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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


霊感少女・アリサの事件簿

□オープニング
 八月葉月、蝉時雨。
 煩い蝉の鳴き声がこの季節途絶える事は無い。鈴虫なら少しは涼しそうだな、と草間はと思った。目の前の少女から目を背けて。
「だから! 絶対そうなんですって!」
 先程からクーラーの効きが悪い事務所の室温を一人で上げているだろう少女がどんっと背の低いテーブルを叩く。
 ノースリーブのピンクのワンピースはひらひらとレースが付いていた。顔立ちは悪くないが、幼い表情が高校生という年齢に相応しい。決め手はツインテールのピンクのリボンだ。申し訳程度にカールした髪が胸元で揺れている。
 ――この興信所にも場違いという物があるのか
 甚だ失礼な事を草間は考えた。
 自称霊感少女、有佐梅子(ありさ・うめこ)が来たのはつい先程だった。新聞を片手に「これです!」と駆け込んできた姿はまるで万馬券が当たったようだったと草間は思う。
 何かと思えば、この所近くの公園で起きている連続通り魔事件についてだった。曰く「上弦の月の夜に髪の長い女の子が公園でナイフを持った通り魔に襲われている夢を見た」というのだ。
「そりゃあ、単なる夢だろう」
 草間で無くてもそう言いたくもなる。それに対する反応はといえば――。
「なんて事を言うんですか! あたし、こう見えてもご近所で評判の霊感少女なんですよ! 隣のおばあちゃんの無くした手鏡も、クラスのミナコの落とした携帯も夢でその在り処をばっちり探し出したんですから!」
 それは霊感じゃなくて、予知夢じゃなかろうか? そして通り魔と並べて置けるものだろうか?
 草間はそう言う代わりにアイスコーヒーを一口飲んだ。
 とにかく宥めて帰そうとした草間の労力も虚しく、未だ目の前にツインテールが鎮座している。彼女の主張も5回は聞いた。飽きる気はないらしい。
「――それで、どうしたいんだ?」
「勿論、捕まえるんです! でもぉ、あたし、霊感には自信があっても腕っ節には自信がないんですよね。それに、にょきって手から日本刀が伸びてきたんですよ。こういう時はご近所の皆様に評判の怪奇探偵の出番ってもんでしょう?」
(ご近所で評判なのか、うちは)
 いやだな、としみじみと思った。
「これで通り魔が捕まれば、お手柄ですよ! ご近所は安心、怪奇探偵も、霊感少女アリサちゃんの名もあがるってもんです!」
「アリサちゃん? ……名前梅子じゃなかったか?」
「それは! トップシークレットなんです! 第一霊感少女梅子なんて恥ずかしくて名乗れません! ああ、おばあちゃんちが、梅農園でさえなかったら!」
 胸の前で手を組み合わせて大げさに嘆いてみせるアリサを眺めて草間は成程、と思った。この少女の言動に逆らう気が失せていた。
「あー、誰か、ダメ元で付き合う酔狂な奴はいないか?」
 振り返った草間の顔はものすごくやる気がなさそうだった。


□応接間にて
 草間の声に最初に名乗りをあげたのは赤い髪の少年だった。
「いーっすよ。俺ちょうど暇だし」
 衝立の影からひょっこりと顔を出した草壁鞍馬(くさかべ・くらま)にアリサは目を瞬いた。どこかで見た事があるような、と言う表情だ。慣れているのか草壁はひらひらとアリサに手を振ってみせる。
「捕まえられたらラッキーだよな、アリサちゃん」
「そーですよね! 気合入れて捕まえましょうっ」
 やたらやる気満々なアリサに草間は心底疲れたようにため息をついた。
「アハハ、なんかすごい顔してますネ、草間さんってば」
 窓際でアイスグリーンティーを飲んでいた少女がグラス片手にこちらにやってきた。柔らかい色の髪が白いワンピースと一緒に揺れる。
「でも案外夢って馬鹿には出来ないものなのよ?」
 軽くウィンクして見せた朧月桜夜(おぼろつき・さくや)はアリサの横に腰掛ける。夢というのはあながち侮れない。予知夢と言う言葉もあるし、ちょっとした先触れのような物である場合も決して少なくはないのだ。
「……そういうものか?」
「そういうものだと思うわ……」
 同意の声をあげたのは朧月ではない。長い黒髪を自然に流した巳主神冴那(みすがみ・さえな)の肩には白い大蛇がまるでショールのようにまとわりついている。鎌首をもたげた蛇を優しい手付きで撫でて、当り前のように応接セットに座った。
「そもそも野生動物にはそういった虫の知らせ的なものはあるのだから」
「やせいどうぶつ……」
「まァ人間だって動物よネ。野生かどうかは微妙だケド」
 響きに顔を顰めた草壁と納得の頷きを返す朧月。
「ええ。ならば梅子ちゃんにもそういう真似が出来たとしても不思議じゃないわね」
「だーかーらー!! あたしの事は梅子じゃなくてアリサって呼んでくださいって! 霊感少女ア・リ・サ! これ重要!」
 梅子と呼ばれてアリサがびしっと指を巳主神に突きつける。人を指さしてはいけないという事はどこかにいってしまっているらしい。対する巳主神は失敗したとばかりにちらりと舌を出した。
「あら……ごめんなさいね、アリサちゃん、ね?」
「そうです! あたしは霊感少女アリサちゃんです!」
 いや、自分に「ちゃん」をつけてどうする、ついでにそれは苗字だ。などと思ったのがこの場に何人いたのか。しかし口にしたのは呆れたような視線で先程から応接セットの面々を見ていた、長い髪の青年――九尾桐伯(きゅうび・とうはく)であった。
「……いや、名前で職業が決まる訳でなし……まあ、いいですが。アリサさん、その夢の風景や状況を確認させてください」
「はい!」
 勢いよく頷いたアリサ。そして草間はため息混じりに零に麦茶の追加を持ってくるように声をかけたのだった。

□状況整理
 テーブルを囲んで白紙の紙をアリサに手渡して朧月が問い掛ける。
「アリサちゃんが夢に見たこと、詳しく教えてくれない?」
「犯人の姿、被害者の姿、周りの光景など思いつく限りの事を書き出して見てください。文章で表現しにくいなら絵でも構いませんよ?」
 九尾が付け加えて言う。彼の手にも聞き取った結果をメモする為の筆記用具が握られていた。
 一方、草壁はアリサが持っていた新聞に目を留めて記事を確認すると草間に声をかけた。
「パソコンちょっと借りるよ!」
「あら? 何をするの?」
 問い掛けた巳主神に草壁が答える。
「このニュースの関係洗い出そうと思って。こういうの得意なんで」
 自信有り気に笑った少年はどのくらい得意かを詳しくは口にしなかったし、巳主神も追求する事なく、ふと思いついたように言う。
「ねぇ、地図もあるのかしら? 事件のあった場所や梅子ちゃん……いえ、アリサちゃんのおうちの場所を知りたいの」
「楽勝です!」
 パソコンに向かった草壁とそれを後ろで覗き込んでいる巳主神。
 朧月はアリサの出来上がったイラストを見て呆れたため息を付いていた。
「アリサちゃん、絵の才能ないわねェ」
「……美術は選択してません」
 才能がない事を一応自覚しているらしい。縮こまったアリサをとりなすように九尾が声をかける。
「まあ、少なくともこれで、被害者の女性がロングヘアでセーラー服だって言うのはわかりましたし……これは児童公園ですかね?」
「それっポイわね。ジャングルジムにウンテイにブランコに大きな滑り台。……んん? これって場所を特定する手掛かりにならない?」
 矢印に滑り台と描いてあるが、それはこんもりとした山だった。どうやらコンクリートで作られた山に登る為の石をつけ、色々な方向に滑れるようになっているらしい。
「確かに特徴がありますね」
 巳主神が会話を聞きとめて絵を覗きに来るとあらと呟いた。
「こんな滑り台、お店の近くの公園にあるわね」
「え!? それ、ドコ!?」
 巳主神は草壁のいるパソコンの前に戻り地図から場所を示した。草壁が難しい顔で唸る。
「これなら、件の事件の犯人の行動範囲ですね」
「ふむ。地図で表示できますか?」
 九尾の言葉に応じて草壁が表示を切り替える。覗き込んだ朧月が感心したように言う。
「あらァ、本当に綺麗に範囲内。これはソコって可能性高いかしらね?」
「実際に行ってみた方が良いかもしれませんね」
「じゃあ、案内するわね……」
 頷いた巳主神を止めるように朧月が軽く手を上げてみせる。
「あ、待って、まだ確認してない事があったのよね、日本刀がにょきっと出てきたって何? 凶器はナイフじゃなかったっけ?」
「ああ、それは私も気になっていたんです。腕を外すと日本刀が出るとか?」
「いや。そうじゃなくてですね。ナイフを落としてから、こーんな感じで」
 九尾の言葉に首を振るとアリサは手をまっすぐに伸ばして掌を上に向けた。
「この掌からじわじわ刀身が出てきてって感じなんですよ! やっぱり普通じゃないですよね、これって!」
「いや、それが普通だったら、世間一般全員手品師だろ」
 草壁が困ったようにツッコミを入れた。まあ、確かにそんな事ができるのは手品師か特殊能力者くらいのものだろう。
「そうね……何か普通じゃない事があるんじゃないかしらね?」
「まあ、少なくとも一般人ではなさそうですね。ああ、一般的犯罪者ですね、この場合」
 一般的ではない犯罪者がどんなモノかをわざわざ問い掛ける面々はこの場にはいなかった。突然ふふふと朧月が含み笑いを漏らした。草壁とアリサが不思議そうに見る。
「なら、ちょっと荒っぽくても構わないわね」
「まあ、私達は警察ではありませんから、事前に動いて回避できるなら回避する方が良いでしょうね」
「場合によっては警察に任せられない場合もあるけれど、ね……」
 九尾の言葉に首を傾げて巳主神が応じる。妙な力があるような場合、警察では手におえない可能性もあるのだから。それを思い九尾が苦笑気味に頷く。
「きっと普通じゃないんですよ! 何かあるんですよーー!!」
「……アリサちゃん、喜んでどうすんだよ? しかも桜夜ちゃん笑顔怖いし」
「あらァ、美人捕まえてそれはないんじゃない? ま、女の子襲う奴なんか下の下、纏めてたたんでポリ箱ン中ポイポイってな感じよ!」
「桜夜さん素敵です!!」
 少女達の会話に草壁はため息をついた。
(いや、素敵とか何とかって言うか……皆場合によっては全然手加減しなさそうに見えるのは何故だろう……)


■公園に潜み
 巳主神はそこかしこに潜ませた蛇の気配を感じながらそっと呟いた。
「季節的に夜は過ごしやすいわね……湿度の高い熱帯夜っていう位が一番かしら?」
「いや、辛いでしょ。特に潜んでじっとしてなきゃならないのに……。なんか座ってるだけで汗かくってのもなぁ」
 最後の方は一人事になりながら草壁が答える。アリサが気合を入れたガッツポーズを決めた。
「でも、これで大捕り物も成立するなら、全然オッケーです!」
「いや、だからなんで大捕り物……」
「梅子ちゃん……アリサちゃん、静かにしないと気付かれてしまうわ」
 困ったように呟く草壁。巳主神の方はと言えば鷹揚にアリサを諌めただけだ――もっともいまだに梅子ちゃんと呼びかけてしまっているが。
「来たようね……」
「動きが不審じゃないっすか?」
 自分も見ようとするアリサを止めながら草壁が眉を顰める。待ち合わせでもしているのかもしれないが、それにしては落ち着きがない。
「どうかしら? 梅子……いえ、アリサちゃんのいう特徴とはマッチしているようだけど」
「この距離で見えるんですか? 視力良いっすね」
「きっとあの人が犯人なんですよ。あ! 来ましたよ、式神さん」
 一応気配を消す努力をしているのか小声でアリサが言う。式神さん、というのは朧月がアリサの夢で見たという女性を模して作った式神の事だ。
「ホントだ。……でも、あの人ホントにいたんだなぁ」
「アリサの霊感を疑うんですか!?」
「いや。そうじゃなくて」
「先回りして非難させる事が出来てよかったじゃないの……。本当だったらその子が狙われていたのだから」
「ああ。アリサちゃんお手柄じゃん?」
 ひそひそと会話を交わす三人。実際夢の少女が毎日この時間に一人でここを通っている事が判った時は調べてよかったと思ったものだ。
 事の成り行きを見守って、自然沈黙が落ちる。ナイフが男の手を離れるとアリサが声をあげた。
「あれ! なんか変な気配がしてませんか?」
「え? わかんねー……っておい!」
 こそこそと動き出したアリサを止めようか追おうか迷う草壁に巳主神が頷いた。
「梅子ちゃんをお願い。ここは私一人で足りるから」
 草壁は頷きアリサの後を追う。巳主神は蛇の視線で状況を確かめ続け、そして跳躍した。二つに別れた日本刀を持つ男を止める為に。


□乱戦
 高い位置から飛び降りた影がある。巳主神は人とは思えぬ跳躍を見せ、そして驚愕する男を押さえつけた。男から驚愕と苦しみの声が漏れる。
「諦めなさい」
「同感!」
 冷ややかな声が男の耳朶をうつ。朧月が懐から符を取り出しもう一人の男に向かって投げつける。それは桜の花弁を散らしながら鳥の姿となり、襲い掛かった。慌てたように男は日本刀で薙ぎ払おうとする。
「おっと。それはできませんよ」
 九尾の声と共に鋼糸が放たれる。日本刀と男の手に巻きついたそれを伝うように炎が巻き上がる。逃げられないようにと九尾は鋼糸に込める力を込めた。
「ぐあああああっ!?」
 日本刀を闇雲に振り回す男に九尾は舌打ちして鋼糸を離す。近くで取り押さえている巳主神に当たりでもしたら危険だ。男は糸から解放されるのとほぼ同時に桜夜の放った鳥によって日本刀を奪われた。
「そのまま抑えてっ」
 朧月の指示が式に飛ぶ。男は背を向けて逃走を図ろうとしていた――否、その先には先程のナイフとそれに近付こうとしているアリサの姿があった。
「アリサさん!?」
 アリサが男の腕で払いのけられ宙を舞った。地面に叩きつけられるより先に飛び出した影がある。
「アリサちゃん! 大丈夫か!?」
 草壁は一緒に転びそうになるのをぐっと堪えて彼女を受け止めていた。
「梅子ちゃん、大丈夫なの? ……えぇ!?」
 男を締め上げたまま巳主神が声をかけ、その声が動揺に変わった。締め上げた男の姿が揺らぎ、一瞬薄れたかと思うと巳主神の腕をすり抜けたからだ。
「大丈夫です……って何でこっちに来るかあああ!?」
 アリサの素っ頓狂な悲鳴が上がる。ナイフを手にした男がアリサと草壁に向かってきていた。九尾が舌打ちしてナイフに向かって糸を放つ。が、それは巳主神の腕から抜け出した男によって遮られた。
「アリサちゃん、下がってろ! この野郎っ!」
 草壁が叫び、手に持った木刀を真一文字に振り下ろした。男は無造作にナイフで受ける。木刀とナイフ、本来ならナイフが多少木刀を穿っても木刀の方が強いだろう。しかし、どういう訳かナイフと木刀の間で白い煙が上がり、動きが止まる。
 草壁が気合の声をあげる。じりじりとナイフが力に押されて下がりつつあった。
「ナイフなんぞに負けるかよ!」
「あっちが本物ってワケね。日本刀はこっちに任せて、草壁クンを!」
 朧月の言葉を受けて九尾が走る。巳主神は大きく跳躍して日本刀を持つ男を飛び越し、草壁の下へと走った。朧月は唇を舐めてにっと笑った。
「桜夜サンに敵うと思ってんの!? 一昨日おいでっ!」
 白に近い輝きの炎が声と同時に生まれ、男を焼いた。この世ならぬ声をあげるそれを更に桜で作られた鳥が襲った。
 巳主神は音もなく男の背後に寄ると力任せに腕を横に薙いだ。男が跳ね飛ばされる。
「草壁君、打ち合わせ通りに!」
「おう!」
 九尾の言葉に草壁が頷いて、アリサの手を取って公園へと走る。目指すは公園一番の大木。追う男の動きを九尾の鋼糸が牽制する。あわよくばナイフを奪ってやろうと思っているのだが中々それには至らなかった。
「こっちだ! 来れるもんなら来てみやがれ!」
 大木の下で挑発の声をあげる草壁にナイフが迫る。木刀に両手を添えて受けようとする草壁、そして巳主神が声をあげた。
「今よ!」
 枝から白い大きな蛇が唐突に踊り出る。そして、男を絡めとって締め上げる。苦しさにもがこうとする男。その手にあるナイフに九尾の鋼糸が放たれ、それを奪い取った。
 男が悲鳴をあげる。そしてそのまま蛇に締め上げられて気を失った。
 草壁がホッとしたように息をつき座り込んだ。巳主神は白い蛇を労うように優しく撫でる。
「ご苦労様……」
「……終った? うわ、マジやばいと思ったぜ」
「ええ。こっちも終ったわよ。流石に驚いたわね、あ、九尾さん、そのナイフに触るの気をつけてね。妙な気を放ってるから」
 こちらに歩み寄りながら朧月が注意を促す。九尾は頷いてハンカチを取り出してナイフを拾い上げる。
「何か文字が彫ってあるようですね。これはルーン、ですかね」
「んー、流石にアタシ、ルーンは守備範囲外なのよね。でも、さしずめ血を捧げれば力を与えるとか、願いを叶えるとかそんな感じじゃない?」
「そう言う気がするわね。まあ、この男が目覚めたら問いただせばいいんじゃないかしらね。梅子ちゃん、大丈夫?」
「大丈夫ですぅ……ってだからあたしはアリサですって!」
 呆然としていたアリサが梅子の一言で我に返って抗議の声をあげる。巳主神は今更思い出したようにもう一度アリサちゃんと呼びかけなおすのだった。


□0番目の被害者?
 結局、犯人は警察に突き出される事になった。こちらにはお咎めらしいものはなかった。――まあ、蛇や桜で出来た鳥が襲ってきただの、分身して殺すつもりだっただの騒げば、真っ当な警察なら取り合わない。むしろ麻薬中毒とかそっち関係を疑うだろう。
 表沙汰になる事もなく片付いた事件にアリサだけが不満そうだった。
「せっかくの霊感少女デビューだったのにぃ」
「……ご近所で評判じゃなかったんですか?」
 苦笑気味に九尾が問い掛ける。
「そりゃあそうなんですケドぉ、なんか影から影へって感じで、つまんないんですよ」
「そっちの方がいいのよ、妙な事件なんて表沙汰になる必要もないし」
「そうね……、影にこそある真実って言った所かしらね」
 表沙汰になりたくない朧月が肩を竦め、巳主神がもっともらしく頷く。
「そうですかぁ? うーん、なら仕方ないかなー? あ、でもでも、人知れず事件を解決するってパターンも燃えるかもっ」
 途端にテンションの上がったアリサに草壁が疲れたように突っ込んだ。
「お前まだ懲りてなかったのかよ?」
「懲りるってなんですかあああ!?」
 途端に絶叫したアリサに同意する事なくその場にいた全員が噴き出した。


fin.


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 0376/巳主神・冴那(みすがみ・さえな)/女性/600/ペットショップオーナー
 0332/九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)/男性/27/バーテンダー
 0444/朧月・桜夜(おぼろつき・さくや)/女性/16/陰陽師
 1717/草壁・鞍馬(くさかべ・くらま)
                /男性/20/インディーズバンドのボーカリスト

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■         ライター通信          ■
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 依頼に応えていただいて、ありがとうございました。
 小夜曲と申します。
 今回のお話はいかがでしたでしょうか?
 もしご不満な点などございましたら、どんどんご指導くださいませ。

 ギリギリの納品になってしまいました。申し訳ありません。
 また、今回ちょっと趣向を変えまして、軽い感じのバトル系に仕上がっております。
 お楽しみいただけましたら、幸いでございます。

 巳主神さま、四回目のご参加ありがとうございます。
 お久しぶりです。発注確認でお名前を拝見してとても嬉しかったです。梅子ちゃんからアリサちゃんに言い直すのがいかにも巳主神さんらしいなと思ってしまいました。巳主神さんなら梅子という名前の方が馴染み易いかもしれないですよね(笑)
 やっぱり蛇の皆さんには熱帯夜の方が過ごしやすいのでしょうか? でも、夏の夜に蛇を触ると涼しそうです。自主的に触りに行く度胸はないですが(笑)
 今回のお話では各キャラで個別のパートもございます(■が個別パートです)。
 興味がございましたら目を通していただけると光栄です。
 では、今後の巳主神さまの活躍を期待しております。
 いずれまたどこかの依頼で再会できると幸いでございます。