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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


マヨヒガ

オープニング

マヨヒガ、それは迷い家とも言うその場所には、一人の女性が住んでいるという。
その場所に迷い込んだ者は、心の奥底に何らかの迷いがある者。
その迷いを断ち切るために無意識にマヨヒガに向かってしまう。

投稿者:サヨリ
題名:マヨヒガ
私の友達がこの間まで行方不明だったんだけど、昨日帰ってきたよ。
本人はマヨヒガにいたって言うんだけど、嘘っぽいよね?

投稿者:ケーゴ
題名:Re:マヨヒガ
マヨヒガって迷信だろ?

投稿者:サヨリ
題名:でも〜
私もそう思うけど。でもあるなら行ってみたいよね!
迷いを断ち切ってほしい〜(><)


これは数日前にゴーストネットで見た書き込みだった。
あなた自身もマヨヒガなんてものは迷信にしか過ぎないと思っていた。
けれど−…
今、貴方がいるのは紛れもなくマヨヒガだった。
さぁ……どうする?


視点⇒大曽根・つばさ


 あの時のことを今でも夢に見る。
 あの日…それは『人は簡単に人を裏切れるという事を知った日』
「今日まで行ったら、明日は学校は休みか…」
 ピピピと無機質な音を鳴らし続ける目覚まし時計を止めて、学校に行く準備を始める。学校にいくのは好きだけど、少し…疲れる。
 −演技をしなくてはいけないから…。
 友達を無くさないため、一人にならないため、嫌われないために…うちは演技を続けている。演技をしなくちゃ友達でいてくれない人なんて友達じゃないと思う?…それは孤独を、一人になった事が奴が言う綺麗事にしか過ぎない。
 実際につばさは過去に自分の能力を見せた事が原因でみんなから迫害された経験がある。あの時はまるで地獄だったとつばさは思う。人と少し違うだけで他の人間から嫌われるんだから。つばさが、能力を使って人を傷つけたわけでもないのに人はつばさを孤独にした。
「いってきます」
 両親に告げると、二人とも「いってらっしゃい」と返してつばさを見送った。
 −今日はどんな一日になるんやろ…。
 普通の中学生がこんな事を言えば『良いことが起きるといいなぁ…』などの意味を含むが、つばさの場合『今日も無事に嫌われずにすむやろか』などの意味が含まれる。
 それはつばさが経験した事のトラウマになりつつあった。
「…!?」
 いつも通りの学校への道を歩いている途中で目の前の景色が歪んだ。
「な、なんや!これ?」
 周りの景色がぐにゃりと歪み、目に映る風景が変わり始める。つばさは為すすべなく、その景色の中に飲まれていった。
「………どこや……ここは…」
 つばさのいう事も最もだ。目の前には見渡す限りの大きな屋敷。
「…うちはまだ家で寝ていて夢を見とるんやろか…」
 頬を思いっきり、抓ってみたが夢とは思えないほどの痛みがつばさを襲う。
「〜〜〜っっ!!」
 あまりの痛さにつばさはその場にしゃがみ込む。
「いらっしゃいませ」
 頭上から聞こえた言葉に頭を上げると、目の前には小さな少女がいた。
「……あんた誰や?」
「私はお館様のお世話をさせていただいている者です。玄関で話すのもなんですから中にどうぞ」
 少女はその幼い外見とは裏腹に丁寧な言葉でつばさの問いに答えた。
「ここは…どこなん?」
 靴を脱ぎ、揃えたところで、つばさが少女に問いかける。
「ここはお館様が管理されている迷い家です」
 その言葉を聞いてつばさは驚いた。最近ネットで騒がれている『マヨヒガ』の存在の事を…。大きな迷いを抱えている者が呼ばれるというのを聞いたことがある。
「……大きな迷い……」
 つばさは小さく溜め息をついて呟く。心当たりがありすぎるからだ。
(うちの…迷い……あの事しかあらへんな)
 下を俯きながら少女についていく。
「こちらです。お館様がお待ちです」
 少女が襖を開ける。中から見えたのは白い髪が特徴的な上品な女性だった。
「いらっしゃい。立ったままじゃ辛いでしょう?お座りになったら?」
 つばさは進められるがままに座布団の上に座る。
「うち…学校に遅刻するから早く帰りたいんやけど…」
 つばさはいつものようにはっきりとした口調で言う。
「学校?そうしてまた演技をして苦しむのかしら?」
 その言葉につばさの言葉が詰まる。
「なん…で?知っとるん?」
 早鐘を打つ心臓の音を抑えるように震える声でつばさは女性に言う。
「ここは迷い家。この家に足を踏み入れた者の事は分かるの。まだ名乗ってなかったわね。私は葛葉…。貴方の名前は?」
「…うちは大曽根…つばさ…」
「つばさ…良い名前ね」
 葛葉はにっこりと笑いながら答えた。
「…何があったのか聞かせてもらえないかしら?溜め込むばかりでは余計に煮詰まるんではなくて?」
 −言ってもいいんやろか?
 −嫌われるんやないやろか?
「…うちは…怖いんよ。怖くて仕方がないんよ…」
 搾り出した声は少し震えているのが自分でも分かった。
「何が怖いの?」
 葛葉は静かにゆっくりと言葉を紡いだ。
「…一度力を見せたら…みんなから嫌われた。人に嫌われたくない。でも…このまま演技をしていくのも辛いんよ。どうするのが一番ええんか分からへん」
 泣きそうになるつばさを葛葉は何も言わずに話を聞き続ける。
「…ねぇ、演技をするのは悪いこととは言わないわ。人に嫌われたくないって言う気持ちはきっと誰だって同じだもの。でも、もう少し肩の力を抜いてもいいんじゃないかしら?気を張り詰めすぎたら倒れちゃうわ」
「肩の力を抜く?」
 そういえば、ずっと演技をしたり、嫌われないようにして肩の力なんか抜いてなかった気がする。
「いつか、本当の貴方を見てくれる人がきっと現れると思うから」
 その言葉につばさはは目を見開いた。
「本当の…うち?…ほんまに?」
「ええ、私は嘘は言わないのよ?」
 葛葉はそう言ってにっこりと微笑んだ。その笑顔につられてつばさも少しだけ笑った。
「あのな…うち、上手く言えへんけど…話聞いてくれてありがとな」
 つばさの言う意味がわかったのか葛葉は「どういたしまして」と答えた。
「うち、学校に行かないといかんのやけど…」
「また迷ったらいつでもいらっしゃいな。帰り道は後ろの襖から出ればいいわ」
「ありがとう。また会うか、もう会わへんか分からないけど、またな」
 そう言ってつばさは勢いよく襖の向こうへと消えていった。
 マヨヒガを出ると、そこは最初いた道端だった。時間もそうたってはいない。
「………夢やないもんな」
 グッと拳を握り、学校へと向かい走る。走る中でこれからは、考えすぎないようにしてみようか、などと思いながら………。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1411/大曽根・つばさ/女/13/中学生、退魔師

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■         ライター通信          ■
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大曽根・つばさ様>初めまして、瀬皇緋澄です。
この度はマヨヒガに発注をかけてくださいましてありがとうございました。
大曽根・つばさ様のプレイングは他の方たちより、数段難しかったです(^−^;
あ、でもおかげさまで勉強になりました。ありがとうございます。
キャラの悲しい過去を少しでも反映できていたら幸いです。
では、またお会いできることを祈りつつ、失礼します。
                 −瀬皇緋澄