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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


絶望のエリアAAA

オープニング

今、オンラインゲームが爆発的に流行っている。
学校から帰宅してすぐにパソコンに向かう者も少なくはないだろう。
その中でも特に人気を誇るのが『タクティクス』というゲームだ。
その人気の証拠に半年に一度の割合で追加ディスクが次々に発売されている。

投稿者:ガイスト
題名:募集
絶望のエリアに夜九時に来られたし。
            −×××××

投稿者:テラ
題名:ホントなのかな〜?
絶望のエリアってあぼエリアでしょ〜?私も長い事タクティクスしてるけど行った事ないよ?

投稿者:ガイスト
題名:……
信じないのなら来なくてもいいよ。っていうか無理してきてほしくないし。

投稿者:テラ
題名:ム!
だって信用ないんだもん。

投稿者:ガイスト
題名:詳しい事は
詳しい事は言えないけど『自分の望みが叶う』ってのがヒントらしい。

投稿者:テラ
題名:あっやし〜
うわ…。絶対怪しいって。私行かないよ〜。っていうかガイストも行った事ないでしょ?
人で実験なんて最低や〜

ゴーストネットに新しくたてられたスレッドの最初の投稿はその一行とその下の行に数字の羅列のみが書いてあった。
だけど誰も行ったという話しは聞かない。
一体、絶望のエリアに何があるのか…。
それは誰もわからない。



 −タクティクス、希望のエリア。
 初心者、上級者共に集まるこの町でレセダ、ジョイは絶望のエリアについて聞き込みをしようという事になった。
「絶望のエリアってどんな所なんだろうなぁ」
「う〜ん、想像もつかないね」
「…あの、絶望のエリアにいかれるんですか?私も書きこみを見て行ってみたいと思ったんですが…」
 二人がどうしようか、と話し込んでると白魔導師のナギサが話しかけてきた。
「じゃあ、一緒に行こうよ。多い方が楽しいもんね」
「はい、ありがとうございます」
 結局、絶望のエリアに向かう事になったのは盗賊のジョイ、女戦士のレセダ、白魔導師のナギサの三人だった。
「じゃあ、レセダは集合掲示板で絶望のエリアについて調べてくるね」
 レセダは掲示板で調べる、ジョイとナギサは他のPCに聞き込み、という事になった。

 「集合掲示板は…あった」
 レセダはエリアの中央にあるモニターまで小走りで行く。いつもは人が群がる集合掲示板も、今日は空いている。
「今日は空いてるんだね」
 ラッキーと呟きながらモニターの画面に触れ、『絶望のエリア』の検索をかける。すると数百件にも及ぶ数が出てきた。大半は『絶望のエリアに関わると死ぬ』という事ばかりが書いてあった。その中でマトモと呼べる情報を見つけ、画面に表示した。
 −絶望のエリアの行き方。
 パスワードが必要、望みが叶う場所に行く事。夜九時に行く事。この三つが絶望のエリアに行く最低条件だ。時間がなぜ九時なのか知られてない。
「パスワード?」
 あの数字の羅列の事だろうか。
「望みってのも分かんないなぁ…」
 画面をスクロールし、下の文章を読み始める。
 −望みとは、すなわち名誉、栄誉、金銭にあらず。初心に戻って考えれば自ずと答えは分かるだろう。
「初心…望み?…欲しいものが手に入るんだよね…。欲しいもの?………あ!!」
 分かった!と大きな声でレセダは叫ぶ。
「…よぅし、早く哥々と合流しなくちゃ。確か八時に最初の場所で…だったよね」
時計を見ると、合流時間を三十分も過ぎた八時半を示していた。


 一方、レセダと別れたジョイとナギサはとりあえず酒場に入る事にした。情報が集まるといったら酒場くらいしかないのだから。
「絶望のエリアについて製作会社にメール出してみたんだけど、会社はそんなエリア作ってないって言うんだよ」
「そうなんですか?だったら本当に存在するかも怪しいですね。私もネットで検索かけたりしてみたんですけど…」
 ナギサは言いにくいのか次の言葉を中々言おうとしない。
「何かあるの?」
「…絶望のエリアに関わると死ぬ…とかそんな事ばかり書いてあるんです」
 たかが、ネットゲームで死ぬ?そんな事はあるわけないだろうと思いながら、二人は少し気味が悪くなった。
「酒場に着いたよ。有力情報があるといいけど…」
 淡い期待を持ちながら二人は酒場にいるPCに聞き込みを始める。
『絶望のエリア?ンなの知ってたら俺が言ってるっつーの』
『ガイストはタクティクス内でも有名なうそつきだよ。あんな奴の書き込み信じてたらキリないって』
 一時間、二人が聞き込みをして絶望のエリアについて分かったのはこれだけだった。
「使えそうなのは…最後の人の情報くらいですね」
「パスワード?あの数字の羅列の事かな」
 だが、二人にはまだ問題があった。書き込みにあった絶望のエリアに行くヒントの『願いが叶う』だ。さすがにその事について知っている者はいなかった。
「レセダはどうかな…」
「何か分かってるといいですね」
 もうすぐ九時、この時間を超えたら絶望のエリアには行けなくなるかもしれない。
「遅いですね、レセダさん」
「八時に集合って行ったのにな…」
 時計を見ると、もう三十分も時間を過ぎている。
「仕方ないなぁ」
 ジョイがフゥ…と溜め息をもらすと、前方から見慣れたPCが見え始めた。
「哥々!ナギサちゃん」
「三十分の遅刻だぞ」
 苦笑いをしながらジョイが言う。ナギサもレセダに何もなかったようで安心したのか、溜め息をもらした。
「何か分かったか?こっちは数字の羅列の事は分かったけど」
「うん、ごめんね。レセダね、望みが叶うって奴の事調べてたの」
 その言葉に二人は顔を見合わせる。
「こっちはその事が何なのか分からなかったんです」
 これで絶望のエリアに行けますね、とナギサが付け足す。
「望みが叶うってのはレセダ達、難しく考えすぎだったんだよ。簡単に考えればすぐにわかっちゃったもんね!」
 その後、レセダは言葉を続ける。
「買い物!何か欲しいものあったら買うでしょ?ほしい物が手に入る。つまり望みが叶うの」
 まさか、そんな簡単な事が?とジョイは呟く。
「でも難しく考えすぎて、混乱させるって心理作戦はよく聞きますよね」
 ナギサの言葉にレセダは頷く。
「じゃあ、店にいけば絶望のエリアに行けるって事?」
 時間はもうすぐ九時。情報が間違っていたら絶望のエリアへの道は閉ざされるかもしれないが、今はこれにかけるしかなかった。
「急ぎましょう。もうすぐ九時ですから」
 ナギサの言葉にレセダとジョイは頷き、店屋まで走る。
「−×××××」
 店屋の主人に数字の羅列を言うと、ニッコリと笑って、奥に行くように進めた。
「レセダ、ビンゴだよ」
 ジョイはレセダの頭をクシャと撫でながら言う。
「奥に何があるんでしょう」
「早く行こうよ!」
 三者三様の言葉を交わし、奥へと進む。奥の部屋にはワープゾーンがあり、どうやらそれが絶望のエリアへの道らしい。
「……?レセダ?何してるんだ?」
 レセダがワープゾーンの前に何か置いている。
「いつでも帰れるように脱出アイテムをセットしとこうと思って」
 確かに何があるかわからない場所に行くので、レセダの対処は間違っていない。
「そっか。じゃあ、行くよ」
 ジョイ、レセダ、ナギサの順番でワープゾーンに入る。グニャリとした画面が現れ、しばらくそれが続いたが、数分後に画面は切り替わった。
 そこで三人は目にしたものに驚いた。そこにあったのは建物、店屋、他のエリアと全く変わらないものだった。
「絶望って言うから何もないのかと思っていた」
「私もです」
「でもおかしいよ」
 レセダは他のPCを指差していった。
「BGMも鳴らないし、他のPCも反応ないんだもん」
 確かにレセダの言うとおり、ここは普通のエリアとは違うらしい。見た目は他のエリアと何ら変わりはないが、そこはまるで………。
「墓場みたいだ」
 ジョイが呟く。
「お前さんたち…ここに何しにきた?」
 向こうから歩いてきたのは杖を持った老人。恐らくNPCだろう。
「あの…ここは一体何なんですか?」
 ナギサが老人に問うと、老人はけたたましく笑い始めた。
「ここは名も無きエリア。人は絶望のエリアと呼ぶがの。先程、そこの男が言うておったな。墓場と、ここは捨てられたPCの墓場なんじゃよ」
 老人は動かなくなったPCを見ながら言った。
「お、お墓?!」
「最近の者は熱しやすく冷めやすい。最初はいい。面白いといって毎日このゲームをするのだから。だが…飽きたらどうなる?わしは行き場のないPCを集め、ここを作った」
 だから、立ち入るものは許さぬ。と老人は言った。
「貴方が絶望のエリアに関わると死ぬという書き込みを?」
 ナギサが聞くと、老人は静かに頷いた。面白半分で来られても困るからの、と老人は答える。
「レセダ…ナギサ…帰ろうか」
「そう…ですね。ここは私達が来る場所じゃないです」
「……ここの事は誰にも言わないようにしようね…」



 絶望のエリア。
 それはプレイヤーに忘れ去られ、捨てられたPCが住む悲しい聖域だった。たかが、ゲームのキャラ。だけど、そのゲームの中では確かに生きているのだから…。
今までも、これからも…あの老人は絶望のエリアを守るのだろう。
 だけど、老人を止める事など誰一人として出来ない。あの場所を守る事こそが老人の生きる意味なのだから…………。






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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名 /性別/年齢/職業】
1847/雨柳・凪砂(ナギサ)/女/24/好事家
1653/蒼月・支倉(ジョイ)/男/15/高校生兼プロバスケットボール選手
1651/賈・花霞(レセダ)/女/600/小学生

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■         ライター通信          ■
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雨柳・凪砂様、蒼月・支倉様、賈・花霞様。初めまして。瀬皇緋澄です。
この度は、『絶望のエリアAAA』に発注をかけてくださり、」ありがとうございます。
ネットゲームの話を書くのは実は初めてなので、上手くいくかどうか心配でした。
少しでも面白いと思っていただければ幸いです(^−^
では、またお会いできることを祈りつつ、失礼します。

                     −瀬皇緋澄