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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡線・冬美原>


ミス鈴浦海岸コンテスト・2003!
●オープニング【0】
 今年もまた、冬美原に8月1日がやってきた。
 梅雨も過ぎ、雲1つない青空が広がる鈴浦海岸。その砂浜に作られた特設ステージに、去年と同じ2人が立っていた。
「皆さん、1年間お待たせいたしました」
「夏恒例! ミスッ、鈴浦海岸コンテストォォォォォッ!!」
 司会の鏡巴の言葉に続き、アロハシャツに半ズボン姿という格好のアサギテレビアナウンサー・唐沢敦がマイクを両手で握り絶叫した。入社4年目、そろそろ落ち着いてきてもよさそうなのに、相変わらず無駄に元気な男である。
「色々と暗いニュースの多い昨今ではありますがっ、このミスコンで一時でも楽しんでいただければとっ、わたくしっ、燃える局アナ・唐沢敦は思う訳でございますーっ!!」
 楽しむうんぬん以前に、唐沢の絶叫がこの場をより暑苦しくしていることに本人は気付いているのだろうか? 閑話休題。
「ただ今、2時間後に開始されるコンテストの参加者を受け付けております。まだ間に合いますので、奮ってご参加ください」
 巴がそう説明すると、唐沢がすかさず口を挟んだ。
「参加条件は2つ! まず水着姿になれることっ! そして一芸・パフォーマンスを披露出来ること! 優勝すれば、豪華賞品があなたの物です!」
 テレビカメラに向かってびしっと指を差す唐沢。ふむ、去年と条件は変わってないようだ。ところが、巴がこう付け加えた。
「なお、今年は西瓜の大食いも審査対象に入っています。3分間にどれだけ食べられるか、これがそのままポイントとなりますから一芸に自信がない方にも優勝のチャンスがありますよ☆」
 お……大食いですと? これはまた奇妙な展開になったもので。
 さて、今年の優勝者はいったい誰?

●制覇のためにその1(その2なし)【1F】
 その少女がコンテスト参加者の控え室として用意されたテントの中に足を踏み入れた時、中に居た参加者の女性たちがほぼ一斉に少女の方へ振り返った。
(……注目浴びとるなあ)
 色々と感情の入り混じった視線をひしひしと感じながら少女――南宮寺天音は、テントの奥へと入っていった。
 天音が注目を浴びるのは当然のことである。何故なら天音は、去年のコンテストのチャンピオンの1人なのだから。
 この夏、天音は日本縦断ミスコン制覇の旅を実行中であった。7月の戦績はまずまずで、8月最初のこのコンテストを弾みとして、さらに制覇していければと考えていたりもする。
 それゆえ、天音はノリノリで乗り込んでいたのだった。受付に居たスタッフの女性に『昨年のチャンピオンからのベルトの返上やで』などと言っていたことからも、それが窺い知れるだろう。
 けれどもそんな天音にも心残りはある。それは恋人の海堂有紀と参加出来ないことであった。
(今日は何してるんやろ……有紀はん)
 と、有紀のことを物思う天音。想い募れば最終的には有紀の幻覚が見えそうな様子だったが……不意に天音の表情が、驚きの物に変わった。
(ゆ、有紀はん?)
 視線の先に、有紀の姿が見えたのだ。思わず目をごしごしと擦る天音。よもや本当に幻覚が見えたのか?
 いや、そんなことはない。有紀は確かにそこに居た。実は有紀は、天音より先に受付を済ませていたのだった。
 天音に向かって小さく手を振ってみせる有紀。次の瞬間、天音は跳ねるように有紀の所へ歩いていった。

●コンテスト開幕!【2】
「いよいよ始まりました、ミス鈴浦海岸コンテストォォォォッ!!」
 唐沢の絶叫がその場に響き渡った。無駄に元気で、周囲の不快指数が5上がったような気までしてくる。観客席からまばらな拍手が起こったが、スタッフの1人がぐるぐると手を回したことにより次第に拍手は大きくなっていった。
「さあさあ、今年もこの季節がやってきましたね、鏡さん!」
「はい、この季節になりました。元々は江戸時代、浴衣美人を決める催しがあったことに由来するこのコンテスト。浴衣は水着に変わりましたが、今年はどなたがこの栄冠に輝くのでしょうか。とても楽しみですね」
 ごく自然に、コンテストの由来を説明する巴。この時点ですでに、観客席から何度かカメラのフラッシュが光っていた。
 観客席、前方にはカメラを携えた者たちの姿が多く見られた。望遠レンズをつけたカメラなんかを見ると、つい苦笑してしまうことだろう。
 観客の中には志神みかね、真名神慶悟、寡戒樹希らの姿が点在してあった。3人とも、思い思いのスタイルでステージを見ている。
「ところで今年は何名の方が、このコンテストにご参加くださったんでしょうか。鏡さん、どうですか?」
「今年は25名の方が、ご参加くださいました。これは一昨年並みの参加者数ですね」
 25名、1人当たり10分で単純に見積もっても4時間オーバー。これは……ちょっと洒落ならないような。見る方も大変だが、運営するスタッフも大変だろう。
 それから司会の2人は、ステージ脇のテントの中で座っている審査員たちの紹介を始めた。去年同様タレントや文化人、冬美原商工会の幹部が並ぶ中に、一般審査員枠で宮小路皇騎の姿も見られた。一般審査員枠を除くと、審査員の顔触れはそれほど変わってはいなかった。
 直後、ステージには箱を乗せた台が運ばれてきていた。箱の中には参加者の名前が書かれたボールが入っており、巴が引いた順番に参加者たちに出てきてもらう訳だ。
「いやー、公正を期したシステムですよね!」
 そう唐沢は言うが、どの辺が公正を期しているのか相変わらずよく分からない。
 最後に今回新しく加わった西瓜の大食いの説明があった。程々の大きさの西瓜を8等分し、3分間に食べた分がそのままポイントになるということだった。すなわち西瓜1個食べ切れば、8切れで8ポイントという訳だ。
 とにもかくにも、今年のミス鈴浦海岸コンテストは開幕したのだった。

●それは不思議な光景【3】
「エントリーナンバー2番は、巳主神冴那さんです」
 テレビカメラに名前が見えるようにボールを差し出す巴。恐らくオンエアでは、ボールがアップで映し出されているのだろう。
「巳主神さん、どうぞー!」
 唐沢の紹介でステージ上に現れた冴那は、白い錦蛇柄のワンピースに藤の花をあしらった和風なパレオを巻いていた。大人な女性の色気に、一部の観客が拍手して盛り上がる。カメラのフラッシュが冴那の顔を照らし、一瞬冴那は顔をしかめたように見えた。
 一部錦蛇柄に抵抗ある女性も居たようだが、観客の反応は総じて好意的であった。が、中には去年のことを覚えているのか連れの者にひそひそと何か話している者も居る。巴がマイク片手に冴那のそばへ行く。
「巳主神さんは去年に続いてのご参加ですよね」
「……ええ」
「去年の一芸も……お見事でしたが、今年は何を?」
 巴がそう言うが早いか、ステージ袖や下からもそもそと這い上がってくる者たちの姿があった。冴那が連れてきた大小様々な蛇たちである。もちろん錦蛇の姿もあった。
 観客席から悲鳴が上がったが、司会の2人は『ああ、やっぱり』という表情を浮かべていた。
「……最近……テレビを見ていて思ったのだけれど、芸をする動物って結構居るのね……」
 マイクに向かって話す冴那。そんな動物たちに負けじとなのか、今回は蛇たちに計算と漢字の読み取りという無茶なことをさせるつもりらしい。
 まず計算。『1+1』という簡単な物から始まって、単位の計算、割算、さらには関数計算にまで発展してゆく。蛇たちはその答えを、自ら数字の形になることで表現した。結果は全問正解、観客席から大きな拍手が沸き起こった。
「……これは凄いな」
 ビール片手に慶悟がつぶやく。タネは少し分からないが、たいした芸である。
 続いて漢字の読み取り。『山』『川』といった簡単な物から、『薔薇』『憂鬱』といった物まで出されたが、蛇たちは集まってその平仮名表記を身体で表したのだった。無論、こちらも全問正解だった。
「凄いですね!」
 驚きの表情で巴が言うと、冴那はすまし顔でしれっとこう答えた。
「とある園では人を唆したくらいだもの……頭はよいのよ、蛇は……なんて。お後がよろしいようで……」
 冴那は蛇たちと揃って、観客席に向かってぺこりと頭を下げたのだった。
 一芸披露の後は西瓜の大食いだ。冴那は皮まで食べてしまうのではないかと思えるほど――事実、白い部分もあらかた食べられていたのだが――綺麗にぺろっと食べていった。
 結局冴那は西瓜3/4個、6切れ食べたのである。

●前チャンピオン登場!【6】
「エントリーナンバー11番は、南宮寺天音さんです」
 テレビカメラに名前が見えるようにボールを差し出し、巴はにっこりと微笑んだ。観客が少しざわめいたような気がした。
「南宮寺さんといえば、昨年のチャンピオンのお1人ですね。さあっ、今年も連覇することが出来るんでしょうかぁっ! 南宮寺さん、どうぞーっ!」
 唐沢の紹介を受け、天音がステージ上に姿を現した。
「おおっと! これは前女王の貫禄かぁっ? 何とティアラを被り、紅いマントにその身を包んでの登場だぁっ!!」
 唐沢の言うように、天音は昨年の優勝商品に身を固めて登場してきたのである。全身はマントに覆われ、中がどのようになっているのかは分からない。
 天音はそのまま悠々とステージ中央まで歩いてゆくと、まるでレスラーのごとくおもむろにマントを上空に放り投げた。
「おおーっ!」
 その演出に沸き上がる観客席。中から現れたのは、ゼブラ柄のマイクロビキニ。何度もカメラのフラッシュが炊かれてゆく。
(ふっ……決まった)
 得意げな表情の天音。今の演出はかなりのインパクトである。ボディの方も1年間はやはり大きいようで、発展途上から適度なボリュームへと向上していた。
「さすが前回優勝者、心得てますね」
「おおきに」
 マイク片手にインタビューする巴に、短くしれっと答える天音。
「今回の一芸はまた、壷振りなのでしょうか?」
「いや、違うで。今年は……ポーカーの役当てや!」
「役当て?」
「せや。適当にカードを引いてもろて、うちがその役を当てるんや」
 なかなか面白そうな芸である。司会者の2人が各々カードをアトランダムに引き、天音がそれをピタリと当てることとなった。
 まず唐沢の方。天音は特に考え込むこともなく、さらっと答えてみせた。
「あー……あんさん運ないなあ。ワンペアや、それも2の。たぶん」
 答えを受け唐沢がカードを開くと、何と本当に2のワンペアが成立していた。観客から拍手が起こった。
 続いて巴の方。今度は少し思案する天音。
「ストレートフラ……いやっ、ちゃうな。……ロイヤルストレートフラッシュでどうや?」
 天音の答えを聞き、一部の観客から冷笑が漏れた。いくら何でも、そう簡単にロイヤルストレートフラッシュが出来るはずがない。狙ってもなかなか出来ないのに偶然で出来る訳がない、そう思っていたからだ。
 ところが――カードを開いてびっくり。何と、ジョーカー混じりでロイヤルストレートフラッシュが成立していたのである!
 大きな拍手が沸き起こり、観客席から外国人らしい『ブラボー!』という声も聞こえてきた。
 それから西瓜の大食いに天音は挑戦した。マイペースで食い倒した結果、6切れ目に取りかかった所で時間切れとなった。記録としては5切れとなった。

●うにゃん♪【7】
「エントリーナンバー13番は、海堂有紀さんです」
 テレビカメラに名前が見えるよう、巴は両手でボールを差し出した。
「ようやく半分、折り返し地点ですね。すでに1時間半以上経過していますが、皆さん頑張ってゆきましょう! それではっ、海堂さんどうぞぉーっ!」
 唐沢の紹介の後、パタパタと有紀がステージ上に登場してきた。その姿は青のビキニ、豊かに盛り上がる胸元には何かマークがあった。全体的な雰囲気は可愛い系統に属するのではないだろうか。
 マイク片手に巴がインタビューに向かおうとするのだが、それより早く有紀の口が動いた。
「13番、海堂有紀。えっとぉ……猫のモノマネしまぁ〜す♪」
 どうやらいきなり一芸に入るつもりのようだ。巴が慌てて引き返してゆく。
「インタビューなしで一芸というのは初めてのパターンですかね、鏡さん?」
「ちょっと記憶にありませんね」
 司会の2人がこんな会話を交わしている間に、有紀の猫の物真似は開始されていた。
 ぴょこんとステージ上に膝をついて座り、軽くこぶしを握った両手を前に出すとちょうど四つん這いの格好となる。登場時より多くのカメラのフラッシュが、有紀に向かって一斉に炊かれた。
「にゃう☆」
 右手を少し上げ、招くようなポーズを取ってウィンクする有紀。男性陣には総じて好評のようだ。
「猫……ですね」
「猫……でしょう」
 隣の審査員から話しかけられた皇騎は、そう切り返した。ちなみに審査員席、観客席とは位置が異なるのでまた違った形で有紀の姿を見ている訳で……。
 それから有紀は伸びの格好をしたり、ごろんと転がって丸まってみたりなどと、猫っぽいポーズを取り続けていった。
 中には胸を強調したり際どいポーズも結構あり、そういうポーズになるとフラッシュの量が多くなっていたように思える。ふとステージ脇に目をやると、何故か携帯を手にした天音の姿もあった。
「わあ……うわあ……猫ぉ……」
 樹希は目を輝かせて、有紀のポーズに見入っていた。何とも嬉しそうである。
 これが狙ったような様子ならあれだったろうが、有紀にはそれが感じられなかった。ごく自然にそういうポーズを取っているのである。
「終わりですにゃ〜ん♪」
 最後にちょこんと座り直すと、軽く握った両手のこぶしをふるふると振ってみせた。
 その後、西瓜の大食いに挑戦した有紀だったが、食べたのは2切れ目の半分を過ぎた辺りまで。記録としては2切れとなった。

●一瞬の間に【9】
「エントリーナンバー20番は、天薙撫子さんです」
 テレビカメラに名前が見えるよう、巴がボールを差し出した。この動作の繰り返しも、あと数回で終わりだ。観客席が少しざわついた。
「天薙さんといいますと、南宮寺さん同様に昨年のチャンピオンのお1人。これはまた面白くなってまいりましたっ! それでは天薙さん、どうぞーっ!!」
 唐沢の紹介が終わると、撫子が姿を現した。その水着は、白地に鮮やかな朝顔の大輪がプリントされたワンピース。撫子からしてみれば、ちょっと冒険したという所だろうか。ちなみに去年の写真を持っているなら比べてみてほしいが、セクシー度は前年比3割増となっている。
「去年に引き続いてのご参加ですよね? やはり狙うは優勝でしょうか?」
「…………」
 巴のインタビューに対して撫子は無言でにこっと微笑み頷くと、審査員席の皇騎に視線を向けた。不思議なことに、皇騎は反射的に目を逸らしていた。
「それで今年の一芸はどのように? 確か去年は剣術をご披露されて、西瓜が見事に2つに割れたと記憶していますが」
「今年も西瓜を割ろうと思います」
 静かに答える撫子。さっそくステージ上に西瓜が1個運び込まれ、セッティングされる。
「あれ? 何も使われないんですか?」
 準備する撫子を見て、不思議そうに尋ねる巴。撫子は手ぶらだったのだ。
「はい。このままで」
 といい、西瓜に意識を集中させる撫子。辺りがしんと静まり返ったその時、撫子の右手がふっと動いたように見えた。
 次の瞬間、西瓜が綺麗に8等分されてステージ上に転がった。まるでテグスか何かでばらされたかのように。
「おおおおおっ!?」
「何だっ、今のどうやったんだっ!?」
「ファンタスティック!!」
 驚く観客たち。みかねがパシャパシャと写真を撮っていた。
「……たいしたものだな」
 慶悟は飲みかけのビールを脇に置いて、拍手していた。
「これは凄い! 一瞬にして西瓜がバラバラになりました! ハンディさん、西瓜に寄って寄って! 切断面も綺麗だよっ!!」
 興奮する唐沢。確かに西瓜はすっぱりと切れていたのである。
 それから撫子は、自分の切った西瓜で大食いに挑戦することになった。上品に食べていた――気のせいか、少々鬼気迫る雰囲気もあったような――結果は1/2個、4切れ。まあ食べ方からすれば上出来だろう。

●結果発表【11】
 20分後――無事審査員の得点集計も終わり、ステージ上に全ての参加者が揃っていた。
「お待たせしました! いよいよ、今年のミス鈴浦海岸が決定する瞬間がやってまいりました!!」
 唐沢がステージの端で叫ぶと、観客席から拍手が起こった。
「聞く所によると、今年は去年以上に混戦模様だったらしいですね」
 白い封筒片手に巴が言った。混戦だろうが何だろうが、もう結果は出てこの封筒の中に入っている訳である。
「それでは鏡さん! 優勝者の発表の方、よろしくお願いいたします!」
 唐沢がそう言うと同時に、盛大なドラムロールが流れ出した。巴が封筒を開き、中から紙を取り出す。静まり発表を待つ観客。参加者の中には、祈るような素振りを見せる者まで居た。
 そして――ドラムロールが止まった。
「優勝は……」
 1拍置いて、優勝者が巴の口から発表された。
「エントリーナンバー11番、南宮寺天音さん! エントリーナンバー16番、二谷音子さん! そしてエントリーナンバー20番、天薙撫子さん! 何と何と、3人同時優勝です!!」
 ファンファーレが鳴り響き、観客席から拍手と驚きの声が沸き起こっていた。よもやの3人同時優勝だとは、ほとんどの者は想像していなかったはずだ。
「さすがにディフェンディングチャンピオンは強かった! しかし、そこに新たに女王が1人加わりました!!」
 叫ぶ唐沢。そして優勝者の3人がステージ中央に進む……はずだったが、何故か天音の姿がステージ上に見当たらない。巴のそばにスタッフがやってきて、何やら耳打ちをした。
「あ、今入った情報によりますと、南宮寺さん体調不良とのことです。どうかご了承ください」
 観客に対して説明する巴。それを聞いた海堂有紀が心配そうな表情を浮かべた。ともあれ、表彰式は天音不在のまま進んでゆく。
「それでは優勝者への、ティアラとマントの授与です」
 冬美原商工会の幹部がステージ上に立ち、撫子にティアラを、音子にマントを授与した。後日不足分は追って贈られるということである。
「なお参加者の皆様には、冬美原商工会より特製の浴衣と、冬美原東口駅前のデパート『ROSY−8』より商品券1万円分が各々贈られます。さらに観客の皆様には、冬美原商工会より特製のうちわと、ファミリーレストラン『れもんくらぶ』より割引券500円分がお土産として用意されております。どうぞ受け取ってお帰りください」
 淡々と賞品や土産の説明を行う巴。観客に土産が出る辺り、去年よりパワーアップしているようだ。
「観客の皆様も、約4時間もの長丁場、お付き合いありがとうございました! また来年も、この場所でお会いいたしましょう! それではさようならー!」
「さようなら〜」
 大きく手を振ってコンテストを締める司会者2人。今年のコンテストも、こうして無事に終了したのである――。

●七転八倒【12A】
 コンテスト終了後――救護テントにて。
「ううっ……痛いっ、痛い〜っ!!」
 テント内に備え付けられた簡易ベッドの上で、天音は腹部を押さえて唸っていた。顔中に脂汗が滲んでいた。
「……大丈夫〜?」
 心配そうに有紀が天音の顔を覗き込み、タオルで脂汗を拭ってあげた。そんな有紀に語りかけるように、医師が言った。
「西瓜だろうねえ。5切れはちと食べ過ぎだろう」
 医師の見立てによると、西瓜の食べ過ぎで腹を壊したのだろうということだった。
「うう……無念……」
 せっかく優勝してもこうなってしまっては喜び半減、天音にとってはとんでもない落ちがついてしまったのだった。

【ミス鈴浦海岸コンテスト・2003! 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0249 / 志神・みかね(しがみ・みかね)
                    / 女 / 15 / 学生 】
【 0328 / 天薙・撫子(あまなぎ・なでしこ)
               / 女 / 18 / 大学生(巫女) 】
【 0376 / 巳主神・冴那(みすがみ・さえな)
          / 女 / 妙齢? / ペットショップオーナー 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0461 / 宮小路・皇騎(みやこうじ・こうき)
        / 男 / 20 / 大学生(財閥御曹司・陰陽師) 】
【 0576 / 南宮寺・天音(なんぐうじ・あまね)
           / 女 / 16 / ギャンブラー(高校生) 】
【 0597 / 海堂・有紀(かいどう・ゆき)
                   / 女 / 16 / 高校生 】
【 0645 / 戸隠・ソネ子(とがくし・そねこ)
           / 女 / 15 / 見た目は都内の女子高生 】
【 1593 / 榊船・亜真知(さかきぶね・あまち)
/ 女 / 中学生? / 超高位次元生命体:アマチ・・・神さま!? 】
【 1692 / 寡戒・樹希(かかい・たつき)
                   / 女 / 16 / 高校生 】


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■         ライター通信          ■
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・冬美原へようこそ。
・『東京怪談ウェブゲーム 界鏡線・冬美原』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全27場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変長らくお待たせいたしました、夏休みが終わり9月になってしまいましたが、8月1日のコンテストの模様をここにお届けいたします。本当にお待たせして申し訳ありませんでした。
・今回のコンテストなんですが、昨年同様に水着姿、プレイング内容、一芸に対する観客の反応、西瓜の大食い、審査員の傾向、その他色々と加味した結果で優勝者を決めました。その結果、上位6人が1、2点の間にひしめく大混戦となり、本文のような冗談にも思える結果となった訳です。いや……3人並ぶのはさすがに予想外でした。ちなみにコンテスト参加者は全員、10位以内に入っていたりします。
・ちなみに西瓜の大食いはですね、1分1切れと定義して3切れを基準としました。つまり普通にやっていても3ポイントある訳ですね。しかし地味にここでのポイントが効いている人も居まして……面白いものですね。
・今回のアンケートは、今後のちょっとした参考にさせていただきます。
・南宮寺天音さん、16度目のご参加ありがとうございます。王座防衛おめでとうございます。最後に揺り戻しはありましたが……トータルで見ればいい結果ではないかと思います。あの演出は前回優勝者ということも相まって高ポイントでした。
・次のアイテムをお送りします。次回以降冬美原でプレイングをかけられる際、臨機応変にアイテムをご使用ください。
【21:冬美原商工会特製の浴衣(2003年版)】
・効果時間:着用時永続
・外見説明:花火やすいか、朝顔といった模様の描かれた浴衣
・詳細説明:基本の色は紺色の浴衣。シワになりにくい素材らしい。また、吸水性もよく早く乾く。周囲の夏らしさが少し上昇する。『ミス鈴浦海岸コンテスト』参加者への賞品。

【22:『ミス鈴浦海岸コンテスト』優勝(2003年版)】
・効果時間:着用時/主張時永続
・外見説明:物品としては小さな真珠が1個埋まった金のティアラと、紅いマントで1セット
・詳細説明:物品としては外見説明にある通りだが、形のない名誉をも含んでいる。ミスコン優勝者であることを示せば、冬美原でのイベントにその肩書きで参加出来る。物品を身につけた場合は、女王様度が20%上昇する。『ミス鈴浦海岸コンテスト』優勝者に贈られる賞品。

・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。