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■そうだ、廃墟、行こう。
――それでも、あなたは、廃墟に行きたいですか?
投稿者:GOMI
題名:廃墟ツアーのお知らせ
このツアーは廃墟を巡る企画です。今回の舞台は東京にある病院の
廃墟です。
ところで、廃墟内で、霊体験というのはよくある話です。しかし
どのくらいが「ホンモノ」なのでしょうか?
今回のツアーでは、それを検証してみたいと思います。
夜な夜なすすり泣く女の声、気分が悪くなる、恐ろしい化け物の噂
などなど。これらはここで確認されている事象の一部です。
他にも、様々な事象が報告されているようです。
あなたがそれを見つけて、個別に調査しても構いません。
さあ、一緒に検証しましょう。ホンモノがいかに少ないかという
ことを。
参加希望の方は、この板に【検証したい事】を書いて、レスを
つけてください。
〜注意事項〜
*破壊行為は厳禁です*
*廃墟内は危険箇所が多数あります*
*廃墟内の物品は持ち帰らないこと*
*香水や黒い服は避けましょう*
――それでも、あなたは、廃墟に行きたいですか?
■1−B それぞれの思惑
「う〜……」
海原みあおは大きな銀の瞳を見開いて、パソコンの画面をじっとにらみつけていた。
廃墟とか心霊スポットというのは、行ってみたい。しかし。
(でも病院だし……)
病院。みあおの脳裏に再び嫌な記憶がよみがえる。あれは、中学生の頃。突然の拉致。
嫌がるみあお。しかし白衣の男――マッドサイエンティストは、有無を言わさず彼女を改
造した。みあおの記憶と体は作り変えられた。そのため、13歳という実年齢よりも、みあ
おは幼く見えた。
(けど廃墟だから……けど病院は……はうぅ)
みあおは悩んでいた。廃墟には行きたい。でも、病院は怖い。病院と聞くと、あの時の
記憶が蘇ってくるからだ。
(でもでも、恐怖は克服しないと進歩はな〜いっ!)
ぐっ、と拳を握り心の中で一人叫んでみる。病院は怖いけど、廃墟なら。
そう、まずは廃墟から。
思い立ったら、善は急げ、である。みあおは、どこからか大きなかばんを取り出してく
ると、その中に様々なものを詰め込み始めた。
懐中電灯、防塵眼鏡、軍手、着替え、消毒液にバンソーコー。なぜかお菓子とジュース
も詰め込まれる。更にデジタルカメラ、虫除けスプレー。これらには、みあおの青い霊羽
が付与されていた。
(きっと役に立つよね)
みあおは持ち物を再びチェックし、忘れ物がないか確認する。最後に、携帯電話のバッ
テリーを見る。緑のランプ。満タンだ。みあおはぎゅう、とポケットに携帯を押し込むと、
(よっし、れっつごう!)
ぱんぱんにふくらんだかばんを肩に掛け、ヘルメットをかぶった。
玄関で安全靴をはき、姉に行き先と帰りの時間を一言告げる。
「それじゃあ、お姉ちゃん、行ってくるね!」
そういって、みあおは元気よく飛び出して行った。
■2 メンバーと
「みあお頑張るよ!今日はね、みあおの病院克服ツアーなの!」
大きなかばんを肩に掛け、さらにヘルメット、防塵眼鏡、安全靴と完全装備の海原みあ
おは、車椅子に座っているセレスティ・カーニンガムに一生懸命話していた。セレスティ
は、にっこりと微笑み、ただただ、うなづく。彼は今回黒いタキシードに身を包んでいた。
「セレスティは何調査するの?」
みあおは車椅子の持ち手をつかみながら、尋ねる。
「私……ですか? 昼間に現象が起こるのか非常に興味がありますね……」
そういって、ふふふふふ、とひそかに微笑む。ぬけるような白い肌に、流れる銀髪。美
しいだけあって、その笑みはどこか恐ろしい。
と。ふわり。きつい香水のかおりが鼻をくすぐる。
「……なーんだ。みんな知り合いじゃん」
言ったのは、瀬川・蓮。手を頭の後ろで組み、木の上で様子を観察していたのだった。
蓮は、木の枝から軽々と飛び降りると、にっと笑う。
「や。自己紹介するまでもないけど。とりあえずよろしくね」
輝く金髪に、黒のダブルコートを着た少年。風が吹くたびに、きつい花の香りがあたり
に充満する。この原因はどうも蓮のようだ。自分でも気づいたのか、こんなことを話し出
す。
「あ、これ? ママがかけてくれたんだよ。おせっかいだよね、ボクはいいっていったん
だけどさ」
「……なるほどな」
その言葉に、御影・凉は苦笑する。
「注意事項、全然守ってないわね」
いつのまにか立っていた三つ編みの女性がやれやれ、といった感じで頭を振る。朝比
奈・舞。伊達眼鏡の奥の瞳は、その髪の色とあいまって美しい茶色に彩られている。しか
しその姿は仮の姿で、本当の名はイヴ・ソマリアという。
そんな舞の態度が気に食わなかったのか、蓮が反論する。
「ボクのこの服は、元々なの。そういったら、セレスティはどうなのさ」
ぷう、と頬を膨らませセレスティを指さす。確かにセレスティも黒い服を着ている。
しかもこの日のために着てきたという。確信犯だ。舞と蓮が騒いでいる中、セレスティは、
ふふふふふ、と怪しげに笑いながら、一言こうつぶやいた。
「ちょっとした、悪戯心ですよ」
その言葉に、二人は沈黙せざるを得なかった。
しばらくして、蓮は、ちらり、と凉のほうを見やり、突然隣にいた緋磨・翔を指さして、
ぶしつけに尋ねた。
「ところでさぁ、この人だーれ? ボク全然、知らないんだけど」
「あ、紹介が遅れたな。彼女は俺の同行人の緋磨・翔。皆とは初めましてになるのか
な?」
凉がフォローをする。翔は、「ま、そういうわけだ」と相変わらずクールな態度を崩さ
ない。
「さてと」
凉がぐるりと皆の顔を見、尋ねる。
「……これで全員か?」
「……GOMIさんが来てないわ」
舞(イヴ)が眉をひそめる。
「え?」
その言葉に凉は驚いた。
「……主催者が来ていないとは、どういうことでしょう」
セレスティも何かを思案するように、口元に手を当てつぶやく。
ふと、凉は空を見上げる。急にあたりが暗くなったのだ。いつのまにか、黒い雲が空一
面に充満し、太陽を隠してしまっていた。
生ぬるい風が、ふわり、と凉の頬をなでる。
と、その時、突然わおぉぉぉおおおん……という狼のような獣の叫び声が聞こえた。
「いやぁああああ〜〜〜!」
みあおは頭を抱え、その場に座り込む。そんなみあおに、セレスティが優しく声をかけ
る。
何かが、おかしい。皆の心の中には、そんな思いが充満していた。
そこで凉は、自分が疑問に思っていたことを、皆に話し始めた。
あの書き込みの内容が、ひどく本物の霊の存在を否定しているということ。
そして、それは、実は霊の存在を認めたくない、そういうことなのだとしたら。
「……でも、誰がなんのために? なんで不特定多数の人々に、ツアーとか言って、わざ
わざ検証を依頼するの?」
舞(イヴ)が尋ねる。
「それは……」
凉が言葉に詰まる。と、翔が助け舟を出した。
「とりあえず、やってみるしかないさ。そうだろ?」
そういって、翔は改めて病院を見上げた。鉄筋コンクリート製の白い建物。地上五階建
てのそれは、怪しいオーラを放っていた。
「そういえばさ」
一人平気な顔をした蓮が、にっと不敵な笑みをうかべる。
「ここで、看護婦が一人殺されてるって噂、知ってる?」
「……なんだって?」
「まあ、それが関係あるのかどうかはわかんないけど。じゃ、それぞれぱっぱと始めちゃ
おうよ!」
そして蓮はそのまま、病院の入り口へ駆けていった。
■3−B 検証開始
「うぇぇぇええぇぇ……やっぱこわいよぉおおお〜……」
セレスティの車椅子を押しながら、みあおはがたがたと震えた。
「大丈夫ですか? みあおちゃん」
セレスティは優しくみあおに話しかける。彼は、みあおから受け取った懐中電灯で、廊
下を照らしていた。
「うん……。みんながいるから、何とかぁ〜あぁぁ〜でもぉおお〜……」
「とりあえず、検証しましょ?」
イヴがにっこりと微笑む。知り合いだということで、変装を解いたのだった。
「いぶぅうう〜〜!! みあお、ものすご〜〜くこわかったんだよぉお!!?」
みあおは半分涙目で、イヴに詰め寄った。
最初に聞こえた狼の叫び声。実は、あれはイヴが仕掛けた演出だったのだ。
事前にイヴが分身を病院内に送り込み、ペットのケルベロス『ケン』に遠吠えさせてい
たのだった。
「そうですね。ちょっとあれは悪趣味ですよ」
セレスティが苦笑する。
「だって、こんなメンバーだとは思わなかったわよ」
イヴは腕を組み、困った顔をした。
あれから、皆それぞれここで起こるとされる事象の検証をするため、グループに分かれ
て行動することになったのだ。みあおは、セレスティ、イヴと一緒に検証を開始していた。
「すすりなく女性の声というのは、さっき確認した穴からもれる音だということがわかり
ましたね」
セレスティが調査書を確認する。
「夜な夜な……となっていましたが、昼間でも起こる現象でしたね、ふむ……」
「あと、どんなのがあったかしら?」
イヴが尋ねる。
「あうう……確か……化け物とか、気分が悪くなるとか……はうう」
みあおはぶんぶんと頭を振る。
「気分が悪くなる……そういう現象が確認されているのは、手術室だと聞きますね」
「行ってみる?」
イヴが意味ありげに微笑む。
「えええええ!?」
みあおはセレスティにしがみついた。『病院』がなによりも怖いみあおにとっては、そ
の場所はかなりいきたくなかった。
しかし。
「み〜あ〜おちゃ〜ん?? 病院克服ツアーなんでしょ? なら行かなきゃ!」
イヴになかば強引に説得されるみあお。
その時突然、ぴろりぴろり、とみあおの携帯が鳴り出す。取ると、それは凉からの連絡
だった。GOMIと出会ったので、手術室に来て欲しいと。
「じゃ、やっぱり行かなくちゃね〜♪」
イヴがにっこりと微笑む。
「はぅぅ……」
みあおは涙目である。と、その時、がしゃん、と何かが割れる音がした。
「なんですか? 今の音は」
セレスティが尋ねる。甘い匂いがどこからか漂ってくる。
「……こ、香水の匂い……?」
みあおは、いちはやく気づいた。そして、はっという表情になる。
「い、イヴぅ、分身さんって、今どうなってるの!?」
「え……。ごめん、忘れてたかもしんない」
イヴはさらりといった。
「勝手に動いてるの!?」
「そ、そうだけど……あ、そうそう、確か香水の瓶持たせておいたのよね、なんか面白い
こと起こるかもしれないからって」
「……禁止事項、思いっきり破っているじゃないですか」
セレスティが遠い目をする。
「なによ!? せっかく来たのに、現象が扉のきぃきぃ音とか、風の音とか、浮浪者が寝
てるだけとかそんなんぢゃつまんないでしょ!!」
イヴが大声を張り上げる。
「検証なんだから、面白さとか追及しなくてもいいよぉお〜〜!」
みあおが、突っ込む。
「演出よ!! 演出!! ていうかいろいろわかるかもしれないでしょ!」
イヴはあくまでも強気である。
その時、みぃいいいんという謎の音が三人の背後に忍び寄っていた。
「な、何この音……」
三人はゆっくりと振り返る。
「は、ははははハチだぁああああああ!!!!」
そこには、巨大なスズメバチの大群が三人に向かってきていたのだった!
■4 これが化け物の正体?
「うへぁあああああ!??」
「いきゃぁあああああああああああ!!?」
それぞれ叫び声をあげ、廊下を爆走する。みあおはセレスティの車椅子をありえない速
さで押し、イヴは両手両足をこれでもか、とあげ必死に走る。
「な、なななんでハチがでるのよぉおう!!?」
「それは、たぶんハチが巣を作っていたからでしょうね」
一人静かなセレスティが、冷静に分析する。
「いや、そうだけど聞きたいのはそうじゃなくていやぁあああ!!?」
イヴが大声を上げる。ハチの一匹が、セレスティの胸元に止まりだしたのだ。他にも、
たくさんのハチがセレスティに向かってくる!
「おや、私が好きなんですかね」
「いやちょっともっと慌てなさいよ!!」
イヴが突っ込む。
「いやああああ、セレスティぃいいい〜〜!!」
みあおがバックから何かを取り出す。そして一気にそれをセレスティに向かって噴射す
る!
すると、あんなにたかっていたスズメバチが、方向を変えいずこかへ去っていく。
「なっ……?!」
「おお、ありがとう、みあおちゃん」
「うわーん、セレスティ〜!」
ひし、と抱き合うみあおとセレスティ。みあおの手には、霊羽が付与された虫よけスプ
レーが握られていた。
「それに」
セレスティがつぶやく。
「どうやら目的地にもついたようですよ」
ぴ、っとセレスティが指さしたその先には、『手術室』と書かれたプレートがあった。
■5 服と看護婦と
まだ凉たちは来ていないようだった。部屋の中は、意外にもきれいであった。手術のと
きに使う照明がそっくりそのまま残されている。診察台もちゃんとしていて、積もったほ
こりを取り除けばまだ使えそうだ。
みあおはそれを目の前にして、ぶるぶる震えている。やはり、トラウマが蘇るのだろう。
と、イヴが手を振り、何か叫んでいる。
「ちょっと、これなに?」
診察台の上に不自然に脱ぎ散らかされたナース服。それは廃墟においてどこか淫靡さを
感じさせた。セレスティがそれにふれ、思念を読み取る。
そしてしばらくしてセレスティがつぶやいた。
「なるほど……。わかりましたよ」
「な、なにがわかったの?」
みあおがたずねる。
「蓮君の言っていた、殺された看護婦についてです。あれは……事実ですよ」
「ほんと?」
イヴは驚いた表情だ。
「ええ、そしてこの廃墟ツアーについても……」
その時、手術室のドアが大きく開いた。
■6 GOMI登場・そして
「どうも。私がGOMIです」
白のシャツに黒のズボン、といった軽装の男はそう名乗るとにっこりとほほえんだ。
あごに手をやり、ぽりぽりと掻く。大きなほくろが特徴的だった。
皆は手術室に集まっていた。凉達から連絡を受けたのだ。GOMIとは1Fを調査している
ときに出会ったという。
「すみません、ちょっと遅れてしまって。でもみなさん調査してくださったようですね。
ありがたいことです」
しかし、そんな言葉とはうらはらに、皆からの話を聞いたGOMIは、それをじつにさわや
かに笑い飛ばした。
「でしょう? ほとんどの霊現象なんて、そんなものですよ」
凉の人影は、鏡の見間違い、みあお達の女性の叫び声は風の音、ということだった。
さらに、化け物については、
「黒い服に香水、だめだといったでしょう? ハチに襲われますから。黒い服は、彼らの
好む色、香水は彼らの闘争本能を刺激するものなんですからね」
「もう……おそわれました……」
イヴがげんなりした表情で答える。
「まあ、私もハチが巣を作っているということを、知らせなかったのが悪かったですね」
GOMIはぽりぽりと頭をかく。
「……さて、検証では霊現象らしきことはなかったと。そういうことですね」
GOMIがにやり、と微笑む。
「まぁ、そうでしょうか……」
凉がつぶやく。
と、それに蓮が反論する。
「……ううん。ボク、会ったよ?」
「なんだと?」
GOMIの表情が、変わる。
「ストレッチャーを押した、血まみれの看護婦の幽霊。でたんだよね」
蓮はにっと不敵な笑みを浮かべる。
「それにさ、あんたが犯人だったんだね。看護婦殺し。ボク、聞いたんだよ、彼女から」
さらにセレスティがつぶやく。
「……このナース服からも、読み取ることができましたよ」
■7 真実は
「看護婦を殺している?」
翔がつぶやく。
「GOMIさん、あなたは……」
凉はGOMIにたずねる。
「何者なんですか? なんで僕たちを集めてこんなことを!?」
「そいつは、精神異常者さ」
蓮がつぶやく。
「そして、この病院の院長さん」
蓮が一枚のカルテを取り出す。その写真は、まさしく目の前のGOMIそのものだった。
「あと、指名手配の殺人犯だっけ」
蓮は、自分が来るときに見た指名手配書について語った。
それは、あごに大きなほくろのある男。殺人を犯したが、精神鑑定のため身柄を拘束さ
れていた。しかし、隙を突いて逃げ出し、今も行方がわからないという。目の前のGOMIの
あごには、大きなほくろがあった。
「病院が廃墟になったのは、こいつの医療ミス。それがすべての始まりさ。
自分の医療ミスで、こいつは患者を死なせてる。だけど、それをもみ消したんだ。見て
いた看護婦に口止めしたんだけどね、その看護婦は事実を公表すべきといった」
セレスティが続く。
「看護婦さんは、あなたを愛していました。だからすべてを話すべきだとそういったんで
す。けれど、あなたは彼女に乱暴したばかりか、メスで胸を刺し殺してしまった」
蓮がうなずく。
「で、あんたは院長である権力で、なんとか看護婦の死体を処理した。さらにその後、な
にくわぬ顔で、手術をし続けたんだ。そのときには、もう精神おかしくなってたんでし
ょ? 他の医者が、あんたをこっそり診察して書いてあったよ。このカルテに」
ひらひらと蓮はカルテを振る。
「けど、おかしい上に、あんたのその腕じゃ、また同じことが起こる。そして医療ミスが
再び起こったのさ。
隠していても、口コミってのは怖いよね。一気に噂が広がったんだ。あの病院は、やば
いって。それで、評判はがた落ちさ」
セレスティが、つぶやいた。
「だから、あなたの病院は廃墟になったんです。あなたが捕まってから。それなのに」
「そう、それなのに。なんで、また病院に戻ってきた?」
蓮がうなるようにたずねた。すると、GOMIは、ふっふっふ、と狂った笑い声をあげなが
ら叫んだ。
「何を言っているんだ? いいか、俺は院長だ。この病院の院長なんだよ! ここは俺の
病院だ。俺は、再建させるために戻ってきた。けどな、霊がでるとかそんな噂が飛び交っ
て、誰も近づこうとしない! 霊現象が起こるから、俺の病院がつぶれたんだ!」
「違うわ、病院がつぶれたのは、自分の腕のせいじゃないの。霊現象のせいなんかじゃな
い」
イヴがぴしゃりと言い放つ。しかし、GOMIは聞いていない。
「うるさい! いいか、ホンモノなんていない、ああ、俺の病院に限っているはずがな
い! だからネットで検証を頼んだのさ。
第三者から見て、霊がいないって証明されれば、再び俺の病院には活気が戻るんだ!」
「……狂ってる」
みあおは、がたがたと震えた。
「本物を認めたくない、ってのはそういうわけだったのか」
凉がぎりっと下唇をかむ。
GOMIは邪悪な笑みを浮かべる。
「そうさ。バカなやつらだ」
「……バカはお前だ」
その時、GOMIが突然弧を描いて吹っ飛んだ。翔の拳が炸裂したのだ。
「ホンモノの恐怖を、教えてあげましょうか?」
イヴの体が、光に包まれる。ごうっと背後に青い炎が立ち上ったかと思うと、後ろに巨
大な時空の穴があき、魔界が召喚された。
「ひ、ひぃいい!!」
その瞬間、GOMIは白目をむき、泡を吹いてその場にくずおれた。
そして。
からからからからから。
どこからか、聞こえる車輪の音。
突然、手術室のドアが、開く。そこにはぼうっとたたずむ女性の姿。白いナース服は、
血にまみれ、ストレッチャーを押す手は白い骨。腰まである長い黒髪は、前にたらしてい
るので表情はわからない。
そして、死の看護婦はGOMIをストレッチャーに乗せると、一言こうつぶやいた。
「入院の……準備が……できました」
うぎゃあぁああああ、と悲痛な叫び声のみがあたりに響きわたり、すべては闇に包まれ
た。
■8−B エピローグ
みあおは、病院を眺めていた。
廃墟探索で、様々なものに出会った。狼の声、ハチ、狂った人間、幽霊……。
(でも)
そんなものよりなによりも。
(やっぱり、病院……)
病院克服ツアー。そんな動機から、参加したこのツアーだったが、やはりまだ病院は苦
手のようだ。
(でもでも、ちょっとは強く、なれたかなぁ?)
みあおは空を見上げた。空には満天の星がまたたいていた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【1415/海原・みあお/女/13歳/小学生】
【1831/御影・凉/男/19歳/大学生兼探偵助手】
【1883/セレスティ・カーニンガム/男/785歳/財閥総帥・占い師・水霊使い】
【2124/緋磨・翔/女/24歳/探偵所所長】
【1790/瀬川・蓮/男/13歳/ストリートキッド(デビルサモナー)】
【1548/イヴ・ソマリア/女/502歳/アイドル兼異世界調査員】
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■ ライター通信 ■
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どうもはじめまして。依頼のご参加どうもありがとうございます。雅 香月と申します。
以降おみしりおきを。
各タイトルの後ろの数字は、時間の流れを、英字が同時間帯別場面を意味しております。
人によっては、この英字が違っている場合がありますが、それは個別文章だということで
す。また小文字が入っているものは、同じ展開で、ちょっとアレンジが加えてある場合を
指します。
この文章は(オープニングを除き)全18場面で構成されています。大きくわけた展開
は三つ。@凉&翔様、Aみあお、セレスティ、イヴ様、B蓮様という感じです。もし機会
がありましたら、他の参加者の方の文章も目を通していただけるとより深く内容がわかる
かと思います。また今回の参加者一覧は、受注順に掲載いたしました。
@初めての東京怪談。ということで、気合をいれすぎて、皆様を、大変お待たせさせる
結果になってしまいました。(汗)
無駄に描写も多いので、かなり長くなっております。申し訳ありません。
ただ、その分、面白いものを!!と努力したのですが、さてさて、うまくいっているで
しょうか?
雅のポリシーは、キャラクターメイン、プレイングを最大限に生かす、というものなの
で、皆様のOMCはできる限り拝見させていただいております。そこから、イメージをふく
らませて文章を書いています。けれども、雅アレンジで暴走させてしまうこともしばしば。
(セレスティ様が今回そうでした・(汗))をぃ、キャラ全然違うぢゃねえか、とお思いに
なったら、ばんばん言ってくださいませ。
雅は、ギャグが大好きです!こんなノリでよければ、ぜひまたよろしくお願いします。
もし感想、ストーリーのツッコミ、雅への文句など、ありましたらテラコンのほうから、
お聞かせ願いたいと思います。(感想は……頂けると嬉しいですv)
それでは、今回はどうもありがとうございました。また機会がありましたら、いつかど
こかでお会いしましょう。
みあお様>過去に様々な思いを持っているようですね。病院克服ツアーということでした
が、今回はさてどうでしょうか? なんだか、病院以外のことでいろいろ怖い思いをさせ
てしまったような気がしますが……。(苦笑)
みあお様は、準備万端でしたので、いろいろな場面で活躍していただきました。虫よけス
プレーは「さすが!」と思わず膝を叩いてしまいました。それでは今回はありがとうござ
いました。
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