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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


赤い糸の先

「はぁ、その呪いを解くか…相手を捜せと」
また分からない依頼が入ってきた。全く分からないわけではない。
依頼者は極普通の会社員だ。名前を沖田・宏一(おきた・ひろかず)。しかし雰囲気からして一流企業の凄腕のようだ。
話を聞くと、この数日から自分と一部の人に見える小指についている「赤い糸」のことで、相談してきたのだ。
「私はあまり不思議なことや怪奇現象を信じない質なのですが…これだけはどうも気になりまして…」
「ま、自分が体験すればイヤでも信じたくなるものです」
「そうですか…これは呪いなのでしょうか?」
「呪いというわけではないでしょう…『赤い糸の伝説』ぐらいはご存じですよね?」
「ええ、まぁ」
そう、赤い糸で結ばれている2人はほぼ必ず恋をし結ばれるというお話し。
「なので、この糸を消す手段か…伝説通りに私と結ばれる相手を捜して欲しいです…気になって仕事に差し支えが…」
確かに不可思議なものが見えると気分は落ち着かないだろう。
草間にも「糸」が見えているのだ。近くに零がいるからその霊力の影響ともいえる。
頭乗り猫、焔はその糸が気になって…じゃれようとするところ…零に止められる。
「糸が切れたらだめでしょう、めっ」
「うにゃ〜ん」
依頼金額もかなりのモノだし、ただ…
「本当に私とその人が結ばれる為にあるのか不安です。生まれてこの方、親と親戚以外女性と多くは話し出来なかったので」
「どういう事です?」
草間が訊くと…男は恥ずかしのか
「女性が苦手な体質なんです…世間話や仕事の話なら可能なのですが…半径1mまで近づくと…じんましんと緊張で会話が…出来ません」
「で、もし、身体にふれてしまったら?…」
恐る恐る草間が訊いた。
零がふいに彼を触ってしまう。虫かなにか付いていたのだろうか。
「うわぁぁぁ!」
彼は顔面蒼白になって気絶してしまった。目を回している。
「だ…大丈夫ですか?」
「零、お前が看病するとよけい悪化するかもしれない…天は二物を与えずというが…」
煙草を取り出しため息をついた。
「人を捜すのは良いが…依頼人がこれだと…困ったものだなぁ」

1.集まった助っ人
草間や妹が呼び集めた助っ人は、草間自身を複雑な心境にするに充分だった。
東京でドイツ古城ホテルを妹と運営しているケーナズ・ルクセンブルクは、有る程度信用しても良いとして(遊んでいるだけには見えないが仕事はこなしそうだと)。依頼人の沖田を共感というか同情している六巻雪と、赤い糸に興味津々な鈴代ゆゆについても問題ない。そして田中祐介もしっかり仕事はしてくれるだろう。ただ、あまりこういった関係に興味のない「七白」こと風野想貴(以降七白)が何故此処にいるのかとかが分からない。零がだめもとで話をしたら一考して屋上のからの背景画を中止してきたのだから。
「ケーナズ…。お前愉快なことになることかんがえてきているのじゃないのか?」
「もしかしたら、私と草間君は赤い糸で結ばれているかもしれないね」
「気色悪いことを言うな!」
とクールに笑っているケーナズ。
一方沖田は『赤い糸の伝説』は異性同士としか考えいないので驚く。
「運命の人って女性じゃないんですか?」
「其れは可能性であって、絶対じゃないさ」
ケーナズは沖田の質問ににこやかに答える。
「確かに、そう言うことはあり得るな」
と七白は同意する。
意外なことに、他の皆も「女性とは限らない」というケーナズの論理は否定しなかった。
ゆゆは、ケーナズが沖田をしっかりガードしているので1メートルいないには近づけないが、女性アレルギーの彼のためと思うと自らは側に寄らない事にしている。
「不憫よね」
とゆゆは同情。
沖田の赤い糸は…玄関のドアを通り抜けており、この中の人物ではないことは明らかだった。
「ここで考えているより、探しにいこう♪」
ゆゆは元気に提案する。
「だって運命の人が分かることってそう無いよ。絶対後悔する。あたしだったら絶対探すもん」
「そうだね、此処でくすぶっているより…糸の先を追うのが近道だね」
「…では、お願いします」
沖田は会釈して、ケーナズと共に出かけていく。その後をゆゆと七白が付いていった。
「草間さん、少し話があるけどいいですか?」
「かまわんが?」
と、まだ残っている祐介と雪を呼び話す。
「六巻君、もう一つの方向で俺たちは調べてみないか?」
「そうだな…、あの赤い糸が「呪い」として考えるってなら…何時何処で「赤い糸」が見える様になったかを調べることだな…」
「彼の交友関係をもう一度調べてみる方が良いな」
と、彼らは草間と話をして、沖田の身辺調査を頼んだ。そのあと、2人は赤い糸の追跡に参加するため跡を追った。
祐介は如何にして、沖田の女性アレルギーを克服させるか悩んでいた。さすがに前にいやがっていたゆゆにメイド服を着せると、師である剣客に殺されかねないので残念であるがその考えを消した。


2.糸は続くよ、何処までも
『糸』は少し力を入れるだけで、切れそうなほど細く弱い。それが…まるでない様に、人を通り過ぎる。他の誰もがさわれないのだ。
その先に『運命の人がいる』のかと思うと、沖田は緊張を隠せない。
(私で良いのだろうか?)
ふと、心に誰かの声が聞こえた。
「落ち着け」
冷たい凍える様な声であるが…緊張や焦りを抑えてくれていた。
何者かが分からない。
ケーナズは糸探しで何が起こるのか楽しみの様に、沖田から女性を遠ざけている様ガードをしている。ガードというよりか密着だ。
沖田は困惑している。如何にもケーナズは「その気」があるのかと怖がっている顔だ。そんなことはケーナズ自身知らぬ顔。しかし彼の頭の一部では千里眼で更に赤い糸の先を見ていた。このままでは東京から出るのか?と思う様に長い…。
七白はスケッチブックにさらさらと何かを描く。
「何をしているのだね?」
興味深そうにケーナズが訊ねる。
「時間短縮の為に地図を描いている」
「そ、そうか…」
―驚いた、この男も千里眼に似た能力を持つのか…。
七白の絵はまさしく東京から離れており、どこか印象のある町並みを描いていた。
一方、後ろで、ゆゆと祐介、六巻がどうするか話し合って歩いている。
「まだ先の様ですね〜」
「でもさ、会った運命の人が彼のアレルギーを克服出来る人だったらいいよね♪」
「お…俺もそう願いたいな」
ケーナズと七白とこの3人の距離はざっと3メートル。大きな人混みに流されなければはぐれることはないし、ケーナズ自身が長身で目立つ。
まず付いた先が…東京駅だった。
「電車に乗るの?」
「そうなりそうだね」
「何処までかな?」
無言で七白は皆に地図を見せた。
「なに?コレ?」
ゆゆが興味津々で地図をみる。
川に沿って、両岸に雑居ビル、そして橋には人混み、特に目立つのは大手お菓子メーカーのネオン看板…。
「大阪?」
「みたいだね…」
まさか東京ではなく…西の町まで行くことになろうとは皆は思いも寄らなかった。
とりあえず、グリーン席を買って(コレは沖田のアレルギー対策ではなく…ケーナズのポリシーかも)一行は大阪に向かった。
「こんかいあの球団優勝したから怖いなー」
と呟くゆゆ。
「人形が川に飛び込んだりしますからね」
と祐介。
沖田との会話は全てケーナズに邪魔される感じなので彼らを追う形になる。
他愛のない会話なら沖田も大丈夫なので、コーヒーなどを買って新幹線の旅を満喫。
糸の方は全く人のことを考えないで大阪に向かってのびていた。

そして道頓堀…。
人人人人…人の群れ。動く太鼓のあの人形やら…。18年ぶりにあの球団優勝で賑わいを見せる通り。
動くのにやっとである。
沖田を囲む様に4人の男が橋にとどまっている。
「ここだたはずだが…動いたか?」
七白が呟く。
「そうだよな…」
ケーナズは、良い人は(男女問わず)眺めているが今は、沖田の運命の人を見てみたい。まさか此処まで行くとは思っていなかったから、よけい楽しみだ。
六巻は何とか自分も女性に関わり合いたくないのだがこう人混みから沖田を守るのに必死である。
ゆゆはというと…
「ナンパされてますね…」
祐介が苦笑。
「と言うより…援助交際してるんじゃないのか?あのおっさん?」
と、六巻。
困っているゆゆをどうするか…とおもいきや。
「嬢ちゃん…良いところ」
「いやよ…離して!」
といって、そそくさと逃げてきた。
「あーこわかった」
ゆゆをナンパしていた中年は…何かに怯えてその場で土下座している。
「何してるんだろう…?」
沖田は不思議がった。
ゆゆは…やくざに絡まれている幻影を見せたのだ。
それがパフォーマンスになったのか…小銭を投げている通行人がいたりする。ケーナズは其れをおもしろがってみていた。
「此処にはいないのかも…」
「そうだな…」
とケーナズと七白は言った。
また千里眼と其れに似た能力で照合。
其処には…奇妙な形をした建築物を描き写したのだ。
「なんだ、これ?」
近くに大手百貨店などがある。
聞き込みするために、一度最寄りの大きな駅に向かった。
「これはビックバンですよ」
と駅員が言う。
「なに?それ?」
「堺市に出来た年金会館ですけど、子供の有料遊技施設ですよ」
更に訊くと、有名な漫画家が館長になり、かつそこに直通で行ける私鉄電車にはマスコットキャラがペイントされているという。
「1〜4番ホームからでる準急和泉中央行きに乗って泉ヶ丘駅改札を右に曲がってすぐの所です。入場料込みの往復券もあります」
一寸よけいなことも教えて貰って、一行はその目的地に向かっていく事にした。


3.たどり着いた先
堺市の陸の孤島とも言える泉ヶ丘駅前。のベッドタウンであるが、高度経済成長の名残がそこかしこにある。ショッピングビルなどもあり、「よほどマニアックな物以外なら何でも手に入る」ような発展を見せている。
七白がスケッチした建物を探すのは簡単だった。それだけ目立つ代物だったからだ。
「中観てみたいなぁ」
とゆゆが好奇心で言うが、今は仕事なので、赤い糸を追うことに。
もう、夜になっているのでどうしたものかと皆で考えていたときである。
祐介の携帯が鳴った。
「はい?」
内容は沖田に関する交友関係である。東京以外で一時期大阪に住んでいたことが分かった。
「糸との関係は分からないと…」
[つい最近に見える様になったと言うなら…何かあるのかもしれないが]
草間の返答も曖昧だった。
其れを訊いていたゆゆは。
「早く探そ!ね?ね?未だ糸が見えているし、それに」
といって、遠くにのびている糸を触ったゆゆ。実体化しているのだ。
「ということは…近くにいる?…追ってみよう。
皆は早歩きで、糸が切れにない様に先を歩いた。

家電ショップまで糸はのび…結んでいる人を見つけた。
「あの人か?」
ケーナズは指を指した。
指に微かに赤い糸が結んでいる女性が、眼鏡をかけた少しやせ気味の男と共にパソコンの買い物をしている。
「あの人どこかで…いや…まさか?」
客の様に相手の様子を見る。
「グラフィック重視ならこっちです」
「そうなんですか」
「ゲームしたいなら、本当は自作の方が良いのだけどね」
と男がパソコンの初心者らしい女性に話をしていた。男も此処の店員ではないらしい。が、常連のようだ。
親しい販売員に色々頼んでいる(値切っている)らしい。

「声かけてみようか?」
祐介が沖田に訊いた。
「問題があるなら、あたしが何とかするし!出会いは大切にしなきゃだめだよ!」
とゆゆが少し離れて言う。
「一寸待ってください…ってああっ」
ケーナズがにこやかに…沖田を押す…。結果がどうなるのか楽しみになったのだ。
丁度、沖田と女性はぶつかってしまった。沖田がこけてしまう」
「大丈夫ですか…って…あなたは沖田さん」
「知り合い?瀬口?」
女性は驚いているのを、一緒にいた男が訊いている。
「かなり前に…高校の時に付き合っていたひとよ…」
「瀬口さん…数年ぶり」
沖田は自分で起きあがる。
「君だったとは…」
「…まさか…また逢えるなんて…でも、ごめんなさい」
その様子を見守っている一行は、沖田があの女性と色々話をしている事に驚いていた。
「なるほど!」
ゆゆは納得。
「振られたトラウマでアレルギーになったと言うことかな?」
瀬口愛と一緒にいる男は、冷静に2人をみている。
「ここだと、何だから近くの茶店で話した方が良いやろうな」
と、極普通に話しかけていた。

2人だけを残して男は喫茶店から出てきた。そこをケーナズや他の皆が話しかけてくる。
「ん?誰?」
男は大勢来たのでビックリしたようだ。
「あの女性について訊きたいのだが?」
とケーナズが言う。
「ああ、かまわんけど?」
と男は承諾した。
男は、彼女とは単の趣味友達であり、パソコンを新調したいと言ったので助言していただけと言う。別に彼女と付き合っているわけでもない。また、彼女が昔に付き合っていたが、気まずい別れ方をしてしまい、その傷を背負っていたみたく。謝りたいなと良く口にしていたという。
「なるほどね…トラウマ…ね」
「はるばる此処まで探しに来ている彼はすごいな」
と男は言った。
一寸面白くないケーナズ。あっけなく仕事が終わったからだ。
でもほとんどの助っ人は巡り会えて良かったと思っているようだ。

このあと、再会の喜びと…また付き合う事になった2人を祝福する一行と男だった。


4.終わりに
数日後に、沖田からの手紙が届く。結婚するという知らせだった。
その知らせを聞いてゆゆや六巻、ケーナズに祐介がやってくる。
「赤い糸の伝説は本当に有るもんだ」
「七白は?」
「知らないな…あのあとあまり興味はない様だったし」

「しかしだね…やっぱりコレで思ったよ…。案外…私と草間君は…」
「又その話か…止めろ気色悪い」
「すでに赤い糸で結ばれているのだけどね…?」
ケーナズが笑いながら小指に赤い糸が結んであるのをみせる。草間は背中に寒気が走って自分の小指を調べる…。よかった、結ばれていない。
しかし…そのとなりにいたいつの間にかいたナマモノのかわうそ?が頬を赤らめ…前足?に結ばれた糸を見せた。
「なにぃ―――!」
(草間君をいじめるところか…ナマモノに…)
ケーナズはその場で失神した…。
祐介と六巻はため息をつく。
ゆゆはおかしすぎて笑っていた
「運命の人か…あたしにもいないかな〜」
「きっと現れます。ゆゆちゃん」
零がにっこり言う。
ゆゆは、裁縫道具から取り出した赤い糸を眺めていた。

―あなたも指に糸が結ばれていませんか?

おわり

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0428 / 鈴代・ゆゆ / 女 / 10 /鈴蘭の精】
【0711 / 風野・想貴 / 男 / 17 /時空跳躍者?】
【1098 / 田中・祐介 / 男 / 18 / 高校生兼何でも屋】
【1308 / 六巻・雪 / 男 / 16 / 高校生】
【1481 / ケーナズ・ルクセンブルク/ 男 / 25 / 製薬会社研究員(諜報員)】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。

『赤い糸の先』に参加してくださりありがとうございます。
共通した行動を優先し(糸を追う)遠方まで探すことになりました。
ほとんどの方が「女性アレルギー」をどうにかするという行動を書かれていましたが、赤い糸の相手が其れを治してくれると信じている方もいたので、グッドエンドになりました

ケーナズ様、結局アレルギー直しを試みようとする人の邪魔することも出来なかったあげく…ナマモノに遊ばれてしまいましたが如何だったでしょうか?

風野想貴様、ケーナズ様、六巻様初参加ありがとうございます。

では、機会があれば又宜しくお願いします。

滝照直樹拝
20030924