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<東京怪談ノベル(シングル)>


ダンナさまにはかなわない・・・。

とある研究所の付近・・・。
黒尽くめの男たちの中にいるため一際目立っている私。
私の名は「海原みたま」その黒尽くめの男たちのボスである。
揺れる金髪と燃えるような赤い目がライオンを思わせ、
なのに容貌はお姫様のようで、髪と瞳が美しさを引き立てている。
なぁ〜んてダンナさまは言ってくれるのよ。
様々な武器、道具を使用でき、その効果を120%引き出すことができる。
「誰でも出来ること」だと私は思うんだけど、世間は違うらしいわ。
私の職業はもう一つ。主婦。
かわいい娘もいるわ。
傭兵としての働きは得意なんだけど、主婦のほうは・・・まだ見習い中。

「あんたたち!準備はいい?作戦開始後は迅速に!いいわね?!」

黒尽くめの男たちは静かに頷く。
彼らは、軍人の中の精鋭部隊。
目の前にある研究所の破壊、
被験者、研究者の確保が今回の仕事である。
その中でも私の仕事は被験者、研究者の確保。
そして各国の秘密部隊の撃退。
証拠隠滅のために研究所に入り込んでいるらしい。

「じゃぁ、5:00に開始するわ。気を抜くんじゃないわよ!」

小さい声だけれど、威圧感を込めて私は言った。
時計の針が5:00を打った瞬間、その場にいたはずの男たちは
消えていた。研究所の中へ・・・。
もちろん私も。なんたって戦う主婦見習♪ですからね。


私は、辺りを見回す。

「ちょっと地図あってるのかしら・・・。見当たらないわね。
ダンナさまったらこんな大きな計画、よく立てるわよねぇ」

爆風と炎による熱・・・。ここはさながら地獄絵図のようだった。
私は、早急に探し出さなければならない。
トラックで運び出された被験者たち(商品価値を認められた)は
旦那様が手を打っているから安心だとして・・・。
廃棄の方にまわされた人たちと研究者はどこにいるのかしら?
でも、よくやるわよねぇ。遺伝子工学で人体実験。
改造された人たちは本当に気の毒よ・・・。
傭兵や愛玩用に体が作りかえられるなんて。
戦隊物の悪の組織じゃあるまいし!現実にあるなんてね。
思わず、私は嘆息した。
そうやって私が考えながら、探していると黒尽くめの一団に囲まれた。
私の部隊じゃない。・・・ということは敵。
たぶん、証拠隠滅のために雇われた各国の秘密部隊だろう。
ダンナさまも会ったら撃退しておけって言っていたし。
男たちは、私一人なのをいいことに、確実に倒そうと襲いかかってきた。
女だからって舐められてたまるもんですか!

「ねぇ、あんたたち。私が武器も所持していないし、
簡単に殺せるなんて思ってない?」

怯むことなく、ゆっくり微笑む。

「そうだとしたら教えてあげるわ。それは間違いだって。
このナイフ一本であんたたちなんか充分!」

太ももに留めてあったナイフを私は取り出した。
男たちは、舐められていると血気も盛んに飛びかかってくる。
これが、各国よりすぐりの秘密部隊なのかしら?・・・なんて遅い動き。
ナイフを握って、私の方も戦闘体勢に入る。
飛びかかってくる男の首筋にナイフを向ける。
次の瞬間には男は倒れていた。
戦闘服の腕には、紋章のようなものが刺繍してある。
こんなので・・・本当に秘密部隊なのね・・・。私は嘆息した。
ナイフ一本で、男たちを全員倒す。
返り血をあびるなんてこと私はしない。

「ふぅ、一つ目の任務、完了っと」

私は、倒れている男になんか目もくれず、地図を見る。

「ん?ちょっとここ地下室じゃない?きっとここだわ」

私は走った。爆発のおかげで、研究所は倒壊寸前だ。
地下室への扉を開ける・・・。
私は怯えて一ヶ所に固まり、
諦めて死を待っていた被験者と研究者を見つけた。
培養ケースだったのだろう。
割れた蒼いガラスケースから、流れ出てくる、研究途中の被験者たち。
私はあわてて駈け寄り、培養液を吐かせる。
ゴホゴホと咳き込むものの無事のようだ。
この地下室だけ、他よりも爆発の規模が大きい。
それに、爆弾をしかけていないのに爆発している。

「誰か!能力を使って爆発しているんじゃない?!私は味方よ!」

被験者たちに向って私は叫んだ。
これ以上爆発されると、いくら私でも救出は困難になってくる。
被験者たちは、首を振るばかりだ。
それじゃ、外から?私は、ため息をつき、被験者たちの方へと駆け寄る。
一ヶ所に固まっていた研究者、被験者たちは、不安気に私を見つめる。
研究者の一人の腕を取った。

「さぁ、脱出するわよ!」

研究者は割れた培養ケースを見て呆然としている。
私は、さすがにムッときた。助けようとしている人間がいるというのに、
壊れてしまったものにすがりつくなんて!

「ちょっと!しっかりしなさいよ!見てわかるでしょう?
これがあんたたちの研究結果よ!成功を治めることなく、
壊れていくの!全く!
人体実験なんかするからよ!」

研究者の頬を軽く叩く。
研究者は我に返ったようで、せっかく立たせたのに、ヘナヘナ・・・
とまた座りこんだ。

「あんたたちは、生きたいの!死にたいの!どっち!!」

動こうとしない連中に声を上げて言った。
はっと皆私を見た。やっと意識できちんと私を捉えたようだ。

「私は味方!!いい?分かった?」

皆、コクリと頷く。

「私が、救出するから、ちゃんと着いてきなさい!歩けるでしょう?」

再び頷く。

「よし!じゃぁ立ちなさい!」

皆を立たせた。
そしてダンナさまに聞いていた脱出経路へ向かった。
大きく煙を上げて壊れていく研究所を背に、
研究者と被験者の確保は完了し、仕事も終了した。
私の体は埃だらけになっていたので、家へ帰ってすぐシャワーを浴びた。
そして、シャワーを浴びて、上がってきたら、
ダンナさまも帰ってきていた。

「あ!ダンナさま!お疲れ〜。ちょっと今日は苦労したわ。
地下室が爆弾もしかけていないのに爆発したのよ。
たぶん、外から能力者がやったんじゃないかと思ってるんだけど」

私はのんきにダンナさまに近づいた。

「お疲れ、みたま。この子は新しい娘だよ」

「むっ・・・娘ぇ?!」

肩にかけていたタオルがずり落ちた。
この子の救出も作戦のうちだったらしい。思わずため息がもれる。

「それと、地下室を爆発したたのはこの子。でもみたま、好きだと思うよ。
こんな子」

「えぇ?!そうなの。本当に大変だったのよ。ん?どれどれ?」

私は、俯いている娘の顔を覗きこむ。

「かっ・・・かわいいっ」

思わず、娘に抱きつく。
娘はびっくりしたようで体をこわばらせたけれど、
じっとおとなしくしていた。
体を離して、改めてみあおに話し掛けた。

「これからよろしく。可愛い娘」

頷く娘を私は、よしよしと頭をなでてやった。