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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ゴミ屋敷の恐怖! 〜清掃編

●プロも投げ出す・・・

「は?」
 言われた依頼内容に、草間武彦は目を丸くした。
 時々は人材派遣みたいな仕事も入ってくるが、いくらなんでも屋敷の掃除をしてほしいというのは畑が違いすぎる。
「・・・何故、うちに?」
 ざっと話を聞いたところ、その屋敷は別名ゴミ屋敷。屋敷の敷地の大半がガラクタという名のコレクションで埋まっているらしい・・・・。だが今時清掃を専門に請負う会社なんてどこにでもある。
 なんだってわざわざ興信所に依頼する必要があるのか、イマイチその理由がわからなかった。
「ええ、それが・・・・・・・最初は清掃会社にお願いしたんですけど、皆さん一日ともたずに断られてしまったんです」
 依頼人は大きな溜息をついて目を伏せた。
「そんなに凄いんですか・・・・・?」
 いくら屋敷中ゴミで埋まっているような屋敷といえど、清掃会社はその道のプロ。いったいなんでそんなことに・・・・。
 毎度おなじみのいやな予感が頭を過ぎる。
「父は、いわく付きの品を収集するのが趣味なんです」
 ・・・・・・ああ、やっぱり。
「最近では周辺の方からも苦情が来るようになって・・・。かといって、清掃会社の方に頼んでも断られてしまう。困りきっていた所にこちらの噂を窺いまして」
「話を聞いていると、そのコレクション――」
 と言うのもなんだか嫌な気分だが。
「――は貴方のお父様の物なんですよね? 勝手に捨ててしまったりして大丈夫ですか?」
 依頼人はコクリと頷いて。
「ええ、父には許可をとってあります。ただし・・・・捨てる前に必ず父に確認してほしい、とのことです」
 ただの物品ならばちょっと手間がかかるだけだが。
 ・・・・・・魔物付きの骨董品とか、動く家具とかいろいろありそうで・・・・捕獲して確認してもらって捨てる作業はとてつもなく大変な気がする。
 だが、依頼人もそれはわかっているのか、依頼料はかなりの破格値だった。
「・・・わかりました」
 結局――。
 武彦は貧乏に負け、その依頼を受けたのだった。


●足の踏み場もない敷地

 その屋敷を一目見て、一行は思わず言葉を失った。
 今回、プロの清掃業者も匙を投げたというゴミ屋敷の掃除をすることになったのは、シュライン・エマ、威吹玲璽、葛妃曜、天音神孝、沖真砂、ラクス・コスミオン、綾和泉汐耶、真名神慶悟、岐阜橋矢文、高山湊の全部で十人。
 その全員が全員、目を丸くしてしまうような惨状だったのだ。
 まず、一言で言って敷地は結構広い。屋敷の外観だけを見れば綺麗な洋館なのだが、そのすぐ傍・・・・・・つまり、屋敷の庭には所狭しと物が置かれており、多少なりと霊感を持つ者にはそれらのほとんど全てが”普通ではない”ものであることがすぐにわかった。
 家の様子が全部見えるわけではないが、居間の窓は現在開け放たれており、中の様子がだいたい見える。
 そして見える限りでは、やはり居間も足の踏み場がないくらいにたくさんの物品が転がっていた。
 コレクションと言う割には粗雑すぎる扱いだ。
「ふむ。おぬしらが今度の清掃業者か?」
 居間の窓からぬっと顔をだして、白髪の老人が不機嫌そうな顔をしていた。
「はい」
 エマが代表して答えると、老人は片眉を撥ね上げさせて、
「ここにはわしの大事な物もたくさんあるんじゃ。くれぐれも、間違えてそれを捨てないよう気をつけてくれよ」
「だったらちゃんと片しとけよ。いっそ全部燃やしちまった方が早いんじゃねぇのか?」
 ぼそりと物騒なことを言う玲璽に思わず頷きかけるも、動きを止めた者数名。まあ、気持ちはわからなくもない。
 さて、ざっと屋敷内の様子を確認しつつ簡潔に話し合った結果。一行はそれぞれ手分けして片付けを実行することになった。
 玲璽、曜、孝が客間・・・・・というより物置。
 エマ、真砂が居間。
 ラクス、汐耶、慶悟が書庫。
 矢文、湊が中庭という分担である。
 ちなみに、どの部屋も散らかり具合は大差なく、大変さもどこも似たようなものである。
「さ、とっとと片付けるか」
 苦笑混じりの慶悟の声を引き金に、各人それぞれの持ち場へと散っていった。


●中庭

 ででんと、中庭を占領する大型家具の数々。
 ピアノ、タンス、大型冷蔵庫、何故か銅像、エトセトラ――なにはともあれ、処分するにはトラック必須といった感である。
「うわあ・・・・・」
 金額と気分で大概の仕事は請け負う湊だが、さすがにこの光景には驚きの息が漏れた。
 しかしそれは外から見た時にもわかっていたから良い。まあ、これも予想の範疇と言えばそうなるのだが・・・・・・。
「単純な力仕事は得意なんだが・・・・・・・・・単純、とはいかなさそうだな」
 始終音を奏でているピアノ、勝手に閉じたり開いたりしているタンス――今のところ見るからに普通ではない物品はこの二つだけのようだが、実際片付けを始めたら他の物品も何かが起こるのは間違いない。
「さ、頑張ろうっか。行くよ、サム」
 湊の肩に乗っていた黒猫がにゃあと鳴いて飛び降りる。
 矢文は沈黙を守ったまま、家具の様子を警戒しつつも歩き出した。
「端から順にいくか」
 ひょいと、山の端にあったテーブルを持ち上げる。
「よいしょっと」
 黙々と作業をする矢文とは対称的に、湊はサムと声を掛け合いつつ持てそうな物品に手をかけた。
「これ、こっちに来てもらったほうが早いんじゃないか?」
 歩きながらの湊の言葉に、矢文は頷くことで答えた。
 だが、今掃除をしているのはこの二人だけではなく――老人に聞かなければならないのは他の面子も一緒だ。
 これだけの量と大きさの物をいちいち持って行くのは大変だし、確かに直接来てもらったほうが良いわけだが、この状況では何が山に埋もれているんだかもわからない。
「そうかもしれないが、それは俺たちに限ったことではないだろう。呼ぶのは、ある程度整理して確認しやすくしてからの方が良い」
「あ、そっか。それもそうだね」
 そうして二人はコツコツと地道に作業を進めて行く。
「ん?」
 湊は誰かに服の裾を引っ張られて、ついと後ろに振り返った。
 ・・・・・・・・・・誰もいない。
「なんか引っかけたかな」
「どうした?」
 湊の様子に気付いて矢文は一旦作業の手を止めた。
「いや、なんでもな――」
「なにやってるのぉ?」
 答えかけた声は、矢文でもサムでもない別の声で遮られた。
 二人と一匹の視線は一斉に声の方へと集中した。
 そこにいたのは和服の少年。外見だけで言えば十二、三歳と言ったトコロだが、体の大きさは普通の人間より少し小さい。
 少年はにっこり笑って、近場の桐のタンスに腰掛けた。
「ねえねえ。おねえさんたち、なにやってるの?」
 にこにこと無邪気な笑みで問われて、二人は思わず顔を見合わせた。
「ここの掃除を頼まれたんだ」
 先に口を開いたのは湊の方。
 少年はしばらく考えるような仕草を見せて、それから、
「そっかあ、でも気をつけた方が良いよ」
「何に?」
 問い返したのは矢文。
「あっちの方。乱暴なヤツがいるから」
 ついと少年が指差した先――いつの間にか、人影が増えていた。人間の姿の者、獣の姿の者、家具の姿そのままの者――その外見は様々だが、明らかに敵意を持つ者が数名。
「まあ、こんな扱いじゃあねえ・・・・頭に来るのも無理ないか」
 特に山の下に埋もれている品々に目をやって、湊は苦笑を浮かべた。
「俺たちは、おまえらを退治しに来たのではない。人間に害を及ぼさないなら・・・・・・」
 だが、彼らは話を最後まで聞いはてくれなかった。
 駆けてくる――主に獣の姿の者。彼らの爪を牙を交わした二人は、すぐさま反撃にかかる。
 矢文は持ち前の腕力で手近にいた獣を殴って昏倒させる。
 とほぼ同時、パンっという軽い音が響いた。
「まあったく、人の話は最後まで聞くもんでしょう」
 湊が、こっそりポーチに忍ばせていた拳銃の引き金を引いたのだ。
 あっという間に二人(?)が倒されて――九十九神か品に憑いている魔物の類いか――彼らは動きを止めた。
「さっきも言ったが、俺たちはおまえらの敵では無い」
「問答無用に壊したりはしないから」
 矢文に続いて湊も説得にかかったちょうどその時。
「まったく、どこもかしこも騒がしいのう」
 真後ろから聞こえた声に慌てて振り返ると、いつ来たんだか、この屋敷の主である老人が立っていた。
「ちょうど良い。聞きたいことがあるんだが」
 老人が矢文の方を見て片眉を上げた。聞く気はあるらしい老人の様子を確認して、言葉を続ける。
「確認後、捨てる物なら・・・・・・貰ってもいいか?」
「ああ、構わんよ。捨てるより、誰か欲しがっている者に貰う方が物も幸せじゃろうて」
 さっきまで暴れていた物品に向けて、湊がくるりと振り返った。
「だってさ」
 一気に、人影が減った。――暴れる必要がなくなったからだろう。
「今見える範囲内でいいから、捨てて良い物と悪い物を教えてくれないか?」
「そうじゃなあ・・・・・・」
 老人はぐるりと山の周囲を一周し、数個の品を指差した。
「これは捨てないで置いてもらえるか?」
「わかった」
「了解っ」
「さて、わしは戻る。他の連中の様子も見てきたいからの」
 ゆっくりとした足取りで戻って行く老人を見送り、二人は再度ゴミの山に目を向けた。
 今日中に終わらせるのは絶対無理だが、まあ、三分の一くらいはなんとかなりそうだ。


●とりあえず、今日は終了!

 それぞれが適当にキリの良いところまで片付けを終え、十人は屋敷の玄関前に集合していた。
「やっぱ一日じゃ無理だったね」
「この人数でこの量を一日で終えられたら、そりゃ人間業じゃないって」
「もしくは、被害を気にせず全部処分するなら話は別だがな」
 軽い言葉と小さな溜息で言ったのは曜、玲璽、慶悟。
「続きは明日かな」
 まだ半分も片付いていない中庭を見て、湊が呟いた。
「まあ、明日予定が空いていれば、ね」
 汐耶が苦笑を浮かべる。
 この分だとおそらく、日によってメンバーが入れ替わりつつの仕事になるだろう。
 草間興信所に顔を出す大半は他に本業を持つ者だ。毎日掃除だけで時間を潰すわけにもいかない。
 だがまあ、それはそれ。明日以降の話。
 とりあえず今日の仕事はこれで終了、おつかれさまでした。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

0888|葛妃曜 |女|16|高校生
0086|シュライン・エマ |女|26|翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
0923|高山湊 |女|16|高校生アルバイター
1987|沖真砂 |男|19|大学生
0389|真名神慶悟 |男|20|陰陽師
1449|綾和泉汐耶 |女|23|都立図書館司書
1973|威吹玲璽 |男|24|バーテンダー
1963|ラクス・コスミオン|女|240|スフィンクス
1571|岐阜橋矢文 |男|103|日雇労働者
1990|天音神孝 |男|367|フリーの運び屋・フリーター・異世界調査員

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■         ライター通信          ■
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 こんにちわ、日向 葵です。
 今回は依頼をお受け頂きありがとうございました。
 
 お掃除おつかれさまでした。・・・まだ終わってませんが(笑)
 さて、お屋敷の掃除はまだ続きます。
 お暇でしたら次回もどうぞお掃除参加してみてくださいませ。
 ちなみに、報酬は日給です(笑)

 それでは、またお会いする機会がありましたらその時はよろしくお願いします。