コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


I wish to 〜

●凪砂のネタ探し
雨柳凪砂はこのサイトのことを雫から聞いて、今は自宅でサイトを調べていた。ネタになるかということで。会員制ではないかと不安であったが、オープンである。アングラサイトのような悪質な解析CGIなどはセットされていない。
『あなたの知識と知恵、そして念が願いを叶える、言葉。それはI wish to』
が、見出しだった。
叶え方はかなり単純な説明だった。
『魔術では色々儀式や手の入らない触媒、そして時間があります。しかし、この魔術は、見出しの要素と言葉だけです。真の発音言語…言霊…さえあれば、ラテン語、ヘブライ語、英語、日本語、ルルイエ語など、なんでもかまいません。此処で言っている言霊は、皆が知っているモノでもかまいません』
「へぇ〜」
と凪砂は文章をプリントアウトしていく。
『ただし、念と知識と知恵がこれを唱える力量に達してなければ…使えないのです。己の内なる力を言葉で増幅し爆発させる。叶えたい場合は、その力量を持った人に頼みましょう。当然…唱えた方は代償を払うことになります』
掲示板では色々叶った、叶わないなどの書き込みがあって、管理人がレスを付けている。しかし、反対意見の書き込みの論議はほとんどされていない。
FQAのページを観ても代償とは?いう質問があるが…。
『其れは様々です。願いによる反動は唱えた術者の何かを失い、願った者は言葉の通りかねじ曲げられて結果がおこります。私からは其れしか言えません』
「念と知識と、知恵かぁ」
てっきり、悪魔との契約なのか猿の手のようなモノなのかと思っていたら、自分の力もしくはこの術を使える者に頼む事で一気に願いを叶える魔術…と言うより、魔法だった。
ならば、自分は神殺しの魔狼フェンリルの「影」と融合している。「影」の力で発動できるかもしれない。
しかし、代償というモノがなんなのかが分からないし、とりわけ自分が願いたい事など無いのだ。
掲示板では、失ったものが見付かったなどから〜大切な恋人が事故にあって意識不明から奇跡的に完治といった、「大切な」願いは良く当たっている。しかし、私欲の願いは叶っても問題が増えた(代わりに不幸がきた)…叶わず更に悪化しているという内容が多い。
「怖いわね」
念のため、此処の管理人に取材をしたいというメールを送った後、あやかし荘で会っているエルハンドに連絡を入れることにした。


●あやかし荘
「私も当然Wishは使えるけどな」
と剣客は集まった者にサラリと答えた。集まっているのは、汐耶と凪砂だった。
「あの呪文は危険であるが、全てを知る上で都合の良いものだ。魔術というか魔法だ」
エルハンドは【見えない使い魔】を行使して、皆に茶を差し出す。
「では…何故止めないのですか?危険では?」
「あの呪文を危険といったが「それを使うな」という権利は私にはない。しかし雫の為に「私が使う」という義務もない。呪いは結果己に返ってくる。雫は確かに義昭の本心を知りたいと言うところだろうが、実はWishの代償がどんなものか、本当にこの魔術が効果を発揮するのか知りたいだけと考えている」
汐耶の質問に無表情で答えるエルハンドだった。
「代償とは?」
汐耶が大事なことを訊いた。
「術者の生命力と経験…そのどちらか…両方だ。時には寿命が削られる…」
「そんな…恐ろしい代償…」
「あの呪文は…定命の者が使うには荷が重い。私欲の願いはほとんど良くない事になっている。それは…念の力が己の器以上の願いであることと、世界のバランスが大きく崩れるから調整されるのだ。金や名誉、自分にしか得にならないことには非常に危険な術。雫がそうしたことを願わないことだけを祈ろう」




■凪砂と…
凪砂は裏通りで、サイト管理者と落ち合う事になっていた。
「君ですか?雨柳凪砂さんは」
この暑い季節に、黒コートを羽織った男が立っていた。サングラスで目が分からない。
「よく分かりましたね」
少し驚く凪砂。
「私もだてにあのサイトを公開しているわけではないんで、しがない魔法使いですから…」
苦笑している謎の男。
「お聞きしたいことがあります、何故このような場所に?」
「魔術というモノは…人に知られては行けませんからね。しかし、あのWishは魔術と言うより…魔法ですが…」
「魔術より魔法と言うことは、知り合いから聞きました」
「ほう…まさか…これを存じている方がいるとは…」
男は感心して手を顎にあてる。
「私は単に記事として色々調べたいのです。どういう手順かは分かったですが…、代償が分かりません。あなたが知っている範囲で教えてくれませんか?願った効果とその時の代償の…」
「まぁ…良いでしょう。私のサイトはアングラではないですし…」
男は、DVDケースを投げた。凪砂は宙で受け取った。
「それに今までの記録が入っています。念のためウィルスチェックもした方が良いでしょう」
というと、男は霞のようにかき消えた。
「何だったの?あの人…」




■DVD-Rの中身…
凪砂は家で、DVD-Rの内容を確認した。
様々な願いの言葉。そしてその時の代償と結果が納められていた。
たいていの記録は悲惨な物だった。
「ま、都合良く願いが叶うのもおかしいから…」
一つファイルにロックがかかって開かない。
「もしかして…」
パスワードはおそらく…
〜IWISHTO〜
と打ってみる。
開くと…その内容に凪砂は息を飲んだ。
「何なの…この文字…」
この世界に存在しない文字…中に読みとれるものがあった…
しかし、内容が分かる。「影」が僅かならもこの不思議な文字を覚えているのだろう。
「欲望によって世界を崩壊させる計画…なの?」
ネタにすべきか…それとも…あの神に知らせるべきか…。
凪砂は悩んだ。



■謎のまま
想像者の佐山は3日間の安静で回復した。
「これで…分かったかな?」
と笑顔で雫に訊く。
雫は泣きながら…
「ごめんなさい…ごめんなさい」
と彼に謝っていた。
病院の喫茶店で汐耶と義昭、黒乃が軽食を摂っていた。
「もうサイトも閉鎖されているので被害者はでないでしょう」
「しかし、後味が悪いわ…」
「ま、人は傷ついてなんぼだと思うぜ〜。そうでないと生きている意味って無いさ」
それぞれの意見を言いながら、今回の事件がひとまずすんだとホッとする。

焔寿と春華は、エルハンドと河川敷で座っていた。
「いきなり、あのサイトが閉まったのはどういう事なんでしょう?」
焔寿はサイト閉鎖のことが気がかりだった。
「苦情がありすぎたのか…管理者の気が変わったのかだな」
「有ってもなくてもいいや…あんな厄介な魔法」
エルハンドはサイトを開設閉鎖するのは個人の自由だという風に、春華はそのことについて興味が無くなった。ただ後味が悪いだけ。
「あ、見つけました…エルハンドさん」
凪砂がエルハンドを呼んだ。
「なにか?」
「これを見てください…」
と言ってDVD-Rを渡した…。
「何か良からぬ事が…起きてしまいそうなのですが…」
と不安げに凪砂が言った。
神はDVD-Rを眺めて厳しい顔つきで皆に言った。
「分かった。しかしこれは雫には秘密だぞ…」
その場にいた皆は頷いた。


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 / 天翼の神女】
【1449 / 綾和泉・汐耶 /女 / 23 / 司書】
【1678 / 黒乃・楓 /男 / 17 / 賞金稼ぎ】
【1847 / 雨柳・凪砂 / 女 / 24 / 好事家】
【1982 / 伍宮・春華 / 男 / 75 / 中学生】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
滝照直樹です。

『I wish to ~』に参加していただきありがとうございます。
誰も、「この呪文」で願いを叶えなかったので、どうしたものかとなやみました。
結果はごらんの通りです。
綾和泉汐耶様、伍宮春華様初参加ありがとうございます。
白里焔寿様、お久しぶりです。アルシュのおしゃれで笑ってしまいました。

Wishは…結構恐ろしいものです。

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝