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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


二度ある事は三度ある〜深淵にて、お姉様の思惑

 夏休みの終盤の頃…になるのでしたか。
 まだ義務教育とは言え学生…なのですから、“陸”では色々と忙しいでしょうに、みなもがまたわたくしの衣裳部屋の整理の手伝いに来てくれました。
 まったくもう…凄く嬉しいですわ。
 今度は何をしてくれるのか…楽しみですし。

 さて。

 今回は何をしましょうかねぇ。
 …みそのは、そんな事を考えつつ、可愛い妹――みなもを見ています。
 けれど見たところは普段通り。
 穏やかな笑みを浮かべているまま。
 みなもにはその考えなど見えません。

 ふふ、色々と考えてますわね。みなも。
 今までの事、そんなに気遣わずとも宜しいんですのに。
 失敗?
 困らせている?
 そんな心配しなくても良いのに。
 本当に素直で良い子。

 …まぁ、そこが可愛らしいとも言うんですがね。

 ああ、勿論、衣裳部屋の整理のお手伝い、と言うのは本当ですわよ?
 気を付けていても…すぐに別の場所に色々と紛れてしまいますからね。

 …但し、みなもをここに連れてきて、遊びたい――と言うのも、実は本当だったりしますが。

「さて、では今回も…宜しく頼みますよ?」
 心底楽しみであるように、みそのはにっこりと微笑んだ。

■■■

 みそのは回想する。

 最初は偶然だったんですけどねぇ。
 あんなに可愛い反応してくれるとは思いませんでしたから。
 つい、楽しくて毎度のように悪戯を。

 今日の場合はみなもが“危険”と判断しているらしい、部屋の奥まで来れないようにシャットアウトして――安心させてみました。
 …とは言え実は、真打、と言える今回の『仕掛け』こと『遺産』は――部屋の手前の方に“偶然”仕舞い忘れてしまってるんですが。

 さてさて、どうなる事でしょう?

■■■

「ではみなも、わたくしはこの服を奥に置いて参りますから…」
 そう言い置き、そこにあった“陸”用の服に紛れていた『わやわやと異様な動きを見せている服?』を持って、みそのは部屋の奥の方――シャットアウトした向こう側――へ移動。
 …さりげなく、みなもをひとりにさせてみる。

 そして。
 密かに奥から様子を窺います。

 と。
 普通に、初めてここに来た時と同様に、衣装の整理整頓を始めるみなも。
 本当に真面目で良い子です。
 ん? 見付けましたわね、この『遺産』。
 あらあら、やっぱり気になってますわね。
 けれど警戒心は薄いよう。
 素直ですわ。
 ふふ、好奇心旺盛ですこと。
 また考え込んでますわ。
 …可愛らしい。

 暫し後。

 そ、とみなもがその『遺産』に触れるのがわかりました。
 薄紅の珊瑚が触れた部分からびしびしと覆って行く音。
 不思議そうに首を傾げます。
 その間にもびしびしびし。
 慌ててる慌ててる。
 あらあら。
 それは、わたくし自身が…ここでの話の“流れ”を制御してはいるのですが…それでも。
 やっぱりみなもは期待を裏切りませんわね。

 ――みなもは『遺産』の力によって、見事に『マネキン』になってしまいました。

 さて。
 そろそろ『完成』、でしょうか。
 ひとり思うと、何事も無かったよう、みそのはみなもの元へ戻って行きます。
 その時点ではみなもにはまだ意識があるようで、みそのが戻ってきた事を気にしてはいる様子。
 それでも動けない事に変わりは無くて。
 動けない自分をじっと見つめるみそのに対し、色々困ったり、弁明しようと慌てるだけは慌てる姿が――みなものそんな“意志の流れ”が――みそのにはわかります。
 まったく、微笑ましい。
「本当にいつもみなもは…可愛らしいですわね」
 取り敢えずみそのは、『マネキン』と化してしまったみなもに――そう声を掛けた。

■■■

 ほぅ、と気だるげに溜息を吐きつつ、みそのは何処からとも無くカメラを取り出す。
 そして薄紅の珊瑚に表面を覆われ『マネキン』化したみなもをぱちり。記念写真。
 少し考えてから、カメラを仕舞う。
 元に戻してしまうのが勿体無いですわ。
 以前あった『異形化』の時もそうでしたけど…このまま側に飾っておきたいくらい。
 でもみなもは…『童話』とかでも遊んでくれていますしね。
 …さて――ではそろそろ、元に戻す事に致しましょうか。

■■■

 暫し後、みなもを元に戻してから。
 みそのは御機嫌なのか、ころころと鈴を転がすように笑いつつ、事の次第を説明。
 …知人から「『マネキン』を造る装置」なるものを貰って、そのままにしておいてしまった、との事を。
 しかもみなもはいつの間にやらそれを起動させて、しかも丁度良くその対象になると言う器用な事をしてしまっていた、と。
 この説明が本当か嘘かは…さぁ、どうでしょう?

「うっかりしましたわ。…奥に仕舞っておけば良かったですわね」
 くすくす。
 心にも無い事だろうって?
 …ええ、だって本当に引っ掛かりやすくて可愛い子なんですもの。
 こんな事がしたくなってしまうのも、みなもが可愛いせいですわ。

 ――二度ある事は三度ある。
 案の定、今回もみなもはわたくしの思惑通りに引っ掛かってくれました。

 さて、次は…どうやって遊び道具に致しましょうか?
 みなもにでしたら…何をしても楽しそうですけどね。

【了】