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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


アウェルヌスを探して


□ 君が呉れた物語の始まり


『帰りたいだけなんだ』
 ヒトの年齢で言うなら、十四、五歳くらいだろうか。
 月刊アトラス編集部の片隅、三下忠雄の机に腰掛けた半透明の少年は、椅子の上で硬直している三下の蒼白い貌をじっとみつめて言った。
『聞いている? 僕は、帰りたいだけなんだよ』
 口をぱくぱく開閉するだけで、一言も発せずにいる三下に向かってぐいと身を乗り出し、少年はその切れ長の眼許に冷たい笑みを滲ませた。
『僕を無視するの? 視えるのに、視えない振りをするの? ……非道いよね』
 三下は慌てて頭を左右に振ったが、遅かった。
 パンッと鋭い破裂音が耳許で鳴り、黒縁眼鏡に幾筋も罅が走った。嗚呼、世界が割れてゆく。歪んでゆく。
『ふふ、それじゃあ本当に視えなくなるね。でも、眼で視えるものなんて、世界のほんの一部だから。それに、視えている世界が正しいとも限らないから。たとえ君が視力を喪ったとしても、気に病むことはないよ』
 少年が言うのは、これから三下の視力を奪うという予告なのか。
 眼鏡歴はかなり長く、眼鏡を外せば碇編集長の引き攣った表情も暈けて柔和に見える三下だったが、全くものが見えなくなるのは困る。困るに決まっている。
「あ、あ、あ、あぁあなたは、ど、どどどちら様……で」
 震える唇で、三下が何とかそれだけを応えると、少年は、
『僕は、多分、ユーレイ。この世界のヒトはみんな、そう呼ぶでしょう? 僕達のことを』
 細い人差し指を三下の眼鏡の端に押し当て乍ら、頸を傾げた。その姿は朧に透けているというのに、机や眼鏡は少年をしっかり認識しているが如く、彼の体は物質に触れて透り抜けることがなかった。
「ゆッ、ゆうれぇさん、ですかあぁっ?」
『そんな大袈裟に驚かないでよ。東京にはたくさんいるでしょう?』
「い、い、いえぇ、それほどでもぉ」
『何の謙遜? おかしなヒトだね、君って』
 少年はぷっと吹き出し、それはともかく、と場を仕切り直した。
『僕は、帰りたいんだ。君が家に帰るみたいに、僕もね、僕が在るべき場処に帰りたい』
 三下としても、それには大いに賛成だった。この少年が自分を霊だと自覚しているのなら、ぜひ迷うことなく成仏してほしい。いや、もしかしたら霊自身には成仏するなどという概念はなく、本当に自宅に帰るように自分の世界に戻りたいだけなのかもしれないが。
 少年は『でもね』と言葉を継ぎ、編集部の薄黒く煤けた天井を見上げた。上階の水漏れのせいでできたのだろう大きな染みがそこに星形を描いている。なんて身近な夜空。
『でも……入口が分からないんだ』
「入口?」
『そうだよ。出口と言ってもいいけど、それはそこを通る者の主観だからね。今の僕にとっては、僕の世界への入口。冥界へ下る底なしのアウェルヌス』
 冥界へ下る、底なしのアウェルヌス。
 三下は、アウェルヌスという単語に聞き覚えがあるようなないような――――曖昧な理解を抱えたまま、数回忙しなく肯いた。
「そ、それで、そのあうぇるぬすと、あなたが今ここにいることと、何の関係が」
『それはもちろん、アウェルヌスがここにあるから、僕はここにいるのさ』
 少年が三下に視線を下ろしてにっこりと微笑んだ。こうして笑うと急にあどけなさが惹き立ち、とても可愛らしかった。が、その笑貌の向こうに編集部の小汚い窓が透け暈けて見えるのが気になる。
「ここ、って……ここ、ですか? へ、編集部室……?」
 三下が胸の前で両手指を組み合わせ、上眼遣いに少年の表情を窺った。
 少年は額にかかる前髪を軽く指先で跳ね上げ、
『そうだよ。ここに在るには違いないんだ。けど……』
 眉間を顰めた。
『この部屋のどこに在るのか、分からない。きっと、永い間閉じていたから、気配が薄れてしまったんだろうね。だからさ、君』
 少年に真っ直ぐ指さされて、三下はごくりと唾を飲み込んだ。次に来る言葉は何となく予想がついた。
『探してくれないかな、冥界への入口を』
 やはりそうか。
 三下は選択の余地なく、頸を縦に振り下ろした。

 三下と少年とのやりとりを、遠巻きに他の編集部員達と一緒に眺めていた碇麗香は、ここへ来て三下の上司らしい決断を下した。
「大人しくご帰還願うには探すしかないみたいね。ま、これもいいネタになるかもしれないし、前向きに行くわよ」
 そう言い、さて、誰に協力を要請すれば現状を打開できるかと思考を巡らせ始めた。


□ 真昼の邂逅


 仕事柄、平日の真っ昼間からしっかりスーツを着込んで街を逍遙するなど、お得意様との約束でも入っていない限り、先ず無い。人工的な光煌めく華やかな夜の世界に馴染んだ身も心も、明るすぎる太陽の下ではどこか色褪せる。
「黒のスーツに直射日光は、やっぱり辛い――――」
 佐和トオルは、駅構内から外に歩み出るなり、これでもかと言わんばかりに残暑を演出する眩しい陽光に閉口し、上着を脱いで片腕に抱えた。代わりにスーツの下から現れた鮮やかな青のシルクシャツの背に光が反射し、泳ぐように揺らめいた。
 十八の頃から今に至るまでほぼ十年、ホスト稼業で生計を立て、この街に生きてきた。他の誰が何と言おうと、自分にはこの仕事が合っていると思う。振り返ってみれば、これといって確固たる意志があってこの道に足を踏み入れたわけではなく、ちょうど仕事を探していた時期にスカウトされ、何となく始めてみたに過ぎない職だ。が、きっかけが何であれ、同じ仕事を十年続ければ、それはもうどこへ行っても通用するプロフェッショナルと言える。
 それに、ホストはトオルにとって何かと都合が良い職業だった。優しい輝きを孕んだ金の髪に黒曜石の如き光沢を潜ませた黒眼勝ちの眸、もともと女性の眼を惹く容貌を有していたということもあるが、それ以上に、トオルの特殊能力――――エンパシー、というのだろうか。いわゆる超常能力に属する性質のもの、相手の感情を読み取れてしまう力が、対人関係と人脈が何よりも物を言うホスト業界にあって、トオルの「店のナンバーワン」としての地位を支えていた。
 トオル自身、こんな能力を欲しいと思ったことは、ただの一度もなかった。人間の心の裡など、視えない方がいいに決まっている。この世が、人間が、信じられないほど美しい結晶だけを固めてできたものならばともかく、現実は楽観的な想像を超えて、粘着質に黒く昏く渦巻いている。その渦に足を取られたが最后、自分の心さえ昏さの中に呑まれてしまいかねない。だが、どれだけ要らないと放り出そうとしたところで、生来トオルの細胞の隅々までそうあるようにプログラムされた機構は、隔離することも破壊することも不可能だった。
 エンパシーに関しての己の半生を語り出せば、それこそ限がない。今更、誰かに話し聞かせて、過去確かに心苛んだ感情の総てを、改めて浮き彫りにしようとも思わない。今トオルが心に思うのは、ただ一つ。有るものは、使えばいい。善くも悪くも、相手の纏うオーラの気配や色で、その人がどんな想いを抱いているのか判別できてしまう。それはつまり、相手がトオルにどう接してほしがっているかが分かるということだ。
 何を望まれているかが分かり、その望みを叶えてあげることができる。
 かのサンタクロースでさえ、子供から願いを聞かなければ贈り物ができないというのに、トオルは、言葉にして伝えてもらわなくとも、来店した女性客の淡い願いをそれとなく実現することが可能なのだ。女というものは、とかく「言わなくても分かってほしい」生き物だ。そして自分のことを理解してくれた男に、甘い運命を感じる。そう、たとえその男がホストでも――――否、ホストだからこそ。明るい笑顔と優しい声音、慣れた手つきに「これは一夜の夢」と理性では認めつつも、こんな処で出逢ってしまった運命に微かな痛みを覚え、儚い刹那の恋に胸焦がす。そんな時の彼女達が漂わせるのは、決まって黄昏色。いっそベビー・ピンクくらい可愛らしい色でもいいのではないかと思うのだが、女性の心理は複雑で、山の天気よろしくくるくる変わった挙げ句に黄昏時に到達するものらしい。それは若い女性客により顕著で、年嵩の化粧の厚い淑女方はといえば、ぎらぎらと照り返すような色を見せることも珍しくはない。
 いずれにしても、そんな女性客達を眺めるにつけ、トオルは、一種愛しさを感じる。
 嫉妬もあるだろう、羨望も、プライドも、競争心も。だが、それらの感情の端々に、いつも淋しさが滲んでいるのが分かる。虚栄心のすぐ後ろで、「でも、本当は」と抑圧された本心を打ち明けたがっている姿が視える。だから、手を差し伸べたくなる。偽善者だと言われようが、その一瞬に感じる慈愛にも肖た感情に嘘はない。結局のところ仕事の延長と割り切っているから続いているのだろう様々な女性との関わりも、それはそれで悪くはない。こうして昼間から身なりをととのえて、昨夜の客の一人に忘れ物を届けに出掛けるのも、厭な気はしない。トオルが職場に顔を見せたその瞬間に、彼女の顔に浮かぶ困惑と喜悦の綯い交ぜになったような表情。駆け寄って来る時の、羞ずかしそうな仕種。全身から立ち昇る色。ほぼ確実に次回来店の約束を取り付けられる特典も加えて、トオルにとってはこれもまた有効な時間の遣い方だった。
 ――――その、筈だったのだが。
 客から受け取った名刺を頼りに、トオルが白王社ビル内月刊アトラス編集部室を訪れた時、開け放されたそのドアの向こうに、異様な空気が充満していた。ドアは開いているというのに、その気配は一向に流れ出ては来ず、室内にのみ蟠っている。いきなり仕事場に踏み入るのはマナー違反と、廊下から客の携帯を鳴らそうと思っていたのに、眼前の不可思議な空間に気を取られ、トオルはつい、ドアから中を覗き込んだ。
 途端に、
「誰?」
 と、鋭い視線が飛んで来た。
 スカートから覗く脚の細さに較べて随分と豊満な胸の前で腕を組み、薄い眼鏡の向こうからいかにも気の強そうな流眄を寄越してみせるスーツ姿の女性。手に持っている雑多な資料の類から言って、仕事中には違いないのだろうが、なぜか彼女を含め六名ほどの編集部員が一処に肩を寄せ合って、「何か」をみつめている。その様が、どうにも尋常ではない。
 トオルは、ここに自分が何をしに来たのかも忘れて、
「あの、何かありました?」
 髪を掻き上げ乍ら訊いた。
「野次馬なら、お断りよ」
 即座にぴしゃりと言われて、トオルは反射的に営業スマイルで応えた。
「失礼しました。俺、佐和と言います。実は、この部屋から妙な気配を感じて――――」
 言いかけて、編集部室の奥から流れ来る、ゆらと揺らめく冷たさに気付いた。
「……あなた、何か分かるの?」
 女性の高圧的な声が僅かに緊張を解き、未来への期待感を思わせる朧な色が彼女を包み込んだ。
「ええ、多少は」
 トオルが応えると、女性は眼鏡の端に指を当てて肯いた。
「そう。……いいわ、じゃあ、突然で悪いけど、少し力を貸してもらえないかしら」
「構いませんよ。俺にできることなら」
「随分気前がいいのね。状況も対価も聞かずに即答するなんて」
「対価は、キミの名前で充分」
 トオルが眼許に艶を添えて言った時、背後から、
「碇ーっ!」
 底抜けに明るい声が、無遠慮に飛んで来た。
 振り向くと、そこにどう見積もっても小学校低学年あたりであろうと思われる銀の髪の少女が立っていた。その後ろに、車椅子に乗った、世の喧噪など知らぬ気な静謐さが印象的な年齢不詳の美男子と、訝しげな眼つきでトオルを見るヴァイオリンケースを提げた青年の姿が在った。
「あら。なかなか早かったわね。褒めてあげるわ」
 碇、と呼ばれた女性は、少女に向かってそう言い、またすぐ視線をトオルに戻した。
「碇麗香よ。月刊アトラス編集部で、編集長をやってるわ。あなたは……こんな時間に外を出歩くような職に就いている風には見えないけど」
「改めて、佐和トオルと言います。職業は、ホスト、です。どうぞよろしく」
 簡単に自己紹介をし、トオルは碇麗香に名刺を差し出した。


□ 探し物はどこですか


 銀の髪の元気な小学生は海原みあお、静かすぎるほど静かな雰囲気を湛えた車椅子の男性はセレスティ・カーニンガム、便利屋兼業のヴァイオリニストだという黒髪の青年は香坂蓮。そして、更に後から編集部にやって来たやたらと体格のいいカメラマンは、武田隆之。伴に事に当たる各人の名と顔を頭に叩き込んで、トオルはアトラス編集部員が一人、三下忠雄の後頭部の向こうの、透明感あふれる少年をみつめた。何しろ、体が本当に透けている。こんな残暑厳しき折には涼しげで何よりだ。
『みんなで探してくれるの? アウェルヌスを』
 少年が、嬉しそうに笑った。
「そうだよ。でも、よかったら先ず、キミの名前を教えてくれるかな」
 トオルの言葉に、少年は少し頭を左に傾けた。
『名前なんて知って、どうするの』
「知りたいから、っていう理由だけじゃダメ?」
『だめだよ』
 すげなく顔を背けられ、トオルは苦笑した。並みいる女性より余程、ガードが堅い。
 トオルに代わって蓮が、
「名前が分かっていると便利だからだ。おまえのことをいちいち『おい、そこの少年』と呼ぶわけにもいかないだろう」
 淡々と言った。これには少年も納得したように頸を縦に振った。
『僕の名前は、シン。さあ、これで準備はととのった? アウェルヌスを探してくれる?』
 シン、と名告った少年は、三下の背後をぐるっと取り囲んだ五人を順に見た。
 みあおは、少年よりも三下が気になって仕方ないようで、近寄ると、椅子に腰掛けたままの彼のくたびれた袖先を引いた。
「三下っ、なに、かたまってんの! その、あうぇるぬすっていうの、みあお達が探すから、知ってることがあったら教えて!」
「あ……、あぁあ、いえ、その、どうも体が動かなくて」
「えっ? 動かないって、なんで? 三下、ユーレイ見ちゃって、腰抜けた?」
 無理矢理に三下を椅子から立ち上がらせようと奮闘するみあおの肩に、セレスティがそっと手を置いた。その指先が雪の白で塗ったように皎い。
「お嬢さん、三下氏は本当に動けないようですよ」
「ああ、そうみてえだなあ。おい、坊、あー、シンか。シンがやったのか?」
 隆之は頭を掻き掻き、親しげな口調でシンに話しかけた。
『そうだよ。一応、人質っていうのかな、こういうの』
 全く悪びれた様子もなく、シンは三下の顔から罅割れた眼鏡を外し取り、弄んだ。
「物騒ですね。人質など取らなくても、私達はアウェルヌスを見つけ出しますよ」
『それなら、早くそうして』
 懐柔しようとしたセレスティに素っ気ない返辞を与え、シンはちらと蓮に一瞥を呉れた。
「……何だ」
『お兄さん、無愛想だけど、言うことが分かり易くていいよ。それから、そっちの金の髪の』
「ああ、何」
 トオルが軽く右手を挙げた。
『君は、そうやって微笑むことが仕事?』
「……大体、当たってるかな」
『ふぅん。大変だね』
「そうでもないよ。好きでやってるしね」
『そう。じゃあ、その仕事以外のこと、しないで。僕のこと、覗かないで』
 言われて、トオルは驚いたように眼を見開いた。
「あん? 覗くって、何だ? おい、あんた、何かシンに妙なことしたのか?」
 隆之に問われて、トオルは僅かに口の端をひくつかせた。
「してないよ。見れば分かるだろ。ただちょっと……」
 そう言ってすいとシンの頭に片手を翳し、
「アウェルヌスの在処を掴む手がかりが、シンの中に眠ってるんじゃないかと思って。ねえ、シン、キミの世界からこっちに来たときのことは思い出せるかな?」
 少年の反応を気にしつつトオルはそっと眼を瞑り、数秒の後、成る程、と呟き乍ら瞼を上げた。そして、急にきょろきょろと室内を見回し始めた。
「ん? 何? どしたの、佐和?」
 みあおが、わけも分からず、一緒になってうろうろと視線を彷徨わせた。トオルはそんなみあおを見て、あはは、と愉しそうに笑い、彼女の頭にぽんと手を載せた。
「ホントにみあおちゃんは可愛いね」
「おい、こんな処でホストトークはいい。しかも小学生相手に。時間の無駄だ」
 蓮が鬱陶しそうに言い棄てた。トオルは笑顔のまま蓮を見、彼の眉間の皺が解消されるのを期待した。
「これくらいは誰だって言いそうなものだけど、ね」
「俺には縁のないセリフだ」
「勿体ない、これでサービス精神さえ旺盛なら、キミも充分ホストになれそうな容姿なのに」
「何の話だ! 誰がホストになりたいと言った?」
「いい商売だと思うけどね? 才能と努力如何によっては、かなり稼げるし」
 いい商売、という言葉に、蓮はぴくりと反応して眉を上げ、もう一言何か言おうとしたところを、隆之に制された。
「おいおい、ホストのスカウトは結構だが、話が脱線しまくってるぞ」
「……それで、佐和さん。シンの心を感じ取ることはできたのですか?」
 セレスティが穏やかに軌道修正をした。
「何ぃ? 感じ取る? 心?」
 疑問符を飛び散らせている隆之の隣で、トオルがセレスティに応えた。
「できましたよ、ある程度。こう、まるで水中から向こう側を見ているような――――揺らめく景色が視えました。多分、シンがこっちの世界に来る時に感じた、風景」
「そうですか。では、やはりアウェルヌスとは、イタリアに在るというあの湖のことでしょうか」
 セレスティは長い指でするすると車椅子の車輪を撫で、ゆっくり瞬きをした。セレスティの言を受け、蓮が肯いた。
「水に関係しているというなら、そうかもしれないな。アウェルヌスは、ナポリ近郊の底なしの湖の名でもあるし、ラテン語で『冥界の』という意味を持つ単語でもある。まあ、この部屋に湖なんか在るわけがないが、要するにそこに端を発していると理解して、肖たようなものを探せばいいだろう。もしかしたら、その湖に接する隧道のようなものの片端がここに繋がっているのかもしれない。……何にしてもこの世のものでは有り得ないが」
「わお! さっすが香坂、いろんなこと知ってるねっ!」
 一同、何がさすがなのか分からなかったが、みあおは両手を伸ばして蓮の右腕に掴まり、彼女なりの親愛の情を表現した。蓮は煩そうに腕を振ったが、そう邪険にもできないのか、暫くそのままみあおの好きにさせていた。
「冥界へ続く湖、ねェ」
 隆之が、溜息交じりに肩から提げた大きな匣形バッグのジッパーを開け、中からデジタル一眼レフカメラ、ニコンD1Xを引っ張り出した。有効画素数5.3メガピクセル、総画素数5.47メガピクセル大型CCDを搭載した、露出の安定性も高い優れモノである。
「まッ、俺にはとんと見当もつかねぇが、それでも確かにここに何かが在るっていうなら――――コイツが教えてくれると思うぜ」
 セレスティは隆之の声に誘われるように、カメラに顔を向けた。
「そのカメラ……何か特別なものを写してくれるのですか」
「まあ、な。俺にとっちゃ、あんまり喜ばしいことじゃァないんだが……写っちまうモンは仕方ねぇよな。俺自身には霊感らしいものは少しも備わってないってのに、撮ったフィルムを現像してみたら、こりゃまた見事な心霊写真、ってのはよくある話だ」
「それはお気の毒に」
 セレスティの言葉をどう受け取っていいものか分からず、隆之は曖昧に口許を歪めて笑って見せた。
「とにかく、水に関するもの、水そのものじゃなくてもそれに纏わる絵とか、品物とか、そういうのがこの部屋にあれば、多分そこがシンの探してるアウェルヌスだ」
 トオルが話をとりまとめ、シンを見た。
 シンはじっとトオルを見返し、口を開いた。
『そうなんだ。僕には、イタリアがどうのとか、湖がどうのとか、そういうことは分からない。でも……君が覗いた僕の中に水が視えたんなら、それが正しいのかもしれないね。心を直接感じ取られたんじゃ、僕も誤魔化しようがないからさ』
「何だ、誤魔化すつもりだったの?」
『そうしようと思ってたわけじゃないけどね。ほら、何だか知らないけど、勝手に頭が物事を歪めることって、あるでしょ? あるがままを受け容れたくないとでも言うみたいに、少しだけ自分に都合の良いように、現実を組み替えちゃうことって』
「難しいこと言うね、シン」
『頭で考えるから難しいんだよ。何となく、心で感じたら、ああ、そういうこともあるかなって気になるさ』
 シンはにっこり笑い、機嫌良さそうに体を揺らした。
 みあおはここでようやく蓮の腕を放し、両手をそれぞれぎゅっぎゅっと握るや、「うしっ」と気合いを入れた。
「んじゃ、あうぇるぬすを探そう! みあお、小鳥の姿になった方がいろんな気配を感じられるし、自由にあちこち飛び回れるから、変身するねっ」
 その宣言に、蓮、トオル、隆之の三人は「何の話だ」とばかり呆気にとられた表情を作り、セレスティは「そうですか、お願いします」と、いやに冷静なセリフを吐いた。
 みあおは、まあ見てて、と得意げに言い、いきなり後ろを振り返って、
「碇っ」
 皆の様子を見守っていた麗香を呼んだ。
「ねえねえ、この部屋の、鬼門ってどっちの方?」
「鬼門? 鬼門って……艮の方角だから、そうね、ちょうど三下くんの机のある方だけど」
 つくづく三下って、そういう星の下に生まれたんだと思って諦めるしかないんだね。
 みあおはそんな憐憫の情を含んだ眼差しを三下の背に注ぎ、一度深く息を吸い込んで、それを努めてゆっくりと腹から吐き出した。
「じゃ、三下のあたりを中心に、いろいろ探ってみるね」
 言うなり、両腕で自分の体を抱きしめると、みあおは眼を閉じて意識を体の裡に集中した。
 とくん、とくん、とくん、
 次第に、心臓の音が、近くなる。
 小さな体の奥に眠る何かが、内側から表皮を刺激する。
 ふわりと舞い上がる風を、体内に感じる。
 イメージするのは、青。
 心に描くのは、青い鳥。
 人々に倖せを運ぶ、小さな、小さな青い鳥――――。
「な……っ、なななな、何だあっ? お、おい、嬢ちゃん……!」
 隆之が素っ頓狂な声を上げた。
「ああ……感じます。柔らかな羽と風の存在を」
 セレスティが、穏やかな笑みを眼許に過ぎらせた。
 トオルと蓮は黙したまま、眼前で一人の人間がその姿を変え、羽搏き始める光景に心奪われていた。
「こういうのを、奇跡って言うのかな」
 トオルがぽつりと呟いたのへ、蓮が苦笑で応えた。
「随分と人騒がせな奇跡だな。それに、それを言うなら、おまえの見せた能力だって充分に奇跡の範疇だろう」
「俺のは、まぁ、ある意味、この身に科された十字架みたいなところがある気がするけど」
「十字架? 似合わないことを言う」
「似合わない、か。これでも一応、教会育ちのクリスチャンなんだけどね」
 トオルのその言葉に、蓮はハッと息を呑み、それからきれいな青い眸を数回瞬かせた。
「……こういう符合はできれば避けたいところなんだがな」
「え?」
 訊き返したトオルの視線が、蓮の白いシャツの衿に施された十字架の紋様に固定された。
「キミ――――」
「そういう、ことだ」
 蓮はそれ以上を語らず、室内を飛び回る青い小鳥を眼で追った。
 一方、隆之はまだみあおの見せた変化に動揺し乍ら、それでも目的を達するべく、編集部室の中を巡り、幾度もシャッターを切っていた。
 みあおが飛び、隆之が写真撮影をしているその間、セレスティは三下の傍らでただ静かに呼吸していた。彼の息遣いに合わせて、穏やかな波が打ち寄せまた退いてゆくような、絶えることのない悠久のリズムが場を包み込む。眼を瞑ると、まるで水中、もしくは小舟の上に身を置いているような錯覚に囚われる。心地よい揺らぎが体に沁み入り、凝り固まった不安や恐怖をも融かしてくれる。
 三下は、セレスティから通ってくる雰囲気に心を許し、つい自分から、
「あ、あのぅ」
 と話しかけた。相変わらず体の動きは封じられたままで、振り返ることもできない。無論、振り返ったところで、眼鏡をシンに奪われている今、セレスティの顔をはっきり認識することもできないのだったが。
「そのぉ、今日はいきなり、こんなことでお越し願いまして、ご迷惑を」
「……いえ、こちらとしましても仕事としてお受けした一件ですから」
 セレスティはアドレナリンの影響を殆ど受けていなさそうな声音を鳴らせた。どこまでも静かであるというのは、動的なものに較べて不気味な威圧感がある。静けさの裡に必ず何かが沈んでいるのに、それをおいそれと見せようとはしない。不用意に飛び込めば、深窟に迷い込んで戻って来られなくなりそうな底深さ。本能的に人間が畏れ、同時にどうしようもなく心惹かれる領域。セレスティ・カーニンガムという人物は、そういう海域に棲んでいる何者かに思われた。
「それにしても、こういうことは、今回が初めてなのですか?」
 セレスティが訊いた。
「え……、こういうこと、と言うと、その、幽霊が出る……ことですか」
「ええ。もしこの部屋に冥界への入口があるのなら、シンの他にも霊魂が集って不思議はないのですが」
「そ、そうですねぇ、僕としては、た、大変に困りますが、確かにそういうことも考えられますよねぇえ」
「それで、実際にどうなのです?」
「は、はぃ、記憶にある限りでは……、ま、まあいろいろありましたけど、今回みたいにアウェルヌスがどうのと言い寄ってきた霊はいませんでした」
「そうですか。ならば、アウェルヌスを察知できる霊が少ないのか……それとも、アウェルヌスは一時的に開いたその時を捉えない限り、存在しないも同然のものなのか……」
 セレスティは自分に言い聞かせるように小声で言葉を紡ぎ、三下の頭を止まり木代わりにしているみあおに表情を和ませた。


□ アウェルヌス開闢


「やっぱ、三下だよっ」
「ああ、この机のあたりだな。何か波紋みたいなのが写ってやがる」
「……渇水の匂いを感じますね」
 いつもの少女の象に還ったみあおが三下を肘でつつき、編集部のパソコンを借りて画面上に大きく写真画像を表示させた隆之が同意し、最后にセレスティが感じたままを告げた。
「そ、そんなあぁあ」
 三下は情けない声を上げ、両眼を屡叩かせた。
 後方で、麗香がふうと歎息した。
「三下くんの机ね。……あの机、前使ってた人はイタリアに取材旅行中一時期行方不明になったことがあるし、更にその前に使ってた人は、水難事故に遭ってるのよね、確か」
「へ、編集長ぅ、そんな曰く付きの物品を僕にまわさないでくださいよおおぉ」
「仕方ないでしょ、他になかったんだから」
 編集部内の物品使い回しの実態が明らかになったところで、「おい、ちょっと」と隆之がパソコン画面をみつめ乍ら皆を手招いた。
 蓮とトオルが、すかさずひょいと左右から画面を覗き込んだ。
「これな、ちょうど三下の机の真上の天井を撮ったんだが」
 隆之が、画面を指さして言った。
「ああ、あの星形の染みが写って……」
 言い止して、蓮は口を噤んだ。
「写って……ないみたいだね」
 トオルが、はは、と困ったように笑った。
「おい。おまえのカメラは心霊写真を撮るのが得意だとは聞いたが、そこに在るものを撮れない欠陥品だとは聞いてない」
 蓮に言われて、隆之は「うーん」と頸を捻った。
「欠陥品まで言うこたァねえだろ。けど……、何だ、在るのに写らないってのは……説明つかねえなあ」
『なんだ、そんなこと』
 突然、シンが笑い出した。
『眼で視えるものなんて世界のほんの一部で、しかも視えている世界が正しいとも限らないんだから、気にすることはないよ』
 さっき、この「サンシタくん」にも教えてあげたことなんだけどね――――と言い、シンは三下の黒縁眼鏡に入った罅を指でなぞった。皆が揃いも揃って三下忠雄を「サンシタ」と呼び付けるせいで、シンの脳裡にもそのように刷り込まれてしまったようだった。今更、「ミノシタです」と訂正したところで定着するかどうか。
「なかなか穿ったことを言う少年ですね、君は」
 セレスティは僅かに昂揚した声で言った。
「確かに、人が視ている世界が総て正しいのかどうかなど、分かりません。寧ろカメラのような無機物を介して得られる光景の方が、公正かもしれませんよ。それに、視えているものを写せないのも、心霊写真のうちでしょう。天井の染みそれ自体が心霊現象なのだとしたら、どうです」
「どうですって……、その場合、この世を忠実に捉えたのは武田さんのカメラの方で、俺達が見てる染みのある天井は」
「あの世だか冥界だか、そっちの世界が介入してきた結果生まれた光景だな」
 トオルに続いて蓮が、天井を仰いで呟いた。
 みあおは、ムム、とこめかみに指を当て、話が分からなくなってきたことに少々苛立っていた。トオルはそんなみあおをあやすように頭を撫で、ややこしくなってきた話を分かり易い方へ引き戻した。
「そうは言っても、あの染み、上の階の水漏れが原因としか思えない感じなんですけどね。自分の眼を信用するなら」
「あ、ええ、確かに水漏れのせいでできた染みですよ」
 三下があっさりと結論を述べてみせた。
「は?」
 トオルと蓮、そして隆之が一様に顔を顰めて訊き返した。上階の水漏れが原因でできた染みが、どうして心霊現象になるのだ。
「……皆さん、単純に過ぎますよ」
 セレスティがやれやれと溜息を吐いた。
「染みの原因など、何でも構わないのです。要は、ここに漏れ落ちてきた水に反応した何かが、ある境界を踏み越え、この世ならぬ状況を創り出したわけですから。染みの象そのものは水漏れのそれでも、その象を保っているのは冥界の霊力だということでしょう」
 セレスティが言い終わってから約十五秒後。蓮が「つまり」と頭の中で噛み砕いたセレスティの説明を、自分なりの表現に置き換えた。
「水が問題だということに変わりないんだろう。水のせいで、この場処に霊力を喚起するはめになった。水が、冥界への扉を開く。逆を言えば、水がなければ扉は閉じたままだ。霊的干渉もない。だから、アウェルヌスの気配は驚くほど弱い」
「水、ね。成る程。悪いんだけど、誰か、水を持って来てくれないかな」
 トオルが言うと、麗香と一緒に事の成り行きを黙って見ていた女性編集部員数名が、急にぱあっと顔を輝かせて給湯室へ走った。その中に、トオルが忘れ物を届けに来た客の姿も在った。
「あ? 水? ああ、水なら、ここにもあるぞ」
 セレスティの発する言葉に半ば幻惑されていた隆之が、ハッと我に返ったようにバッグの中を探り始め、ミネラルウォーターを取り出した。彼が編集部へ来る途中にコンビニエンスストアで買ったばかりの一本で、パッケージに《 富士山の朝露 》とある。それを、ほれ、と蓮に手渡した。
「用意周到で助かる」
 蓮は受け取った《 富士山の朝露 》を、みあおの頬に付けた。ひやりとした感触に、みあおが思わず小さく跳び上がった。
「わわっ! 香坂っ、何するの!」
「大人しく話を聞いているのに疲れた頃だろう。この水、ぶちまけていいぞ」
「ぶちまける? って、どこに?」
 みあおがミネラルウォーターを受け取り乍ら訊くと、蓮はすっと三下を指さした。
「……三下?」
「主に、机の上にな」
『机? そう、じゃあ僕は少し退いてるね』
 シンはそう言ってふっと身を消し、しかし次の瞬間にはもう窓辺に佇んでいた。
「おーしっ、じゃあ、いくよっ!」
 みあおはボトルの蓋を開け、中の水を勢いよく三下の机めがけて放り出した。
「うわあ!」
 未だ体を動かすこと叶わず水を避けられなかった三下は、机と伴に見事に濡れ、机上に置きっぱなしになっていた彼の原稿もまたしっかり水を被った。が、三下がそれを嘆く間もなく、怪異な気配が唐突に擡頭し、その場にいる者の言葉を奪った。円板形の渦巻銀河に肖た形状の、緩やかな渦模様が机上に揺れている。
『あ……!』
 一人、眼を輝かせたのはシンだった。
 シンは、三下の処まで戻ってくると、
『アウェルヌス!』
 そう、叫んだ。


□ 「開けたら閉める」は躾の基本


「シン、行くならできるだけ早くお願いできるかな。何だか、妙な霊気がここへ向かって集まって来てるような気がするんだ」
 トオルが窓外へ視線を向けて言った。
『そうだね、アウェルヌスが開いたから、入口がここに在るって、他のみんなにも分かっちゃったんだね』
 シンは笑い、それから、蓮、みあお、トオル、隆之、セレスティ、そして三下を順にみつめた。
『ありがとう、アウェルヌスをみつけてくれて。僕、もう、行くね』
「それはいいが、おまえが行った後、この入口、どうやって閉じたらいいんだ?」
 蓮が訊いた。
『ここ、閉じるの?』
「当たり前だ。毎日見知らぬ霊にこんな処を出たり入ったりされるのは困る。……いや、俺はそう困らないが、三下が泣くことになる」
 すでに三下は半泣き状態だった。
『そう。まあ、君達に友好的な霊ばかりとも限らないしね、やっぱり閉じておいた方がいいのかな。どうしても通りたいって霊は、僕みたいに姿を現して話しかけるだろうし』
「そ……それはそれで嬉しくないんですけどおぉ」
『そんな声出さないでよ。いいじゃない、中には素敵な出逢いもあるかもしれないよ』
 シンは三下の頬を指先で抓んでびよんと左右に引っ張り、
『君の眼鏡、今日の記念に、僕に頂戴』
 一方的に告げて、じゃあね、と渦の中へ滑り降りていった。
「おっ、おい、シン! だから、この入口の閉じ方を……!」
 慌てて声を荒げた隆之の手に、渦中から飛んで来たものがあった。
「な、何だあ?」
 見ると、それは――――。


□ アウェルヌスの鍵


 シンが自分の在るべき場処へ去り、アウェルヌスを無事閉じた後、五人は麗香から「支払金額は、月刊アトラスの次号売上次第」と言われ、今回の件の報酬は一ヶ月ほど待たされることとなった。
 トオルは、帰り際、ようやく椅子から立ち上がることができた三下に、
「せっかくだから、あなたが持っていてください」
 と言われ、シンがアウェルヌスの向こう側から投げて寄越したものを受け取った。
 ビー玉より二回りほど大きい、玲瓏な玉。その裡で、様々な色が万華鏡のように巡り続けている。
 この玉をアウェルヌスに落とした瞬間、開いていた入口は一気に消滅し、机の上には玉だけが残っていた。セレスティは、この玉には昏き水を吸い込む力がある、と言い、
「これがアウェルヌスを閉ざす鍵なのですね」
 一人でそう納得していた。
 白王社ビルを出たトオルは、玉を陽光に翳し、苦笑した。
「いくら俺が、感情を色で読み取ることができるからって」
 こうくるくると色を変える玉を相手に、どうしろというのか。
 人の心も、
 玉の色も、
 巡り巡って、さあ、どこへ辿り着く。
 たとえそれがアウェルヌスの底だとしても、
 やがて訪れるその日のために、
 今を、自分らしく、生きる。
 それだけだ。
「さて、と。今夜も、お仕事、お仕事」
 トオルは、玉を胸ポケットに収め、一度大きく伸びをすると、暮れかけた街の雑踏の中に紛れていった。


アウェルヌスを探して / 了


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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+ PC名 [整理番号|性別|年齢|職業]

+ 香坂・蓮
 [1532|男|24歳|ヴァイオリニスト(兼、便利屋)]
+ 海原・みあお
 [1415|女|13歳|小学生]
+ 武田・隆之
 [1466|男|35歳|カメラマン]
+ セレスティ・カーニンガム
 [1883|男|725歳|財閥総帥・占い師・水霊使い]
+ 佐和・トオル
 [1781|男|28歳|ホスト]

※ 上記、受注順に掲載いたしました。

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、杳野です。
アウェルヌス探索、お疲れ様でした。
その上、報酬がまだで申し訳ありません。後日お受け取りくださいね。
安すぎる! 納得いかん! という苦情は……碇編集長まで。
ノベル内容としましては、基本的なストーリー展開は同じですが、それぞれの視点で書き分けてありますので、よろしければ併せてお愉しみください。
今回、偶然にも蓮さんとトオルさんが教会に縁深い方で、それにみなさんのプレイングも一定の方向性を持っていて、とても愉しくノベライズさせていただきました。
またの機会がありましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

――佐和トオルさま。
はじめまして。今回は、ご参加ありがとうございました。
プレイングに書いてくださった編集部への登場の仕方、素敵でした。
えっと、誰かに甘えたい夜に是非指名させていただきたいので、トオルさんのお店の店名、教えてください!(笑)
実はお酒飲めないんですけど、ボトル入れさせていただきます。