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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


メイド服がいっぱい…

0.オープニング
朝…草間のデスクに段ボール箱がいつの間にか置いてあった。
「あやかし荘で良く出てくる…噂の『箱』か?」
昨日も宅配便は来ていないし…あやかし荘で自分を茶化す連中が悪戯で置くわけもない。
零が過去視(怨霊を使ってサイコメトリー)してみても…ノイズが入って首を振る。
五月もここで寝泊まりしているが、「分からない」というのだ。
ウサギだって焔だって首を振っている。
中身は「秋の新作」と書いている。

「秋の新作…?触らぬ神になんとやらだ…」
刺激するのは厄介だ。またウサギみたいなナマモノだとどうする…。
「中がマルボロや、新機種のパソコンだったらいいけどな…特にマルボロ」
「だめー。煙草嫌い〜」
「なら居座るな五月!」
「ぶー」
「五月ちゃんを叱ってはだめです。兄さん」
「はいはい…」
と、仕方ないので『箱』はそのまま放置…そして応接室などで仕事をすることにした。

箱の方が痺れを切らしたのか…ふたが開いた…。

「なっ!!!!!」
「きゃぁ!」
「にゃにゃ!」

箱から飛び出た物は…サイズやデザインが色々のメイド服だった…。雪崩のように草間達を襲う。
メイド服制圧区域はデスクと応接間辺りまでとウサギの件よりマシだった。
メイド服の山から顔をだして息を吸う草間たち。
「お片付けが大変ですね…」
「そんな呑気なこと言っていられるのか…零」


1.仕分け…
経理デスクは被害がないので、シュラインはメイド服の山に埋もれた草間兄妹とナマモノをみてため息をついた。
「凄い量ね…」
一着、メイド服を取って質を調べてみる。
なかなか上質な作り、素材、デザインだ。どこかのブランドなのだろうか?
山の中から草間が出てきてまずは一言
「で、何?武彦さんが買ったの?」
草間の反応は思いっきり転ける。
「買うか!」
全力で否定。しかし、今までの経歴からして説得力は皆無。中の鳥島でメイド服を着たと言うことがあるからだ。証拠写真もある。
「大体、これだけの量が箱に入っていること自体…いや、いい…片づけが先だ…」
所長デスクに置かれている箱は草間から見ると「ざまあみろ」と言っているようで、彼はむかつくようだ。蹴り飛ばしたい気持ちがあるが、またメイド服がでるとたまったものではない。
「零ちゃん、とあたしは丁寧にたたんで…。武彦さんはサイズ分けお願いね。付箋などでしっかり分別しなきゃ」
としきり出すシュライン。
「わたし、少し欲しいです」
零は指をくわえて物欲しげというか、一部のメイド服が気に入ったようだ。
「其れは後、後」
シュラインはにっこり微笑んで、零を宥める。
「武彦さんが買ったのではないと言うことは、本当の持ち主って誰かしら?」
と、作業を進めながら呟く。
「あやかし荘で有名な『箱』なら…零宛で…誰の物でもない…くそ…こんな時に差出人がない!」
草間は分別作業をしながら手紙など手がかりを探していたのだが、全く無くていらいらしている。
「乱暴にしちゃだめだって」
「何にするつもりだ?」
「持ち主がこの「興信所」の物なら分別して、ネットオークションに出店しようと♪」
「はぁ?」
「だって、前にドアの立て付けが悪くなっちゃったでしょ?そろそろ冬だし、その費用の足しになるんじゃないかと」
「…それは其れで良いが…」
反論の理由もないので誰かが来るまで作業を進めることにした。

その間に、「箱」に詳しい人物を呼んで手伝って貰うことにする。その人物は綾和泉汐耶だった。
「あやかし荘で入っていた物は良いモノでしたよ?」
汐耶の答え。しかし、事務所の惨状で少し戸惑い気味だった。
「やはりこれは愉快犯…」
「其処まで気にしないで…まずシュラインさんが言っているように分別しましょう」
「はいはい…」
黙々と、仕分けが進む。
その仕分けのなか…零はずっと物欲しそうな顔をしているので…汐耶は、
「終わったら皆で、零ちゃんの分も分けるから」
と、言う。
とたんに零は明るい笑顔になった。


2.メイド服に魅せられた女性達
あらかた終わって、一息つくと、立て付けの悪いドアが開いた。
近くの丼・定食屋を営む風祭真と、海原みなも、そして見知らぬ少女だった。
「うわぁ♪色とりどりのメイド服♪」
と、真。
「沢山のメイド服♪…あ、あれ?鞄の中にデジカメが…しかも電池やメモリもいっぱい♪」
みなもの言葉はなにかわざとらしい。非常に態とらしい。
「可愛い洋服屋さんだぁ♪」
少女は勘違いしていること100%。
―第一声がそれかよ(武彦の心の声)
すぴがゲージでガタガタ騒ぎ始める。
五月がすぴの目線を追うと見知らぬ少女に当たった。
「?ウサギ?」
「はう!」
少女はいきなり正体を見破られたのかビックリしている。頭にウサギの耳が生えた。
「私、白兎みつきなの、よろしく」
「あたし、五月。ゲージの中のウサギはすぴ、宜しく♪」
おそらく、同じ種族と見分けたのだと思うみつき。
そして、みつきは仕分けしたメイド服一着を着ようとするが、シュラインに止められた。
「まって、やっと片付けが終わった所なの。着たい気持ちは何となくだけどわかるけど…」
「う、うん…」
ただ、軽く注意されただけなので拗ねることはなくおとなしく待つことにしたみつき。
「やっぱり、女として一度は着てみたいなぁ♪」
「私も着たい」
「あたしも!」
真と零、みなもはもの凄くこの沢山のメイド服を着たがっている。
「やっぱり、着たいのね…」
シュラインと汐耶はため息をついた。
「で、男は着せるのが夢なのかしら?」
と、一同は草間を見る…。
「だーかーらー!俺はそんな趣味はないって言っているだろう!」
全力で否定しても、前科(しかもメイド服を着た)があるので全く説得力はない。
「着る方が趣味なの?」
皆はビックリ。
どんどん草間が怪しい人物になってくるのだった。
既にそうなんだけどね…。


3.メイドパーティ
試着用と零用に再度分けて、汐耶が危険物かどうか調べて(何もないようだった)から、今後これをどうするかを皆で考える。
「デジカメがありますし、箱のことはあやかし荘で噂をよく聞いてます♪」
と、うきうきみなもが言った。
「皆さんで思い出作りに着ちゃいましょう♪」
と、業務用高品質デジカメを取り出した。
因みに業務用と家庭用の違いは、室内でどう写るかがわかりやすい。30万画像の業務用といま店頭に並ぶ300万画像の家庭用とはえらい違い写りがいいのだ。
何故みなものがそんな高いものを持っているのかは謎だが(実は妹から手渡された物で、其れも親が買ってくれた物だと思われる)。
既に…試着しているのはみつきだった。
「じゃーん♪」
「…おい…」
しっかりサイズも合う物を選んでいてなかなか可愛い。
いつの間にか、すぴや五月、何故かかわうそ?までも彼女の犠牲になっていた。
単に顔を出しているのはナマモノで、五月はしっかり着こなしている。ただ者ではない座敷童子…。
「可愛い♪」
みなもはデジカメで取りまくり、真はみつきを抱きしめてしまう。
―完全に向こうの世界に行っている…興信所がメイド専門店に?それだけは勘弁だ(草間の心の声2)
「これは飽きるまで、皆の好きなようにさせた方が良いわね…」
とシュラインはため息をついて、ボロボロのドアに臨時休業の看板を掛けた。
まだまだ有り余るメイド服は、綺麗な段ボール箱に一応仕舞っておく。

「さて、どうするか…」
「そうですね♪」
「もう着ているのか…零」
「にあうかな?兄さん」
「…」
こめかみを押さえる、草間武彦30歳。
零が着ているメイド服は大正時代のレトロ感覚を思い起こされる清楚系のものだった。
「シュラインさんも汐耶さんも着ましょう♪」
みなもは自分にあった可愛い系のメイド服をきて皆に勧めている。シュラインには妖艶系、汐耶には愛玩系のメイド服を勧めている
汐耶は…無理矢理着せられたらそちらも着て貰うという条件を考えていたが…今の勢力上…其れは無理だった。お使いを頼んでも、嬉々としてメイド服姿で出かけていくだろう…。
シュラインは、草間の顔が綻んだのを見逃さない。
「着て欲しいの?武彦さん?」
「あ…いや。別に…」
遠くの方を見る草間。
「やっぱり好きなんだ…」
シュラインはジト目で、草間を見ていた。
「前科持ちは違うんだな…」
かわうそ?がメイド服を被って同意している。
「ナマモノに言われたくない…」


4.本題に入りたい…(草間談)
結局、シュラインと汐耶はみなもの得体の知れない圧力に気圧され、メイド服を着る羽目になる。
此処はまさにパラダイスだろう。
さし出されるのは紅茶ではなく、珈琲となるがそれもまた趣が有ってよろしい…。
草間はその誘惑を理性で何とか耐えようと必至だ。
「やっぱり新作は違うわね〜」
真は喜んで次々と試着している。
みなもも負けじと試着しては、写真を撮る。
「臨時休業にして良かったわ…」
ため息一つ、メイド服姿のシュラインが言う。
「そこで唸っている武彦さん」
「なんだ?」
「数着は残しておく?気に入ったもの?」
「…零の分だけで良い」
「あらそう」
色々なデザインをみて感心するシュライン。しかし、零がメイド服に憧れているなんて思ってもなかったが。

とりあえず、皆も落ち着き(?)を取り戻しこの大量のメイド服をどうするのか考える。
みつきはじっと例の箱を見ている。
「わたしあれほしい」
「いいぞ、持って行っても良いぞ」
抑揚のない声で言う草間。
「わーい♪」
とみつきは箱を抱きしめるも箱が大きすぎて、すっ転び、箱の中に入ってしまう。
「箱入りメイド」
とかわうそ?が、ぽつりと言った。
「まず、シュラインの言った様に、ネットオークションで売ると言うこともあるが…決して「此処」でするんじゃないぞ…」
と釘を刺す。怪奇探偵のほかにメイド探偵と噂が立つとたまったものではない。
「どうしよう、興信所でやったほうが…修理代の足しにするのよ?」
シュラインが反論。
「…」
経理は完全にシュラインの手に落ちている…。これは草間の負け。
「ねーねー、一度着たのを売ると高く売れるわよ。ナマモノが着た物以外なら」
「その手の店は却下ね。真さん」
「えー高く売れるのに〜」
真の案を、すっぱり却下する汐耶。
「わたし、4着欲しいのですけど。姉もほしがっていると思いますから」
みなもがうきうきと言う。
そこで、草間が立ち上がり…感涙しているようだ。
「みなも!良いことを言った!4着どころか、好きなもの沢山持って行って良いぞ!」
「あ、ありがとうございます!」
意外な草間の反応にみなもは心底喜ぶ。
「真も、みつきも欲しいのがあるなら、何枚でも持って行っていいぞ」
「やった〜」
「ネットオークション分は残しておいてね…といっても大丈夫よね…」
シュラインがぽつりという。
汐耶に至っては、そろそろ自分の理性がすっ飛ぶ寸前なので何も言えない。
「バイトに着せるのも良いけど、今男の人ばっかり〜残念〜」
真がぼやくが、かわうそ?が、
「女の子バイト募集すれば?」
と言った。
「そうね♪」
簡単な解決法だった。
そして、持って帰りたい派の女性陣は、抱え込めないほどのメイド服をもらい、うきうきしていた。
理性派の汐耶はいつもの服に着替え、落ち着きを取り戻す。
「あやかし荘に一度行かなきゃ行けないわね…」
「そうですね、お礼に」
「みなもちゃん…其れは違うと思うわ…」
シュラインはネットオークションの手続きで忙しくなる。かなりのメイド服の箱が所長デスクを制圧しているのだから。
「どれぐらいで売れるのかしら?」
と首を傾げ、相場などをみていた。
「新作って結構高いんじゃないかしらね」
そして、様々な方法で、抱えきれないメイド服の箱を各自持って帰っていく、みなもと真、みつきだった。
零にしては、明日はどのタイプにしようかなと楽しんでいる。
ひとまず、分配も終わったので草間も安堵感か力尽きている。
「確かに、あやかし荘に行かないとなぁ」
とぼやくのであった。


5.あやかし荘に行くと…
翌日、草間とみなも、汐耶と五月は、あやかし荘に向かった。
「箱」関係ではあそこが一番詳しいからだ。
お礼と謎解明の為であるのだが…。
出迎えたのは…恵美と嬉璃が「箱」を睨めっこしている姿だった。
「いらっしゃいませ…」
「何をしていらっしゃるんですか?」
草間達が「箱」を恐る恐る見てみる。
興信所に届いた物と同じ…形状・そして中身の内容の言葉「秋の新作」。
「此処にも届いているのか!恵美!急いでエルハンドを呼べ!!」
「私は今の内に箱ごと封印します!」
大あわてで草間と汐耶が行動した。
何のことはさっぱり判らない恵美達に、ニコニコとみなもが教えようとする。
「この箱の中身はですね…」
「説明は後だ!同じ惨状を見るのは勘弁だぁ!」
草間の魂の叫びが、あやかし荘に木霊する。
「やかましいぞ!怪奇探偵!」
嬉璃が怒鳴る。
「中身知っているんですか?」
相変わらず騒々しいあやかし荘となった。

一方、興信所の経理室。
シュラインのメイド服ネットオークションでは完売。ドアの修理代どころか、冬に備えての設備費用も出してもお釣りが出る額まで手に入れたという。
「メイド好きって世の中多いのねぇ」
と、深く感心するシュラインだった。
メイド服で珈琲を淹れる零はニコニコしていた。
「お洋服♪、お洋服♪」

End?

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【1252 / 海原・みなも / 女 / 13 / 中学生】
【1449 / 綾和泉・汐耶 / 女 / 23 / 司書】
【1891 / 風祭・真 / 女 / 987 / 『丼亭・花音』店長】
【2099 / 白兎・みつき / 女 / 5 / バケウサギ…】

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■         ライター通信          ■
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滝照です。
『メイド服がいっぱい…』に参加していただきありがとうございます。
かなり収拾がつかない状況になりそうでしたが、皆様のご協力により綺麗さっぱり草間興信所から零ちゃん用のメイド服以外と例の箱は無くなりました。あやかし荘の「箱」はどうなるか判りません…。
しかし、この「箱」の業者は何を考えているのでしょうか…。

風祭真様、白兎みつき様初参加ありがとうございます。

では機会があればまたお会いしましょう。

滝照直樹拝