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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


I wish to 〜

●焔寿と雫、天狗が一人
雫は川まで走っていた。橋の真ん中まで息を切らして立ち止まり川をみる。
「みんな、何か願い事があるはずなのに!」
涙があふれる。危険を伴うことは分かっているが、それでも願いたい事がある。

―義昭が自分に振り向いて欲しい。―

である。
確かに魔術行使による人の心の干渉は反則だ。
呪い(まじない)で恋愛成就と言う物はあるが、マンドラゴラなどの媚薬を使う事が多いし、他に何かと手間が掛かる(魔術とは結構そう言うものだ)。
「どうしたの?雫ちゃん」
と、聞き覚えのある女の子の声がした。
「「にゃ〜」」
チャームとアルシュがすり寄ってくる。特筆すべきはアルシュの格好は黄色いアロハシャツにサングラスという如何にも「南国!」という出で立ちだった。彼は何かご機嫌の様子だ。
「焔寿さん…」
「泣いていますの?」
「…」
こくりと頷く。
「汐耶さんや義昭君…「願い」の魔術を使うのを皆止めろというの…」
「まぁ…」
「どんな代償も知らないのに、意外に代償なんか無いのではとおもうの…」
「そうですか」
焔寿は雫の思いの丈を聞いてあげてから…こう提案した。
「では私のところでパソコンのこと教えてくれませんか?その時にそのWishについて色々調べてみましょう」
「え?うん、ありがとう!」
2人はチャーム達を呼んで雫と一緒に家に向かおうとするときに、焔寿は妖気の気配を感じ、身構えた。
「誰?」
すると、元気そうな闇夜から中学生が現れた。
「あ、伍宮春華くん」
雫が彼の名前を呼ぶ。
「お知り合い?」
「うん、何回か一緒に色々調査手伝ってくれたの」
と、焔寿に彼の事を話した。
「ごめん、散歩の途中で話きいちゃったんだ」
頭をかいて笑いながら春華は言った。
「俺は特に叶えたいモノはないんだけどさ、本当に願いが叶うというなら見てみたい。それに代償ってのがどんなものか気になるし…一緒に調べよう」
と、春華は言う。
特に雫も焔寿も反対する理由もないので、共に焔寿の家に向かった。
アルシュとチャームはその会話中、道ばたにいたかわうそ?と睨めっこしていた。

●雫ちゃんのパソコン講座
焔寿の家は政府高官邸だけあり、広い。本館で迎賓館ぐらいあるだろう。
「大きい〜」
雫も春華もビックリしていた。
焔寿はにっこりと微笑み家に案内する。
春華からみれば、この建物の豪華さが昔の平安貴族の館よりも凄く、どうやって立てているのか分からなかった。
暫く、簡単な応接間で、改めて自己紹介してから、
焔寿の持っているノートパソコンはオーダーメイドで作ってもらった最新機種だった。なので…具体的にかつ簡単に説明すれば、『今でも某驚異的高スペック3Dオンラインゲームをさっくりと出来るし、個人的に鑑賞する分だけなら、もうTVやビデオテープ要らず』な代物だ。
とは言っても、扱い方が分からなければ、宝の持ち腐れ。雫はパソコンやネットに関して一応の知識を持っているので、基本操作などを教えていく。
「OSについているゲームって、タッチパネルやマウスの使い方を遊びながら覚えていくものだよ」
と、教えていくのだが…。
「タッチパネルってなんでしょうか?」
と、首を傾げて訊く焔寿。
専門用語の多いこの世界、教えるのは一苦労だろう…。
マウスと聞いてアルシュは、
「ネズミ!ネズミを狩るぞ〜!!」
と、叫ぶのだが…
「君は知ってるでしょ?」
と、雫に冷たく突っ込まれ…紫猫はしょんぼりする。
焔寿も春華も、雫のパソコン教室に夢中になっており、時間が過ぎた。幸い、昔に使っていたデスクトップパソコン(2001年冬モデル)もあるので、皆が画面を食い見る事もしなくてすむ。
まずは、カーソルの使い方等、基本的な使い方、簡単な裏技を教えて、早速例のサイトに着いて調べ始めた。
Wishの唱え方はかなり単純だった。
『魔術では色々儀式や手の入らない触媒、そして時間があります。しかし、この魔術は、見出しの要素と言葉だけです。真の発音言語…言霊…さえあれば、ラテン語、ヘブライ語、英語、日本語、ルルイエ語など、なんでもかまいません。此処で言っている言霊は、皆が知っているモノでもかまいません』
「言霊ね〜これって結構難しいはずだぜ」
春華は天狗で、術は使えるが、言霊だけで呪を完成させるほどの力量はない。どちらかというと、風の力を使った剣術が得意な方だ。もっぱら、悪戯好きなのでその手の術はマスターしているのだが。
焔寿にしても神子ではあるが、浄化に特化している巫女である。
言霊だけの術制御は2人では無理と判断した。
「代償も、このページには書いてませんね」
焔寿が呟く。
『ただし、念と知識と知恵がこれを唱える力量に達してなければ…使えないのです。己の内なる力を言葉で増幅し爆発させる。叶えたい場合は、その力量を持った人に頼みましょう。当然…唱えた術者は代償を払うことになります』
「術者探しが先と思うけどさ?一応さしあたりの無い願いを叶えるってのはどう?」
と春華が提案する。
サイトを見ていると、願いの程度によって代償が変動すると書かれているからだ。
ならば、一寸した事で試すことも大丈夫だろう。
「では今日は遅いですし、明日に集まって唱えてくれる方を探しますか」
焔寿がいうと、雫も春華も頷いた。


●「想像者」が仮想実験
焔寿達は集まって雫は前に空想具現が出来る能力者「想像者」とコンタクトをとった。
「こいつだれ??」
「彼って自分の空想を実体化させる能力者なの」
「すごいじゃん!俺、伍宮春華!」
「初めまして、白里焔寿です」
挨拶をかわす。そして、Wishについて話をした。
「Wishか〜。確かに便利だよね」
と想像者は言う。
「でも、アレは…神域の魔力を持つ人が使うものだよ?緊急回避とかさ」
「えーそんなぁ〜」
雫は不満を言った。
想像者はため息をつく。
「幾ら止めても…無理だろうな…。俺が「出した」、「魔法使い」で試してみようか?」
春華は、この男が何をするのかわくわくして見ている。
空から、三角帽子をかぶり、白い髭を生やした白いローブを纏った老人が現れた。
「おお〜」
「なんじゃ?何のようか?」
空想具現で出てきた老人は3人みて訊いている。
「願いの呪文を使って欲しいのですけど?」
と雫がプリントアウトしたページを見せた。
「むむむむ…これは厄介じゃな…いいのか佐山?」
其れを読む老人は、想像者・佐山に訊いた。
「この子には世話になったことがある。実際に体験して貰う方がいいだろ?」
「ふむむ…空想のワシがこれを唱えたところで…本当にかなうかは分からぬがな…」
「実物じゃないんだ」
春華が訊く。
「俺の想像する範囲で具現化されるだけだ。この老魔術師は俺の想像力でできた「本物の魔法使い」だけどね」
想像者が答えた。
「おーすごいや、でも現実とは異なるんだ」
「まあね。でも、会話も出来るしさわることが出来る」
「空想具現は術者の想像力に反映されるのじゃからのう。さて…この呪文…一寸した願いを…単純に欲しいものと言えばお金じゃな…『我は願う、10万円を与えたまえ!』」
と老人〜魔法使い〜がWishを唱えた。
暫く、何も起こらない…。
「あの呪文嘘っぱち?」
春華がぼやく。
すると、老人はかき消えた。
「!!」
その後…天から何かが振ってきた…。
「「イタイ!イタイ!イタイ!」」
4人は何かに当たってその場を逃げる。
暫くすると…その辺りには…一円玉が散らばっていた…。
「なんだったの?」
雫は恐る恐る一円玉を手に取った…。確かに本物だ。
しかし、数えて…この合計が10万円だと…確かに「願い」はかなった事になる。
「はぁはぁ…一応…願いは叶ったみたいだね」
想像者は疲弊している。胸に手をあてて息が苦しいそうだ。
「これが…術者の…代償のようだよ…分かった?」
と、彼は倒れた。
「大丈夫ですか!?」
焔寿が駆け寄って疲労を回復させようとするが…自分の能力では無理なほど…いや、自然治癒のみが彼を回復させる唯一の方法と分かった…。
「こんな…恐ろしい…事だなんて!」
雫はその場で膝をついてしまう。
想像者を急いで救急車に運び…1時間後に汐耶とエルハンドが駆けつけた。

■願いの代償。
病院の特別応接室。
汐耶は雫を怒っていた。
「だめじゃない…。人に…頼むなんて…それに代償が…」
「ごめんなさい…ごめんなさい」
雫はただ泣いて謝るだけだった。一寸した願いだけで、術者の体力を著しく消耗する「代償」に驚くとおもに、想像者に悪いことをしてしまったと罪悪感でつぶれていた。
「エルハンドさん…私はどうすれば」
焔寿は、好奇心から手伝ったとしてもこの罪はどう償えばいいか分からなかった。
エルハンドは優しく彼女の頭を撫でてあげた。
「そうやって人は学ぶ。彼も其れを覚悟して手伝ったのだ。気に悩む必要はない」
「願いで「無かったこと」にするってのは?」
と、春華が言うが、汐耶は彼を睨んだ。
「なんだよ〜良い案だと思ったのに…」
と彼はふくれる。
「願いの呪文は…己の欲望を曲解した形で具現化することが多い。神である私も滅多にこの呪文は使わない」
エルハンドは呟いた。

■謎のまま
想像者の佐山は3日間の安静で回復した。
「これで…分かったかな?」
と笑顔で雫に訊く。
雫は泣きながら…
「ごめんなさい…ごめんなさい」
と彼に謝っていた。
病院の喫茶店で汐耶と義昭、黒乃が軽食を摂っていた。
「もうサイトも閉鎖されているので被害者はでないでしょう」
「しかし、後味が悪いわ…」
「ま、人は傷ついてなんぼだと思うぜ〜。そうでないと生きている意味って無いさ」
それぞれの意見を言いながら、今回の事件がひとまずすんだとホッとする。

焔寿と春華は、エルハンドと河川敷で座っていた。
「いきなり、あのサイトが閉まったのはどういう事なんでしょう?」
焔寿はサイト閉鎖のことが気がかりだった。
「苦情がありすぎたのか…管理者の気が変わったのかだな」
「有ってもなくてもいいや…あんな厄介な魔法」
エルハンドはサイトを開設閉鎖するのは個人の自由だという風に、春華はそのことについて興味が無くなった。ただ後味が悪いだけ。
「あ、見つけました…エルハンドさん」
凪砂がエルハンドを呼んだ。
「なにか?」
「これを見てください…」
と言ってDVD-Rを渡した…。
「何か良からぬ事が…起きてしまいそうなのですが…」
と不安げに凪砂が言った。
神はDVD-Rを眺めて厳しい顔つきで皆に言った。
「分かった。しかしこれは雫には秘密だぞ…」
その場にいた皆は頷いた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1305 / 白里・焔寿 / 女 / 17 / 天翼の神女】
【1449 / 綾和泉・汐耶 /女 / 23 / 司書】
【1678 / 黒乃・楓 /男 / 17 / 賞金稼ぎ】
【1847 / 雨柳・凪砂 / 女 / 24 / 好事家】
【1982 / 伍宮・春華 / 男 / 75 / 中学生】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。

『I wish to ~』に参加していただきありがとうございます。
誰も、「この呪文」で願いを叶えなかったので、どうしたものかとなやみました。
結果はごらんの通りです。
綾和泉汐耶様、伍宮春華様初参加ありがとうございます。
白里焔寿様、お久しぶりです。アルシュのおしゃれで笑ってしまいました。

Wishは…結構恐ろしいものです。

また機会が有れば宜しくお願いします。

滝照直樹拝