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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


魔女狩り―2

オープニング



話は一人の少女の投稿葉書から始まった。
姉を誘拐された桃井美智という少女の依頼を受け、麗香は調査員を派遣し、見事に姉を連れ戻した。
だが、このままでは同じ事の繰り返しになるため、麗香は再び調査員を派遣するように三下に頼んだ。
それに…美智という少女の事も気になっていたのだ。
「…もし、この事件を起こしたのが本当に美智さんなのかしら」
麗香が見ているのは美智の両親の事件の記事。
「…。まぁ、いいわ。ロイドゼネクションもほうっておけないし…」
「編集長、調査を受けてくれる人が見つかりました」
そう言って、三下は麗香に調査員の書類を渡した。


視点⇒海原・みその


−本当の魔女は美智だった。
 その事実に三人は驚きを隠せなかった。亜真知はともかく本人に会ったみその、ベルの驚きは大きかった。
「そんな気配は感じなかったけど…」
「わたくしもですわ」
 詩織から美智が魔女だと言う事を聞いて、みそのとベルが呟く。
「…美智様がなぜご無事だったのでしょう?それに詩織様がなぜ連れて行かれたのか…」
 亜真知の言葉に二人も頷く。詩織が連れていかれた時に美智も一緒にいたはずなのに、なぜ詩織だけが連れて行かれたのか…それは三人の頭に少なからずあったことだ。
「とにかく詩織様にお会いするのが一番ですわ」
 確かに、と頷き三人は桃井家に向かう。


「やはり…来られたのですね…」
 桃井家に行くと詩織が出迎え、表情を曇らせながら呟いた。
「美智様は…?」
「上の階で眠っています。中へどうぞ」
 詩織が三人を招き、リビングに案内する。
「美智様が無事で貴方が連れて行かれた理由がどうしても分からないのです」
 亜真知は出されたお茶を飲みながら言う。
「わたくしもです。貴方からは特別な気配はあまり感じられません」
「どっちかって言うと美智って子の方が微力ながら気配は感じるけど」
 ベル、みそのもそれぞれの意見を述べると詩織は小さな溜め息をついて話し出した。
「魔女と言うのは遺伝だと言う事をご存知ですか?」
「えぇ…ご家族に魔女の方がいられたのですか?」
 みそのが問うと詩織は小さく頷いた。
「祖母が魔女だったと聞いております。母も微力でしたが力を持っていました」
「じゃあ、あんたも?」
 ベルが言うと、目の前のカップがフワリと浮いた。
「私の力はこの程度です。美智はあの時は自分の力に気がついていなかったのでロイドの方にも分からなかったのでしょう。ですが…」
−両親を殺した、というのは事実…。
 押し殺すような声で詩織は言った。
「…美智がその事実を知ってしまったら…」
「なぜ、そのような事になってしまったのですか?もしよろしければ美智様を交えてお話をしたいのですが…」
 みそのが言うと詩織は肩をビクリと震わせながら首を横に振った。
「辛いのは分かるけどさ。いずれは分かる事だよ?」
 ベルが珈琲を飲みながら言う。詩織は膝の上に置いていた手をぎゅうっと握り締める。
「…おねえちゃん…」
 四人がハッ
としてドアの方を見ると美智が立っていた。
「美智!今の話…」
「危ない!!」
 ベルが叫ぶと同時に詩織を突き飛ばす。詩織を庇ったベルの頬が少し切れた。
「…今の話を聞いて完全に力に目覚めたんですわ…」
 みそのが倒れた詩織を起こしながら美智を見る。
「美智様」
「私に触るな!私はおねえちゃんを守ってあげたのに…」
 美智は怒りを交えた声で呟いた。
「榊船様、結界を?」
 みそのは空間の違いに分かったのだろう。この中で結界を貼れる人物を見る。
「はい、念のためですが…」
 結界を張らねば被害が広がるかもしれないという亜真知の考えだった。
「お父さんとお母さんは離婚して私とお姉ちゃんを離れ離れにしようとしてたの。だから離れなくてすむようにしてあげたのに…」
 亜真知はその時の再現映像を映し出した。
(お父さんとお母さん、離婚しちゃうの?)
(そうよ、美智はお母さんと一緒に行こうね)
(お姉ちゃんは?)
(お姉ちゃんはお父さんと一緒に行くのよ)
(嫌だよ!みんなでいようよ!離れちゃうの嫌だよ!)
(ワガママ言わないの!)
(お母さん、道のはワガママじゃなくて…)
(詩織は黙ってなさい!)
 −パシンッ
(お姉ちゃん!……お父さんもお母さんも大きらい!)
 そこで再現は終わった。
「貴方をこのままにしておくわけにはいきませんわ」
 みそのが呟く。今の道は善悪の区別がついていない、このまま外に出れば出会う人々を傷つけるだろう。
「私だって誰かを傷つけたいわけじゃない!望んだのは…みんなで暮らせる平穏だったのに」
 美智は泣きながら言う。感情が不安定になっているのか力が暴走を始めた。
「ちょっとヤバいんじゃない?この状況って…」
 ベルが素早く美智の背後に回り、首の辺りをトンと軽く叩く。すると、美智は気を失った。
「み、美智…」
 美智の力は三人の予想以上だった。このままでは亜真知の結界が破られるのも時間の問題だったのでベルの判断は正しかった。
「魔女ついでに、美智と私とで契約を結ぼうか。対価は魂じゃなくてその異能。こちらが与えるのは静穏。他者を殺してまで互いを護る事は出来なくなるけれど。一応襲い来る愚かな輩は、消えてなくなる予定…だから良いんじゃない?」
 ベルが呟く。そしてベルの言う『愚かな輩』が誰を指すのかもみそのと亜真知には分かっていた。
「ロイドゼネクション…ですね…」
 亜真知が立ち上がりベルに言うとベルは無言で頷いた。
「ねぇ…あたし達はロイドを潰してくるわ。あんたはもう一個の問題を片付けてくれる?」
 ベルがみそのに言うとみそのは何を指すのか分かったのか、静かに頷いた。
「じゃあ、行ってまいります」
 亜真知がペコリと頭を下げて、ベルと共に出て行く。

「あの…もう一つの問題とは…?」
 詩織が美智を抱きかかえながら不安げに聞いてくる。みそのは詩織のほうに振り返って「あなたの事ですわ…」と答えた。
「貴方と同じ気配をロイドゼネクションで二つ感じました。それに今の貴方は生きた人間の気配ではありません」
みそのがぴしゃりと言うと詩織は「やはりバレていたんですね…」と小さく呟いた。
「察しの通りコレは私の本体ではありません。思念体…とでも申しましょうか」
 詩織が言うには、あのまま逃げてはすぐにバレてしまい、美智の事も知られてしまうと考えた詩織はとっさに思念体を作り、みその達に着いていかせたというのだ。
「あなた達なら分かって、会社を潰した後にでも助けに来てくれると思っていましたから」
「でもそれがどれほど危険な事なのか貴方には分かっていたはずですわ」
 仮に会社を潰すことが上手くいっても、その時に詩織が生きているという保証は無かった。
「えぇ…その時はその時で覚悟はできていましたから」
「ですが、その覚悟は無意味に終わりそうですわ。ベル様と榊船様がきちんと貴方を連れ戻すのですから」
 そうでしょう?とみそのはにっこりと微笑みながら詩織に話す。
「……そうですね」
 それからしばらくした後に亜真知とベルが帰ってきた。帰ってくるのが遅かったですね、と聞けばロイドゼネクションの悪事の数々を各メディアに暴露してきたとのことだ。これでロイドゼネクションという会社が立ち直る事はまずないだろう。
 そしてベルは美智と契約をし、美智から能力は消えた。


「これで終わりですね」
 桃井家に帰り、ベルは美智と契約を結び、みそのはそのときの記憶、事件の時の記憶を封鎖した。
「終わりましたね」
 亜真知が大きく伸びをしながら言う。
「解決祝いに何か三人で食べに行こうか」
 ベルが振り返りざまに言うと、みそのと亜真知は『賛成!』と答えた。
「疲れましたから甘いもの食べたいですわね」
「あ、わたくしも甘いもの食べたいですわ」
「じゃあ、決まったところでいこうか。どうやら甘味に決まったらしい。
 そして、後に碇麗香から『報告が遅い!』と説教を食らう三人だった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1388/海原・みその/女/13/深淵の巫女
2119/ベル・アッシュ/女/999/タダの行商人(自称)
1593/榊船・亜真知/999/超高位次元知的生命体・・・神さま!?
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■         ライター通信          ■
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海原・みその様、榊船・亜真知様、ベル・アッシュ様
瀬皇緋澄です。
今回も発注をかけてくださりありがとうございます。
一応魔女狩りはこれで終わりになります。
長かったようで短かったような、という作品でした。


>海原・みその様

こんばんわ(これを書いてるのが夜なんです…。
今回で魔女狩りは終わりになります。
海原様は細かなプレイングを書いてくださり、ありがとうございました!
今回の話はいかがだったでしょうか…?
また、いつの日にかお会いできる事を祈りつつ失礼します(^−^
   ―瀬皇緋澄