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調査コードネーム:日本が終わる 前編 〜吸血奇譚〜
執筆ライター :水上雪乃
調査組織名 :草間興信所
募集予定人数 :1人〜4人
------<オープニング>--------------------------------------
テレビ画面から、異様な光景が垂れ流されている。
鼠、鼠、鼠。
東京の地下に潜むドブネズミたちが一斉に地上に飛び出してきたようだ。
「酷いな‥‥これは‥‥」
草間武彦が呟く。
新宿にある彼の探偵事務所。義妹の零とともに、視線は画面に釘付けだった。
「レミングみたいですね‥‥」
「集団自殺か? そんな可愛げのあるものにはみえないけどな」
十万単位でないと数えられないほどのネズミの集団が、人間の築いた地上帝国を侵している。
人に噛み付き、電線を囓り、ガス管を食い破り。
都内各地で火災が起こっていた。
ガスに漏電の火花が燃え移ったのだ。
消防車は大渋滞に巻き込まれ現場に駆けつけることもままならない。何万ものネズミの死体にタイヤを取られるため、自動車は役立たずのものになっている。
ひどいありさまだった。
「文明の利器も、こうなっては形無しだな」
無感動な評論家めいたことを口にした草間だったが、
「お‥‥」
唐突にテレビが消え、事務所の明かりが落ちる。
「停電のようですね」
零がいった。
送電線もやられてしまったのだろう。
「まいったな。これはパソコンも使えないぞ」
「ラジオを用意しますね」
「ああ、頼む。情報がないとなにもできないからな」
肩をすくめる怪奇探偵。
だが、彼の慨嘆と驚愕はまだはやかった。
大きな音を立てて入り口の扉が開く。
「くさま‥‥さん‥‥」
弱々しい声。
身体のあちこちから血を流し、少女が壁により掛かるように立っている。
「絵梨佳っ!? どうしてここにっ!!」
駆け寄る兄妹。
何カ所もネズミに噛まれたのだろう。
「学校帰りに襲われちゃった‥‥ここに逃げ込むのが一番だと思ったんだ‥‥」
ふらふらと草間にもたれかかる絵梨佳。
「いま手当してやる」
支えながら草間がいった。
「それどころじゃありませんっ! すぐに病院に連れて行かないとっ!!」
声まで蒼白にして零が叫んだ。
ただならぬ様子に、草間と絵梨佳が不審そうな顔を向ける。
呼吸を落ち着け、見た目よりずっと長い時間を生きている女性が口を開く。
「私は、知っているんです」
かつて、彼女の所属していた日本軍には、計画があった。
とある病原菌に感染した大量のネズミを敵国に送り込むという計画が。
その病気は、むろん人間にも感染する。
「まさか‥‥」
唾を飲み込む草間。
彼の頭脳は解答を導き出していたが、口にするのは、剛胆な怪奇探偵でも怖ろしかった。
ゆっくりとうなずく零。
紅唇が動く。
「‥‥ペスト、です‥‥」
押し殺した声が、不吉な彗星のように尾を引いて消えていった。
※吸血奇譚シリーズです。前中後編の3部作になる予定です。
絵梨佳を放置した場合は、彼女は死亡します☆
車も使えない状態ですが、もっとみ適切な処置をとってください☆
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日にアップされます。
受付開始は午後8時からです。
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日本が終わる 前編 〜吸血奇譚〜
かつて、百年戦争と呼ばれる戦いがあった。
西暦の一三三九年から一四五三年まで。
あしかけ一一四年にも及ぶ泥沼の戦争だ。
「黒衣の騎士」「騎士の鏡」エドワード黒太子が活躍した前半戦や、「オルレアンの少女」ジャンヌ・ダルクが登場した後期などは、小説や映画などなり、日本人にも親しまれている。
戦いはフランス国内で展開され、国土は散々に荒らされた。
イギリス主導のもとでおこなわれた戦争だから、これは仕方がない。
もちろん、国民にとっては大迷惑である。
大衆にとって、戦争ほどいやなものはない。当然のことなのだが、この時代、戦争より怖ろしいものがあった。
ペストだ。
西暦一三四六年から一三五〇年にかけて、ヨーロッパ中がこの疫病に冒された。
中世ヨーロッパを襲った「黒死病」である。
感染した人は、吐血し、全身に黒い斑点がうかび、数日で死ぬ。
町にも村にも街道にも死体が溢れ、埋葬する余裕すらなく、家ごと村ごと焼いて浄化したと伝えられる。
まさに地獄絵図だ。
このとき、ヨーロッパの人々のうち三分の一が死んだ。
現代の日本に当てはめれば、四千万人以上が死ぬことになる。
黒い恐怖が、弧状列島を包み込もうとしていた。
「四千万‥‥だと?」
巫灰慈がうめく。
桁が大きすぎて、にわかには理解できないほどである。
「実際には、そこまで被害はでないと思うけどね‥‥」
蒼ざめた顔で、シュライン・エマが応えた。
夕闇せまる探偵事務所。
逢魔が刻。
普段ならもう明かりを灯している時間だが、電気も止まっているらしく、血の色に染まった太陽だけが光源である。
この時点で興信所にいるメンバーは七人。
所長の草間武彦と、その妹の零。事務員のシュライン。いちはやく駆けつけた巫、守崎啓斗、伍宮春華。
そして、鼠に噛まれてしまった芳川絵梨佳。
事態は深刻だった。
鼠がペストを持っている、とは、まだ断言できない。
が、持っていないという証拠もない。
一刻も早く少女を病院へと連れてゆき、検査を受けさせ、適切な処理をしなくてはいけない。
「とりあえず‥‥応急処置はしたけどね‥‥」
疲れ切った顔で啓斗が告げる。
民間療法的なものだが、さしあたり消毒をおこなっていたのだ。
「ご苦労さま‥‥」
軽く頷くシュライン。
もちろん、処置はこれで終わりではない。
最大の難問である病院への輸送が残っている。
現在、どの道路にも鼠と鼠の死体が溢れ、自動車を役立たずのものにしてしまっている。
徒歩で運ぶなど論外だ。
「俺が抱えて飛ぼうか?」
伍宮が提案する。
が、
「どこの病院に運ぶつもりなんだ?」
即座に巫が反論した。
これはべつに嫌味ではない。ごく当然の話だが、どんな病院に連れて行っても良いというわけではないのだ。
特定感染症医療機関なり第一種感染症指定医療機関なりに運ばないと、治療できる医師もいないし、ワクチンも置いていないのである。
「だったら調べればいいだろ」
伍宮の意見ももっともだが、これもまたすぐに反論される。
「どうやってよ?」
シュラインの口調には、怒りの要素が含まれていた。
インターネットで調べることは、停電している以上不可能だ。
電話はもちろん不通。
携帯電話も発信規制がされていて、使い物にならない。
陸の孤島という状態なのだ。
「電話帳と地図で、場所だけでも特定できれば、なんとかなるんじゃないか?」
啓斗が言う。
だいたいの場所が判れば、時間はかかってもたどり着けるはずだ。
ここで、ああでもないこうでもないと騒いでいても、事態は悪化する一方なのだ。
「勘弁してくれ‥‥羽つきの人間が絵梨佳を抱えて飛んでいるのを目撃させるつもりかよ‥‥」
肩をすくめる巫。
この状況でそんなものが目撃されたら、混乱に拍車をかけるだけだ。
下手をすれば、警官に問答無用で撃ち落とされるかもしれない。
個人的な特殊能力など、この際は何の役にも立たないのだ。
「じゃあどうするんだよっ!」
苛立った声を伍宮が発する。
「‥‥中島くんへの連絡は、ぎりぎり間に合ってるわ」
「そうか。ヤツならあるいはなんとかできるかもしれねぇな」
シュラインの言葉に巫が頷いた。
面識のない啓斗と伍宮が首をかしげるが、中島とは、絵梨佳の恋人である。
中島文彦。
サラリーマンを自称している青年だ。
本当は名前も職業も嘘なのだが、そのことを知っているのは、ここでは絵梨佳だけだ。
「‥‥きたみたいね‥‥」
蒼眸の美女が呟く。
超聴覚を有する彼女は、こちらに向かって一直線に接近するヘリコプターの爆音を捉えていた。
「屋上から、ということね」
仲間たちに支持する。
頷いた巫と啓斗が絵梨佳を抱き上げ、出入り口へと向かった。
中島こと張暁文は焦っていた。
そして、それ以上に怒っていた。
彼のテリトリーである歌舞伎町も、鼠どもによって大きな被害を出している。
あの小さな身体だ。
戸締まりをしようとなにをしようと、どこからでも入り込んでくるのだ。
噛まれた知人も数十名。
早ければ今夜中にも潜伏期間が過ぎて発病するだろう。
そうなってからでは遅い。
病院は手一杯になってしまうし、ワクチンの生産や輸送だって間に合わなくなる。
なんとしても早い段階で手を打たなくてはならなかった。
そのために、組織のヘリを動かしたのである。
組織とは中国系マフィアだ。
むろん草間興信所の連中には秘密にしてきたことであるが、中島はその構成員なのだ。
「待ってろよ‥‥すぐに行くからな‥‥」
座席の上で唇を噛みしめる。
無線から、次々と情報が流れ出してくる。
このような事態では、無線くらいしか遠距離連絡の方法はない。
その意味において、彼は良い選択をしたといえるだろう。
興信所の人間が情報不足にあえいでるなか、中島はある程度の情報を掴むことができるからだ。
「まったく‥‥俺んとここないで草間のところなんか行くからこんな事になるんだぜ‥‥」
偽悪的な言葉は、おそらく不安を隠すため。
「おらっ! もっと急ぎやがれっ!!」
パイロットを怒鳴る。
不満はいずれ金銭なりなんなりで解決しよう。
いまは一刻を争うのだ。
やがて、古ぼけたビルの屋上で手を振る人の姿が、黒い瞳に映った。
「へへ‥‥判ってるじゃねぇか‥‥」
こちらの行動を読んで動いてくれる連中がいる、というのは頼もしい。
時間が節約できるのだから。
草間興信所が入っているビルの屋上は、ヘリポートにはなっていない。
したがって着陸するのは不可能だ。
「ぎりぎりまで近づけろ。あとは俺が何とかする」
静かな自信をこめ、中島が言う。
彼の能力、すなわち瞬間移動を用いて絵梨佳を連れてくるのだ。
もっとも「跳べる」のはせいぜいが一〇〇メートルだが、この際はそれで充分である。
しかも有視界テレポートだ。失敗するはずがないし、して良い場面でもない。
「いくぜっ!」
機内から、黒髪の青年の姿が消える。
「中島くんっ!」
「中島っ!!」
「話は後だ。絵梨佳を病院に連れて行く。手続きはもうやってあるから」
仲間たちを手で制し、恋人を抱いた中島がふたたびテレポートする。
早業だ。
屋上に残されたシュライン、巫、啓斗、伍宮の四人が、なんとなく顔を見合わせた。
ヘリが爆音とともに去ってゆく。
「まずは、これで一安心だな」
啓斗がひとりごちた。
「絵梨佳ちゃんの方はね‥‥でも」
「こっちはこれから始まるみたいだぜ」
シュラインの言葉を引き取るカタチで、伍宮が言う。
下方から、ざわざわと気配が伝わったいた。
鼠どもが、ついにこのビルにも攻撃を開始したのだ。
「ち‥‥ヘリは目立ちすぎたか‥‥」
浄化屋の声。
「普通の鼠がそんなことを考えるはずはないと思うけどね」
「ああ。普通の鼠は考えないよな」
婉曲的な会話をするシュラインと啓斗。
「どっちにしても、事務所を食い荒らさせるわけにはいかねーよ」
ピクニックにでかける以上の緊張感を示さず、伍宮が階段をおりる。
軽く頷いた三人が続いた。
人間と鼠が単体同士で戦えば、前者が勝つ。
ようするに身体の大きさが違うからだ。
だいたいにおいて、自然界では体の大きい方が強いのだ。
獅子だって、単体では象に勝てないのである。
ただし、それはあくまで個体戦闘力の話。
何千万という鼠を前にしては、人間の区々たる戦術など意味を持たなかった。
逃げ遅れたカップルに何百の群がり、引きずり倒す。
凄まじい悲鳴が大群のなかに消えてゆく。
誰も助けることなどできない。
自分が逃げるので精一杯なのだ。
手近なビルに逃げ込み、上へ上へと敗走する。
鼠の群を強引に突破しようとしたタンクローリーが、その無謀さの報いを受け横転する。
一瞬の苦悶の後、巨大な車体は爆発炎上した。
風に煽られた炎が建造物や他の自動車に燃え移り、被害は加速度的に広がってゆく。
警察も消防も、鼠と渋滞に阻まれて現場に駆けつけることすらできない。
路上には鼠と人間の死体が転がり、それを狙ってカラスが舞い降りる。
「ふふふ‥‥まさに地獄絵図ですわね」
路上に立った黒衣の少女が微笑した。
事情を知らぬものが見れば、この少女こそ混乱の元凶なのかと思うだろう。
海原みその。
むろん、彼女は事件の黒幕ではない。
ではないが、この状況を楽しんでいるのも事実だ。
「ふふ‥‥わたくしも草間さんのところに行ってみましょうか‥‥」
あそこなら、もっと楽しめそうだ。
妖しげな微笑をたたえたまま、歩き出す少女。
襲いくる鼠ども。
みそのの右手が閃く。
デスサイズに切り刻まれた鼠が、地面に転がった。
「文彦さん‥‥」
少女が恋人の名を呼んだ。
とある総合病院。
ワクチンと抗生物質を投与され、ひとまずは危機を脱した絵梨佳である。
「本名で良いぜ」
青年が応える。
ここは彼の所属する組織の息がかかっている場所だ。本名で呼ばれても不都合は生じない。
「暁文さん‥‥」
「ああ」
「ありがと‥‥」
「なにいってやがる」
「だって‥‥さっき‥‥」
ヘリで病院まで搬送している途中、暁文はずっと絵梨佳の身体を抱いていたのだ。
それどころか、処置を受ける前に唇まで奪っている。
伝染病に感染しているかもしれない人間とキスをする人間はいない。
たとえ恋人でも、だ。
避けるのが普通である。
だが、それでも暁文は恋人を抱き寄せた。
そうしてやるのが一番だと知っていたからだ。
どんなに気丈でも無鉄砲でも、絵梨佳は一五歳でしかない。
不安と恐怖で押しつぶされそうだった。
だからこそ、抱きしめ、手を握り、口づけをして安心させる。
彼でなくてはできないことだった。
「礼なんか言うな。俺は自分の欲求にしたがっただけだ」
「でもありがと‥‥」
そしていま、病室のベッドの横たわった少女の手を、暁文は握っている。
「暁文さん‥‥」
「大丈夫だ。ずっとここにいるから。必ず守ってやるから」
「ううん‥‥」
ゆっくりと頭を振る絵梨佳。
「みんなのところに、いってあげて‥‥」
「‥‥‥‥」
「みんな待ってるから‥‥」
「絵梨佳‥‥」
「私は大丈夫だから」
大丈夫そうには、まったく見えなかった。
言葉を失う暁文。
「暁文さんがワクチンを運んであげないと、みんな戦えないでしょ」
優しげな微笑を浮かべる。
その通りだった。
ペストに感染するおそれがある以上、興信所のメンバーは両手を縛られて戦うようなものだ。
どんな小さな傷だって致命傷になるのだから。
ここで時間を空費するより、一刻も早く草間興信所にワクチンを届けるべきだ。
そんなことは暁文にも判っているのだ。
「だが‥‥」
それでも、恋人をひとりにすることなど、彼にはできそうもなかった。
「行って‥‥暁文」
重ねて、絵梨佳が促す。
つよい瞳だった。
やるべきことを見据え、逃げない瞳だ。
暁文は、自分がどうしてこの少女に惚れたのか再確認する思いだった。
「わかったぜ。絵梨佳」
オットマン椅子から立ちあがる青年。
病室の外へと歩みかけて、振り返る。
「すぐに帰ってくるからな」
「うん。そのときはいっぱい甘えさせて」
「いやってほど可愛がってやるさ」
冗談のように軽く言って、病室を出る。
ヘリポートでは、ワクチンと抗生物質を積み込んだヘリが彼の搭乗を待っているはずであった。
「俺の絵梨佳をこんな目に遭わせやがったヤツ‥‥必ずこの手で殺してやる‥‥」
怒りを内心に隠し、黙々と廊下を歩く。
リチリウムの床に響く足音だけが、彼にしたがっていた。
不潔で不快な波濤が、幾度となく押し寄せる。
「キリがねぇぜっ!!」
鼠どもの攻撃を第三波までしのいだ巫が怒鳴った。
ビルの一階。
正面入り口付近である。
住人たちを奥に避難させ、興信所メンバーの六人だけで戦っているのだ。
あえて一カ所だけ進入路を残してあるのには、戦略的な意味がある。
攻撃を一点に集中させるためだ。
窓などを破って同時多発的に侵入されては、作戦のなにもあったものではないのである。
「くそっ! なんで煙玉が効かないんだっ!!」
最後の煙幕弾を投げつけ、啓斗が怒る。
「そりゃ、普通の鼠じゃねぇからだろ」
伍宮がきり返した。
現状、鼠に対して最接近戦をおこなうことはできない。
ある程度の距離をあけて戦わないと、噛まれる可能性があるからだ。
人間でない伍宮や零などは感染しないかもしれないが、それだって保証の限りではない。
まして、シュラインも巫も啓斗も草間も人間である。
噛まれたらペストに感染するのだ。
自然、戦いは遠距離戦にならざるをえない。
シュラインの口が開閉し、鼠の嫌う音波を出す。
巫の手から炎が伸び、まとめて焼き払う。
このふたつが、最も有効な攻撃法だった。とはいえ、ヴォイス攻撃も物理魔法も、いつまでもやれるわけではない。シュラインの声をなにかに録音して大量生産できればまだしもであるが、電気がなくては録音機材も動かない。
「弾切れだ」
無用の長物となった拳銃を、草間が鼠に投げつける。
「こっちも、これでラストだっっ!!」
啓斗の棒手裏剣が、三匹ほどをまとめて串刺しにした。
「まだまだぁ!!」
伍宮が起こした風が一時的に敵を後退させるが、すぐにまた押し寄せてくる。
際限がなかった。
いつしか日は沈み、闇が大都会を飲み込んでいる。
不夜城も、明かりあってのことだ。
闇の中で赤く光る無数の小さな瞳。
不気味なことこの上ない。
と、鼠の群を突っ切って、こちらに走ってくる人影が見える。
黒い服、黒いローブ。振りかざすデスサイズ。
「みその‥‥」
シュラインがうめいた。
なんで死神のコスプレなんかしているのかは知らないが、どうやら追撃を受けているらしい。
「アホかよ‥‥」
「なにやってんだか‥‥」
肩をすくめる啓斗と伍宮。
「灰慈。道を開いて」
「りょーかい」
呆れた顔のまま、巫が物理魔法を使う。
炎の舌が鼠どもを撫で、ビルまでの道ができる。
むろん、すぐに埋められてしまうだろうが。
「啓斗。春華。救出」
ごく短い指示に応じて、少年二人が突出する。
やがて、みそのがビル入り口まで連れてこられた。
「こんばんは。みなさん」
「悠長に挨拶している場合じゃないだろが‥‥」
溜息をつく草間。
「いっくぜっ!!」
ふたたび発動する巫の物理魔法。
炎があがる。
長い長い夜の始まりだった。
あるいは、この国の終わりを告げる夜の。
つづく
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086/ シュライン・エマ /女 / 26 / 翻訳家 興信所事務員
(しゅらいん・えま)
0213/ 張・暁文 /男 / 24 / 上海流氓
(ちゃん・しゃおうぇん)
0143/ 巫・灰慈 /男 / 26 / フリーライター 浄化屋
(かんなぎ・はいじ)
1388/ 海原・みその /女 / 13 / 深淵の巫女
(うなばら・みその)
0554/ 守崎・啓斗 /男 / 17 / 高校生
(もりさき・けいと)
1892/ 伍宮・春華 /男 / 75 / 中学生
(いつみや・はるか)
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■ ライター通信 ■
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お待たせいたしました。
「日本が終わる」お届けいたします。
中編に続きます☆
さしあたり、絵梨佳は助かったようですね。
まあ、病院が襲われないかぎり、というところですか☆
いまのところ、まだ敵の正体はわかりません。
予想通りドラキュラでしょうか‥‥☆
それは次回の講釈で☆
楽しんでいただけたら幸いです。
それではまたお会いできることを祈って。
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