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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


十八年

 十八年、揺りかごが乗り物の赤ちゃん、始めての車。
 十八年、大人に憧れてた子供が、あの日に返りたくて。
 十八年、小さな恋の約束を、教会で。
 十八年。
 口で言う程簡単じゃないけど、その間に募られる思いは、たくさんで。
 ずっと、待っていました。ずっと、叫んでいました。
 雨が降った。風が吹いた。雷や雪も。最悪のビジョン。偶に射す一条の光も、やがて、陰っていた。
 今年こそ、今年こそ、何時の間にか生まれた呪文。
 今年こそ、今年こそ、けして届く事の無い呪文。
 今年こそ。
 そう、何時までも、言い続けるだろうな。そう、何時からか、思っていた。
 だけど、
 十八年。
 ……ありがとう、
 そして、お疲れ様。

「――という訳のわからない事が書いたチラシが、ドアに貼ってあったんだが」
 草間武彦はそう言いながら、人が良くたむろする屋上へと足を運んだのだが、このいかにも即興で適当に書いた文の意味が解った。話しかけた相手、妹の零が、
「あ、ちょうど良かった兄さん、手伝ってくれませんか?」
 白と黒のハッピと帽子を着て、机や椅子、紙コップを用意して、何より、
 真ん中に中古のテレビデオを置いてるのを。そしてそれの上に黄色と黒の獣系マスコットが。
 言わずもがな、かつて最下位の代名詞となった大阪のプロ野球チーム、半神ライガーズのトライ君である。普段は空虚な屋上が、このように彩られている理由、それは、
「これをかけてくれません?」
 渡された横断幕に並ぶ文字は、大阪ライガーズ優勝記念、と。
 ―――つまりここは祝勝会会場
「……あのな、零、誰の差し金だ?」
「ええと、兄さんが留守の時に、ライガーズで盛り上がってた人達が」
「ここは東京だろ?」
「にわかふぁんという人が増えてきてるそうです。その人に怒ってた人も居ましたけど」
「まだ優勝は決まってないだろうが」
「だから、見るんですって」零はにこりとテレビを指して、「今日の試合で決定らしいです。確かマジックが減るとかなんとか」
「……まぁ、解った。今日本が、猫も杓子もライガーズなのは解る、経済効果がどうとか新聞に書いていたしな」
 だが、と最後に一番の疑問、
「なんで俺の所なんだ?」
「都合が良いかららしいです」
 余りにシンプルな答えに、草間武彦はがくりと肩を落とした。
 ファンが石の上で足痺れるくらい待った歓喜の時を決める、伝統の一戦『半神vs拒人』が始まるのは夜六時である。


◇◆◇


 十八という数は、1000のようにホムペでイラストリク権が発生するでもなく、555のように特撮っぽくもなく、1192のように歴史を表すでもない、誠に中途半端な値である。だがしかし、十八が重ねた月日、つまり年齢とするのなら、そしてそれが法律の上に置かれたのならば、この数値はただそれだけの意味を越え、建前といえど、ある一つの力を持つ。ボーダーライン。
 十八年、大人に憧れてた子供が――
 ぶっちゃけ、エロ本が買えるかどうかである。という訳で今回ノベルのタイトルを十八年から十八禁というタイトルにいや嘘ですお子様が見ても大丈夫な内容ああ登録を破棄しないで破棄しなはい締め切り破りまくりの事は申し訳な(以下永遠


◇◆◇


「……よくもここまで集まったもんだな」
 そこは茜に染まる手前の空が扇げる、屋上。開放された空間に、テンションを充満させるのは、白黒ストライプのハッピを着た謎の集団である。まぁ、謎でもなんでもなく、この屋上の下にある、怪奇な依頼をこなす為に、草間興信所に集う馴染みのメンバーなのだが。
 ライガーズファン。それが彼等の属性である。
 十八年前の優勝以来、万年最下位の野球球団に、ピクミンが如くついてきた集団。しかし彼等に悲壮とか嘆き等の言葉は全く似合わない。性質は陽、時によれば他球団のファンを殴り飛ばす非良識的なファンになるくらい、熱狂的なのである。それが悲しみを塗りつぶす為に、彼らが纏った衣かどうかは定かでは無いが。
 しかし今、この熱は他人に畏怖させる刃としてでなく、純粋に信じてきた物に捧げる事が出来るのだ。
 優勝。
 幾度呟いてきただろう、幾度、魔法を唱えただろう。
 来年。また来年。
 それは呪いのように感じられた、ドロのように汚れた川に、突き落とされる最悪の最後を迎えた、白ヒゲじじいの怨念なんだと。来年。また来年。まるで永遠に続く夢。
 しかし夢は、今、現実となる。
 この日だけは未来は要らないように思えた、この一瞬噛み締めようと。刹那主義とは違う、十八年、我々は耐えてきたのだ、ずっと、願っていたのだ―――
 ……という事情は解らなくもないんですが、
「お前ら、近所迷惑になるから」
 ちょっとは静かにしろと言ってみたが、誰も聞いちゃくれねぇ九月の下旬。なんかやたらと走り回ってるし。このままじゃ手すりを越えて、ダイビングしそうだし。下が川でないぶん死亡率が高く――
「川に飛び込むような輩は真のファンで無いわッ!」
「ぐはっ!?」
 女王の貫禄を含ませた声が響くと同時、背後から首を締め上げられた。ヤクザ三十人から切り抜けられる力を使って、なんとか腕をほどく草間。振り返れば、
「ていうか何しょげてるのよあんた、彗星が来るよりも稀な事なのにねぇ」
「半神ファンでもない俺が盛り上がれる訳がないだろ。……しかし」
 言葉を区切り、声をかけてきた者を、黄色と黒のライガー色をあしらった便乗もこれに極まりな商品ライガース水着を、女神の肢体に身に着けた女性を見る。
 聖野悪弥香。さきほど女神と称したが、これは賛美の為の例えでなく、平然とした事実である。ただし、801と耽美の。彼女への奉納品をご用達の際は、夏と冬に有明へご参拝ください。
 まぁそういう彼女のデーターは、草間もよく身体で(未遂、だと信じたい)知っているのだが、……しかし、
「お前が半神ファンだったとは意外だな」
「意外とは失礼ね、こちとら生まれてライ吉よ」
「生まれてって、お前が生まれた時にライガースがあったのか……?」
 そう人と長さの違う神様に突っ込むと、人を小馬鹿にしたような目付きでふふんと鼻を鳴らし、「神よりも早く海兵隊とライガースはあったの」、と。ああそうですか、と。まぁ彼女にアレ以外の生きがいがある事は喜ばしい事で―――
「今年の有明は監督と青星物で」
「そういうフィルター通してしか見られないのかっ!?」
「森羅万象これ耽美じゃないッ!」
 彼女なら、無機物さえも、攻めと受け。(うちわ×酢飯とか)げんなりとする草間の反応に飽きたのか、悪弥香は声掛ける事も無く、草間の前から去る。暫くしてから若々しい男の嬌声が響いた。餌食だ。
「はぁ………」
 よくもここまで個性的なメンツが揃ったもんだと、煙草を銜えながら改めて見回してみると、ん?
「お前も来てたのか?」
 思わず声をかけてしまう意外な人物、メイドの女性を引き連れた、
「あら〜、おはようございます〜」
 常にどこかずれた、今回の場合時間があってない反応をするおとぼけお嬢様、ファルナ新宮――彼女がどういう人物かといえば、エロである。異論は許されない。
 という訳で現時点では服を着て真価を発揮してない彼女にも、意外性を感じる草間。先ほどと同じようにその疑問を言葉にして、「しかし、お前もライガースファンなのか」
「いえ〜、私は狭島ファ」
 瞬間、草間は彼女の口を塞いだ。護衛メイドファルファに有無を言わさぬ勢いで。そして極めて慎重に、ゆっくりと諭すように、
「いいかファルナ、その事は絶対言うな、さもないと」
 ぎゃひゃぁぁっぁああっぁぁっぁっ!?
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ〜!?正直に答えただけじゃって痛ぁっ!?暴力は駄目ぼうりょ、あ、ぎゃ、あぎゃぁぁぁっぁぁ!!!」
「……ああなるからな」
 無理矢理準備の為に狩り出された拒人ファンの某編集者の口に、あつあつのたこ焼き十個が捻じ込まれる光景を指しながら忠告した。縦浜ファンなら逆に感謝されたかもしれないが。


◇◆◇


 ファルナという爆弾を抱えての優勝決定戦の観戦、本人の御気楽さと反対に、草間が不安を抱えながらも、それでも時は過ぎていく。
 スターティングメンバーの発表の際、ファルナが「パースいないですね〜」と発言して、全員が首をかしげる中、草間が「解説は無理だろ」とフォローして。暫くはそうファルナをかばっていた草間だったが、爆音のような歓声と供に、プレイボールの声があがってからは、他人の酒に無理矢理付き合わされた事もあって、彼女に構う余裕はなくなる。まぁ試合が始まってみれば、彼女も移籍組みの鐘本を中心に応援し始めて。平和的に、しかし時に情熱的に、危機を迎えれば猟奇的に(三下血だらけ)、好機を迎えれば感激的に(三下血だらけ)、官能的に(ファルナ)、耽美的(悪弥香)、そして、


◇◆◇


『待ちに待った瞬間が訪れようとしていますッ!残り三球。エースの井山振りかぶって、投げたッ!』
 一点リードの九回裏、ランナー二塁の最後の試練――球が放たれると地鳴りのような歓声が響いた、十人目の戦士の力を背後に引きつれ、エースは全力を込めた。ストライク。色めき立つブラウン管の向こう、聖地、甲親園。
 だがブラウン管の前のメンバーは、水を打ったように静かに、しかし心臓の鼓動は激しくして、見守っている。ある者は目を瞑り祈りを捧げ、ある者は小声で、「頼むぞ、頼むぞ」と繰り返し、ある三下はボロ雑巾のように死んでいる。
 二球目――ミット目掛けて吸い込まれる軌道をっ!
 斬って、飛ばす、「ああっ!?」
 番町の渾身の一振りが、拒人としての高き誇りが、十八年分の思いを込めた球を、無常に、しかし激情的に捉えたっ!
「嘘ォッ!?」
 ライトスタンドギリギリに飛んでいく球、悪弥香が続いて叫ぶ、「入るんじゃないわよッ!」
 その言葉は神の奇跡を使う呪文じゃない、それは許されない事だ。最後は、
 彼等自信の力で。『ファール!ファールですっ!心の底より胸を撫で下ろす一同、しかしこの一発で解りました。まだ戦いは終わってませんッ!』
 エースの井山がマウンド上で、一瞬緩んだ心を強く引き締める、かのように見えた。
 番町と呼ばれる大打者がバッターボックスで、かかってこい、まだシーズンは終わってないと叫ぶ、かのように見えた。
 野球がそこに在った。たかが球遊びに、真剣になる様がそこに在った。在ったのだ、
 ―――人々の心を熱く揺り動かすスポーツがそこに――熱く
 井山が、『これが、最後の一球となるか!』セットポジション、『伝統の戦い』振りかぶる、『勝者はどちらか』バッター、『今、全てが』構え、『決着しますっ!』今ッ!
 井山から放たれた渾身のストレートは。
 番町が虚空を目指して振りかぶったスイングを。
 ―――、
 越えた。

 半神ライガーズ優勝ぉぉぉぉっ!!

 まるで甲親園の振動が伝わったかのように、屋上の彼等は、爆発した。
 歓喜一色に染まる彼等、「やった!やった!やったわよぉぉ!」あの悪弥香が満面の笑みを浮かべて、他の者と抱き合ったり、どこからか花火を打ち上げたり、中には感涙する者も居て、それはとても良いように思えたから、
「何はともあれ、おめでとうです〜」
 ファルナはそう、笑顔を浮かべた。こうやってまるでひまわり畑のように、笑顔、笑顔が溢れる中で、
「なんで僕はここにいるんですかぁぁぁ……」一人被害者の三下は、ヒザを抱えてそう呟いた。だいたい、なんでこんな目に、
「お前は別にいいだろ別に」
 ふと、声がする。見上げれば、
「俺なんかなぁ、野球に対して興味もねぇのに、こんな騒がれて」
「く、草間さぁん?」
「ふざけんなってんだよっ!第一あいつ等依頼を解決するどころかひどい事にする時が」
 草間が、酔ってる。
 独身男特有に愚痴垂れまくって。
 そんな情けない男二人を尻目にして、テレビの前の面子は月野監督の胴上げに合わせて飛び跳ねて。
 幸福な夜はまだ始まったばかりなのだ――そう
「このエネルギーは、是非現場で体感しなきゃねぇ」
 一つにやりとした後、酔いどれ男と不幸男をみつめても一つにやり。


◇◆◇


『それでは』ブラウン管からの声と、
「それでは〜」屋上での声、
『優勝を祝して』テレビのセリフに合わせて、「優勝を祝して〜」ファルナがのんびりとした口調で真似て、真似る事は、
「『ビールかけ』〜」
 会場で鏡割りが行なわれた瞬間、屋上ではビール瓶のフタがポンッっと抜かれ、注ぎ口を親指でふさぎ思いっきり振り回して!
「『「『おめでとうございまぁすっ!!』〜」』」
 ブラウン管の光景と同じく、思いっきりビールを掛け合う皆である。すでに下地ができてるのでテンション高め、そこら中にビールを振り撒くから、アルコールが気化して比喩でもなんでもなく【雰囲気で酔う】状態。それは音頭をとったファルナも同じくで、「私も〜」と、ビール瓶を手にとって参戦しようとしたら、
 隣の護衛メイドファルファが、通常の三倍のスピードで思いっきり振った缶ビールが、パァッァンっと爆発した。
「おわっ!?なんだ!」「爆竹か!爆竹だなっ!」「盛り上がるぅっ!」
 普通なら絶句する状態だが、ナチュラルハイな彼等は物凄い勢いで騒ぎ立てて、
 静止した。
 息を飲む、ならぬ、生唾を飲む、お約束。
 ビールまみれになってスケスケな空気圧によりビリビリな服を着たムチムチのファルナ譲とボイーンなメイドさん。
 突如現れた乳と尻の天国に、監督へのインタビューも無視して男性陣は狂気するっ!女性陣によって殴られる。でも対抗して「私も脱ぐ〜」という女性が現れ、わたわたする少年がいて、ファルナは邪魔な服をその場で脱ごうと、ともかくもう乳だ!尻だっ!
 そんなお色気通り過ぎてエロで騒乱となった所為か、誰も気付いてない事態に、
「麗香さん」
「どうしたの零ちゃん?」
 こちらはタダ酒とタダ飯目当てに来た編集長に、草間零、「兄さん知りませんか?」
「あらそういえば。……三下君もいないわね」
 彼等の行方不明すら無視される状況だったが、流石に身近な者達は問題として取り上げる、が、
「あら〜私酔っちゃったみたいです〜」
「おい!ファルナがいたいけな少年から逝きかけの爺さんまで老若男女問わず脱いで絡んで抱きついたぞッ!」
「なんて羨ましい事をぉぉぉっ!」
 という騒ぎに巻き込まれた為、彼女たちもその二人の事は忘れた。


◇◆◇


 自らを祝福し、そして、野球に関わらない者から、その嬉しさに弾ける様子をみて、他からも祝福される今夜の半神ファン。しかし一つだけ承服しない事があるとすれば、道頓堀ダイブと言われる行いだ。
 十八年振りの歓喜に酔いしれる事。それは何も問題ない。おおいに飲み、騒ぎ、そしてぶっ倒れるべきだ。ただしそれは、自分で責任を負える範囲でだ。
 だというのに、あれ程言っても飛び込んでしまう者は居るのだ。確かに飛び込む者とすれば、川が汚い事は問題ないかもしれない。身体中が臭くなったって構わないかもしれない。しかし、事は命に関わってくる。実際、道頓堀の水を飲んだ所為で、一ヶ月の入院を余儀なくされた者もいる。それだけで済めばいいが、ヘドロに足をとられて、浮かび上がってこなくなる者もいる。
 いや水が汚いとかヘドロが溜まってるとかそれ以前、堀は飛び込む為にあるんnじゃない。――しかし、そうならなければ問題無いという気持ちなのだろうか、飛ぶ者達は危険を省みてなくて。
 それは誉められる行為じゃない――半神ファンであるかどうかの前に、人としての時点で、選択してはいけない事―――だが、
「実際に飛び込んで言っても、説得力は無いけどな……」
 その愚行の現場から離れた川で、浮かんでいる男。道頓堀の水の冷たさでなく臭さで、すっかり酔いが覚めた草間が、一人水面に立ってみせる悪弥香に恨めしげに言ってみれば、
「ごめんねぇ、ちょっと酔っ払った所為で、瞬間移動の位置間違っちゃったみたいだわ」
「と、というかなんで僕達が大阪に来てるんですかぁぁぁっ!?さっきまで東京にいたのに」
「折角のライガーズの優勝じゃないっ!ここに乗り込まないでどうするのっ!」
「だ、だったら、会場の皆さん連れてくればぁぁ………」
「それも良いと思ったんだけどねぇ……」
 きょとんとする三下、にやりとする悪弥香。そして一言、
「うら若い肉体をいただくには、あいつ等東京に置いてきた方が」
「い、いただくってぇ!?いやぁあぁぁ!アレはもう嫌、草間さん逃げ、ってもう逃げてるぅっ!?そんなヘドロだらけの川に潜ってまで退散するなんてっ!ああ僕も逃げたいですけどぉぉ、川は臭いし、でも、ひぃぃっ!?か、かんにんしてぇぇぇ悪弥香さぁぁっぁぁぁんっ!!!」


◇◆◇


【ライガーズファンのAとBの会話をお送りいたします】

「予想してない事態って訳じゃないし、あの子が参加する時の必然だけど」
 乱痴騒ぎの光景を眺め、缶ビール片手に酔いどれながら、「こっちの心臓に悪いんだよねぇ、無意識か知らないけど、何時も限界まで挑戦してる感じだし」
「限界って何がよ?」
「ファルナの行動だよ、ビリビリ、ぬれぬれ、そして温泉の三種の神器」
「ああ、時々犯罪レベルに達しそうになるしねぇ」
「なんとか平穏に済まさなきゃいけないしなぁ」
「ところで、そのファルナは何処に?」
「ああ、料理取りに行った零ちゃんと一緒に着替え――」
 ガチャリ、と屋上のドアが開けば、
「お待たせしました〜、零ちゃん特製の盛り合わせです〜」
「隊長ぉう!ファルナとファルファが裸エプロンでありますがぁっ!?」
「お、落ち着けライアン二等兵!このレベルならまだセーフティ、」
「きゃっ!?」
「あ」
 裸エプロン二人+お料理×何も無い場所でずってんころりん=

 くんずほぐれつの女体盛り

 時が止る、時が止る、
 目の前にあるのは、刺身やらカラアゲやらがぶちまけられたは、豊満な肉体という名の受け皿柔らかい肉、熟れた肉、萌えな肉に幼い肉。
 絶妙な配置にて肝心は隠される。しかし皿が、あららーと動くと、僅かにずれる。しかし、届かない。届かない。
 ああこの美を闇に葬り去った侭でいいのか――それは、
 許されぬ事だと、貴方が私に言ったから。
 静止した時の中で、Bは口笛を吹く。
 ちゃんちゃちゃちゃちゃーん、ちゃらーん、ちゃらーん――そうそれは
 チワワを買うか迷った時の旋律。「どうする〜?」
 、
「突撃ぃぃぃっ!」
 男衆の箸の乱舞が始まっていやんだとかあはんだとかの声が響き渡る直前だったけど女衆の活躍によって未遂に終わったかどうかはご想像にお任せします。


◇◆◇


【三下が美男化した悪弥香にマッサージされる様子をお送りします】

 ベッドに柔らかくうつぶせになった彼に、悪弥香は残酷に手を伸ばす。彼にとってこれからは、恐怖だと解っているから。けれど、
 目覚めさせようと、肢体に手をあてた。
「ふあ!?あ……あ………」
「ふふ、いい声で鳴くものねぇ」
 手を徐々に、肩から背に、背から、腰に、「……傷だらけね」
「う、あぁっ!そこは……」
 不幸という名の傷痕も、てか無理矢理胴上げされた事でしりもちついた時に出来た青い痣も、愛するように撫でて行く。「もっと、優しく」思わず漏れる声、悪弥香にとっては、漏らさせた声、
 くすりと微笑む。
「自分からおねだりするなんて、はしたない犬ねぇ……」
「ち、違」
 言い切る前に悪弥香は、三下の双肩に手を伸ばして、力を入れる。
「ああっ!」
「こんなに硬くしちゃって」
「や……そんなに強く揉まないでください」
「私が貴方の願いを聞くと思う?」
 そう言ってから悪弥香は、一頻り肩を揉んだ後、開いた手を硬く閉じて、―――叩く
 ドンッ!
「あがぁっ!」
「あらあら、涙を流して喜んじゃって」
「だ、だって痛くてぇぇぇうああっ!」
 ドン!ドン!ドン!
 左右交互に繰り返される責め。刺激する度に、三下の喉からは悲鳴が、しかし、
「うあ!あ……くぅ………」
「あらあら?声が甘くなって来たわよ?」
「そんな、訳」
 ドン!
「くああ!」
「素直になりなさぁい、慣れてきたのよぉ、痛みが快感に変わってきたのぉ」
 少しふざけた、とろけるような、撫でるような囁きで、告げられる、事実。でもそれは否定したい。肩叩きが気持ちいいなんて!そんな、僕は、
 大人の階段を上ったというのか――
「あうああぁぁぁぁぁっ!」
 絶叫が響き終わった後、がくりとうなだれる三下。しかし、悪弥香は一瞬も許さない。直ぐに身体を仰向けにして、
「な、なんですかぁぁぁっぁぁ……、もうマッサージは」
「何言ってんのよ!今までは前戯に決まってるじゃないっ!」
「え?」
 何を言ってるんですかという顔をする三下に、美青年悪弥香が一言、
「肉も充分柔らかくなったみたいだしねぇぇ」
「……あ、あ、まさかぁ、いやぁぁぁっ!?もうこれでいいじゃないですかあぁぁっ!本当はまずいですって、まず、ぎゃあぁぁっぁぁっ!」

【以上マッサージの様子でした、マッサージだってば】


◇◆◇


「全く、心臓に悪いものだなヤジさん」
「本当だよキタさん。俺たちが悪い訳でもないのに、女性の敵だという事でボコボコにされてるしな」
「まぁ流石にもう無いだろう、ビリビリとヌレヌレも終わったし、裸エプロンと女体盛りもあった事だし―――」
「野球にちなんで野球拳を〜」
「誰か左の頬に穴があいた少年を呼んで来いッ!!」
「それよりもカエルを電話にする二重人格をぉぉぉっ!!!」
 天国へ行く方法っぽい。


◇◆◇


 エピソードがあらぬ方向へと脱線しているが、忘れてはならない、メインはライガーズの優勝である。本拠地である大阪は、歓喜の声が延々と続き、テレビは夜通し特番を流し、全ての局の番組を見続けていた駄目学生の部屋に朝日が差し込んだ頃になっても、大阪は喜びに包まれている訳で。
 十八年――今一度言おうと思う、そう、
 ありがとう。
「感慨にふけっている所を悪いが」
「ん?どうしたのよ草間?まだ臭い残ってるの?」
「いや、確かに汚水をしたたらせて浮浪者みたいに徘徊した俺を探し出し、無理矢理ホテルの風呂にぶちこんで綺麗にしたのは、まぁ、感謝しないでもない。お前が巻いた種だから当然の事だとは思わなくもないが。いや、それはどうでもいいんだ、俺が言いたいのはいくら服が使い物にならないからってなんで俺が――」
 タオル一枚でベッドの上に縛られているのかと。
「そしてなんで三下は、部屋のすみっこでしくしくと泣いているのかって事も知りたいんでしょ?」
「いや、それは充分解ってる。解ってるけど改めて知りたくない」
「だったらなんであんたがベッドの上にいるかも、解ってるけど、」
「知りたくないな」
 とは言っても悪弥香さんは大阪中に蔓延するエネルギーで恐ろしく猛っていまして四の五の言わずにルパンダイブしようとした物だから、間一髪草間事務所の愉快な仲間達で瞬間移動出きる人を加えた武彦さんを救い隊がいなければマジでやばかったと。
 あと、屋上の野球拳もファルファさんが最初にグーを(てかロケットパンチを)出してくれたおかげで事無きを得た事もご報告しておく。
「本当、危なかったですね〜」
 誰の所為だ誰の。





◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
0158/ファルナ・新宮/女/16/ゴーレムテイマー
 1458/聖野・悪弥香/女/999/やおいと耽美の邪神

◇◆ ライター通信 ◆◇
 えろいなぁ。(自分も含め)ちゅうわけでおはようございますっ!何時までたっても締め切りやぶり癖がなおらないライターエイひとですっ!日本シリーズも始まっちゃうね!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
 んで、今回の話なんでっけど、コメント控えさせて頂きたく。(をい)ファルナをあんなオチに使ってしまいましたが、何時もどおり楽しく書かせていただいた事はご報告させて頂きます。個性的なプレイングは、扱っていてとても嬉しいです。………届けさせていただけるかは、綱渡りですが。(こらー
 ちゅうわけでご依頼おおきにでした。またよろしゅうお願い致します。