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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


お土産争奪・ジャンケン大会!

0・
今草間の前には、うず高く地方の土産が積まれていた。
南・沖縄のチンスコウ。 関西・京都の生八橋。 九州・長崎のカステラ。関東・東京の某有名ばな奈。
以上4点。一人で食うには多すぎる。かといってあやかし荘に持っていくのも・・。
うむむと頭を抱える草間。と、いい考えが閃いた。
さて、これから興信所に尋ねてくるヤツを無理やりエントリーさせてお土産争奪・ジャンケン大会を開く事にしよう。
草間は犠牲者が来るのをタバコをくゆらせて待つ事にした。

1・
最初の獲物は身近にいた。
「おい、シュライン。土産食うか?」と草間は事務仕事をしていたシュライン・エマに毒牙を向けた。
「お土産・・?どなたからそんなに頂いたんです?」
手を休め近寄ったエマに、草間は視線を遠くに飛ばしつつ言った。
「よくわからんが、『全国草間武彦ファンの会』というとこから送られてきた。」
「・・・」さすがのエマも返す言葉を失った。
「と、とにかく、捨てるにはもったいないからジャンケン大会を開く。おまえ、強制参加な。」
「・・ええ、良いわよ、参加しましょ。コレだけの量だし、食べ残して折角のお土産悪くしちゃうと勿体無いものね。」
にこりとエマが笑ったのを見て草間は内心ほっとした。
変なヤキモチ妬かれても困ると思ったのだ。
と、「今の話聞きました!」と御影涼(みかげりょう)が入ってきた。
「こういう面白い企画が目の前にあって、其れを見逃す俺ではないっ!」
御影はすでにやる気満々である。これで確実に二人目の犠牲者決定である。
「ちわー!」「こんにちわ」と、さらに2人の来客。
見るとこちらも見慣れた人物。どうやら玄関で一緒になったらしい葛西朝幸(かさいともゆき)と柚品弧月(ゆしなこげつ)である。
「うっわーなにそれ。俺のおやつ?いっただっきまー・・」土産の山に照準を合わせた葛西。
「あ!長崎土産・福砂屋のカステラ・・。これ貰っていいですか?」と柚品まで目の色を変えた。
ちょっとまてい!っと草間が止めなければ二人とも奪取していただろう。
「これは商品だ。おまえらにはこの土産をかけてジャンケン勝負をしてもらう。」
「ジャンケン?商品?・・強制参加ですか!?」柚品が焦った様に聞いた。
その通り。と大きく頷いて草間はここに堂々とジャンケン大会の開幕を宣言したのであった。


2・1回戦
エマが戦うのは御影・葛西・柚品の順である。
「やるからには負けなくてよ」エマは御影に言った。
「カステラ1番・・電話は2番・・・3時のおやつは俺のもの!」
言葉の意味はよく分からないがとにかくすごい気迫で御影はそう言った。

『ジャンケンー!』

両者、チョキ。引き分け。
むむむ、と御影が再度気合を入れる。
何故そこまでお土産に気合が入るのかよく分からなかったが、エマはとにかく負ける気はなかった。

『あいこでー!』

「勝ったわ!」エマが勝どきを上げた。
エマはチョキ。御影はパー。
「ま、負けた・・」御影は肩を落としてうなだれた。


3・2回戦
次の相手は葛西。
「もう負けねぇ!」
ご機嫌斜めな葛西は吠えた。
「はいはい。やりましょうね」子供を諭すようにエマが言った。

『ジャンケンー!』

グー!チョキ!
「ま、負けた!?」
葛西がこの世の終わりかというほどに落胆した。
「そんなに気を落とすんじゃないのよ」エマは微塵も勝利の喜びを見せることもなくそう言った。
これで2勝。最後の相手・柚品と決戦である。


4・3回戦
「なんか、大変な事になってしまいましたね・・。」
柚品が困ったように言ったが、実はこれでなかなか楽しんでいるようだ。
「お腹が空いてる子もいるようだし、早めに決着つけましょうか。」
エマが促すと、柚品も頷いた。
いよいよ最終決戦である。

『ジャンケンー!』

エマの出したのはチョキ。そして、柚品は・・・グー。
「俺の勝ちですね」にこりと柚品が笑った。
「最後で負けちゃったわ」にこりとエマも笑った。余裕の笑みである。
シュライン・エマ。決着。2勝1敗。
後は他の成績が出てくるのを待つだけである。


5・決戦
結果は以下の通りとなった。
エマと柚品・2勝1敗。御影と葛西・1勝2敗。
この2組で最終決戦となる。
「これで本当の決着がつきますね」と柚品が言う。
「そうね。なんだかつられて私まで熱くなっちゃってるわ・・」エマは苦笑いをした。
だが、心底嫌がっているわけではなく、この状況を楽しんでいた。
最後の決戦。

『ジャーンケーン』

・・・雌雄は決した。
エマ・グー。柚品・パー。
草間はここに勝者の手をとり高らかに宣言した。
「勝者!シュライン・エマ!」と。
こんなことで手をつないでも嬉しくない・・・とエマは心の中で思った。

6・
「じゃあチンスコウを頂くわね」とエマが言うと「ほ、ホントですかぁ!」と柚品が言った。
「俺、カステラ取られるんじゃないかと・・・うぅ」柚品が泣き出すんじゃないかというほど大げさに言った。
「えぇ!か、カステラ俺が・・裏のザリザリが・・・」がーんと御影が言うと「あ、俺も好き好き!」と葛西も割り込んだ。
「分けましょうか?」と柚品が言うと御影と葛西は子供のようにわーいと喜んだ。
1勝2敗グループの勝者はどうやら御影のようだった。
御影は生八橋を、葛西はばな奈を手にしたが、結局それぞれを皆で分ける事になった。
「比較的よく口にするお土産ではあるけれど、最近食べてなかったから美味しいわね。」
エマの顔に柔和な微笑みが浮かんだ。
御影・葛西・柚品がなにやら「カステラには牛乳だ!」とか「チンスコウこそ牛乳だよ!」と話し合っている。
「牛乳、冷蔵庫の中に入ってますからどうぞ。」とエマが言うと我先にと走っていった。
草間がエマの隣に来て言った。
「なんだかんだ言って、お前も楽しそうだったな。」
「ふふ。武彦さんの企画ですもの。たまにはこうやってワイワイするのもいいものね。」
草間の柔らかな笑顔を見てエマもニコリと笑った。

楽しい午後のお茶会。
だが、皆はまだ知らなかった。
すぐそこまで悪魔の足音が来ていたことを。
大音量のブザーを鳴らし、悪魔はこういうだろう。

『草間武彦さんに「全国草間武彦ファンの会」からのお土産をお届けにあがりましたー!』

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1831 / 御影涼 / 男 / 19 / 大学生兼探偵助手】
【1294 / 葛西朝幸 / 男 / 16 / 高校生】
【1582 / 柚品弧月 / 男 / 22 / 大学生】

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■         ライター通信          ■
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シュライン・エマ様
またお会いできて光栄です。
お土産争奪・ジャンケン大会へのご参加ありがとうございました。
食欲の秋・・なにかと食べ物が美味しい季節なものですから、こういった食べ物ネタに走ってしまいます。
エマ様のクールながらいろいろな方への気配り具合がとても好きです。
草間武彦氏との関係も曖昧ながらいい関係だなぁと思います。
なお、対戦相手は最初にご依頼を頂いたエマ様を基準に決めさせていただきました。
それでは、またお会いできる日を楽しみにしております。
とーいでした。