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runners high !
「へ、編集長ぉ、着たんですから説明してくださいよ」
アトラス編集部にてお馴染みの声が響くが、その主の外見は何時ものそれとは違っていた。「ふむ、何か感じないかしら?」「い、いや、何もありませんけど?」「おかしいわねぇ、いわくつきの一品なのに」「やっぱり何かあるんですねっこの服!?」
慌てて身につけている――赤と白を基調にしたランニングフォームとシューズを―――脱ぎ去ろうとする彼だが、「駄目よっ!まだ写真も撮ってないんだから」
編集長の鶴の一声、鳴き(泣き)止むしかない三下君。「だからなんなんですかこの服、……有無を言わさず着てって言われたものだから、覚悟はしてましたけど」
物分かりが、というか諦めが早くなった部下に説明を請われて、編集長、
「電車で一時間程揺られた所で、わりかし古い住宅街があってね」
その場所でここ最近、怪異な現象が生じていると投稿があった。情報提供者が真夜中に自動販売機へ向かう途中、背後から激しい足音が。促されて後ろを見ようとするよりも早く、
その足音は目の前に。
それは、ユニフォームと靴だけの。
「そ、それがこれなんですかぁぁぁぁッ!?」
今にも卒倒しそうな三下に、麗香は平然としたものである。
「ええ、うちの雑誌にもってこいのネタでしょ?それで例の興信所を通じて調べてもらったら」
ある家に捜査は行き着いたと。古い家屋に住んでいたのは、同じように老いたお婆さんだった。そしてこれこれこうゆう理由でと聞けば、老人はぽろぽろと涙を零す。そして、
「このユニフォームと一緒に」
昔話を目の前に。
調査報告書曰く、老女の息子は『悲運の』マラソンンランナー。子供の頃から走るのが好きで、学校の廊下を全速力で駆け抜ける様から、あだ名は韋駄天。そして三つ子の魂百までも。中学では勿論陸上部に、そして走る事が大好きな彼が選んだ種目は、長く、長く続くマラソンだった。
そして訪れた初めての大会、ペース配分という言葉を捨て、驚異的にレースを駆けて、中学記録どころか高校のタイムすら上回る速さを。
だが、記録は残らなかった。ゴール目前で、彼は心臓発作で倒れた。
最後の顔は笑顔だったとは、その老人の弁である。
……美談に捉えられなくもないが、なんとなく、馬鹿っぽい話でもある。「ともかく服は借りてきたの、これで3ページの特集組むから。見出しは『無念ゆえに彷徨うランナー』って所かしらね」
「………あのう、それでなんで僕がユニフォームを着るんですか?」
「実験よ、ランナーの霊が君に乗り移るか」
泣く三下、冷静な碇、「三下君、仕事よ。……まぁ今着て何も感じてというなら、何も起こらないのかしらね。………残念な事に」「残念ってなんですかぁっ!?安心って言ってくださいよ」
喚く三下、冷たい碇、「はいはい、とりあえず記事は貴方に任すから、体験レポートきっちり書くのよ。それと、その服汚さない事ね。……貸してもらう時、息子の形見を傷つけたら包丁で刺すって」「編集長ぉうぅぅぅ!!」
まぁまぁ大丈夫、とりあえず写真を、って、
「ちょっと、靴紐がほどけてるわよ?」
「え?あ、」言われて気付いた三下、靴紐を直すためかがんで、(……着替える過程の写真、あったほうがいいかしらね)そう思って碇、
撮影用のカメラのスイッチを押す――
パシャッ
途端、
「え、」「ん?さんし」
呼びかけた時すでに彼は―――
編集部の窓ガラスを突き破り、彼方へ。
「さ、三下君っ!?」
慌てて編集長、ぽっかり空いた透明の穴から下を覗き込めば
街路樹をラリアートでなぎ倒してそして建物にぶつかおい猫型ロボットのフープ使ってもないのに通り抜けてああ人型の穴がそこから阿鼻叫喚がてか一番叫んでるのあの子で
「………はっ!」と気付いて、碇麗香は迅速、
――草間事務所に電話を繋ぎ
PCを起動しブックマークから例のページの掲示板―――
指で言葉を口から声を、声は受話器越しに、そして
―――編集部に轟くように
「みんな聞きなさいッ!」
月刊アトラス編集部より例の男が例の如く例のように不幸を見舞った、ただし今回その不幸は、我が編集部を巻き込んでいる。伝説の選手のユニフォームとシューズ、身につけた彼は暴走を開始、硝子窓を粉々にした始まりから、予想しうる東京中の被害への弁償金は、右上がりに飛翔する富と名声を撃ちしとめる可能性十二分。
首都と供にユニフォームとシューズ、そしてわが編集部の未来を無傷で保護せよッ!依頼を完遂した物にはうちのとある編集員の給料を、ああでも天引きばっかりだから雀の涙よね、……焼き肉屋チケット五千円分を報酬として進呈する!尚着用者である三下忠雄の生死は問わないッ!繰り返す、東京守護兼指定物奪還、報酬進呈――生死不問ッ!
◇◆◇
碇麗香の大演説が編集部を突き抜けてから、受話器が収まる音とPCの電源が落とされる音が発生し、秒間、完全なる沈黙としてそれが置かれた後、
「ええ話や」
涙の雫を伴ったセリフが響いた。それに対する返事はいやそんな感動する内容じゃって事よりも、
「なんで関西弁なのよ」
たこ焼きや吉本興業に阪神そして西のみのもんたこと角純一とは全く関わりがねぇ、葛妃曜へのつっこみである。しかし真に関西人ではない彼女は、つっこみもさらりと受け流して、「いい話じゃないか、ゴール出来なかった無念なんとか晴らしてやりたいぜ」本来の口調、女という本来の性を鏡で逆さにした如く美少年的な容姿に似合う、男勝りの言葉を彼女は発した。
編集長的にはとりあえず、やる気になってくれたなら万々歳。「それじゃ」早速正式に依頼しようとした、が、
「だけど、」え?「何か間違ってないか?」
スムースに進む物事に疑問符を打たれた。こちらもはてなと思ってそれを言葉にしようと口を開く、より早く、
「マラソンって道なりに走るもんだろ?」
は?
「いや、あれじゃ障害物競走だよなぁ」
いや、もしもし葛妃さん人の話を、「この侭じゃいけないよなぁ、何も破壊しないようなコースに誘導して」
「あのぉ、何ぶつぶつ言って」
「――一緒に走るか」
碇が疑問符を置く暇も与えず、彼女は答えを行動で示す、ソファから軽く飛び上がり右に半回転して目先を、三下が辿った方向へ、そして、
「行くぜッ!」
発進するっ、一歩から歩行へ、歩行から走行へ、走行から疾走へ――幾つもの行為、一辺に一瞬で終える事により、あらゆる法則に逆らい、同時に味方につければ、編集部の端から端までの距離を秒殺し、際、つまり窓、足音のリズムに合わせ再び身を跳ねさせて、三下の破った窓硝子から外へ――って、
「そっち」編集長、「まだ割れていない」
透明に騙された彼女に叫ぶ碇、曜も一瞬冷や汗かく、が、彼女は三下では無い、ガラスにぶつかりやもりのごとくずるずると落ちず、その場で前転し窓を粉砕して通過する。煌めくガラスの欠片と供に、落下する曜――凡人なら地面にぶつかり内蔵破裂―――
だけど、彼女は曜である。憎たらしく、かつ爽快に口元を歪めながら、ちょうど駆けつけてきたパトカーなる鉄を、両足で柔らかく踏みしめてクッションに。人が無い密室がへこむ力の反作用、目の前の空気へ飛び出し、アスファルトの上で加速し、そして、
葛妃曜は、
、
覚醒する。
◇◆◇
夏の暑さという物は必ずしも天上よりのみでは成り立つ物で無く、寧ろその熱を吸収した地がたぎる所為。陽ノ炎が厄介なのだ。対策としては朝に打ち水か、船で海に出る事だが、それは叶わぬ東京の歩道、日光と焼けたアスファルトでのホットサンド状態で喜ぶ者はかき氷屋くらいで、大抵は不平不満、無論、
「暑い……」
彼の中では大賞確定の流行語を、だらりと呟くライ・ベーゼもだ。今年は冷夏とニュースは言うが、彼が出かける時に限って天はこの仕打ちとは。全く、「俺が何を――」
「そんなの決まってんじゃねーかっ!アホウアホウ!」
不愉快に拍車をかける、甲高い声、
「俺様達は悪魔のサイド、神様怒ってぷんすかぷーだぜ?」
わざとクソガキのように喋りけらけら笑う。胸の苛立ちを愚痴として吐かせる事すら阻むのは不愉快鳥、使い魔、人語を操る鴉マルファスである。「ま、部屋で引き篭もってるお子様への天罰だ、なにせこの夏俺様を――海辺どころかプールに連れて行かなかった仕打ちッ!」
「うるさい……黙れ」
「アイキャントサイレントッ!」叫び声、「四六時中従っ」ぎゃーぎゃー「てる健気な俺様から、開」うるさく「放的な乙女の心を奪」苛立つ「いやがって!ていうか」ムカつく「今からでもいいから」いい加減「エメラルドグリーンの海に」
に、「連れてふぎょぇっ!?」「しろ」
甲高い声が更に極まった奇声。口調の滑りが急停止した、原因は飼い主、マルファスが首にかけている銀の輪を、袋縛る紐、きゅぅっと閉じたのである。彼の嘴から言葉は消え、代わりに蟹のように泡がぶくぶくと。
暫く続くお仕置きタイムは、泡に続き霊魂が出かけた時ギリギリで緩められた。この世へと生還した鴉はすぐ騒ぐ。そしたらまた締める。騒ぐ。締める。エンドレス。
あちらとこちらを十六度程行きかって、やっと鴉はおとなしくなった。これでライの耳をつんざくのは蝉時雨のみ、しかし風流などではちぃっとも無い。
全く夏は嫌いだ、暑くて、そしてやかましい。人間として初歩的な動作、歩行ですら命を削るのだから。全く、「――だったら」
マルファス、突然、「飛べばいーじゃねーか?」
……ちょっとの沈黙の後、ライは一言、「馬鹿」
「あーっ!?人が親切に言ってんのに何その態度ッ!恐ろしい子!」
喚く鴉にライは溜息を吐く。しかしその落胆は、鴉が『飛べばいい』という一見戯言をのたまったからでは無い。なにせ、実際ライは飛べるのだ。
ただしそれは時間制限があり、なおかつ体力も消耗し、何よりも、
「マルファス、前にも言っただろ」
淡々と説明、「草間と愉快な仲間達にならともかく、一般人にその姿見られたら」
―――俺達が依頼内容になる――例えばゴーストネットの目撃情報
「だから馬鹿って言ったん」「でもよぉ」
鴉、ライの頭に乗り、彼の手に払われる前、手のように扱える器用な翼で、
「あのかわい子ちゃんは飛んでるぜ?」
指した羽先、見上げれば、弱い視力でも確認できた、
羽根付き悪魔にのって、空駆ける金髪の子
……呆然とみつめる中、それはかなりのスピードで、上へ、上へと。親指の腹くらいの大きさになった時、ライは視線を戻した。いや、まぁ、なんというか、
「マルファス」とりあえず言い訳、「あれは例外で」しようとした相手、
すでに居なく。「マルファス?」
「HEYそこのかわいこちゃぁぁぁんッ!」
声がしたほう、つまり、再び上を見上げれば、マルファスは羽を全力ではためかせ、金髪に追いつこうとする、目的は、
「ちょっと電話の番号教えてぇッ!」
メル友。
ライのポケットから、携帯を持ち去り首輪にかけて。
すぐに窒息地獄に陥らせようとしたが、考えて、やめた。落下して携帯が粉々になっては、アドレス登録等が面倒だ。誠に遺憾であるが、放置する事にした。だって、
目的の場所へは着いてるから。
夏季限定の避難所、草間興信所である。
わざわざ捕り物するよりか、速やかに極楽スペースへ移行。それが色々参ってるライの選択だ、扉へと向かう。
(しかしあのデビルサモナー)
ちらりと伺った面影は、子供である。
(下級とは言え、あの年で)
外見と実年齢は違うのかとかどうとか、意味なき推論をしながら、
(さて、と)
ライが扉を開ければ――
「面倒な事放り込んできたもんだ」
展開が、待っていた。
ここの主、草間武彦がだれている。客の侵入に気付かずに。それはもう一人も、「依頼じゃなくて願い事みたいだけど」彼と話す者も同じくで。話す者は、
「三下君が絡んでるとなるとねぇ」
シュライン・エマ。
今や事務所に、そして草間にとって無くてはならない存在。そこら辺りの諸々は、時の積りを参照していただくとして、今は、今の話。
「好き嫌いの問題じゃなく、動かなきゃいけないという事か」
「でも拙いわよ武彦さん、うちに集まる人達に任せたら」未来予想図、「遺品なんかあっという間に消し炭――」
「三下がどうなったんだ?」
二人、は、
声によって初めてライが来ていた事を知った、僅かだけど驚き、しかしライは構う事無く、ソファに座り、麦茶を所望しながら、
「詳しく聞かせてくれ」
――ミスター不幸のズタボロコメディ
面白そうな話に、ライは今日始めて笑った。
◇◆◇
今という時代の人の仕事は、自然界の影響を直接受ける事は少ない。大半がデスクワークなので、文明の機器『空調システム』の加護を受けるからである。しかしそれでも、春には春の、そして、夏には夏の条件を一身に浴びねばならぬ職業だってある。……遠まわしに言ったが、つまりは中でするか外でするかだ。そして、鳴神時雨の今の作業は後者に当てはまる。
「――あと少し、か」
呟く先は、彼の住処。あやかし荘の壁。色は、
今彼が塗り替えている最中だ。はしごの上、右手にハケで左手でペンキ。その作業は模様替えで無く修復である。色落ちした部分を元に戻しているのだ。単調な作業だが、これに夏の負荷が加わる訳だから結構な労働、改造人間という強力な身ではあるが、汗は掻く。やがては喉の渇きも覚え、一旦作業を休むかと考え始めた時、
「時雨さん、麦茶を入れてきたんですけど」
好機、まるでそれを見計らうように、この建物の管理人である因幡恵美が、言葉状態を表す如く、お盆に氷が涼やかな麦茶をお盆にのせて、梯子の下から声をかけた。
「ああ、直ぐ降りるから適当に置いてくれ」
はい、と言って因幡恵美、言われた通りに無難な所へと心遣いを置く。そうしてから聞いた。
「どれくらいで終りそうですか?」
「西側と北側は終わったからな、残りは、」
痒い所まで手が届くように、隅の所を塗り終える。「一つだだ、その前に」ハケをペンキの方へ突っ込み、片手で梯子を、「茶を」降りる途中、
うわぁぁぁぁぁぁぁ……
「……この音は」
「音?」
「正確には、声だが」
唯の人間である因幡恵美と違い、時雨は腐っても改造人間、普通の鼓膜には届かない音も把握できる、そしてそれが何かも、だが、
「問題は何故あいつの声が」
矢のように近づいてくるのか――は、「あれ、」聴覚よりも視覚、「三下さん」因幡恵美が声かけた、人は、
―――嵐よりも正確に、脚立の足元を払っていった。
「きゃあっ!」と、風の悪戯(スカートめくり)に抵抗する恵美の声と、「ぎゃあぁぁぁああいあいあぁぁ!」と、フェードアウトしていく三下の声が重なると同時、倒れる脚立、供に、ペンキが、「あ―――」舞い上がるスカートを押さえていた恵美にかかろうとする――
間一髪、時雨が救う。
彼女の髪は染められる事無く、ペンキの色は地面に撒かれた。そして色の一部は、
冷えた麦茶にも、たらり。
「……ふむ」抱えていた恵美を降ろして、「これは取り押さえてペンキ代を、そして」
―――仕事の合間の一服という、生きる価値を奪った事に対する代償を
「払わせて問題が在ろうか」「え、えっと」「いや、無いッ」
質問して自分で答えた時雨の元に、相棒のバイクが届くのは早く。そして、発進するのも早く。そのスピードであやかし荘からの距離、
「……お茶だったら、もう一度入れたのに」
少し間の抜けた意見も、三十倍の力でさえ聞けぬ所まで。
◇◆◇
台風一過、それがこの惨状を表す最適の言葉だろう。
電信柱や街路樹のような、直立する物は等しく伏せ、ゴミ箱はぶちまけられ、赤いポストはへこみ、アスファルトの一部も引き剥がれている有様。獣道、人が歩むには厳しすぎる、が、
警察の交通整理が間に合わなかった場所は、無知謀の子供がついふらりと踏み入れてしまう。物珍しげな光景に、胸弾ませる子供も居て。だから、周りの大人の注意の声も届かない領域に行った、キッズブランドに身を固めたあの子は、
嵌る―――前を見て生きる人間に
上から、破裂しそうなくらい傷ついてた信号機が、時の重さに負けて落ちてきても。
気付かなく。やっと把握出来るのは、赤青黄の三連星がまさに直前まで、もう運命から逃れない距離まで来た時。見上げても、事態を知れず、叫ぶ事すら叶わず、唯、
結果が生まれようとする。が、
刹那、不確かな未来が予想しない今、
「避けろっ!」
目の前に声と、その主の姿が置かれた瞬間、
子供の身体は運ばれていた。自分の立っていた場所に塊が落ちる景色の傍観者として居られる距離で。
最初何がどうか解らなかったが、やがて命が危機に晒されていた事を知ると、子供の怯え。その場でへたり込みそうになったが、それは、遮られる。
誰かの手によって。
「危ないだろお前」
子供を助けた手によって。
抱えられている―――
その手で、
額を、軽く小突かれた。その顔は、黒い耳に、そして、
瞳の色は。
熱い視線を意に介さず、その人は、
「じゃあ、俺急ぐからな」
その一言を置いて、砂煙っ!あっという間にその場から去って行き、
ゆるく荒廃した場所に残された子供。呟いたのは、
―――かっこいい
とまぁ、こんな調子で、
小さな星の、小さな本州で、少年少女の小さな恋が七つ芽生えたのは別の話である。
◇◆◇
時戻して鴉の話である。結末から言うとマルファスは撃沈していた。挫折というのは力及ばない時か、思うとおりに事が進まない時に起こる物で、鴉は後者、それはそれは衝撃的な事実で空飛ぶ翼が固まったのだった。
相手、かなりの速さだったが、地球を逆さに見るため宙返りや、ジェットコースター気分地面激突スレスレで舞い上がるとか、遊んでいたおかげで追いつけた運命の人、ナイストミーチュー「お嬢さん」そうファーストコンタクトかませば、
異形の乗り物には不釣合いな可憐を翳す――
黄金の美しさをたなびかす髪と、小悪魔のような顔、溢れそうなくらい大きな瞳、抱え上げたい小柄な身、まさに理想の少女、と、
思ったが、近くで見れば、「れ?」違和感、
その正体を、
「ボク男だよ?」
瀬川蓮は呆気なく言った。
……少年である。マルファスが胸ときめく異性の逆である。確かに近くで見れば判別できる。でも遠くから見たら、少女と勘違いもしなくもない、可愛さ。
実際その容姿、胸に来る。巷に溢れるストリートキッドの頭である事や、世界中のパパママの契約による息子なのは、少なからずその特徴が関わってるかに見える。物語のヒロインは例外なく美しいという事からも解るように。
ともかく、十三歳というまだ性の判別がつきにくい年齢の手前だったとは言え、鴉はこの事実を不覚でなく、単純に不幸とし、「なんだよこのツキの悪さっ!俺様が鴉だからかよッ!じゃあ黒猫はエブリディスリップバイバナナかよっ!その割にはあの宅急便事故ってねーじゃねーか!」とのたまって。
でも、蓮は興味が無く、いきなりの来訪者を透明な空気とした。夏の空だけど「あーシカト!?シカトじゃねーかッ!」飛べば涼しく、弾むように鼻歌を浮かびながら、空を、「あ、こらてめぇ待ちやがれって!話を」透明な空気を――背後に遠ざかるピリリリリっという着信音も―――健やかに通り過ぎていったが、
彼が躓く物が、地上にあった。
「あれ?」
それは砂埃をあげながら、およそ人間の出せる最大速度で失踪する、……時々街路樹をぶち倒している、ランナー。
とてもとても見覚えのある物で、それはこの魅力の塊である少年にさえ気に入られた、
玩具―――蓮はくすりと微笑むと、瞬間で、
「何やってるの〜?」
酸欠状態で顔青紫になってる三下の前に、同じ速度で位置をつけた。
最初は疲労した心臓を停止するくらい驚いた三下だったが、それが見知った子だという事が解ると、挨拶も状況説明も抜きに、「た、助けてくださぁいっ!」と涙ながらに訴える。そして事情を途切れ途切れに話し終えた後、再び助けてくださいと言う彼の前で、瀬川蓮嬉々、
「助けるって、今の三下世界記録出せるよ?それ止めちゃうのはいけない気がするしぃ」
意地悪を言う人、子供に弄ばれる大人。
「そ、そんな事言わないでくださいよぉっ!蓮君だったら便利な悪魔とか呼び出せるじゃないですかぁぁぁぁぁっ!」
「んー、足を切るとか?」
「もっと穏便に、穏便にぃっぃぃっ!」
泣き叫ぶ三下に冗談だよ〜と言ってけたけた笑う子供。
「と、ともかくお願いしますよぉ!今、こうやって喋るのも、辛くてぇぇぇぇぇ」
そのセリフを聞いて、連はちょっと考えた後、「じゃあ、助けてあげる」
さすれば女神の祝福を受けたように、ぱぁっと顔を輝かせる三下、だが、
「なぞなぞに答えられたら」
「なんでそんなミッション作るんですかぁぁぁっぁあっ!?」
叫び虚しく、事態は進展――第一問、
「パンはパンでも食べられないパンは?」
「え、か、固いパンじゃないんですねっ!」
「ううん違う、食べられないの」
それだったらひっかけの答えで、凱旋門の国生まれのや、地震等の非常食の奴は無い、真実は常に一つッ!
「フライパンっ!」
絶対なる自身をもって叫んだ結果、
「ぶー」「なんでですかぁぁぁぁっぁあぁっ!?」
泣き叫んだら咳き込んだ、身体から一気に酸素が抜け、生涯何度目かの三途の川水泳からギリギリで帰還して、訴え、「ふ、フライパンじゃないですかっ!?あれは食べ物作る物であって、圧力鍋で煮込んでもあれはっ!」
「でも、この子は食べるよ?」
―――ああそりゃ君の手の平に乗ってるちっちゃな牙付きの悪魔なら、地球ですら喰らいそうですね
「ってぇぇぇぇっぇっ!?それじゃ答えはなんなんですかぁぁっぁっ!!!」
「無いが正解」
「なんですかそれぇっ!?」
無体な仕打ちに、いちいちちゃんと反応してくれる物だ。連が三下を気に入っている理由。
ま、でも一頻り楽しんだのだから、(一応なんとかしてあげよっかな)と、(うーん、ゴール出来なかった事で成仏出来ないなら、ゴールさせればいいんだよね、死んだ競技場に三下を無理矢理運んで)計画を練り終えて、さて実行に移そうとした時、
三下と蓮を影が覆った。上を見ると、
バイクが、飛び越している。
それは蓮には見知らぬ物で、だが、三下には、「し、時雨さん」と、搭乗者が人ならぬ改造人間だと察知して、
そしてバイクが前に着地して、三下は(ああ進路を妨害して僕を止めるつもりなんだ何時もどおり痛いけどもう慣れた事だしとりあえず休めるか)と速やかに覚悟を完了させたが、
バイクは、ブォンと高い音をあげて走り去った。「え?」と三下が思った瞬間、
彼の意識とは関係なく、バイクに迫るスピードが生まれた。「ぎえぇぇぇぇっえぇぇっ!?」
最早人の肉には耐え切れない領域、苦しみで三下、叫ぶ!叫ぶっ!そしてあっという間に去る、取り残されたのは蓮、「……ええと、」とりあえず追ってみようとしたら、
飛行魔物のスピードが若干落ちている事に気づく、その原因は、「突然で悪いが」バイクから乗り移ってきた者、
「この乗り物の方が先回り出来る、運んでいってくれ」
右手には、さっき出あった鴉を首絞めて下げ、左手には、厚い洋書、
黒い服の男、
「お前と違って、俺はしょっちゅう呼び出せない」
目的が一緒の同業者に、蓮は珍しく協力する。
◇◆◇
「しかしうまく行くのか?」
「案ずるよりも産むがやすしって言うじゃない、やるしか無いのよ武彦さん」
「選択権は無し、か」
「ええ、それと走る密室で煙草吸うのも禁止ね。喉に悪いから」
「……もとより、片手だけのハンドル捌きで追える相手じゃないだろ」
「それもそうね。………メール、来たわ、麗香さん準備終わったみたい」
「行くか」
「ええ」
………。
「ドライブなんて久しぶりね」
そっと目を閉じた彼女の、横顔を見る男、
―――、
脇見運転には、注意しましょう。
◇◆◇
上野、団子坂。
多くの文芸作品に登場した場所として有名で、菊を飾った菊人形の祭りとしても名を馳せた、昔からの店もちらりほらりと顔を覗かせる、古より続く場所である。そして同時にこの場所の地形は、起伏や曲がり角に富んでいる。それを、鳴神時雨は利用する。そう、
「足がぁっ!足が痛いですぅぅっ!!」
走者の体力を奪う為。彼を(怨霊を)意のままに操れる理由、それは、マラソンには先導者が付き物だからである。ひた走る者にとって、それはトップの証。流れ星を逃さぬよう、追いすがるのは必然で、んで例えばこう膝つく勢いで思いっきりカーブを曲がれば、「ぎゃああぁアキレス健がぶちってぶちってぇぇぇぇえぇっ!」
「うるさい男だ、何時もの事だろうが」
「し、時雨さんッ!なんで止めようとしてくれひぎゃぁあうっ!?」
このように、と。実際ペースを乱さない事が目的の先導車に裏切られた体は、明らかにユニフォームの意思に応えられなくなって来てる、それを伺って時雨、(頃合か)
バイクを更に加速させ、後ろの悲鳴を増幅させ、その状態で、坂を駆け上がり、まるでジャンプ台のように浮かび上がる鉄塊を、
重力制御で、目前のビルの屋上へと引っ張り上げる。三下、「え、いや、それじゃ僕は」ここでギブアップ、
タンッ!
足音が高く鳴り、「え?……」タタタタンっ!「ぶえぇぇぇぇぇっ!?」
タタタタタタタタンっ!と、今までとは比べ物にならない足の回転っ!その勢いでビルへと、突っ込み、「当たる!ぶつかるっ!激突するぅっ!!」三下の予測は、
外れる。怨霊は、
直角の壁を駆け上がった。「えぇぇぇえっぇっ!」
当人がまず驚く動き、忍者の技を習得してない身体だというのに、直角になりながら遙かな空へと進んで行く。そして、
地面である壁が、無くなると、再び霊は重力に従って、
先導車と同じ屋上へと、降り立った、
刹那。
蛙のように、彼は潰れた。
「むぎゅう!?」
両手を広げて、石の地面にめり込んで行く、これは、
≪重力制御≫つけもの石が置かれるように。時雨の技、並みの人間ならとっくに圧死、が、
三下は、否、怨霊は立ち上がろうとする。寄生している三下が、とうとう気絶して泡吹いても。
圧倒的な光景を見て、時雨、
「思った以上に心残りがあるようだ」
そう、呟けば、「足止めにしかならんぞ」
「充分だ」
誰かが、答えた。
誰かは、空からだった。
誰かは、少年の操る空飛ぶ悪魔に乗っていった。誰かは、そこから飛び降りた。誰かは、「死んでもいいんだよな」と三下が起きてたら喚きそうな台詞を言った。そして、
誰かは、「来い!」
ライ・ベーゼだ。
「フォルネウス!」
絶対の叫び、轟かせば――変化
闇たる瞳から黄金が輝き、絢爛たる覇気を纏い、
何よりも、背に負うは、彼の使い魔である者の羽が如く、しかしそれよりも雄大な、破壊の歌を奏でそうな、黒翼。
十五分限定の、魔王。
始動する。
唐突に、重力の戒めを振り切るランナー、彼は目の前の雄大な姿を、ただの障害物だと認識する。それならば、吹き飛ばす。獣の突進。千年の巨木すら打ち倒す勢いを、
ライは、人差し指で止めた。正しくは暴風―――北風に立ち向かう旅人の前から、ライは、姿を消す。前しか見ないランナーの死角、頭上へと。ライ、
唱える事も無く――雷雨ッ!
おそらく人が視界で把握できるだけの量の天候、それを人影一つ分に圧縮して彼の上へ、滝壺、流される事も叶わずその場に磔になるランナーに、追撃、
水柱が、その侭電撃を帯びた。「ぎゃりりっりりりぃぃぃぃっ!」
身体中から火花が散り、消し炭になる程の威力に、三下は目覚め、そして失神し、また目覚め、何度も繰り返される強烈な責め苦――
空、晴れた時には。
完全にのされたランナー。最早立ち上がる事は無いだろう。依頼完了、だが、
「期待した程面白くはなかったな、バナナの皮で滑る事も無かったし」
もう羽根もひっこめて、凡人に戻ったライは、手で顔を扇ぎながらそう言った。一方こちらはまだ変身を解かない時雨、「俺としては、ペンキ代さえ取り返せばいいのだが」
「でもあんたが無理矢理取り押さえてたら、ユニフォーム傷つけて、報酬はもらえなかっただろ」
バイクで追撃してる時雨に、ライが事情を教えなければ。
「俺は報酬は要らないから、あんたが全部もらえばいい」
「それなら――」
時雨はバイクにもたれながら顔の向きを変え、
「貴様と山分けだな」「え、ボク?」
今まで蚊帳の外に居た少年に。「ああ、運賃はもらっておくべきだろう。貴様の大きさなら、焼肉は二千円分で満腹か?」
「……ええと」
瀬川蓮には二つ拒否する理由がある、第一に、彼は報酬に飢えていない。全国にパパとママ達に頼めば、満漢全席すら口に出来るのが彼だから。そして何より、もう一つの理由、
「そこのおじちゃんと違って、」「お兄さんだ」「ボクの目的はさー」
訂正もせぬ侭目的の相違を、『三下自身の捕縛では無く除霊を念頭に置いていた』事を、語ろうとした、時、
どくん、と。
音がした。
力強く、大地を揺らすような低音、それは、
三人、聞き覚えのある――どくん、この、
「音は」
心臓の鼓動。それは、
ランナーから―――途端ッ!
ぶおぉう!
「ッ!?」
強烈な風が吹いた、目を閉じるくらいに。まばたき程度の暗闇を見て、瞳がまた光を飲み込んだ時には、
ランナーは、ビルから飛び降りていた。
「何っ!」
すぐさまバイクで追う時雨、対照的、疲労困憊のライは駆け足で、それ程事態に追いつく事に必死でない蓮は、ゆっくりと、
高いビルより地上を眺めれば、そこには絶叫しながら走る三下と、
虎。
否、虎そのものでは無い、人であり、詳しく言えば少女であり、だがその黒い耳は、黒い尾は、何よりも、その速度は、人ならざる身である者。
「さぁっ!中盤にさしかかった所で、」ビルの上まで届く、拡声器通しての、聞き覚えのある声を響かせる、
「曜選手が東丸選手に追いつきましたっ!」
……遠ざかっていく、女性の実況を眺めながら、ライ、
再びその場に座り込んだ。なるほどな、と、時雨と同じ事を言って。それに蓮、「なるほどって?」
「お前と目的が一緒って事だ」
懐に放り込んでおいた鴉を(というかマルファスにかけてあった携帯を)取り出しながら、「ゴールさせて、成仏させる」
蓮のなんらしかの反応を待たず、彼は電話をかける。「だったら、お前は協力した方がいいだろ?そういう性質じゃなさそうだが、偶には例外があったって良いだろ」
「で、子供にまかせっきりで、おじちゃんは何もしないの?」
「お前と違って俺は非力だ」
実際、お兄ちゃんと訂正する気力も無い、「住所聞いてやるから、優しくゴールに連れていけ」
発信先、アトラス編集部。
「あいつの母親だって、お前と同じ目的だろ」
◇◆◇
鼓膜よりも速やかに、人の波動は伝わる事が有り。それゆえに、天の裁きを受けながらも、ランナーは甦った。
伝わった物は、懐かしさだった。
初めて知る懐かしさだった。
マラソンとは孤独な戦い、それは一つの真実。だけど、
仲間だって居る――敵という仲間が、
好敵手という仲間が、僕に、初めて、
手を差し伸ばしてくれた―――
ひゅうっと、背中が遠ざかる。
あくまでも敵だという事を思いなおし、宙を舞う借り物の手を引っ込めるランナー。そして、獣の脚力に対し絶望を感じながらも、
希望として、一気に追いつく。驚きながらも、曜は、
「あんたなぁ、自分がどれだけ迷惑かけてるか分かってんのか?」
ちょっと足を抜きながら、会話を始めれば、
(太陽の下で走れるとは思えなかったから、嬉しくて)
言葉を、三下の使い物にならない泡ブクブクの口を使う事無く、直接曜に伝えた。
「まぁ、気持ちは解るけどよ、……俺達のやってる事はマラソンだろ?物壊すのはなんか別の競技だろ」
(止ってるのが悪いんだよ、壊されるのがいやなら、僕より速く動けばいい)
しょうがねぇ奴、と曜は溜息を吐いた。霊は多分、少し笑った。そして曜―――
身体を前傾、風を切り裂くように、手すら地を蹴るように、加速する、そして、叫んだっ!
「だったら俺がライバルだッ!あんたより速い奴が居るって事解ったら、潔くあの世に逝けよ!さぁっ」
Runners high !
身体と、技と、力と、精神のせめぎ合い、赤い信号を飛び越えて、下水道を使いショートカット、風を、熱を、全てを引きつれ、レースは続いていく。
言葉は最早二人に要らない、全身全霊を比べあえば、秒刻みに限界を超えていく、新たな自分に、出会い別れる、まさに42,195キロの――
「長い旅路ですっ!」
「なぁシュライン、」え?「とっくに40キロ以上走ってると思うが」
「……実況にそんなつっこみは野暮よ武彦さん」
それもそうかと草間武彦、ハンドルを勢いよく切った。右に傾く白いワゴンの窓から、シュラインは顔を出して拡声器より、
「さぁ、多くのギャラリーの熱い視線を浴びて、先頭集団は左カーブを曲がりますっ!両者一歩も譲れませんッ!」
勿論、ギャラリーは野次馬であり、熱い視線は唯の驚きである。ランナーの周りの事象を全て『レース』に仕立て上げていく。こうして彼をのめりこませる事で、誘導しやすい。最終目的地は、あのランナーが倒れた競技場。
さぁ、実況、「さぁ三つ又に分かれた道で一番の難所、肺破りの坂へと向かっていきます!」
右の歓楽街も、左の電気街も無視して、足を殺す20度の角度へと走る二人。それを見送ってシュライン、拡声器を引っ込めて一息吐いた。
「途中で休んでいいのか?」
「いいのよ、今はCM中よ」
「なるほどな」
素敵な言い訳に微笑む彼、なら俺も煙草を、他人に迷惑かける気?
「あいつ等みたいに、」フロントグラスの向こうの二人、「共通の嗜好を持つのは悪くないと思うが」
「その嗜好品は値上げしたのよ武彦さん?事務所が潰れても構わないならいいけど」「すぐに金の問題を持ち出すな、シュラインは」
「それだけじゃないわ」
唇に手の甲をあて、くすりと笑う人に、僅か首を傾げる草間、
「武彦さんの身体の事よ、煙草は身を滅ぼすわよ」
そう告げる、が、言っても無駄な事は解っている。
「リスクを支払わなければ対価は得られないだろ?」
「それ程の見返りがあるとは他人には思えないけどね」
「ああ、」草間、「どうやら君と共通の趣味を持つ事はないようだな」
その言葉に、シュライン・エマ、
「そうね」
肯定の言葉。そして、
「お互い、一番好きな物が違うから」
そう言って、彼を見る彼女。
高鳴りはとうに過ぎ去って、頬の紅も胸の中、
それでも、繋がりは、
確かであり――「シュライン」
「何かしら」柔らかく言葉を受け止めれば、
「最近、何か映画見たか?」
―――ってあんた何を今までの流れを無視して違う話題を
「………そうね」
前を見直して、二人で冷や汗垂らしてから、一言、「感動物の映画だったから、カーアクションは無かったわ」
「だったら今から見るとするか」
当事者として―――三つ又の真ん中を登りきれば
その先は崖で、走者もダイブインスカイしていて。
「というか時雨!なんであいつは普通の道を選ばないんだっ!」
「改造人間に常識は通じないわよ武彦さんッ!」
◇◆◇
狂想曲の喧騒から遠く離れた場所、そこにあるのは蝉時雨、風鈴の音、蚊取り線香、日本の夏。
だがそれを享受する人の顔は晴れない、ぼうっとした侭、庭を見て、そして、仏壇を見る。
息子の位牌。
それを暫く見て、だけど、だからと言ってどうにもならないから、手入れの行き届いてない庭の方へと目を遣り、そしてまた位牌へと、繰り返しだ。
他にする事はと言われても、娘夫婦が一緒に暮らそうと誘ってくるのは土曜日。何も無い、だから座り続ける。だけども、老体には、辛い季節である。その動作でさえ、なんだか溜息が出る。
別の行動をしたのは、喉が渇いてからだ。麦茶のある台所へと立ち上がる、その目に、また仏壇が映る。
老女の人生は、息子が死んだ時より止っているのだ。それは、余り幸せな事では無い。
だから、来たのだろうか。
「おばあちゃん」
背後から、庭の方から、可愛らしい子供の声が聞こえた。すぐさま振り返れば、
不思議があった。
金髪の、かわいらしい子供。それが突然現れた事も、驚愕の類だけれど、
なによりも、悪魔。
それに乗った、子供。
恐怖よりも呆然、思考が停止した老女に対し、
子供は、唐突に呟く。
「寂しいんだったら、僕がなってあげてもいいけど」
値踏みするように家屋を見回して、
「とてもそんなお金は無いよねー」
「あ、あんたは」
「だから」
連れて行ってあげる―――それは、誰の為でも無い
「子供の為に、ね」
無邪気に、そしてめんどくさそうに、蓮は手を差し出した。
◇◆◇
全身の筋力が悲鳴をあげる。心が削り取られていく。
だが浮かべるのは笑み、規則正しい激しき呼吸。だが、喉の苦しさ増すのをしって、
「ちょっと待ておっさんっ!さっきからまともな道選んでないぜあんたッ!」
曜はたまらず叫ぶ。崖から飛び降りるは車の上を飛び渡るは水面を忍者のように駆けるはで、これでは彼女が懸念した障害物競走そのものだ。だが、
「楽した道を選んでも面白くなかろう」きっぱりと、「サウナで我慢するからビールはうまい、人生と一緒だ」
全てはランナーの無念を晴らす為に、と。
「脱水症状になったらどうすんだよ」
「最初に言ってただろ?生死不問だ」
「あ、そうだったな」
そう言って、曜は自分に追いすがるランナー、正確には白目剥いている三下に振り返った。冷静に考えればあんなのに追跡されているのは怖い状況である。
「全く、三下の身体でよくここまで追いついてこれるもんだぜ」
ま、この侭俺の圧勝で―――
「戦場なら、その油断に殺される」
「ん?」と何がだよと聞き返そうとした刹那、
ランナーが自分よりも先に言った。
時雨もその速さに合わせ、バイクを前進させる。曜、
「面白いじゃねぇかっ!」
足の回転を増す、己の痛みを己で踏みにじり、脳内麻薬を溢れさせる。必死の形相のランナーに、悪魔の笑顔で追い詰める。ランナー、一瞬の恐怖を覚えた、が、
すぐに曜の上を行った、ならばと彼女も加速する。新たな自分を次々と投入し、比べあい、勝って、負けて、そう続け、
スパイラル。
永久に似た限りある瞬間、果ては、
決着―――その舞台へと戦士たちが
「今たどり着きましたっ!」
崖からのジャンプに(時雨の重力制御の力を借りて)耐えたワゴンから響く実況が示す場所、かつてランナーがゴール出来なかった競技場、
歓声が、飛んだ。二人を称える心地よい轟き、それに草間、「シュライン、君か?」
「ええ」策略家、エマ、「麗香さんと零ちゃんに頼んでね、盛り上がるでしょ?」
ちなみにあのゴールテープもね、と。レースはクライマックスだけども、実況を一旦休めて言った。
「……君が拡声器と一緒に、ビデオを構えていたのもか?」
「これは売る為よ、妙な発光物が映っていたら麗香さんにね」
感心して溜息の草間、「そこまでやり手の会計が居るのに、なんでうちは潤わないんだろうな」
「自分の胸とボロボロの肺に聞いてみたら?」
「俺は空気を吸うように、煙草を吸ってる」
ニコチン中毒のダサい名言に呆れながら、シュラインは実況に戻った。先導役のバイクは通常のレースと同じくもういない。おそらくは、競技場の外。そう、もう導かずとも、目的地は決まっている。「トラックを回っていきます、第二コーナー!ここで曜選手が外から行きましたっ!その目に映るのは東丸選手でしょうか、それとも彼など眼中になく、ゴールが目に入ってるのかっ!」
競技場を突き抜ける魂の実況、だが曜の、そしてランナーの耳には入ってない。一心不乱。ただ前を、より前を。
(イケる)否、(イッテやるッ!)
鬼の形相で走る曜、歯を食いしばり、十センチ、二十センチ、相手に差をつけていく。「第三コーナー!ここを抜ければ最後の直線ッ!」
言葉の終りと同時に、要は到達した。ランナーとの差は二メートル、三メートル!
油断はしない、最後まで全力で、駆け抜けろ!
全てをかけて風になれ!―――曜は咆哮して、最後の力を振り絞って、
「曜選手このまま行くかぁッ!」
目前に迫ったゴール、見定めた時、
「到着〜」
かわいい声の、子供に、
「ご対面だよ」
手を引かれる老女―――
その刹那、曜の隣を、光が過ぎ去った。
「え」
思わず漏らした驚嘆の声、その光は、速さ、
今彼女より前に、ランナーは、
両腕を振り上げて駆け抜けたランナーは、
一着。
ゴールテープを切った彼を見て、蓮、
(成仏出来なかったのは)
もう一つの気がかり、
(ママが心配だったからだね)
現れた愛しい人、
(安いけど、泣ける話だよね、一応)
あとはその胸に、
(飛び込んで)
泣けばいい。
そう、瀬川蓮が言葉をくくって、すぐ去ろうともう一度悪魔の背に乗った時には、
両手を広げるランナー、やってくる、子供を、
老女は涙を流しながら――
「この、」え?「ばかちんがぁぁぁっぁぁっ!」
どぐしゃぁぁぁぁぁっぁぁっぁっ!
思いっきり息子をグーで殴った。
「「「えぇぇぇぇっぇぇぇぇぇっ!?」」」
シリアスモードから百八十度脱線した展開に会場総員で絶叫した、「あ、あーっと今ものすごいカウンターが入りましたっ!」シュラインさんもてんぱってます。
んでもって、血反吐のランナー、ていうか三下君にマウントポジションで、老人とは思えない連打、連打っ、連打ッ!んでもってその衝撃に三下、「ぶへぇっぇっ!?なに、なに、なにぃっぃっ!?」最後まで気絶してりゃ幸せなものを、目覚めてしまうのは彼の天性なのか。いいのが顎に入った段階で、
「ちょ、ちょっと待てっておふくろさんよ!あんたの息子なんだぜッ!?」
死闘の疲れもさて置いて、必死に羽交い絞める曜、その光景を、暫しぽかーんとしていたのは瀬川蓮であるが、すぐに、
「何を」
彼は、子供を子供とは思わない、親には嫌悪を、否、
嫌悪を超えた使命感を、つまりは、
罰を。
彼女の息子への仕打ちが罪であるならば、罰は。(許さない)
静かに、だが内面で激しく、
新たな魔を呼び出そうとした、途端、
「本当に」
泣きそうな声、
「本当に、馬鹿だよ」
老女の、声。
「人様に迷惑かけてまで、私に会って」
声は、
「私が喜ぶと思ったかい?」
感謝に、溢れていた。
そうしながらも、もう一度母は、息子を殴った。
「え?あ、あの、僕にはなんだ」びしっ「がぁっ!」
戸惑う三下の首筋に手刀を叩き込んで気絶させたのは、バイクを降りて駐車して来た、変身も解いた仮面ライダーであるが、それは置いといて、
意識が抜けた身体を、さっきまで、走る事にしか使わなかった身体を、
母を抱き締め返す為に利用する。
「……あんたって子はぁ、二度と、面見せるなっ!」
(母ちゃん………)
「………だから」
老女は、なみだ目で、
「最後に、その顔をよく見せてくれよ」
、
「馬鹿たれ息子の間抜け面」
人が溢れた場所で、親子の為に、静寂が作られる。皆沈黙して、そっと二人を見守って。
蓮は思う、安い話だと。
三文にもならない小説だと。だけど、
怒られた事の無い彼にとっては、あのやりとりは、
ちょっとだけ羨ましかった。
よく考えれば、叱られたいなんて、不思議な事だけど、
唯の興味か、解らないけど、
蓮は。
◇◆◇
それから時も過ぎて、まだ黒に染まりきらない空だけど、月が昇った時間帯。生温い風が吹く時間帯。一足先に脱線したライ・ベーゼは、
「……まずい、な」
インターネットカフェゴーストネットにて、薄くて苦いコーヒーを飲み下していた。その文句を耳ざとく聞きつけるのは、
「あー!私の至高の一品にケチつける気っ!?もう、美少女の手作りなんだから、もっとあり難く飲んでよねおじちゃん☆」
この電脳喫茶の主、瀬名雫である。ライ、なるほどと、カップの底に粉がたまってる理由を解した。インスタントコーヒーもこれでは、包丁握らせたら頭上からタライが落ちてきそうだ。比喩であるが。
「それよりもな、お前まで俺の事おじちゃんと言うのか?」
「んー、ライさんってなんか、中身が親父なんだもん」
コーヒー咽る人、高笑いするカラス、後、口から泡噴くカラス。
「聞いてるよ?年がら年中家に引き篭もって本読んでるんでしょ?それは全然若者らしくなぁいっ!」
そこで何故か人差し指突きつける雫、どうもこのノリにはついていけない。
……いや、自分が本当に若くないという事か?
おじちゃん。
(あのガキが、俺をむかつかせる為に、そう呼んでたと思ったが)
事実を言われたまでかと、神妙な面持ちでまずいコーヒーを飲み干した。夏の暑さから避難して数時間、もう外に出ても大丈夫だろうと、サイフを開きながら立ち上がり、支払いを済ませて出口、を、
潜ろうとする横目に、
「ん?」
微細な興味を起こす物が、それは壁に立てかけられた一本の長い棒、
彼にしては思慮が足りなくて、
「これは」
思わず握ってしまって―――
◇◆◇
焼肉。我々はこの人類の英知の結晶に、ベジタリアンや宗教上の理由あと単純に油っこいの嫌いそれとダイエットしてる人もええとまぁ結構な例外を除けば、感謝しなければならないだろう。焼肉。それは寿司に続く芸能人の食べ物。庶民には届かぬ憧れの日々。
そしてそれが貪り食えるなら、全身全霊を持って向き合わねばならぬ。焼ける肉!したたる脂ッ!そして締めの韓国冷麺!味覚の幸福を舌に焼付け、世界で一等の笑みを浮かべる、それが焼肉に対する礼儀なのだ、なのに、
「三下、何さっきから暗い顔してんだよ」
「誰の所為なんですか誰のぉぉぉぉっ!」
と、情けない編集者は泣いていた。まぁここまで満身創痍で病院におらず、こんな所まで引っ張り出されてるのだから、仕方ないと言えばそうだが。それにこの人笑顔似合わんし。
そして、見事に5千円分の焼肉券をゲットした曜、「だから悪かったって言ってんだろ?ほら、肉少し分けてやるからさ」
「なんでさっきから生焼けのミノばっかり寄越すんですかぁぁぁ、くちゃくちゃして噛み切れませんよぉ」
しくしくりと泣く女々しい男、呆れる男勝りの少女、その構図に、第三者がやってくる。隣の席で食い放題コースを選んだ、「無理矢理にでも腹に詰め込め」時雨、ふっと顔をあげた三下、に、
「例えじゃなく、今のお前の身体は、肉が磨り減ってる。補給しなければ倒れるぞ」
その、
予想外の優しい気遣いに、
「時雨さぁん」
男三下、感動の涙を流そうとした時、
「ペンキ代を弁償してもらわねばならないからな」
え?
「今赤が足りなくてな」「僕の血を使う気ですかぁっ!?僕の血ぃぃぃぃぃっ!?」
感涙から絶望の雫へと。「恨みが残れば残る程、落ちにくくなるだろうし」「いやぁあぁぁっ!自分が怪奇の類になるなんて嫌ぁぁっ!」
「そういう事なら食えって三下、ほらよ」
「レモンを焼いて渡さないでくださいよぉぉぉっ!パセリも苦いからぁぁぁっ!」
◇◆◇
屋上に蛍が一匹飛んでいる。勿論、川岸でも無いからこの蛍は本物じゃなくて、煙草の灯である。喫煙者が文字通り煙たがられる昨今、彼らはこんな所へ追い出されたりする。
まぁでも大衆に背を向けるのがハードボイルド、と。草間武彦は都合よく理由にした。
孤独と煙草と夏の夜。
悪くないと思いながら、けど、
彼女が加わる事に問題は無い―――
「夏を名残りながらの、」寧ろ、「一服かしら?」
居心地が良い。
月に、渋く映える背中に声掛ける女史は、シュライン、
男は振り返らずに言葉を返した。「まだまだ暑い日が続くそうだ、今年の冷夏を取り戻すようににな」
「全く、野菜が高くなって困るわ」
主婦のような事を呟けば、隣の人は夫になるのだろうか?
不確かな、現在である。
唯一であるはずの今が、揺れている感触。それは、
まだ、途中だからか。
彼女は、煙が被らない隣へと、身を。そして、「喜んで、結構な収入よ武彦さん。麗香さんあのネタで40頁特集組むって」
「焼肉券以上か?」
「ええ、きちんと現金よ」
「そうか、なら煙草が買えるな」
「……有能な助手に対して、食事の一つでも奢らないのかしら?」
「俺の舌は汚れているよ」
自覚しているのだから、なんともならない。「もういいわよ武彦さん」全くなんで私が、直径十センチにも満たない紙を巻いたのに、
嫉妬を抱かねばならないのか。そう、見て解らない程度、頬を膨らました、彼女の、
顎に添えられる手――
………無骨な手で導かれたのは、彼の、顔。
みつめられて。
「煙草の味、」
、
「教えてやろうか?」
………シュラインは、くすりと笑った。
臭いセリフを言って、なんか罰が悪そうな彼、と、
それに、ほんの少しのときめきを覚えてしまった、自分に対しても。
目を閉じた。
息遣い、鼓動、ようは彼が、愛しさが、
ほのかにゆっくりと近づいてきます。
降る雨のように受け止めようと、シュライン、
揺れる心が静かに、なる。
直前、
パシャリと、音がした。
それはもう、人工的な、例えるるなら、
携帯カメラの為に作られたシャッター音みたいな――
「って」
「……何をしてるんだクソガキ」
「えーっとねー」浮かぶ道化は笑ってにこり、「記念撮影」
飛行用悪魔、瀬川蓮。ガキであると同時に、人の上を常に行き、把握する、言って見れば天才。
大げさに言えば草間武彦の天敵―――
「とりあえずこっちに来いッ!その口に煙草二三本つっこんでやる!」
「駄目よ武彦さんムキになっちゃっ!」
「子供に対して酷い事するな〜」
けらけら笑う蓮、ムキーっとなる草間、この人と付き合って大丈夫なのかと我が身省みるシュライン。
ともかく、彼女になだめられて、落ち着きを取り戻した草間、「たく、ガキの見世物じゃないんだ。とっととその携帯寄越せ」
「大丈夫だよ、撮ったの僕の顔だから」
「………つまり?」
「うん、からかったの」
ムキーっとなる草間。なんとか落ち着く草間。ともかく、だ、「夜の散歩か何か知らないが、いちいちそんな事で尋ねて来て」
「違うよ、好きでこんな所に来る訳無いじゃない」
「違うのって、」怒りを抑えてる草間に代わって、シュライン、「何がなの蓮クン?」
「測定」
測定って、一体何を、と思った時、
ドガァッ!
「っ!?」
後ろで何か音が!振り返ると、
「……え、」「っと」
………あのう、
「何をしてるんだ、ライ」
そうそこにはライが居た。酷く汗を掻いて、身に着けた服も乱して、ていうか何より、
やけに長い棒を持って。
「く、草間」
蚊のような声、
「あ、ああ」
「こ、これは、俺の」
全てを言い切る前に、ライ、
突然直立して棒を構え、そして、
ダッシュッ!?「ちょ、ちょっと待ってライさん!そっち行ったら落ち」声虚しく手すりすら越えようとするライ、は、
棒を地面に突きたてた。え、
「これは」
それはほとんど叫びながら、
「これは俺のキャラじゃないだろぉっ!」
その言葉を、残して、
ライは屋上から屋根へと、屋根から樹木へと、高い場所から更に高い場所へ。蓮が追いかけてうんメートルだよーと笑っていたり、で。頭上ではカラスが旋回していたり、で。
………呆然と見送って、暫し固まった二人の、
時を戻すかのように携帯が鳴った。草間、ぎこちない動きで電話をとれば、
『みんな聞いてぇっ!』
調査コードネーム:pole-vault high !
調査組織名 :ゴーストネットOFF
募集予定人数 :1〜5人
「例じゃない男が例じゃない如く例じゃないように不幸でネットオークションで落札した棒高跳びの霊が乗りうつった棒を掴んで」プチッ
………懸命な判断で、携帯を速やかに切った草間さん。
「……どうする、シュライン」
「………そうね」
彼女の頭に再度実況をする、という選択が浮かぶはずも無く、
「とりあえず、一時間後にレストランね」
今から未来へと逃避した。
なお、この棒高跳びの選手が、蓮とライの悪魔召還コンビにより、とあるオカルト編集部の某氏に変わったのはお約束の話である。
◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
0086/シュライン・エマ/女/26/翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
0888/葛妃・曜/女/16/女子高生
1323/鳴神・時雨/男/32/あやかし荘無償補修員(野良改造人間)
1697/ライ・ベーゼ/男/25/悪魔召喚士
1790/瀬川・蓮/男/13/ストリートキッド(デビルサモナー)
◇◆ ライター通信 ◆◇
えっと、
遅れてすいません。
切腹ッ!
……はい、ほんますいませんでした。実家帰ったら電気止まってたりMO忘れてたりメガネ煮込まれたり納品がエラー(?)したみたいだったり、その時点で締め切りが経過してしてる事が、甘く見ていた事が、反省すべき事で、やっちゃいけない事でした。
………何度も何度も遅筆でしたが、今回は本当の意味で取り返しがつかなく。
誠に申し訳ございませんでした。
では、簡潔ですが今回のまとめを。全体的な話の筋はシュラインの行動より、後はそれに準拠しています。曜がライバル宣言してくれた事で、お話がちょっと盛り上がった感じがいたしましたり。
んで、これは凄く個人的にでっけど、蓮はどうしようかな、と、いや、
ギャグをしてええものかと(をい
……結局落ち着く所で落ち着きましたけど、一時本気でアフロかぶせようかなとか(何故)好みな設定を生かしきれへんかったかもしれまへんです。
唯一人、成仏でなく捕獲の行動に出たライが嬉しかったです。………最後オチに使っちゃいましたが。いや、でもかっこええですよねライは(弁護
時雨は今回、まんべん無く出てはいますが、見せ場を作れなかったのが残念です。団子坂の知識が付け焼刃やったりで……。
あ、あとシュラインと草間のシーンについては、すんまへんとしか(こら
ええ乱文ですがここで終りです、ご参加おおきにでした。そして、その期待を裏切るような真似をして、すいませんでした。
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