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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


I wish to 〜

■当人の思惑とは裏腹に…
綾和泉汐耶が雫と話をしていた。
「代償が高いという危険な魔術を使うのはよした方が良いわ」
「でも…気になるの〜」
「エルハンドさんが言わなかったのはそれだけ危険だと言うことよ?」
かなりの時間会話して、掲示板での状況を見せてみる汐耶。
願いが叶ったという書き込みもあれば、「嘘つき!」と言う書き込みがあって一応の盛況ぶり。
おそらく、自分の願いが叶わなかった証だろう。しかし、管理人自身のレスが
「それは、扱い方を間違えているからです」
とそっけないもの。
其れを見てしょんぼりとしている雫。
しかし、彼女は知的好奇心の方が強いので、どうしてもこの「願い」を使ってみたかった。
「漏れもそう思うぜ〜」
と、電波男・黒乃・楓が現れた。
「真面目な話、漏れも賛同しかねるNE。確かに星様に願いを言ったり、笹の葉に短冊を吊したりってのもあるけどさ〜。エルハンドの旦那がこの魔術の「代償」のことを言わなかったのは雫タンのことを思ってのことだぜ」
「そうよ?」
説得する人が2人に増えた…。
しかし、
「仮に…漏れが願いを叶えるなら…ギャルのパ…」
と、楓が何か言い出したとたん…。後ろからハリセンで叩かれ…沈黙。
「まだそのサイト見ているの、雫ちゃん?」
「「茜さん」」
長谷茜である。
汚れた巫女服でご登場、何かの事件の帰りだったらしい。
当然、後ろには織田義昭がいた。
「止めていた方がいいよ?一つ間違うと大変な目にあるんだから」
と、彼も反対派の意見に賛同のようだ。
雫は涙をウルウルさせて、
「だって、代償って気になるじゃない?いったい何なの?」
願いが叶う効果の程と、その代償がなんなのかを知りたいのだ。
汐耶は、ため息を吐く。
「雫ちゃん…、コレは知ってはならない事なのよ…」
と、言った。
雫は震えて…叫んだ。
「どうしてよ!?どうしてみんな止めるの?本当のこと教えてくれたって良いじゃない!」
と、泣いてその場から駆けだしてしまった。
「雫ちゃ…」
汐耶が追いかけようとするが、義昭が彼女を止めて首を振る。
「俺たちの失態です。説得に当たってくれた事感謝します…しかし、彼女のことはあなたの方が良く知っているはず…」
と、言う。
「効果を知ってこそ…その怖さを知るしかないんです…。すみません」
義昭は汐耶に謝った。
「あの術を使って、放っておいて良いの?雫ちゃんに何かあったらどうするの?」
汐耶は義昭に怒る。
「では…エルハンド直々に教えて貰った方が良いかもしれない…エルハンドに会いに行こう…みんな」
茜が厳しい顔つきで言った。

●あやかし荘
「私も当然Wishは使えるけどな」
と剣客は集まった者にサラリと答えた。集まっているのは、汐耶と凪砂、義昭と茜だ。
「あの呪文は危険であるが、全てを知る上で都合の良いものだ。魔術というか魔法だ」
エルハンドは【見えない使い魔】を行使して、皆に茶を差し出す。
「では…何故止めないのですか?危険では?」
「あの呪文を危険といったが「それを使うな」という権利は私にはない。しかし雫の為に「私が使う」という義務もない。呪いは結果己に返ってくる。雫は確かに義昭の本心を知りたいと言うところだろうが、実はWishの代償がどんなものか、本当にこの魔術が効果を発揮するのか知りたいだけと考えている」
汐耶の質問に無表情で答えるエルハンドだった。
「代償とは?」
汐耶が大事なことを訊いた。
「術者の生命力と経験…そのどちらか…両方だ。時には寿命が削られる…」
「そんな…恐ろしい代償…」
「あの呪文は…定命の者が使うには荷が重い。私欲の願いはほとんど良くない事になっている。それは…念の力が己の器以上の願いであることと、世界のバランスが大きく崩れるから調整されるのだ。金や名誉、自分にしか得にならないことには非常に危険な術。雫がそうしたことを願わないことだけを祈ろう」

汐耶はあやかし荘から出て行く時に、義昭に言った。
「お願いがあるのだけど…」
「はい、俺が出来ることなら…」
「出来れば…あのサイトを管理している人と交渉して…サイトを閉鎖して貰いたいの…」
「…」
沈黙が続く。
義昭はあのサイト自体の存在は気にしていない。しかし、汐耶はこの魔法サイトは危険だと目で訴えている。自分の取り巻く人々がいつあの魔法に気づいて、行使し大変な事になる事を恐れているのだ。
義昭も、自分を慕ってくれている雫がアレを使うとどうなるか考えたくはない…しかし知った以上…止めることは出来ない…無事を祈るだけ。
「分かりました…しかし、相手は「アレ」を公開するほどの人物…汐耶さんは、待っていてください」
義昭は、承諾した
「お願いね…」


■茜と汐耶
翌日。汐耶と茜の2人は図書館のパソコンで「Wish」に関する本を探した。
似たような物があるが、かなり手間が掛かり、エルハンドの言う「Wish」と同等な物はなかった。
有るとすれば、おとぎ話や民謡、童謡…といった架空物ばかり。
「言葉の力って強いのね…魔術より魔法か…」
「たしかに、名前や言葉で魔法を使うって言うのは…ファンタジーだけど…」
と茜が、言葉のみで魔法を使っている魔法使いの小説を手に取っていた。
「エルハンドさんが知っているというのは…異世界の?」
汐耶はその言葉ではっと気づいた。
「大変!雫ちゃんそのこと分かってないわ!絶対止めないと!」
急いで、出かけようとする。
その時茜の携帯が鳴った。
「もしもし…エルハンド? え?想像者さんが倒れた!?雫ちゃんは?」
「大変!」


■願いの代償。
病院の特別応接室。
汐耶は雫を怒っていた。
「だめじゃない!人に頼むなんて…それに代償が…」
「ごめんなさい…ごめんなさい」
雫はただ泣いて謝るだけだった。一寸した願いだけで、術者の体力を著しく消耗する「代償」に驚くとおもに、想像者に悪いことをしてしまったと罪悪感でつぶれていた。
「エルハンドさん…私はどうすれば」
焔寿は、好奇心から手伝ったとしてもこの罪はどう償えばいいか分からなかった。
エルハンドは優しく彼女の頭を撫でてあげた。
「そうやって人は学ぶ。彼も其れを覚悟して手伝ったのだ。気に悩む必要はない」
「願いで「無かったこと」にするってのは?」
と、春華が言うが、汐耶は彼を睨んだ。
「なんだよ〜良い案だと思ったのに…」
と彼はふくれる。
「願いの呪文は…己の欲望を曲解した形で具現化することが多い。神である私も滅多にこの呪文は使わない」
エルハンドは呟いた。


■謎のまま
想像者の佐山は3日間の安静で回復した。
「これで…分かったかな?」
と笑顔で雫に訊く。
雫は泣きながら…
「ごめんなさい…ごめんなさい」
と彼に謝っていた。
病院の喫茶店で汐耶と義昭、黒乃が軽食を摂っていた。
「もうサイトも閉鎖されているので被害者はでないでしょう」
「しかし、後味が悪いわ…」
「ま、人は傷ついてなんぼだと思うぜ〜。そうでないと生きている意味って無いさ」
それぞれの意見を言いながら、今回の事件がひとまずすんだとホッとする。

焔寿と春華は、エルハンドと河川敷で座っていた。
「いきなり、あのサイトが閉まったのはどういう事なんでしょう?」
焔寿はサイト閉鎖のことが気がかりだった。
「苦情がありすぎたのか…管理者の気が変わったのかだな」
「有ってもなくてもいいや…あんな厄介な魔法」
エルハンドはサイトを開設閉鎖するのは個人の自由だという風に、春華はそのことについて興味が無くなった。ただ後味が悪いだけ。
「あ、見つけました…エルハンドさん」
凪砂がエルハンドを呼んだ。
「なにか?」
「これを見てください…」
と言ってDVD-Rを渡した…。
「何か良からぬ事が…起きてしまいそうなのですが…」
と不安げに凪砂が言った。
神はDVD-Rを眺めて厳しい顔つきで皆に言った。
「分かった。しかしこれは雫には秘密だぞ…」
その場にいた皆は頷いた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 / 天翼の神女】
【1449 / 綾和泉・汐耶 /女 / 23 / 司書】
【1678 / 黒乃・楓 / 男 / 17 / 賞金稼ぎ】
【1847 / 雨柳・凪砂 / 女 / 24 / 好事家】
【1982 / 伍宮・春華 / 男 / 75 / 中学生】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。

『I wish to ~』に参加していただきありがとうございます。
誰も、「この呪文」で願いを叶えなかったので、どうしたものかとなやみました。
結果はごらんの通りです。
綾和泉汐耶様、伍宮春華様初参加ありがとうございます。
白里焔寿様、お久しぶりです。アルシュのおしゃれで笑ってしまいました。

Wishは…結構恐ろしいものです。

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝