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死神の糸
０・・
娘は、ストレートな黒髪が印象的な日本人形のようにただじっと座っている。
無表情。このくらいの子供の表情ではない。
「この子はもうすぐ七五三のご祈祷をします。ですが、その前にきっと死神が訪れるでしょう。」
母親はそういった。
七五三とは、女の子は３歳７歳、男の子は３歳５歳まで無事生きられたお祝いとして神社などにお参りする行事である。
まぁ、医療の発達で子供たちの生存率も非常に高いものになったので今はそれも風化してしまったが。
「・・・死神ですか。それは病院に行ったほうがいいのでは？」
草間は眉間にしわを寄せた。迫り来る死神・・・それを病気だと思ったからだ。
だが。依頼主である母親はこう言った。
「家は私が結界を張りました。本日もこの子にはお守りを渡してあります。ですが、ご祈祷の日に私の力は使えません。そこで、草間さんのお力をお貸しいただきたいのです。ご祈祷の日だけ・・・ご祈祷の日だけでいいのです！」
草間は再度娘を見た。
７歳とは思えない無表情を顔に貼り付けた娘を・・・。
１・・
条件が揃いつつある。かすかな死の匂い・・。
死神がかかわっているな・・・・おもしろい・・・そこにある願いは？
２・・
視界が徐々に見え始める。
無表情の少女、怯える母親。
そしてそれを守るように３人の男女。
「『海原（うなばら）みその』と申します。」黒髪・色白の少女はそう言った。
「『御影涼（みかげりょう）』です。」茶髪の背の高い青年は言った。
「『氷女杜冬華 （ひめもりとうか）』です。よろしくお願いしますね。」銀髪の青い瞳の女性はそう言った。
あたりは既に夕闇に包まれようとしている。
小さな神社に漂う死神の匂い。ここに死神が居る。
「なぜこんな遅い時間に？」
氷女杜がそう訊いた。
「なるべく人目につかない時間にと思いまして。」
母親はそういうと娘を見た。
「ここに、わたくしが結界を張りましょう。」海原が言った。
「私もさっきやってみたのだけどできなかったの・・」氷女杜の言葉を海原が遮った。
「ここは強い霊によって庇護を受けているようです。ですが、その『流れ』を見ることが出来るわたくしなら結界を張ることも出来ましょう。」
にこりともせず海原は歩き出した。と、足を止めてこういった。
「申し訳ありませんが、結界の一部に穴作らせて戴きます。」
「何故そんなことを？」困惑の氷女杜は訊いた。
「わたくし、死神様にお会いしたいのです」にこりと海原が笑った。
「大丈夫。俺が守りますから」とポンと背中を叩いた御影に静かに笑った。
海原は空を見上げていた。死神の気配か・・私の気配か。
海原はそれを感じていたようだった。
３・・
「そういえば、何故娘さんは死神に狙われていると分かったんです？」
本殿に移動し、祈祷準備をしていた母親に御影が聞いた。
母親は悩んだようだが、やがて決意したように語り始めた。
死神の気配が私の周りを漂い始める。
丁度、外の結界を張り終えた海原がその話に興味を持ったようで静かに「お話くださいませ」と促した。
「・・この子は、死神の糸に繋がれております。その死神の糸をつけたのは・・この私です。」母親はうつむいた。
「そ、それはどういうことなのでしょう？」氷女杜が困惑したように言った。
「・・３歳の時、この子に死神の糸をつけました。ですが、私にはどうしてもこの子を殺すことができなかった・・」
さらにうつむき、母親は搾り出すように喋った。
「この子は私の実の子ではありません。私は・・この子を殺すために使わされた死神です。」
「死神！？」３人は驚きの声を上げた。
「はい。そして今日は・・・」母親が俯けていた顔を上げた。
死神の気配が私の横をすり抜け、母親に入っていく。
『この娘を殺すことが出来る最後のチャンスの日だ！！』
母親の体に入り込んだ死神は、空中から大きな鎌を掴みあげる。
「まぁ。なんて劇的なのでしょう。」海原の声が聞こえた。
氷女杜は少女の前に立ち、『糸』を断ち切れないものかと悪戦苦闘する。
「俺が時間を作ります！氷女杜さんは彼女を！」
霊刀を構えた御影は氷女杜に言った。
死の匂いが一層濃くなる。絶望の音がする。
時が・・近い。
隙はたった一瞬あればよかった。
死神は御影を跳ね飛ばし、跳躍。少女に鎌を振り下ろした。
鮮血が跳ね返る。血の絶望。
・・・・条件が揃ったか・・・・これは世界に対する『落胆』か・・・・。
私は少女に問う。
「条件が揃いました。私の主よ。貴方の願いを叶えましょう。」
「あなた・・誰？」少女はか細く訊いた。
「私の名はキリート・サーティーン。私は裏切らない、嘘をつかない・・さぁ、願いをおっしゃってください・・。」
少女は迷うことなく、こうはっきりと言った。
「お・・かあさん・・返して・・・あたしのお母さん・・・」
４・・
「貴方の願いを叶えましょう・・」
少女は愛を求めていた。
だがそれゆえに母に殺されると分かった瞬間、それが絶望に変わった・・。
おもしろい。母の手にかかって死のうというその時でさえ、少女は母の愛を求めた。
人間とはかくも儚く、かくも美しい。
私は死神を母親から引き剥がし、消滅させた。
これが・・少女の望み。
５・・
少女は氷女杜により一命を取り留めた。
海原により具現化された「死神の糸」は御影により断ち切られた。
少女と母親に死神が舞い降りるのは遠い時の流れの先だろう。
だが、私には関係ない。
私はただ、次の時が来るのを待つのみ・・。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【2053 ／ 氷女杜冬華 ／ 女 ／ 24 ／ フルーツパーラー店主】
【1986 ／ キリート・サーティーン ／ 男 ／ 800 ／ 吸血鬼】
【1388 ／ 海原みその ／ 女 ／ 13 ／ 深淵の巫女】
【1831 ／ 御影涼 ／ 男 ／ 19 ／ 大学生兼探偵助手】
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■ ライター通信 ■
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キリート・サーティーン様
初めまして、とーいです。
この度は『死神の糸』へのご参加ありがとうございました。
皆様のキャラを出すために今回は一人称を採用しました。
条件が揃うといずこともなく現れる神秘の吸血鬼・・。上手く表現できているといいのですが。
また、他の方への先入観などを入れぬために現状表現などをなるべく少なくさせていただきました。
それでは、またお会いできる日を夢見つつ・・。
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