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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


夢の遊園地

●森の奥に

−−−−−−−−−−
投稿者:眠り姫
題名:夢の遊園地

 夢を見たの。遊園地で友達と遊ぶ夢。
 でもね、不思議なの。
 その友達に夢の話をしたらね、その子もまったく同じ夢を見たって言うの。

−−−−−−−−−−
投稿者:由貴
題名:また行きたいなあ♪

 私も見たよ、その夢!
 森の中で、すっごく楽しい遊園地があるの。
 ずっと学校休んでる子もいたよ。
 すごーく楽しかったから、また行きたいなあ・・・。

−−−−−−−−−−
投稿者:克巳
題名:誰か教えて

 俺も、俺も。
 めっちゃくちゃ楽しかった♪
 次の日サッカーの試合がなかったら、もっと遊べたのになあ。
 なあなあ、誰か行き方知ってたら教えてくれないか?

−−−−−−−−−−

 ・・・・・・それは、いつから始まっていたのだろう?
 まだ大きなニュースにはなっていなかったが、それも時間の問題だろう。
 最近、ゴーストネットの掲示板にはこんな書きこみが増えていた。
 『夢の遊園地』体験者からの書きこみは大別して二種類。友人同士で同じ夢を見たという話、眠ったまま目を覚まさずに学校を休んでいる子を夢の中で見たという話。
 目覚めない子供はその遊園地の夢を見ているのだろうか?
 確実にわかっているのは、目覚めない子供が着々と増えているということだけだ。
 ある朝、子供が目を覚まさない。
 最初は夜更かしでもして寝坊したと思うだろう。
 だが起こしに行くと、何度揺さぶっても子供は目を覚まさない。
 ここに至ってようやく、子供の様子がおかしいことに気付く――けれど、病院に行っても、眠っているだけだとしか診断されない。
 目覚めるまでの周期は人それぞれ。
 三日で起きる子供もいれば、一ヶ月も経つのに起きない子供もいる。
 子供たちの間に、いったい何がおこっているのだろう?


●掲示板

 一言でいって、沙紅良はパソコンはあまり得意ではない。
 だから、この時点で沙紅良にできるコトと言えば掲示板をチェックすることくらいだったのだが・・・・。
「ラッキー♪」
 誰かが書き込んだ質問に答えるレスが、山のようについていたのだ。
 量が多い上に要領を得にくいものが多くて――子供たちはそれぞれ自分に起こった状況を返信してくれたわけだが、彼らはほとんどが自分の身に起こったこと、もしくは眠っている友人についての事を書いている。
 情報源としてはありがたいのだが、一つの書きこみに一つの事例といった感じで、纏めるのは面倒そうなのだ。
 とはいえ、せっかくの情報を使わない手はない。多少面倒でも地道にコツコツとやるしかないだろう。
「ま、これ読んで中身整理するくらいなら俺一人でもなんとかなるだろ。俺のガッコとかにもいんのかな、そういう奴」
 掲示板のレスを眺めつつ、調査目的半分興味半分の思考がぽろりと声に零れた。
 真実はともかく、加賀沙紅良は現在外見年齢十歳の小学生。子供ばかりが狙われているということは、自分の通う小学校にもいるかもしれないと思ったのだ。
 そして、証言の整理を始めた翌日――。
 レス内容を整理した結果、遊園地の夢を見たのは十から十二歳くらいの子供ばかりで、性別は関係なし。だが全員たいして離れていない範囲に住んでおり、おそらく術の効果範囲などの問題なのだろうということがわかった。
 また、遊具の数はそう多くはなく、メリーゴーランド、観覧車、ジェットコースター、コーヒーカップなどのどこにでもある物ばかり。係員らしき人はおらず――そもそも、大人は一人もいないらしい。
「そーすっと・・・・俺の通う小学校は範囲に入ってないんだな」
 地図を引っ張り出してきて、子供らの書き込みからわかった大まかな範囲を再度確認しつつ、自分の小学校の場所も確認してみた。
 やはり、沙紅良が通っている小学校は範囲には入っていない。
 その範囲内にある小学校は二つ。
「てえと、この学校に直接聞き込みに行く方がいいな」
 子供だということで不便な思いをすることも時にはあるが、こう言う時は子供の姿も便利だと思う。
 学校という場所は、基本的に部外者立ち入り禁止。だが子供ならば、放課後にちょこっと学校に潜り込むくらいそう難しくはない。
 本格的な調査は明日からにしよう。
 そう決めた沙紅良は、その日はさっさと床についたのであった。


●小学校

 翌日の放課後。沙紅良は情報を集めるべく、眠ったまま起きない子供がいるという小学校へやってきた。
 片っ端から聞いてまわったところ、ほとんど全員がその話を知っており――体験したわけではなく話を聞いただけという子供のほうが多かったが――おかげでいろいろと細かい話を聞くことができた。
 遊園地に入れるのは子供だけ。大人は一人もいない。
 そしてもう一つ。噂によると、その遊園地には案内人がいるらしい。
 夢の中の遊園地に行く前に、少年の姿を見るというのだ。
『ねえ、ボクと一緒に遊んでくれない?』
 そんなふうに問いかけてくる、金髪と、蒼の瞳を持つ、十歳前後の少年。
 そこでYESと答えれば、遊園地に連れて行ってくれるらしい。
 ただその少年は自分が遊びたいと思う相手を誘っているだけから、こうすれば遊園地に行けるという方法はないと言う。
「んじゃ、次は直接話を聞きに行くか」
 眠ったまま目覚めない子供のところへ。
 さっき話を聞いてまわった時に、ここ最近ずっと休みっぱなしの子供の学年名前と住所を調べておいたのだ。
 学校を出ようと校門に差し掛かった時だった。
「みあお、その遊園地に行く方法探してるの。なんでもいいから、遊園地について何か知ってたら教えてくれない?」
 そんな言葉が耳に飛び込んできた。
 ひょいと視線を向ければ、そこには銀髪の少女と、黒髪に一房だけ銀色という珍しい髪の少年が、なにやら話しているようだった。
 続けて耳を傾けていると、どうやら二人とも遊園地に行く方法を探しており、だがその方法が見つからずに困っているらしい。
「なあなあ、お前らも遊園地に行く方法、探してるのか?」
 声をかけると、二人はびっくりしたような表情で振り返った。
「うん」
「お前らもってことは・・」
「そ、俺も探してるの。まあ、俺が知ってる情報もさっきお前らが話してた内容と大差ないんだけどさ」
 少女が、にっこりと笑った。
「みあおは、海原みあおって言うんだ。せっかくだから皆で一緒に協力しない?」
「・・・・・・みあおってさあ、もしかしてゴーストネットの掲示板に質問書きこんでた?」
 ふと思い出した名前に問いかけると、みあおは大きく頷いて返した。
「うん、そう♪ あとねー、他に汐耶とセレスティと一緒に調べてるんだよ」
「そっか。どこかで聞いた名前だと思ったら、掲示板か」
 少女二人の会話に、少年がぽんっと手を打った。
「なに、お前も掲示板見てたの?」
「俺も質問書きこんでたんだ。俺は御崎光夜、よろしくな」
 みあおがパッと表情を明るくした。
「あー、みあおのすぐ後に書きこんでた人っ!」
「俺は加賀沙紅良だ。でさ、アテがないんだったら、ここ、行ってみないか?」
 テンション高く盛り上がるみあおの台詞に割り込んで、沙紅良はさっき調べた目覚めない子供の住所のメモをひらひらと見せた。


●夢と現と

 途中図書館に寄り、みあおと一緒に調査していたというセレスティ・カーニンガム、綾和泉汐耶の二人と合流したのち、一行はとりあえず一番近くにある目覚めない子供の家へと向かった。

「少年は、夢の中にのみ存在しているのでしょうか・・・?」
 目的地の家の前についた頃、セレスティがふとそんなことを口にした。
「どうだろ? こういうのってよく『寂しい子供の魂が友達を集めてる』って聞くけど、今回のヤツもそうなのかな」
 答えた光夜は、じっと家の二階の方――おそらく子供部屋だと思われる窓を見上げていた。
「お見舞いという口実で行くなら、私たちはここで留守番かしらね」
 子供のお見舞いに大人がついていくのもおかしな話だ。
「まあ、外からでも調べられることはありますし」

 そうして、子供たちは家の中へ、大人は外で待機という割振りで一行は行動を開始した。

 家に居たのは母親一人。
 ここの子供の名前と年齢は前もってわかっていたので「美由紀ちゃんのお見舞いに来たんです」と言ったら、それだけですぐに部屋に通してくれた。
 女の子らしい部屋のベッドに、眠る少女が一人。
「ざっと見た感じじゃあ、変な気配とかはないな」
「うーん・・・どうしよう?」
 考え込むみあおの横で、沙紅良がニッと艶やかな笑みを浮かべた。
「俺に考えがあるんだ」
「考え?」
 素直に疑問を返してきたみあおと、自信たっぷりの沙紅良の様子に興味津々といった感の光夜。
 沙紅良はおもむろに少女の額に自分の手を当てた。
 途端、沙紅良の姿が変化していく――子供から、大人へ。
 普段の十歳前後の外見は力の一部を封じられているがゆえの姿であり、沙紅良の真の姿は二十代前半くらいの女性。能力を使用する時にはこの本体の姿に戻るのだ。
 少女の夢の中へと自分の意識を同調する――見えたのは、話に聞いた通りの光景だった。
 豊かな森に囲まれた遊園地。空は澄みきった青。高い木々に囲まれ、森の向こうの様子はわからなかった。
「いらっしゃい」
 何時の間にか、目の前に金髪に蒼い瞳の少年がいた。年齢は六、七歳前後。
 手を、惹かれた。
「初めまして。ボクはセシル。お姉さんは?」
 今、沙紅良は、眠ったままの少女の夢を覗いているだけのはず・・・・・・それなのに、彼は沙紅良の存在に気付いたのか?
 だが少年に敵対しようとする様子はなく、ただにこにこと沙紅良の答えを待っていた。
「俺は沙紅良・・・セシルがこの夢の世界を創ってるのか?」
 問うと、セシルは無邪気に笑った。
「うんっ。ねえねえ、お姉さんも一緒に遊ぼ」
 ということは、彼に直接言えば、外で待っている残りの面子も連れて来てもらえるのではないだろうか?
「構わないけど、他に連れてきてもらいたい人間がいるんだけど、いいか?」
「うん、いいよ」
 セシルは、友達が増えるというそれ自体が嬉しいらしく、本当に楽しそうに笑った。


●閉園

 遊園地には、楽しそうな遊び声が溢れていた。
 遊具から少し離れた場所に立っているのは遊園地の調査をしていた五人と、そして今回の事件の原因らしい少年――セシルの合わせて六人。
「それでさ、セシルはなんでこんなことしたんだ?」
 もし悪意を持ってのことならば容赦はしない――だが今それを表立って言うのは得策ではない。
 沙紅良はいたって呑気な口調で問いかけた。
「ん? だって、一人は淋しいもん」
 その言葉の内容とは裏腹に、セシルの声音は軽い。
「だからって帰さないのはマズイよ〜」
 苦笑混じりのみあおの言葉に、セシルはきょとんと目を丸くした。
 汐耶とセレスティはここに来る前にすでに似たような話をしていたので、セシルの反応に小さな溜息を零す。
「だって、帰らなくていいの? って聞いたら、大丈夫って言ったよ」
「・・・真の原因は現実逃避してるヤツらの方ってわけか」
「そうねえ・・・。一度帰るように言って聞いてくれれば良いんだけど」
 どこか突き放すような光夜の物言いとは対称的に、汐耶は穏やかな声音で言って遊園地の方へと視線を戻した。
 普通であっても、夕刻もう帰りましょうと言ったって、楽しいことがあればなかなか帰ろうとしないもの。
 ここには楽しい遊園地があり、学校も勉強も必要なく。そんな世界を離れ難いと思うのはごく自然のことだろう。
「一つ、聞きたいのですが・・・。ここにいる子供たちの意思に関係なく送り帰すということはできるんですか?」
「うん」
 ふと気付いて問いかけたセレスティの言葉に、セシルは迷うことなく即答した。
「んじゃ、それが一番早いな」
「一人一人説得してたらいつになっても終わりゃしねえ」
「ええ〜。そんなのつまんないよっ。帰ってこないのは困るけど、でもこのままやってて欲しいなあ」
 光夜、沙紅良の結論に、みあおが不満の声をあげる。
「ボクも、ここを失くすのはちょっと嫌だなあ」
 セシルも口を尖らせて言う。
「なら、夜の間だけにしない? ずっと起きないから問題になるのであって、夜の間だけなら問題ないんじゃないかしら」
 結局。
 この汐耶の案が決定となり、遊園地は継続することとなった。

 夜の間だけ開園する、夢の中にだけ存在する遊園地。
 今日も明日も明後日も。遊園地は盛況だ。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

1415|海原みあお|女|13|小学生
1982|加賀沙紅良|女|10|小学生
1270|御崎光夜 |男|12|小学生(陰陽師)
1449|綾和泉汐耶|女|23|都立図書館司書
1883|セレスティ・カーニンガム|725|財閥総帥・占い師・水霊使い


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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、日向 葵です。
 みあおさん、汐耶さん、セレスティさん、光夜さん。どうもお世話になっております。
 沙紅良さんは初めましてですね。

 今回のお話はどうでしたでしょう?
 少しでもお楽しみいただければ幸いです。