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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ウサギがいっぱい

------<オープニング>--------------------------------------

ある朝。
草間兄妹と焔達が家から興信所についたとき…。
中からゴソゴソと音がする。
「泥棒か?」
昨日まで留守にしていたのだから誰もいない…。
しかし、数が多すぎる…し、人間ではなさそうだ。
「黒いアレ…ですか」
零は掃除は完璧にこなしているので一生の不覚と思わんばかりに怨霊武器を召還していた。
塵一つ無い綺麗な部屋にアレの存在を許すわけにはいかないのだ。
おそるおそる玄関をあける…
黒いアレではなかった…
応接間や、経理デスク…所長デスクに…たくさんのウサギ、ウサギ。
白くて可愛い、ウサギ。
「なんだこりゃぁ!」
草間は驚く。
零は呆然としていた。宿敵のアレではなくこんなに愛くるしい生き物が鼻をひくひくさせている。
「誰でしょう?こんな楽しい悪戯をしたかたって…」
と先ほどはうってかわって…のんびりとした感想。
「兎に角!発生源探すぞ!」

あらゆる所を、ウサギを無視して探してみると…
焔が…何かの入った袋をくわえ…応接間のテーブルに乗った。
「あ、これは…数日前に誰かのお土産で頂いたお饅頭ですね…」

そう…「月ウサギ一口饅頭」と書かれた…お菓子の箱だった。
食べてないのに…開いている?

謎が深まるばかりです。

(興信所に足の踏み場が無いほどの…ウサギの群れが居ると思ってください)

■Rabbits Surprised To You
ウサギ、ウサギ、ウサギ。興信所の床は白い下地に赤とピンクの模様を彩った絨毯がしかれていた。
「かわいいです」
草間零は可愛いウサギに和んでおり抱きしめている。所長の草間武彦は頭を抱えている。
「なんなのよ?これ?」
と、途中で出会ったシュライン・エマさんもビックリな状態。
「はっはっは☆、草間興信所は謎のウサギ軍団に制圧された!」
とか、隣で湧いてきた歯を輝かせる、謎の怪人加持葉霧くん。
「お前か!お前の仕業だろ!」
と加持の胸座を掴む怪奇探偵。
「違うよ、たしかに、月見ウサギ一口饅頭は、『某火星大接近☆君も火星人と握手DA!』オフで、セクシー草間君の君に差し上げたさ。しかし、何も小細工も加工もしてないよ」
加持は饅頭を差し入れた事は認めるが、自分の秘密部屋で悪戯をすると言うことはしていないらしい。困っている草間を楽しむのが彼の趣味なのは確かだが…。
「本当に此処では面白いことが起きますね…」
とある大学生が階段を上ってやってきた。柚品・弧月という何回か草間の仕事を手伝ったサイコメトラーが笑っていた。
「おはようございます、草間さん、零さん、シュラインさん。今度はウサギが依頼でもきたのですか?」
「違う。この萌え者の仕業だ」
「でも本人は違うと」
「はっはっは、まさかと思うけど、原因は…電波☆だね」
「B級ホラーの放射能汚染で饅頭がウサギとか?」
「うさちゃん可愛いです」
と草間、加持、弧月、零は全くかみ合わない会話に…。パニック状態なのかもしれない。
シュラインは…1羽だけウサギを抱いてみて、本当に生き物か心臓音を聞いてみた。
「間違いなく…普通のウサギだわ…」
下のウサギを踏まないように気を付けて、周りの音も聞いてみる。不自然な音はないか。
全部…普通のウサギの心音と鳴き声…可愛らしい仕草ででる微かな音のみ…。
「わ…分からないわ…」
これだと、未開封のはずだった饅頭の箱から出てきたのか分からない。
不意に何かかじる音がする…。
「あー!」
シュラインが大声を上げた。
それで、話のかみ合わない会話をしている方々が我に返る。
「どうしました?」
「電話線や…コードが…ウサギに…」
よく見ると…パソコンのコードや、黒電話線がプッツリと切れていた…。因みにリモコンのボタンも悲惨な状態だ。
「兎に角、うさちゃんを一つにまとめないと!」
シュラインは未だにウサギに和んでいる零は放っておき…、今居る男衆をこき使ってウサギを仮眠室に閉じこめようとするが…。
「ぷきゅきゅ〜」
仮眠室もウサギさんで満員御礼…。脱力する皆さん…。
しかし…加持だけはにこやかに笑っている。
「なにがおかしいぃ!」
草間が怒鳴る。ウサギがビックリしてまた興信所が五月蠅くなる。
「作戦成功!はっはっは!健康第一だよ、草間君!See you again!」
といって…加持は窓から去っていった。
「あいつは何だったんだ?…って…あ〜!」
仮眠室ベッドのうえのウサギをそっと避けて…秘密の隠し扉を開ける。
「零に黙って買っておいた…マルボロ10カートンが…」
そこにもウサギ君が5羽ほど。煙草の箱を踏みつけたり糞をしたり…もう吸えない状態になっていた…。因みにエルハンドとの競馬の賭で大敗し、零にマルボロ禁止令を受けて隠れて買っていた代物。しっかりシリカゲルなど湿気や防虫対策も万全にしていたのが見るも無惨な姿…。
「武彦さん…そこで燃え尽きないで」
とシュラインがため息をつく。
(私だって燃え尽きたいわよ)
そんな混乱状態の中…
「わっウサギがいっぱい!」
朝比奈舞…イヴ・ソマリアの変身した姿…がウサギの軍団に驚いていた。
数秒で…
「可愛い♪」
と抱きしめて撫でる。ウサギのかわいさで和み状態犠牲者第2号誕生。
ウサギはコレといって逃げることはなかったし、可愛く鼻をひくひくさせて、耳をひっきりなしに動かしている。
しかし興信所の外に出ることはなかった。
弧月とシュラインは焔がもってきた箱…加持が差し入れで…月見ウサギ一口饅頭の空き箱…。
今のところ、これしか手がかりがない。
「サイコメトリーしてみますか」
弧月は、箱を手にとって過去を読んでみた。
もう一箱あるので、シュラインは製造場所や販売元を調べ…問い合わせてみる。
箱のデザインは、単純に白く。月を眺めているウサギが印象的なものだ。
そして、記載されている会社などはまともの会社であった。
「月明かりで、饅頭がウサギになっちゃったと…」
シュラインは頭を悩ます。
「加持さんも何もしてないようです。オフ会が終わった後、近くのお土産屋で購入したと言うことが分かりました」
写真などを携帯のデジカメで何とか入手する。かわいい白いウサギの饅頭だ。
月齢的に…留守にした数日間が満月だった。加持から貰ったソレは丁度満月が見える窓の所に放置されていたのだ。ならば、月の光の線が濃厚である…と思いたい…。


■最強の傭兵?
ササキビ・クミノはメイドアンドロイド・モナを買い出しに出していた。途中、興信所に向かうと…ウサギがいっぱいで草間達が混乱している姿を目撃した。自宅にいる彼女も流石に驚きを隠せない。
彼女が赴けば…ウサギ程度なら障壁で即死するだろう。しかし草間達人間を自分の即死障壁内に入って欲しくない。人殺しは勘弁だ。
「モナ…急いで帰ってきて。回収作業を手伝わないと、皆に精神が燃え尽きてしまうか…どこかの世界へ逃避しそうだ…特にウサギに見えるようなヤツに心を奪われてな…」
「ワカリマシタ」
それから半時。
リナとモナに草間興信所と同面積分もある多段ケージ(チタンコートの鉄製メッシュがついた二重構造、ユスリ蚊も通さない)と細菌チェッカー・ガイガーカウンター・アルコール・中和剤他核防護及び衛生用具と服装も人数分用意した。
そして今まともに思考回路が働くのは…シュラインと弧月だけで…。
「ハナシハワカリマシタ。コレデウサギヲカイシュウシテクダサイ」
とメイドがいう。
「えーかわいいじゃない…かわいそうよ?」
舞がブーイング。
「放射性物質で汚染されている可能性があります、舞さん」
と追加機能なのかクミノの声がした。
「大丈夫、私本能で有害かどうか分かるし」
「では勝手にしてくれ…サンプルとしてこっちの小さいケージに1羽か2羽入れればいいだろう」
と、クミノはメイドを使って回収作業に移る。ウサギは一切抵抗しない。
危険物質の可能性があるため触らないようシュライン達に念を押した。
こういった謎の物体は確かにどうするべきか分からない。
加持の悪戯でもなければ…なんだろう?
月の光で変化するのは狼男とかの魔物で十分だ。
「危険でなければ…ウサギ汁にするのもいいかも…」
と弧月が呟くと…
「ソレはかわいそうです!」
と零がまだウサギをもって怒った。
「冗談ですよ…」
「でもね…元は饅頭なんじゃないの?すごい甘いお汁粉にならない?」
と舞が突っこむ。
「そうか…元は饅頭だった…」
弧月はウサギを捌いたときに中身があんこで出来た内臓、饅頭生地の肉だったらと思うと…寒気がした。
「草間さん…ひょっとしてうさぎ屋を始めるとか?」
「その予定はないわ…たぶんね…」
そのことは否定するシュライン。さすがのシュラインも訳が分からない…。メイド達の作業をじっと眺めていた。1時間ほどで回収が終わり、床には…丸くて黒い物体が沢山転がっている。
ウサギの糞だ…。でも匂いからして…、

あんこだった。

もう訳が分からない。
原因が闇の中というのは…かなり怖い。しかし今出来ることと言えば…あんこの掃除。
クミノから配られた防護服をきて残暑の厳しい中…一応動けるメンバーで掃除を開始する。
アンドロイドメイドは、電話線などのコード系を買い出しに出かけてくれた。ついでにウサギを詰めたケージをじゃまにならないところに移動させておく。
草間はというと…未だにマルボロがウサギにめちゃくちゃにされたショックで寝込んでいる。
「だらしないですね…」
と弧月がため息とつく。
「兄さんですから」
フォローになってない零の言葉。
クミノがメイドのスピーカーから喋る。
「確かに、月の光で奇妙な現象が起こる可能性はある。しかしコレは常軌を逸している…」
「そうよね…」
「同感」
今のところ、満月でこういった現象を聞いた事がない。
アトラスの方にも、ゴーストネットOFFにも満月に関しての怪奇現象は見つかってない。
仮眠室で…草間がうめいていた…。
「絶対…絶対あの加持の所為だ〜」
「じゃあ、仕返ししない?」
結局ウサギで思いっきり遊ぶことが出来なかった事で不機嫌な舞が提案した。
「それが良いが…どうやるんだ?」
草間は、燃え尽きオーラを発して…舞…イヴに訊いた。
「私の力で…加持さん所にウサギさんを送るの」
「そうか…碇が怒りそうだが…」
加持がアトラス編集部に勝手に秘密基地や購買部を設けているという。そこでは夜な夜なおかしな電波系のアイテムが生産販売されているのだとか。
シュラインもこの騒動で気力を使い果たしており、
「碇にネタとして送るのも良いよね…。真相はたぶん三下君が調べてくれるでしょう」
とさじを投げる。
極普通の饅頭が生き物になるなんておかしすぎる。月の光でもなく、神の悪戯以外は。
「神の悪戯?いいえ…私の知っている限り…食べ物を粗末にするような悪質な悪戯をする神は居ないわ」
シュラインはブツブツ呟いた。
エルハンドとその父親のことだろう。
「きまり〜」
舞は嬉しそうに、ケージに向かっていった。


■加持とクミノの受難
加持は全ての責任が自分に向けられることを避けるために逃げてきた。
すでにあのウサギと電波コンタクトを取れているので、ソレを利用し…草間の隠し煙草をめちゃくちゃにしたのだ。
ソレがばれれば…(もうばれているが)容疑は自分に掛かる。やってもない饅頭ウサギ化の罪も着せられるのは勘弁だ。
「ココまで来れば問題ないだろう☆」
と、安心している(でも警戒はしている)。
しかし…今回は運が悪かった。
イヴという強敵が居ることは計算外だった…。
彼は秘密基地にはいると…草間興信所の朝の風景と同じ…。
部下達は大混乱、暴走する中学生の相棒も常連もまさかの放心。
天井の空間から通常の3倍はするのか(それは気のせいだが)…ウサギがボタボタと落ちてくる。
編集部でも悲鳴が聞こえてきた。
「流石、く…草間君…食べ物の…イヤ…煙草の恨みは恐ろしいと知ったよ…」
苦笑しながら、ウサギの絨毯に埋もれてあっちの世界に逝ってしまった加持であった。
数日後…アトラスは総掛かりで
『ウサギがアトラス編集部を制圧!』
という自虐ネタで特集が組まれた…。
いまでも可愛いウサギがちょこまかと編集部や加持の部屋で生きているらしい。

数日後…クミノの家に小包が届いた。
加持という男からのようだ。
「何か関わり合ったか?」
手紙が入っており、
「先日はお世話になったよ。コレはほんの気持ちさ☆」
お礼なのか?
包装紙をめくったとたん…。クミノは気絶した…。
あんこの匂い…彼女が最も苦手とするのは甘いもの…。
月見ウサギ一口饅頭が送られてきたのだ。
「真相を君の手で見つけることを祈るよ(歯がキラーン☆)」



結局ウサギ饅頭がウサギになった原因は分からないまま闇の中。
この事件は、草間興信所の迷宮入りファイルとして…伝説となる。


End?

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【1166 / ササキビ・クミノ / 女 / 16 /殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない。】
【1376 / 加持・葉霧 / 男 / 36 /謎の指揮官A氏(自称)】
【1548 / イヴ・ソマリア / 女 / 502 / アイドル兼異世界調査員】
【1582 / 柚品・弧月 / 男 / 22 / 大学生】

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■         ライター通信          ■
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こんばんは、滝照直樹です。
ウサギ事件は謎のままです…。似たような事件の予定は…忘れた頃に出るでしょう…。その時に少しだけ手がかりがつかめるかもしれません。
物品が生き物に変わるという事件でも、何が原因なのか分からない事がございます。
月の力説、加持葉霧容疑説…、神の悪戯説、と様々です。
草間は加持が犯人と決めつけているようですが…各個人にて想像してくだされば、色々世界が広がるかもしれません。

初参加のササキビ・クミノ様、柚品・弧月様ありがとうございます。

滝照直樹拝