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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


PHANTOM OF THE HALLOWEEN 〜Dimension Door To Berlin〜

ドイツ、ベルリン。
今、ハロウィンで公園は賑わっていた。結城二三矢もカボチャの王様の仮装をし、日本学校で仲良くなった友人と辺りを見物する。
万聖節(11 月 1 日)の前夜祭。秋の収穫を祝い悪霊を追い出す祭りだ。信心深い者、単に季節の祭りとして楽しむ者も様々だ。
二三矢はあまり乗り気無しでため息をついていた。
なにか悩み事が有るのか、ただ恋人に会えないのか…其れは知らない。

一方、日本。
1ヶ月をかけて何かの衣装を仕上げた月見里千里。丁度ベルリンではハロウィンだ。
「くす♪」
彼女は、なにやら良からぬ事を考えているらしい。衣装は黒く、広げてみないと分からない。
近頃、二三矢との連絡が出来ない事に不安を感じながらも、この日を待っていたのだ。
パスポートも念のため用意している。
そして、ベルリンまで直に繋がる「ドア」を「作った」。
「二三矢♪待っててね〜♪」
衣装に身を包み、ドアを開ける。
目の前に…恋人がいるのだ。

二三矢にすればそれはビックリし、固まるしかなかった。
「な、なんだ?!」
いきなり何もないところにドアができ、其れが開いて…オペラ座の怪人が立っているのだから。
その後ろに何となく見覚えがあるのだが…其処まで頭が回らなかった。
怪人は二三矢の手を引っ張り、走った。
「え?わぁ!」
「結城!」
「ありゃなんだ?」
友人も周りの人もこの光景に呆然とするばかりだ。
「たぶん、何かの悪戯だな。かなり手が込んでいる」
と、変な納得をし、その場を去った。

二三矢は怪人の手のぬくもりからに誰か分かった。千里だ。
「千里!ストップストップ!」
いきなり名前を言われたので…怪人はズッコケタ。仮面がなければ可愛い顔が台無しになるほどのダイビング。
「うわぁ」
そのまま、引きずられるように二三矢も転ける。
重なり合う、怪人と二三矢。
仮面を外した千里は涙を見せながら、
「逢いたかったよ〜二三矢〜」
と、抱きついて泣く。
「俺もだよ…ちー」
涙を拭ってやる二三矢。
2人は再会の熱いキスを交わした。
時間が止まったかのように、キスは続いた。
一息ついてから、
「ちー見て回る?」
「うん!」
千里は恋人の腕に自分の腕を回し、離れない。
大好きな人のぬくもりをずっと感じていたいのだ。

公園では、様々な催し物がなされている。
フリーマーケットやジャグリングだ。近所つきあいで仲が良い事を分かるように仮装している人々が其れを見て楽しんでいる。
また、特別な祭日でも、ドイツはゲーム王国で有名だ。
この祭日を利用しRole-playing Gameをする者が居てもおかしくはないだろう。騎士や魔法使いなどに扮装し、ライブRPGとはなかなか乙かもしれない。問題はどうやって判定のダイスを振るかだが…。
「コスプレパーティ♪」
そういった物を見ている千里の感覚はそんなものだ。
しかし、決して二三矢から離れる事はしなかった。知らない土地で頼れるのは二三矢だけなのだ。千里の胸がたまに腕に当たる事でドキドキする二三矢。
「あのね、二三矢…」
「なに?」
「近頃連絡取れないじゃない…どうしたの…?」
「ん…それは…」
そう、千里は聞きたかった事があった。今まで2人は連絡を取り合っていたのだが、このところ、二三矢と甘い会話が出来ない事に不安になっていたのだ。
「あ、そ、それは…一寸、忙しかったんだ。ごめんね」
「どうして忙しかったの?詳しい理由を教えて〜!」
頬を膨らます千里。
「そ、それは…」
「むー」
二三矢はクスリと笑って、千里の頬を引っ張る。
「心配性だな、ちーは」
「いたいよー」
ジタバタする年上の恋人。これはどっちが年上か分からない。
まだ、納得がいかないような顔をする千里に二三矢はため息をつき、彼女に軽くキスをする。
「ごめんね」
と、二三矢は言った。
「…許してあげる」
しかし、まだ子供(子供だが)のように拗ねている千里。
時は深夜の1時を指していた。


祭りでも、いきなりのトラブルは付き物。いきなりの雨だ。
幸い、帰りの途中だったので2人は急いで二三矢の家にたどり着く。
父親は、仕事のためにほとんど家を空けている。
急いでタオルをとって、千里の頭を優しく拭いてあげる。
土砂降りだったので、2人ともずぶぬれである。
「乾燥機動いていたかなぁ…着替え、着替え…風邪ひいたら元も子もないし…」
と、忙しなく家をうろうろする二三矢。
千里は、彼の背中に向かって抱きついてきた。
「ちー?」
「このままで良い」
「それだと風邪ひくだろ!」
「二三矢暖かいもん、大丈夫」
その言葉が何を意味するのか…二三矢にはわかった。
「良いのか?」
「うん、一緒にいたい」
涙目で訴える千里。
二三矢は彼女の愛おしさを感じ、彼女の言葉に従い…キスをかわした…。
そして、2人は寝室までむかって行った…。

朝、二三矢は起きた。
隣には、千里がすやすやと眠っている。
幸せいっぱいの寝顔。
二三矢は千里の髪を撫でてから、背伸びして服を着る。
そして、朝食の支度をし始めたときに千里が起きた。
「おはよ、ちー」
笑顔の二三矢。
「うん、おはよー」
まるで当たり前のように挨拶する千里。
食事を済ませた後、千里は日本時間を計算してはっと我に返る。
「あ、そろそろあっちに帰らなきゃ…」
「どうやって?」
「〈ドア〉を使って、だよ♪」
「あ、あれね…」
二三矢は苦笑する。

食事を済ませ、一緒に後かたづけを済ませたあと、千里はドアを作り、恋人にキスをする。
「またね…二三矢」
と、言ってドアをくぐった。
「ああ、ちーも元気で」
「うん」
未だ側にいたかったが、時間が時間…。惜しむかのように千里は〈ドア〉を閉めた。
そして、そのドアは忽然と消えた。

千里は何か不安を感じていた。それは何か分からなかった…。