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<東京怪談・PCゲームノベル>


恐山で逢いましょう

■伍宮・春華編【序】

「――なぁ、春華。これ、面白そうだと思わねェ?」
 駅前マンションの最上階。その一室に呼び出されて、俺は天波・慎霰の差し出した月刊アトラス9月号に目を落とした。
「? なんだよ……恐山ツアー?」
 読み上げた先から、興味がわいてくる。
「実験に付き合うっていうか、レポート書くっていってンだからよーするに取材みたいなもんだろ」
「恐山って確か、すげー北の方だったよね。それがこの値段で行けるんだ!」
 テレビで見たことのある風景を、思い出しながら言った。
「な?! 安くていいだろ?」
 慎霰と顔を見合わせる。
 いくら安くたって、俺たちにそんなお金などない。それならばやることは1つだ。だからこそ慎霰は、同居している俺をわざわざ呼び出したりなんかしたんだろう。
「――行くか?」
「行こう!」
 2人同時に頷いて、その部屋を飛び出した。
 目指すは――おっちゃんの部屋だ。



■楽しい旅立ち【新幹線内:5号車】

「絶対に騒ぎを起こすんじゃないぞ!」
 何度もそう言われながら、おっちゃんに見送られて俺たちは新幹線に乗り込んだ。
「いやー、うまくいってよかったなァ」
 指定席に腰をおろすなり、安心したように慎霰が呟く。
「ホントにさ。いつ”やっぱりダメだ”って言われるか心配だったもんな」
 笑いながら、隣に座った俺は返した。
 「お金ないンだよ〜」とすがりにすがって、最後には半分脅して、おっちゃんにお金を出させたのである。
(ホント、感謝感謝)
 俺は改めて、頭の中で手を合わせた。
「――おや、あんたたちも恐山ツアーへ行くのかい?」
 不意に声が降ってくる。
 俺たちは3つ席のある所に2人で座っていたのだけど、空いている席に座るためやってきたおばさんに声をかけられたのだ。
「そうだよ」
 ツアーなのだから、この辺に座っている人は皆そうなはずだ。
 答えた慎霰に、おばさんはにこりと微笑むと。
「子供のうちから着物を着ているなんて、感心だね。ホラ、おやつをあげようか」
「わーいっ」
 差し出されたのはお菓子の山。慎霰に受け取る気配がなかったので、代わりに俺が受け取った。
(それにしても――)
 俺は自分の着物に目を落とす。それからつんつんと、慎霰の袖を引っ張った。
「ん?」
 さっきのおばさんには聞こえないよう、耳元に近づける。
「やっぱり着物じゃ目立つのかな」
 俺も慎霰も普段から着物だった。慎霰のに至っては普通の着物とも少し違う。紺色の、作務衣みたいな着物だ。
「感心されてるんだから、いいんじゃないのか?」
 慎霰のその答えに、俺は安心する。
「そっか、そうだよね」
(本当は)
 慎霰の答えがどちらであっても同じなのだ。俺たちは着物が好きだから。俺たちにとっては、これが制服だから。
(うん、別に気にしなきゃいいんだよな)
 慎霰もああ言ってるし。
 というわけで、俺は気を取り直して貰ったばかりのお菓子を豪快に開け始める。
「一度に全部食べるんじゃないぞ」
 横から口を挟んだ慎霰を、不思議に思って見返した。
「え? なんで?」
「お前この紙見てないのか?」
 ペラリと慎霰が見せたのは、今回のツアーの日程を書いた紙らしい。
「見てないけどー?」
 見るはずがない。
「新幹線に乗ってる時間より、バスに乗ってる時間の方が長いんだぜ。距離は断然新幹線で走る方が長いけどな」
「ええーっ。だって新幹線でも2時間以上でしょ? それで青森入りするんじゃないの? なんでバスがそれ以上なのさー」
「ツアー参加者の人数が多すぎて、列車に乗るのは迷惑になるらしいぜ。そこに向かうやつ、2両から1両なんて無茶な編成だって」
「すくなっ」



■悪巧みは温泉で【恐山:総門前〜山内】

「――うー、疲れたぁ〜」
「さすがにケツが痛いな」
「ウン」
 バスから降りると、俺たちは一斉に伸びをした。その横をおばさんたちが颯爽と歩いてゆく。ずいぶんと元気なものだ。
「にしても凄いな。何にもないじゃん」
 ぐるりと辺りを見回した、慎霰が口にした。
 バスで結構長いこと山道を登ってきた。酷く蛇行し高低差もある道路は、普段車酔いをしない俺たちですら半分酔いかけにさせていた。そういう道を登ってきたのに、こんなにも広く平らな場所があることが少し不自然に思える。
(でもそこには)
 砂利とたくさんのバス。そして少し離れた場所にみえる大きな門と、それを囲む土壁だけ。
(確かに何もない。けど――)
「でも、この世じゃないみたいだね。現代じゃないみたいって、言った方がいいのかな」
 俺は言葉にした。そこは俺がいたあの世界の――都の、入り口に似ていたのだ。
 ただ酷く違うのは、きつく鼻をつく臭い。
「臭いなー」
 俺たち天狗は、普通の人間よりも鼻が利く。匂いも臭いも倍になるのだ。
 「ふふふ」と、あとから降りてきたおばさんが笑っている。
「これは硫黄の臭いよ。恐山の地下には硫黄がたくさんたまっていてね。至る所からそれが噴き出しているの」
 その説明を聞くに、そのおばさんは何度も足を運んでいるのだろう。
「ホラ、早く行かないとおいていかれちゃうわよ」
 ツアー客のほとんどは、既に門の方へと移動していた。おばさんの促しに従い、俺たちもそちらへと走り出した。

     ★

 山内をバスガイドの案内で回っていたけれど、俺と慎霰には説明が難しくてイマイチよくわからなかった。むしろ俺たちは他のことで頭がいっぱいだったのだ。
”夜行ったら怖そうな場所はどこか”
 それを探していた。もちろん夜に実行予定の肝試し(?)のためにだ。
「――やっぱり地獄巡りかなぁ」
 呟いたのは俺。
 それを終えた後、2人で温泉――古滝の湯に浸かりながら作戦会議をしていた。
「お前は”地獄巡り”って表現が好きなだけだろ?」
「あ、やっぱわかる?」
 あっさりと見破られて、俺は笑った。すると慎霰にお湯をかけられる。
「でも本当に怖そうだったじゃん」
「何もなかったけどな」
 恐山に着いた時と同じ感想を、慎霰はもらした。
(確かにそうだけど……)
 地獄と名前のつけられた場所はたくさんあったけれど、どこにも何もなかった。そもそも、あのおばさんが言っていた硫黄の噴き出す噴気孔に、それぞれ地獄の名前がつけられているだけらしい。つまりただの穴だ。
(でも俺は)
 逆に何も存在しないことが、怖いと思う。今の時代存在しないことの方が珍しいからだ。ごつごつした岩肌は自然のまま露出され、硫黄のせいか赤茶けた色をしていた。それは少し、血の色に似ていた。
「じゃあ慎霰はどこがいいの?」
 お湯をかけ返しながら、俺は慎霰に問った。慎霰は考えこむような仕草をしてから。
「そうだな……たとえば賽の河原に積んである石。あれをよけて崩さずに歩けるか、とか」
「うげ。崩しちゃったらどうするのさ」
「もちろん――徹夜だろ」
 ほんの少しだけ、面を食らう。
(いつも俺と一緒に悪戯を楽しんでる)
 そんな慎霰でも、やっぱりちゃんと温かい心を持ってるんだ。もちろんわかってはいたけれど、はっきりと確認できたのが嬉しかった。思わずにこりと笑う。
「ふっふっふ」
「何だよ」
「どうせ河原行くには地獄通るもんね〜」
 ごまかすように答えた。
「ま、夜を楽しみにしてようぜ」



 しかしその前にも楽しみがあった。お風呂上りの温泉たまごである。
「なんだこれ……う、うまっ」
 2人して貪り食っていた。
 おっちゃんへの土産は、もう決まったようだ。



■御参銭あげられませ【恐山:賽の河原】

「――よし、そろそろ行くか」
「うんっ」
 暗闇の中、うごめく2つの影。それはもちろん俺と慎霰である。
 俺たちが泊まるのは山内にある宿坊。抜け出して目的の場所へ行くのは簡単だった。
「慎霰、手に持ってるの懐中電灯?」
 天狗は夜目が利く。だからこそ暗闇の中でも俺はそれがわかった。――つまり、本当は懐中電灯などいらない。
「あった方が雰囲気出るだろ」
 慎霰の説明に、(準備がいいなぁ)と俺は笑った。
 恐山の中を、夜中徘徊しようなどというつわものがいるなんて、誰も思っていないのだろう。拍子抜けするくらいあっさりと外へ出ることができた。
「なんか無用心だけど……恐山だからいいのかな」
 俺は宿坊を振り返りながら呟く。慎霰は短く返した。
「かもな」
 それも俺たちにとっては、遊び場でしかない。
 点在する地獄の隙間を縫って、賽の河原へと向かう。この地獄、昔は136個もあったというのだから凄い。そのうち5つだけ温泉が湧いているのが、恐山七不思議のうちの1つだと言っていたっけ。
 バスガイドの言葉を何となく思い出しながら歩く。
「……おっと」
 たまに転びそうになると、互いの身体を掴んだ。
「昼はそんなに思わなかったけど、地面がずいぶんでこぼこしてるよなぁ」
「だな。あの駐車場とは大違いだ」
 きっと外だけはしっかりと整備されたのだろう。地獄は様々な高さにあり、それを繋ぐ歩道も時折傾いたりしていた。夜に歩くとなかなかスリルがある。
(今どの辺だろう?)
 懐中電灯の灯りだけではやっぱりそこまではわからなくて、俺は”天狗の目”を使った。
「――あれ?」
 すると視界に、妙なものが映る。
「どうした?」
「あっち見て、慎霰」
 俺が指した方を、慎霰は律儀にも懐中電灯で照らした。距離的にあってもなくても同じなのだけど。
 俺たちは湖と河原を見下ろせるような場所を歩いていて、俺が指したのはその河原の方だった。
「! 子供……?」
 慎霰が呟く。
(そう)
 子供がいるように見えたのだ。それも1人や2人ではない。
「行ってみよう」
 慎霰はそう告げるとすぐに、道なりに行くのではなくその場から翼を使って飛び出した。
「え?! ちょっと待ってよ慎霰!」
(相変わらず行動が早いなー)
 俺も翼を広げて追いかける。
 その場所までは大した距離ではなかった。河原に降り立って翼をしまうと、慎霰は子供たちの方へと駆け寄っていく。
「お前らこんな時間に何やってるんだ?!」
 聞こえた声に、(俺たちもな)と思った。
 着物姿の子供たちは慎霰の声に動きをとめると。
「!」
 全員が一斉に、慎霰の方を見ていた。その目が光っている。
「慎霰!」
 思わず俺は呼んだ。同じ場所へ走りこむ。


  これは賽の河原でございます


 いちばん近くの子供の口が動いた。しかし声は――どう聞いても大人のものだ。


  七歳未満の子供衆、死なしゃれば皆この所へ参り


 他の子供の口が動く。しかし声は同じ。


  いろいろ鬼どもにかしゃくせられ、石を積み、泣き哀しむと申します


「慎霰っ、この子供!」
「ああ――幽霊、だな」
 子供たちはそれぞれに口を動かしたまま立ち上がる。


  所々の紅き処は、爪の根より流るる血しおじゃと申します
  強くせめられしゃる時でも御座りましょう
  夜中大勢の子供衆のこえで泣声など致します


 そうして徐々に、俺たちの方へと近づいてくる。
「どうしよう……」
 思わず声がもれた。
 俺がいつも相手にしているのは大人の人間だ。子供の幽霊など、あまり相手にしたことがない。
(どれくらいの力で)
 やればいいのか加減がいまいちわからないのだ。
 それにできれば――
 ぐいと、俺は慎霰の袖をひいた。
「行こう、慎霰」
 戦わずに済むのなら、それにこしたことはない。
 慎霰もそう思ったのかすぐに頷き、身体の向きを変え翼を――
「?!」
 出そうとしたが、既に囲まれていた。


  皆様、決して崩すことではございませぬ


 すぐ近くで聞こえる。見ると慎霰の肩に乗っている子供がいる。
「何だ?!」
「うわっ」
 裾を引かれて下を見る。いつの間にか子供が足に抱きついていた。


  これは即ち、賽の河原の地蔵様
  先はここへ御参銭あげられませ
  御参銭あげられませ
  御参銭あげられませ
  御参銭あげられませ
  御参銭あげられませ
  御参銭あげられませ……


「うるせェッ!」
 その慎霰の叫びが、合図だったのかもしれない。
 慎霰が妖具を放ったのがわかったので、俺も攻撃に転じた。
(風よ!)
 瞬間的にカマイタチを起こして子供を斬り捨てる――つもりだったのだけど、子供はままるで霞を切るかのように、あっさりと消えていった。
 子供が全部消え去ると、慎霰は俺に小太刀の妖具を貸してくれた。強い霊体には風よりも効くだろうと、受け取っておく。それに俺は剣術が得意だった。
 背中合わせに立ち、それぞれ武器を構える。
「声がやんだね」
 俺は呟いた。


  御参銭あげられませ


 そうくり返していた声が、今は聞こえない。
(本当は、それが普通なんだ)
 だって子供は、そんなこと言わないはずだから。
 石を積む子供がしているのは罪滅ぼし。欲しいのは許しであって”銭”ではない。――ましてや他人の。
「なぁ春華」
「ん?」
 風が吹き、回る風車。
「さっきの声、大人だったよな?」
 その問いに、慎霰も同じ答えにたどり着いたのだということを悟る。
「だな。悪いのはきっと、子供じゃない」
 俺の答えに慎霰は満足そうに頷いた。
「出てこいよ!! 賽銭が欲しいのはお前だろう?!」
 闇に向かって叫ぶ。
 生ぬるい空気が揺れる。
 間。
  ――バッシャーーーンっ
 不意に湖の方から音が聞こえた。
「!?」
 バタバタと走り寄る。途中から砂になっているため走りにくかったが、そんなことを考えている暇はなかった。
(水から出てきた?)
 それとも水に逃げたのか?!
 俺たちには判断がつかない。
「――逃げたんじゃよ」
「うわっ?!」
「誰?!」
 突然現れた人影に、俺たちは驚いた。人間でないものの気配を探ろうと気を張っていたため、人間には気づかなかったのだ。
「ふぉふぉふぉ。肝試しとは元気な年頃よのう」
 俺たちの緊迫した状況などあっさりと打ち砕くように、その人――おじさんはのん気に笑っている。
(笑いごとじゃないっての!)
「おじさん、今”逃げた”って言ったよな? 見えたのか?」
 慎霰の後ろから俺が尋ねると、おじさんは湖の方へ視線を移す。
「今日ここで若者が招霊をしておったからな。いろいろなものが呼ばれて来てしまったのじゃろう。さっき聞こえておったのは、『恐山境内案内演説』の一部じゃ」
「ってことは」
「それを生業としていた者の霊じゃろうな」
「…………」
 俺と慎霰は目を見合わせた。
「じゃあなんで俺たちなんか襲うンだよ」
 慎霰が不満げに口を尖らせると、おじさんはまた笑って。
「ふぉふぉふぉ。あんたたち何と言われとったかの?」
「御参銭あげられませ? あ……」
 俺は気づく。
「参銭もせずに肝試しか。そりゃあ怒る人もいるだろうて」
「…………」
 もう一度、顔を見合わせた。
(それが信仰深い人であればあるほど)
 怒るのは当然である気がした。
 しゅんとした俺たちの空気を読んだのか、おじさんは明るく告げる。
「まあ謝る必要はないじゃろう。あいつとて子供の霊体をもてあそんだのは同じじゃ。あんたたちがすべきことは、1つでも石を積んでやること。それだけで十分じゃろうて」
 それから、「できれば明るいうちにな」そう付け足した。
「そっか。わかったよ」
「うん。明日の朝にしよ」
 納得した俺たちは、おとなしく宿坊へ戻ろうと――したのだが。
「うわァァッ!!」
「慎霰?!」
 帰り際見事に石の山に足をひっかけて、崩してしまった。
「やっべェ〜〜〜っ」
「え?! 徹夜決定?!」
「ふぉふぉふぉ」
「おじさん笑ってないで手伝えよ!」
 そうして夜が更けるどころか、空が白んできたのだった……。



■お約束エンド【白王社ビル:月刊アトラス編集部】

「おい麗香、レポート持ってきたぜ」
「持ってきたよ麗香」
 後日できあがったレポートを持って、慎霰とアトラス編集部を訪れた。
「2人とも! いい加減呼び捨てにするのやめてくれないかしら」
 編集長の碇・麗香が怒りを堪えているような口調で告げる。
「いーじゃん別に。減るもんでもなし」
「擦り減ってはいるけどね」
 おそらく堪忍袋の緒が、だろう。でも俺は誰にでもこうなので、直すつもりはない。
「まあいいわ。で? レポートは」
「ほい」
 慎霰が笑顔で提出したのを見届けてから、俺のを手渡した。
「俺のはこれー」
 2枚受け取った麗香は、まず慎霰のレポートから広げた。途端に首をひねる。
「これ、何語で書いてあるのかしら」
「失礼なヤツだな〜。日本語に決まってるだろ!」
「…………」
 麗香はもう一度紙に目を落とした。それから頭を上げ、「ふーっ」とため息をつく。
「残念ね、アラビア語を殴り書きしたようにしか見えないわ」
「なんだとーーッ。人が折角真面目な内容で書いてやったって言うのに!」
「どうせ期待してなかったからいいわよ。じゃあ次、春華くんのは……」
(酷い言われようだなぁ)
 俺はこっそりと苦笑していた。
 しかし俺のレポートを見た麗香は、また首をひねった。
「これは何かしら……?」
 ひらりと内容をこちらに見せるが、俺は自分が”描いた”内容を当然わかっている。
「いやぁ、文字を書くのが面倒だったからさ。絵を描いたんだよ」
「それでどうして着物を着た子供……」
「だって、このツアーの目的って、”イタコなしに霊と接触できるか”ってやつだったじゃん。それ接触した霊の絵! ちゃんとレポートになってるだろ?」
「どこがよーーーっ?!」
「あははは」
 麗香の反応を予想して、俺たちは既に走り出していた。
(あの絵を描いたのは)
 本当はそれだけじゃない。
 懐かしいと思ったから。
 ”当時”は皆、ああして着物を着ていた。
 輪になって遊んでいた。
 その空気を、思い出したからだ。
「またどっか遊びに行きたいなァ!」
 ビルの階段を駆け下りながら、慎霰が声をあげた。
「次は海だよ海!」
(山の次なんだから)
 俺はそう答えた。
 季節をすっかり忘れていたことを、思い出したのは大分経ってからだった。

■終【恐山で逢いましょう】



■登場人物【この物語に登場した人物の一覧:先着順】

番号|PC名  |性別|年齢|職業
1928|天波・慎霰|男性|15|天狗・高校生
1892|伍宮・春華|男性|75|中学生



■ライター通信【伊塚和水より】

 この度は≪恐山で逢いましょう≫へご参加いただき、ありがとうございました。
 元気なお2人の珍道中(?)、楽しく書かせていただきました。こういう仲良しな男の子を書くのが好きなので、さらに楽しかったです。少しでも気に入っていただければ幸いです。イメージの相違などありましたらお気軽にどうぞ。機会がありましたら反映させていただきますので。
 それでは、またお会いできることを願って……。

 伊塚和水 拝