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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


魔女狩り−1

オープニング

「編集長、こんな投稿葉書をみつけたんですけど…」
そう言って三下が取り出したのは蛍光ペンで目立つように着色された葉書だった。
その内容はー…
−私のお姉ちゃんを助けてください。ロイドゼネクションという会社の人が来て、お姉ちゃんが連れて行かれました。
お姉ちゃんは大丈夫だといっていたんですが、もう一ヶ月も帰ってきません。警察に言っても探してくれさえしません。そうかお姉ちゃんを助けてください。−桃井美智
「ロイドゼネクション?」
その言葉を聞いて麗香の顔が険しくなる。
「何かあるんですか?」
「魔女狩りって昔あったの知ってるわよね?」
「え?あぁ…。はい。火あぶりとか…ですよね?」
三下は本で得た知識を頭の中から引っ張り出して答える。
「ロイドゼネクションは、それと同じ事をしているの。最もココがイカれた連中しかいないし、証拠がないから警察も手が出せないのよ」
そう言って麗香は頭をトントンとつつく。
「でもほっとくワケにもいかないわよね」
麗香は溜め息を漏らしながら葉書を見る。
「三下君、誰か調査に行けるか調べてくれないかしら?」
「分かりました!」

視点⇒海原・みその

 この日、海原・みその、ベル・アッシュはアトラス編集部に葉書を送った桃井美智の自宅に来ていた。理由は簡単。調査のためだ。
 −ピンポーン
 みそのがチャイムを鳴らすと中からは女性の声が聞こえた。
「どちら様…でしょう?」
 出てきた人物はみそのと同じくらいの女の子だった。玄関の前にいる二人を見てギョッとしたようだ。みそのは黒い魔女の衣装に右手に竹ほうき、左手には何かのキャラクターらしき黒猫のぬいぐるみ。その横のベルはモデル顔負けのスタイルに着こなした服装。こうもちぐはぐな二人がいるのだから驚かないはずがない。
「わたくし達はアトラスから来た者です」
「とりあえず、話聞きに来たよ」
「お姉ちゃんの事ですか?」
 お姉ちゃん、そう言うところを見るとこの少女が桃井美智本人なのだろう。
「中へどうぞ」
 チェーンを外し、二人を中に誘う。


「それで?お姉様がなぜ連れて行かれたのか分かりませんか?何か特別な力を持っていたとか…」
 美智はしばらく考え込み、首を横に振る。
「お父さん達が死んでから三日後に連れて行かれたの」
 その言葉にみそのとベルは顔を見合わせる。
「何で死んだの?病気?事故?」
 すると美智は隣の部屋に行き、帰ってくるときに新聞を片手に持っていた。見出しには変死と書かれており、死亡者の欄には桃井という苗字の男女が写っている。恐らく美智の両親だろう。記事をよく読むと脳を潰されて死んだと言う事。外傷はないのに脳だけが潰されていると書いてある。
「脳が潰された?」
「犯人はまだ捕まっていません」
 この時の二人の頭には口にこそしなかったが同じ事を考えていた。
(もし、これをしたのが美智のお姉さんなら連れて行かれたことだけは納得がいく)
「お姉様の持ち物を貸していただけないでしょうか?きちんとお返ししますから」
 みそのはにっこりと微笑みながら言うと、美智はネックレスを渡した。
「では、お借りしますね」
 そう言ってみそのとベルは席を立つ。
「お姉ちゃんの事をよろしくお願いします」
 美智は丁寧に頭を下げて二人を見送った。


「どう思う?」
 桃井家を出て、二人は近くの茶店に入った。しばらくの沈黙が続いたがそれを崩したのはベルだった。
「そう、と言いますと?」
「あの子のお姉さんの事よ。両親の事件に関わってると思う?」
 ベルは珈琲を一口飲みながら話を続ける。
「そう、ですわね。何かしら関係があると思われます。……だけど…」
「だけど?」
 ベルが先を促すように言うと、みそのも紅茶を一口飲みながら答えた。
「あの美智様も関係がないとは言い難いと思います」
 ベルはワケが分からないと言った感じでみそのを見ている。
「海原様、ベル様。お待たせしてしまいましたか?」
 ベルが話そうとした時に、今回の調査のもう一人の協力者、榊船・亜真知が入ってきた。
「榊船様、ロイドゼネクションについて何か分かりましたか?」
 ベルは店員を捕まえ、亜真知の為に紅茶をもう一杯と追加注文をした。
「はい、ロイドゼネクションは世界中でもトップクラスの会社なのですが、その会社自体が大きなカルト教団だったんです」
 亜真知の説明によるとロイドゼネクションは罪のない女性を生贄にする事で大きくなった会社だそうだ。
「そうだったんだ。通りで不況なのにどんどん大きくなっていくわけね」
「ますます許せませんわ。わたくし、お姉様の居場所を追ってみます」
 そう言ってみそのは先程借りてきたネックレスに触れ、目を伏せる。そして、みそのの瞳が開かれる。
「お姉様は会社のビルにいらっしゃいます。どこの階にいるのかまでは分かりませんでした」
 残念そうに呟くみそのにベルが告げる。
「大体ああいう輩は上にいるものよ。馬鹿な奴ほど高い所に登りたがるしね」
 その言葉に亜真知も納得していた。
「じゃあ、行きましょうか」
 三人は喫茶店を出て、ロイドゼネクションを目指す。
「今回の目的はあくまで桃井様お姉様の救出のみですから、できれば荒事は起こしたくないんです」
 みそのの言葉に亜真知も頷く。
「そうですわね。最低限に抑えましょう」
「あたしが途中で内紛を起こすから、その時を見計らって脱出しましょ」
 とりあえずの計画は、雑魚に構わず上へと登る→途中でベルと離れ亜真知とみそので桃井美智の姉を捜索、この時離れたベルも使い魔で捜索をする→ベルが混乱を起こすように仕向けるのでそれを見計らって脱出、となった。
「楽じゃないけどやるしかないですわね」
亜真知が呟く。
「ま、あたし達だったら難しい仕事じゃないでしょ?」
 ベルが苦笑いをしながら呟くとみそのと亜真知は目を丸くする。
「さっ、行きましょ」
 今だ、目をぱちぱちさせる二人の背中を押しながらベルがロイドゼネクションに向かう。



「…大きなビルですわね」
 先程の喫茶店からタクシーに乗りやってきた。みそのがビルの前で足を止める。
「僅かですが、このネックレスと同じ気の流れを感じます。最上階ですわ」
 ベルの予想通り、桃井道の姉は最上階にいるようだ。
「じゃ、いこーか」
 肩を回しながらベルが言う。
「正面突破ですか?」
「しかないようですわね」
「さ、がんばろ」
 三人はビルの入り口に向かって歩き出す。自動ドアを抜けるとカルト教団とは思えぬ普通の会社の風景が目に入る。
「何か御用でしょうか?」
 受け付けの女性が丁寧に頭を下げながら言ってくる。
「桃井詩織様を返して頂きに参りました」
 亜真知がにっこりと微笑みながらサラリと答える。その言葉に女性もキョトンとしている。
「ねぇ、アレ見て」
 ベルが他の者に分からないようにヒソとみそのに話しかける。みそのはベルの指差した方向を見るとエレベーターがあった。
「あそこの札見て。最上階直通のエレベーターよ」
「と言う事は…」
 −あのエレベーターに乗れば自動的に最上階までたどり着けると言う事だ。
「あたしが何とかするから、あんたはあの子と最上階に行きな」
 みそのはトンと肩を押される。不思議とベルの心配は無かった。
「分かりました。では後ほどお会いしましょう。榊船様」
 みそのが亜麻知を呼び事情を話す。
「先に最上階に?」
「話し合っている時間はありませんわ」
 先程の受付嬢を見ると、みその達を不審者と判断したのかどこかに電話をしている。
「そろそろやばいんじゃない?」
「行きましょう!」
 亜真知の言葉をスタートに二人は走り、直通エレベーターを目指す。
「誰か!!」
 受付嬢が叫び、二人を止めるように言う。
「は〜い。黙ってね。じゃないと殺しちゃうわよ?」



「みその様!危ない!」
 亜真知の言葉にみそのは前を見ると物騒な物を持つ男の気配を感じた。
「不埒な輩がいますわね」
 亜真知はそう呟くと男に電撃をお見舞いする。
「榊船様…荒事は…」
 走りながらも心配そうにみそのが言う。
「大丈夫ですわ。これはお仕置きですから」
 どう違うのだろう…という事は置いておき、みそのは溜め息をつく。
「榊船様!早く」
 エレベーターの開閉スイッチを押し、みそのがいち早く乗り込む。そして閉のスイッチを押し扉を閉める。
「はぁ…どうしてお姉様は素直に連れて行かれたのでしょうね」
 亜真知がエレベーターの中で呟く。
「それは…多分…大事な者を守るためですわ」
 みそのは亜真知に先程ネックレスから読み取った事を話す。
「本当の魔女は…美智様?」
 みそのがあのネックレスからみたのは血に塗れた美智本人だと言う。
「美智様にそんな気配は…?」
「なかったですわ。純粋に姉を心配してましたから」
「ということは…力の作用でその時の記憶が…?」
「恐らく…何にしてもお姉様本人からお聞きした方が早いですわ」
 みそのが言うと同時に最上階に着いた。ガコンと重い扉が開くと、そこにはよく映画などで見る儀式の祭壇などがあった。
「お姉様の気配は隣の部屋からです」
 亜真知とみそのは隣の部屋に入る。するとそこには白い着物を着ている女性がいた。
「桃井詩織様ですね?桃井美智様からの依頼で貴方を助けに参りました。できれば…お話をお願いしたいのですが」
 みそのが淡々とした口調で言うと、その女性は二人をまっすぐ見ながら答えた。
「…貴方の察しの通り本当に力を持っているのは美智です。あの日些細な事から両親は喧嘩を始め、私に暴力を振るいました。その時…美智が…」
 詩織は泣きながら「悪いのは私なんです」と嗚咽混じりに言う。
「…海原様。どうやら脱出口を固められてしまいましたわ」
 亜真知が溜め息混じりに言う。後ろを見ると十人ほどの男達。手には銃やらナイフなどが握られている」
「やれやれ、ですわね」
「ベル様はまだでしょうか?」
 亜真知が呟いた途端、目の前に魔方陣が現れた。その魔方陣から出てきたのがベルだった。
「私を呼んだのはお前だな?」
 ベルは楽しそうに笑いながら数名の男を指差す。指差された男達は「違う!」などと叫び仲間達と仲間割れを始めた。
(内紛を起こすから…)
「さぁ、お前達出ておいで!」
 ベルは魔方陣からドブネズミの使い魔を呼び出す。ドブネズミ達が走る方向はみその達とは別の方向。
「榊船様!」
 みそのは詩織を連れ、亜真知と共にドブネズミについていく。
「ベル様!」
「分かってる」
 ベルは仲間割れを起こしている男達を放ってみその達の方に走る。

 それから四人はビルを脱出し、詩織を美智の元へと連れて行った。
 だが、ロイドゼネクションと美智の問題をこのままにしておけないという気持ちが三人の中にあったのは言うまでもない




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1388/海原・みその/女/13/深淵の巫女
2119/ベル・アッシュ/女/999/タダの行商人(自称)
1593/榊船・亜真知/999/超高位次元知的生命体・・・神さま!?
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■         ライター通信          ■
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海原・みその様、ベル・アッシュ様、榊船・亜真知様。
初めまして、瀬皇緋澄です。
今回は『魔女狩り』に発注をかけてくださりありがとうございます。
初の続き物にドキドキしながら書いてました。
この話は本当は皆様、書き上げたら二千文字くらいオーバーしていて
泣く泣く削った部分がありました。
少しでも面白いと思っていただけたら幸いです。

>海原・みその様
初めまして、最初海原様の設定を見たときはかなり私好みで意気揚々と
しながら書かせていただきました。
この話は次に続きますが、またお会いできればいいなぁと思ってます。
                  −瀬皇緋澄