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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


マヨヒガ

オープニング

マヨヒガ、それは迷い家とも言うその場所には、一人の女性が住んでいるという。
その場所に迷い込んだ者は、心の奥底に何らかの迷いがある者。
その迷いを断ち切るために無意識にマヨヒガに向かってしまう。

投稿者:サヨリ
題名:マヨヒガ
私の友達がこの間まで行方不明だったんだけど、昨日帰ってきたよ。
本人はマヨヒガにいたって言うんだけど、嘘っぽいよね?

投稿者:ケーゴ
題名:Re:マヨヒガ
マヨヒガって迷信だろ?

投稿者:サヨリ
題名:でも〜
私もそう思うけど。でもあるなら行ってみたいよね!
迷いを断ち切ってほしい〜(><)


これは数日前にゴーストネットで見た書き込みだった。
あなた自身もマヨヒガなんてものは迷信にしか過ぎないと思っていた。
けれど−…
今、貴方がいるのは紛れもなくマヨヒガだった。
さぁ……どうする?

視点⇒門屋・将太郎

 読心術、それは相手を救う事も傷つける事も可能な恐ろしい力だと思う。その力を門屋将太郎、つまり俺は持っている。今でこそコントロールできるようになったが、昔は鬱陶しくてたまらなかった。その事が無意識に迷いとしてでていたのだろうか…?

「どこだよ…ここは…」
 相談所にいたはずなのに、なぜか見た事もないような屋敷の玄関に立っていた。そういえば…ネットで見た事がある。迷いを持つ者を呼び寄せる屋敷…『マヨヒガ』の存在の事を…。
「…もしかして…ここがマヨヒガ?」
 キョロキョロと周りを見渡す。気味が悪いほど大きな屋敷だった。
「いらっしゃいませ」
 しばらく玄関で立ち尽くしていると、一人の少女が現れた。日本人形をそのまま人間にしたような子供だった。
「…ここは一体どこだ?」
 将太郎が聞くと、その少女はにっこりと笑いながら答えた。
「ここは迷い家、下界の人々にはマヨヒガとも言われている場所でございます」
 それを聞いても将太郎は驚く事は無かった。大体の予想が出来ていたからだ。だから、少女の答えを聞いても「ふぅん…」としか答える事は出来なかった。
「こちらへどうぞ、お館様がお待ちです」
「お館様?」
 疑問に思った事を口にしてみたが、少女はその問いに答える事はしなかった。だから将太郎もそれ以上のことは聞くことはしなかった。
 歩いても歩いても奥など見えてこない屋敷に、将太郎はいい加減歩き疲れていた。時間的にはそれほど歩いてはいないのだが、この場合は精神的な疲れだろう。
「こちらの部屋にお館様がいらっしゃいます」
 少女は襖を開けて中に入るように促す。
「…まぁ…邪魔するよ」
 中に入ると部屋の中央に白い髪の女性が座っていた。女性は赤い着物を着ており、目は伏せている。
「私の名前は葛葉。貴方のお名前は?」
「俺は門屋将太郎、臨床心理士をしている。できるならさっさと帰りたいんだけどな借りているビルの賃貸料の支払いが近いんで」
 はは…と苦笑しながら、頭を掻き言う。
「ここは迷い家。強い迷いを持つものを呼び寄せるの」
「知ってるよ。それで迷いを断ち切ってくれるんだろ?」
 すると葛葉はゆっくりと首を横に振った。
「断ち切るなんて事は私にはできません。貴方の迷いを他人である私が断ち切るなど、できはしないでしょう?ここは…迷いを聞いて少しでも苦しみを和らげる場所」
 確かに聞いてもらえるだけでも楽にはなるだろう。将太郎は少し考えて、口を開きだした。
「…俺の話、聞いてもらえるか?あ〜…聞き流すだけでいいからよ」

−俺は、読心術って力を持っている。今でこそ使いこなせているが昔は鬱陶しくて仕方が無かったよ。けれど…俺はたまに思うんだ。この力を仕事に使っていいものかどうかって事を…。俺の仕事は簡単じゃねぇ。人の心を扱う仕事だからな。人の心、俺の力はこの仕事にぴったりなのかもしれねぇ。人の本心を聞くことができるんだからな。でも…俺の力は使い方次第で人を傷つける事にもなるんだ。人にはあるだろ?知られたくない過去の一つや二つがよ。そんな事に俺が触れていいのか分からなくなっちまって。最近、煮詰まってきちまった。それでかな?俺がここに迷い込んだのは…。

「…貴方の力は確かに人を傷つけるかもしれない、でも…貴方は一つ忘れてるわ」
 葛葉は今まで伏せていた瞳を開いた。全てを見透かされるような瞳に将太郎は身体が動かなくなるような感じがした。
「私の心…読めないでしょう?」
 クスクスと笑いながら言われた言葉に将太郎はドキリとした。最初葛葉に会ったとき、悪いとは思ったが心を読もうと試みたが、全く読めなかった。
「私は全くというわけではないけれど、この目は見えていないんです」
 だからか、と将太郎は納得した。将太郎の能力は盲人、そして自分には効果がないのだから。
「そっか…。で?俺が忘れてるのってその事?」
「いえ…、貴方の能力は傷つける事も有り得るけれど、人を救う事もできるのですよ?」
 その言葉に将太郎は目を見開いた。まさか、そんな風に言われるなど予想もできなかったからだ。
「気づかないうちに悩んでる人を助ける事ができるでしょう?」
「……簡単に言ってくれるぜ…」
 渇いた笑い声をあげながら将太郎は言った。
「迷う事は悪いことじゃないわ。でも悪いほうに進まないで…。迷って悩んで良い方に進むような迷い方をしてね」
 葛葉はにっこりと笑いながら言った。
「こんな話…聞いてくれてありがとうな。おかげで少しは楽になったよ」
「どういたしまして。貴方はこれから大変でしょうけど、がんばってね」
 −ガンバッテ
 その言葉だけでここに来た意味はあっただろうな、と思う将太郎だった。
「後ろの襖を抜ければ、元いた場所に戻れるわ」
 葛葉は後ろの襖を指で指し、帰り道を将太郎に与えた。
「あんたも大変だな。でも俺は助かったよ」
 背中ごしに手をあげる。そうして襖を開け、通る。通る際に何か身体に違和感を感じた。
「……ん…?」
 目を開けると、そこは元いた場所だった。時計を見るが、マヨヒガに迷い込んだにしては一分もたっていない。
「……夢?」
 椅子に座り、背中を預ける」
「…じゃめぇよな…」
 どこかすっきりしている自分がいるのを感じた。これはあのマヨヒガに迷い込んだおかげだろう。相変わらず、この力への不安などは消えてはいない。だが…それでもいいか…と思える自分がいた。
「…まずは来談者が増える事を願うよ」
 はぁ…と溜め息をついて家計簿を見る。見事なまでに赤字ばかりだ。
「まぁ…なるようになるさ」
 家計簿を閉じて、営業中の札を玄関にかける。

「さぁ…今日も一日がんばるとするかな…」




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1522/門屋・将太郎/男/28/臨床心理士

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■         ライター通信          ■
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門屋・将太郎様>初めまして、瀬皇緋澄です。
今回のマヨヒガはいかがでしたでしょうか?
門屋・将太郎様のプレイングは書きやすかったのでありがたかったです。
何かご意見などありましたらどうぞです。
では、またお会いできることを祈りつつ失礼します。 
            −瀬皇緋澄