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狐さまの恋路。
●オープニング
狐族の幽霊の銀狐。
彼の名は「狐族の銀」。
彼ら狐族は、悪霊退治・依頼をする存在である。
確実な依頼を届けに来るとこでも有名だ。
なん度かゴーストネットで出会い、実際に会っている者たちもいる。
『おいなりさん』には相変わらず目がない。
そんな銀からの依頼があるようだ。
だが、今回は少し深刻なご様子の銀。
掲示板に綴られた文章は珍しく銀から直々の依頼内容だ。
【題名:狐の恋人】
送信者:銀
『こんにちは。実はボクの友達に「柚琉(ゆずる)」という男の子がいるんだ。
ボクが修行に人間界に来ているのと同じように柚も修行に来ているんだ。
柚の方が人間の世界に飛び込んで1200年くらい・・。
人間界で言うと12歳くらいの男の子・・かな。
人間界ではいろんな人と出会う。
最近知った事なんだけど柚は「宮前・紗季(みやまえ・さき)」ちゃんという
女の子に以前から恋心を持っており、そして2人はお互いに惹かれているんだ・・。
それってすごく素晴らしい事だよね・・。
でも・・
・・だけど狐が人間に恋をするのは【禁断】と言われているんだ。
だから、もしも上層部の者にばれてしまえば柚は二度と人間と会うことが
許されなくなる・・。
最悪の場合「「死刑」」を宣告されちゃう・・。
でも、ボクは柚が紗季ちゃんの話をしている時に生き生きした顔が好き。
【禁断】から逃れる為には業務放棄と言う手もあるんだ・・。
つまり、二度と狐族とは関わりがもてなくなる。同時に霊力も失ってしまうんだ。
ボクは柚には逃げて欲しくない。
皆で柚を助けてくれないかなー・・??』
●狐様。
銀に連れられ、小さなカフェへと足を運んだ。
中には偶々なのか人は居らず店内には5人だけしかいない。
まだ柚琉の姿は見えないようだ。
そして銀は真っ先に「お稲荷さん」を注文し、ご機嫌気味に笑顔を零している。
「ほぇ?」
「だから柚琉は1200歳お爺さんじゃない。だって紗季が老いて行って一人ぼっちになるのは目に見えてるよ」
海原・みあお(うなばら・みあお)が狐と人間の生きる年数が違う事をお惚け気味に首を傾げる銀に指摘する。
「あはは・・それは大丈夫だよ。1200歳だと言ってもボクたち狐族と、人間の歳の数え方は違うんだよ・・」
今までにこにこと愛嬌のある笑顔が相変わらず耐えぬことなく返事を返したが途中真剣な顔をして話すその言葉にはまだ続きがあるようだが、返す前に聞き覚えのない少年らしき声が耳に入ってきた。
「ゴメン、遅くなって・・って人間付き?!銀なにを考えてるんだ!!俺を捕まえて売り物にするきかよ!!」
「あなたが柚琉君ね。私達はあなたの味方よ」
圧倒され、脅え気味の銀を見て怒りを露にする柚琉を落ち着かせるために秋月・霞波(あきづき・かなみ)が柚琉に優しく声をかける。
少々疑い気味の柚琉だが、銀が連れて来たからには仕方がないと思ったのか渋々席に着いた。
●未来。
「妾の柚稀は狛犬じゃが、お主は狐か。しかも金色とはのぉ・・」
少々幸せそうな表情で椿・茶々(つばき・ちゃちゃ)が柚琉を見る。柚琉は銀同様に銀色の髪をしており、ふわふわした印象を受ける。だが性格は活発な為か銀より「のほほんっ」と文字で書かれたような印象は受けない。それがまた茶々が自分の狛犬を思い出させるのだろうか。
「これは私の意見なんだけど、柚君が紗季ちゃんを好きなら傍にいてあげるのがいいと思うの。それに沙季ちゃんを本当に好きならばちゃんと自分の正体を明かさないとね・・」
「俺も同感だよ。それに本当に好きなら、何を擲ってでも護れよ!!」
霞波と草壁・鞍馬(くさかべ・くらま)が柚琉にアドバイスする。
無論それは4人(+1匹??)共が柚琉の恋路を応援しており、例の上層部への批判もあってのことだ。
柚琉が入って来て以来鳴る事の無かった入り口の鈴の音が鳴りドアが開いた。
そこに入って来たのは黒髪の美しい中学生くらいの少女であるが、何処かで聞いた様な特徴を兼ね備えている。
「沙季!!」
柚琉が少女を見た途端に立ち上がり唖然としながら呼んだその名、宮前・紗季こそが例の少女であり柚琉の大切な人である。
「貴方が柚琉の大切な人だね!」
みあおが沙季にそう告げるが、突然の問いだったせいか沙季は顔を真っ赤にさせてその場におどおどしながら立ち尽くした。
「妾達は柚琉と沙季の味方じゃ。安心して大丈夫じゃ・・」
柚琉を見てまったり気味の茶々が初々しい表情をする沙季に席に座るようにと、扇で手招きをする。
「沙季ごめんね・・突然大きな声をだしちゃって・・」
「えっ?!ううん、そんな事ないです。お陰で少し混乱と緊張が解けたみたい・・」
みあおの笑顔につられる様に沙季は笑顔で返答し、ほっとした様子を見せる。
では本題に戻ろう。
「柚君、まずはお互いの話を改めて聞いてみたいな。それからでもどうするか考えても遅くないと思うの。お話ってとても大事だと思うわ」
霞波の言う通りまずは柚琉が沙季に自分の気持ち、そして本当の事を言わなければ前には進まない。
「あのな、沙季驚かないで・・俺、人間じゃないんだ」
「えっ?」
「でも沙季が大切だ!沙季だから本当の事を言う・・俺の本当の正体・・・狐なんだ」
柚琉の精一杯の想いを沙季に伝える言葉の想いは痛いほどに伝わってくる。
だが沙季は普通の人間であり、一般常識範囲を超えるというのはこういう事をいうのだろうか。
「・・柚琉君、私も柚琉君の事大好きだよ。例え柚琉君が人間ではなくても。貴方の優しさを好きになったのだから。正直言うと少し混乱してるよ。でもね、この言葉に偽りはないわ」
思いがけない言葉に柚琉は嬉しさのあまり周りの事を忘れて思わず沙季に抱きつく。
沙季が本当に柚琉の事を理解するまでは多少時間がかかるとは分かっていても「好き」という言葉が嬉しくてたまらないのだろう。
柔らく優しい時間が今は流れる。
これから、銀の言う【禁断】という言葉が道を阻む事くらい分かっている。
それを食い止める為に来たと言っても過言ではない。
「柚琉、紗季って人間だよね・・ふつーの。でも柚琉は1200歳お爺さんじゃない。紗季が老いて一人ぼっちになるのは目に見えていると思うの。沙季はそれでもいいの?それとも一緒に老いて縁側でお茶でも啜ってもいいのなら話は別だけど・・」
みあおの質問に銀と柚琉は深刻な面持ちで沙季を見つめる。
「銀、さっきも同じ事を訊かれた時に話にはまだ続きがあったんじゃないか?」
鞍馬は先ほど銀がみあおに説明していた時、途中で話が途切れ柚琉が来てからその話に触れる事がなかった事を疑問に思っていた。
「あのね・・さっきも言ったけど狐と人間の歳の数え方は違うんだ。人は1年で1歳と数える。そして狐族は100歳を1年と計算するんだ。人間界では12年間生きた者を12歳と数える。それが柚琉の人間の数え方としての歳だよ。そして狐族の平均寿命は1万歳。」
「つまり人間で言えば1000年生きる計算ってことか?」
「柚琉は一人になっちゃうの??」
銀は鞍馬とみあおにゆっくりと頷いた。
当然のことながら柚琉に笑顔など一切無く、沙季もどう言葉をかけていいのか分からない。
「柚君、沙季ちゃん、後悔しない為に自分の心に尋ねてみて?2人はなにを望むの??答えをだすのに焦る必要はないわ」
霞波は優しく2人にアドバイスをする。
決断も決意も2人の心次第。こればかりはアドバイスしかできない。
柚琉達は少しだけ時間が欲しい、っと言った。
2人を温かく見守る事しか今の所は出来ないようだ。あえて2人にこれ以上の事は言わずに後日会う約束を取りつけた。
「所で銀、上層部の者達を下界に呼ぶ事や合う事はできるのかえ?」
2人がお互いに好きだという事は分かっている。茶々は【禁断】と呼ばれる言葉を許せずにいた。
「・・上層部に会いたいの??」
「だってお互いの決意が固まっても『上層部』は納得しないと思うよ。それにそもそも禁忌になった理由があるはずだし・・」
「とにかく上層部にあって見ないと話しが始まらないな」
銀の問いかけの言葉にみあおと鞍馬が上層部に話を取り付けたい意志を伝える。
「会えないのか?」
鞍馬の真剣な顔を見ながら銀は首を横に振った。
「上層部はいつだって僕等を見てるよ。狐達の動きを・・・だから柚は言葉を控えたんだ。柚は沙季ちゃんに恋人の「好き」を言わなかった。掟破りをしては二度と会えないから。だから明日の柚の言葉次第で僕達を導いてくれるよ。扉が開かれる・・」
「妾は柚稀とは離れたくないかえ?それと同じ事。好きは好きでなにを伝えて悪い。だからますます許せなくなってきたのじゃ!!」
「俺も大切な人・・彬と楓がいるけど俺は神官家である陵の者を護る「守人」の草壁家長男だけれども「守人」としてではなく「鞍馬」として彬や楓を護りたいと思っている。言葉の守りで救ったり、救われたりするくらい言葉は重要だ・・」
茶々は怒りながら少しふて腐れ、鞍馬は少々悲しい面持ちで言った。
いずれにしても【禁断】というものを解決に導かなければならいだろう。
一歩前進とは言え、4人は笑顔をこぼせなかった。
●決意と禁断の扉。
何日かして、あの日のカフェに柚琉と沙季が呼び出した。
あの後、混乱気味だった心が少し冷静になりお互いにそれぞれ考えたようだ。
もちろんこの日、2人の決意はしっかりと固まっていた。
「俺達、やっぱり一緒にいたい。今を大切にしたいんだ。これから先、離れてしまったらもっともっと辛くなると思う。後悔はしたくない・・それが答えだ」
2人の想いを受け取った以上、【禁断】に立ち向かう決意を4人は固めた。
「柚・・ボクは柚が好きだよ。だから応援する。ボク等が柚と沙季ちゃんを導く要になるから・・」
銀は無邪気に微笑む。銀にとってよほど大切な友達なようだ。
「柚くん、言葉で伝えてあげないとね。女の子は言葉でも伝えて欲しいものなんだよ」
「うん。・・俺は沙季が好きだ」
霞波が柚琉の背中を軽く押したあげたお陰もあって柚琉は言葉で沙季に伝えた。
緩やかな時が流れていたのも束の間だったように突然突風が襲ってきた。
急いで建物へ移動しなければ、っと建物に走って移動を始めようとした。
「銀、建物の中に避難しないと!!」
突っ立っている銀の手を鞍馬は掴んだが銀はその場を動こうとはしない。
不思議に思った鞍馬は銀の見上げる方向を見た。
「銀、鞍馬!!早く〜」
みあおも銀に気付き銀を呼ぶが銀はやはり動こうとはせずに空ばかりを見つめている。
これでは体の軽い銀が吹き飛ばされてしまうのではないかと心配になりみあおは自己の持つ能力、ハーピーのような青い鳥娘になり銀を救助しようと変身しようとしたその時、風がぴたりと止んだ。
「3人とも大丈夫かえ〜〜?」
銀たちが心配で茶々達は建物には移動しなかったものの、銀たちと逸れた状況だった為把握できていない。姿を捉える事が出来たが茶々の声は3人には届かなかったのだろうか。こちらへの応答がない。
「柚君!どうしたの?!」
「霞波どうしたのかえ??」
突然の霞波の声からただならぬ事だと察知して銀たちに気を取られていた茶々が真っ青な顔で横たわる柚琉に近づく。
「これが・・銀君の言っていた事?」
【禁断】の扉は開かれる。
●【禁断】の掟に隠された過去。
風は止み、一瞬だけ目の前がくらりっと回り気がついたときには知らない所にいた。
なにが起きたのかさっぱり分からない状態だ。
どちらにせよ、離れ離れだった3人とも合流が果たせたので一安心である。
だが、沙季の姿がない。これも上層部が2人を別れさせる為の陰謀だろうか。
「あれ?銀・・ここは何処??」
「ここがボク達狐族の住む世界・・だけどここは禁断の地・・」
みあおの問いに風が捲き起こってから言葉に反応しなかった銀がやっと答えた。
「ここに上層部がおるのじゃな?なんだか怒りが湧いてきたのじゃ!!」
意識を取り戻したものの気分の悪そうな柚琉を霞波は支えてあげる。その姿に茶々が気合らしきものを入れますます入れるなか、期待通り??っといった感じに3人ほどの人影が視界に入ってきた。
「「銀・・お前は首領の跡継ぎであろう。首領と言えども【禁断】を犯した者の肩を持つのは許される事ではない」」
真ん中の髭の生やした長老が偉そうに銀に言い放つ。
この偉そうな口調。高貴な感じ。者を上から見下ろす態度・・やはり上層部である。
右にお婆、真ん中に長老、左に少々若い髪の長い女性が立っている。
「「そもそも、柚琉も柚琉です・・なにを考えて人間に恋を・・狐族の力を失った貴方は無力でしかなくなるのよ・・」」
「本当に好きなら何を擲ってでも護れるものだ!力なんて無くても好きな人とだったら生きていける!!」
鞍馬が右端にいるお婆に反論する。
「「・・・柚琉は現に迷った。この先迷って後悔してからは遅いのです。家族はどうするのです?友達は??答えなさい、柚琉」」
「俺は・・」
責められ柚琉は自分の答えをだせないでいた。むしろ物事を考えられない精神状態なのだ。
「柚琉、俺の話をよく聴くんだ。迷ったっていいよ・・不安だって言ってもいいよ!今までの知り合いや家族と別れなきゃならないのが淋しいって泣いてもいい!!だから、命一杯愚痴を言って笑顔で・・彼女のところへ行ってやれよ!俺はそれが出来なかったけど。でも、お前に俺と同じ後悔はさせたくない!」
柚琉を優しく抱きしめながら鞍馬は柚琉に自分の想いを告げる。
「鞍馬・・」
「俺は『本当に守りたい奴』を自分の目で極めたんだぜ?」
「うん。鞍馬・・ありがとう」
少しずつ平常心を取り戻し、真っ青だった柚琉の顔色が少し良くなっただろうか。
「俺はそれでも沙季が好きでたまらないんだ」
「「・・・では処分を受けると言うのか??・・・よかろう・・」」
自分の髭を掴みながら長老はため息を吐きそう告げると呪文を唱え、手から狐火を放った。
「柚くん!危ない!!」
その場を動く事の出来ない柚琉を庇う様にして転げながらそばにあった水溜りの水を操り、狐火を目の前寸前で消す事がなんとか出来た。
「痛っっ・・柚くん大丈夫??」
「俺は大丈夫!それより霞波!足・・」
「えっ?大丈夫だよ」
優しく微笑む霞波を柚琉は小さく微笑んで見上げた。
「先ほどからいい放題抜かしておるが禁断なぞありはせぬ!」
茶々は怒りを込めて命一杯扇で真ん中で偉そうに言う長老を殴りつけた。
「「なっ?!!!」」
「何かと接すれば、情を持つのは自然。たとえ同じ時を過ごせないと分かっていてもじゃ。そんな頭が固いようでは、神もお主らに仕事を与えたことを悔いておろうなぁ」
「「掟は掟です!!屁理屈を言わないでちょうだい!!」」
「屁理屈は貴方の方だよ!じゃー禁忌になった理由ってなに?!」
怒りが爆発を通り越したせいか顔は笑顔な茶々とむきになるみあお。
「「殿方の言う通り・・屁理屈は爺様の方です。そもそも爺様、霞波様は人間界の者。人に危害を加える事はもっとも掟破り!許される事ではありません。それから伯母様、人間までもの召喚も重罪!」」
初めてずっと口を閉ざしていた大らかに見えた女性が声を放ちびしっと人差し指で2人を指す。
「わ・・ワイルドな人だったんだな・・」
人間もそうだが人を見た目で決めるのものではないのは狐族も同じなのだと鞍馬は悟り納得した。
「「みあお様、元々この掟は掟ではないの。私も同じように人間に恋をしてしまった。当時、後を継ぐ者が私しかいなかった。だから【禁断】と呼ばれる掟が定められたのです・・。噂が掟を産んだのです」」
「噂が掟を??」
「霞波お姉さん、たぶん元々【禁断】の掟は存在しないって事・・かな。上層部の者達は「人間への恋は力を失い、即ち死を示す」と言う噂を本当だと思い込み先祖が【禁断】の掟を定めたと勘違いしたんじゃないかなー?」
霞波の足の手当てをする為に包帯をポケットからだし銀は悲しそうな顔で言った。掟ではなかった事が分かり良かったはずなのに。
「「じゃが、人間と恋など・・仮にも柚琉は将来有望な者じゃ・・」」
「うだうだと煩い狐達じゃのぉ。そうか。お主らを纏めて殺めてしまえば、問題は解決するかえ?」
微笑で先ほどよりも殺気に満ち溢れており、右手には風を巻き起こす能力を溜め込んでいる。
「覚悟じゃ!!!」
茶々の最大限に溜め込んだ風を放つと2人は吹き飛ばされ、止めと言わんばかりに扇の先端で殴りつける。
「茶々・・もう十分だぞ〜」
少々焦り気味で柚琉は茶々を止めに入る。上層部の2人はどうやら気を失ってしまったようだ。
「ぬぅーまだ足りぬのじゃ。柚琉の気持ちを分かっておらん!」
「「霞波様、先ほどお爺様のせいで怪我した足の具合はどうですか??」」
「あっ・・かすり傷ですから。それに、茶々さんが仕返ししてくれましたから。これでおあいこです」
キョトンとした顔で女性は霞波の顔を見て意外な発言だったのかクスクスと笑った。
所で先ほどから気にはなっているはいるが、みあおと銀が悲しい顔をしているのは何故なのだろうか。
「銀、みあお、さっきからどうしたんだ?2人ともお腹でも空いちゃったか??」
「ううん、千佳(ちか)様の恋はどうなってしまったの??」
「千佳様??あっ・・あんたの名前か」
銀の言う千佳様かと言う鞍馬の質問に女性は頷くと銀とみあおの傍による。
「人の幸せはみあおの幸せだよ。狐の幸せもみあおの幸せ・・」
銀とみあおは子供らしい考えを持っているせいか、2人とも同じ疑問を抱いたようだ。しょんぼりとする2人の頭を優しく撫でると相変わらずの優しい笑顔で2人の顔を見つめた。
「「私は鞍馬様と似た道を辿ってしまったかもしれない。後悔も。でもね、鞍馬様はそれでも永遠に熱愛していられる。私も同じ・・あのお方を忘れる事はないわ。いつか会えるかもしれない・・」」
「千佳様、みあおが千佳様に幸運の青い鳥を運んであげる!きっと再会出来るよ!!」
「「頼もしい方ね、みあお様は・・それからあのお方も♪」」
微笑しながら指さしたその先は上層部の者をこてんぱん(?)にやっつけ満足気な茶々の姿であった。
●小さな愛を咲かせましょう。
「ふぅー、やっぱり地上が一番だね!」
少しだけみあおは愛しそうに地面の土を踏みしめる。つい先ほど見た景色がなんだか
懐かしく見えてくる。
「鞍馬・・さっきはありがとう。俺、上層部に会って良かった。鞍馬は俺に勇気も強い決意もくれた。感謝してるよ・・」
万遍の笑みで柚琉は鞍馬に微笑む。
今日は柚琉にとっていろんな事が起きて運命が大きく変わった日となった。
意識がとぶ前に居たあの場所に沙季は居た。泣いていたのだろうか。目が赤くなって涙の後も見られる。
「柚琉、はよう沙季の元にいってやるのじゃ」
「あっ・・うん」
柚琉は茶々の言葉を聞いて沙季の元へとまっすぐと走りぎゅっと言葉を交わさずにただ抱きしめた。
「良かったね。みあおは2人が一緒になれて幸せだよ」
「皆さん、無事でなによりです。とても・・心配で心配で・・」
「大丈夫だ。無事に解決したよ。2人は一緒に居られるんだ」
鞍馬の言葉に涙が枯れるほどまでに泣いた後の見られた沙季の目からはまた涙が零れ落ちた。
「柚君、女の子が本当に降らせて欲しいものは何だか知ってる?降らせて欲しいのは月でも星でもなくて貴方の言葉なのよ」
そう言いながら美しい花を差し出した。
「霞波・・ありがとう。沙季・・喜んでくれるかな?」
「もちろん。女の子は好きな男の子からのプレゼントは嬉しいものよ?」
差し出したその花はセントポーリアの花。
「霞波、あの花の意味はどういう意味かえ??」
「『小さな愛』。少しずつ大きな愛になって欲しいから・・」
「あの2人なら大丈夫だろ・・」
「みあおは大きな愛になると思うな♪」
「妾もそう思うのじゃ」
霞波の想いの言葉に鞍馬とみあおと茶々が答える。
2人の小さな愛が大きなものになる事を・・
セントポーリアに想いを込めて・・。
●おまけ。
「みあお様のお母様がいらっしゃいますよね?」
「えっ?みあおのお母さんの事知ってるの??」
「銀の連れて来られる方の事は少しだけ調べて知ってますよ。
これはそのお母様に・・きっと髪の長い方ではないかと思いまして・・。お料理の時に髪を結わえたりお出かけにでも使っていただけると嬉しいです」
千佳が差し出したものは赤をベースにその上から桜絵が散りばめられた美しい結わえの紐である。ちなみに髪が長いと言うのは女の感というのでしょうか。
「それからこれはみあお様に・・」
みあおに差し出したものは親子揃ってお揃いにっと可愛らしい桜絵のリボンであった。
さっそく、髪を結わえてみる事にした。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1745/椿・茶々(つばき・ちゃちゃ)/女/950
/座敷童子
1415/海原・みあお(うなばら・みあお)/女/13
/小学生
1717/草壁・鞍馬/(くさかべ・くらま)/男/20
/インディーズバンドのボーカルギタリスト
0696/秋月・霞波(あきづき・かなみ)/女/21/自営業
申込み順。
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■ ライター通信 ■
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葵桜です。今回の依頼は銀君直々・・。
久しぶりの銀君はなんだか日本語が少し上手になりました。
以前、別依頼のオープニングでみあおさんと霞波さんに
お会いした事あります・・よね(銀君と・・)
【茶々様へ】初めまして。平安時代の姫君ですか・・・。
通りで可愛らしい方なわけですね。
私の前世は巫女・・
(とかかっこいいが言葉の後につく/汗)
【みあお様へ】続けて依頼を引き受けてくださってありがとう
ございます。高峰研究所でよく拝見してますよ。
実は依頼を受けてくださる以前からみあお様の
事は知っていましたよ。
とても可愛らしい方だなっと見てました。
【鞍馬様へ】初めまして。鞍馬様の設定を読まさせていただき
なんて強い人なんだろうなーっと感動しました。
ついつい引き込まれてしまいました。
銀君はまだ小さいけれど自分が首領を継がないといけない
境遇を辛く思うときがあるみたいです。
【霞波様へ】続けて依頼を引き受けてくださりありがとうございます。
相変わらず可愛らしく、拝見できて光栄です。
今回の花は【セントポーリア】で【小さな愛】・・・
学ばせてもらいました。私もこれで女の子らしさに
一歩前進です(知識の方も)。
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