。
空想だけじゃだめなんですね。前を見て生きていこうと思います。
どんなに苦しくても、がんばっていきます。
俺、しっかりした夢ができたんですよ。
皆が喜ぶような…夢を作っていきたい。

皆ありがとう。


End


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【0328 / 天薙・撫子  / 女 / 19 / 大学生】
【1388 / 海原・みその / 女 / 13 / 深淵の巫女 】
【1098 / 田中・祐介 / 男 / 18 / 高校生兼何でも屋】
【1466 / 大曽根・つばさ / 女 / 13 / 中学生・退魔師】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
滝照直樹です。
『Imagination From The Other Side』に参加してくださりありがとうございます。
空想の世界はすばらしいですが、どっぷりはまると世間が見えなくなる危険を持っていますね。
本当にあれば良いと思う架空の存在ってどんなものでしょうか?

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝