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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:誓いの鐘は誰が為に。
執筆ライター  :戌野足往(あゆきいぬ)
調査組織名   :草間興信所
------<オープニング>--------------------------------------
 晴天。
 晴れ渡る晩秋から初冬にうつろう空。
 澄んだ大気は宙に透けるかの如き色合いを流していた。
 そんな空の下、少女が草間興信所のドアを潜る。
「いらっしゃい‥‥‥」
 見たところ、落ち着いた雰囲気を持った少女ではあるが、所詮
子供は子供、また金にならない厄介な仕事を持ってきたのかと、
内心臍をかむ。
「こちら、さまざまな依頼を受けていただけると言う話ですが‥
‥‥私が小娘だと思って仕事にならないな、そう言う御顔をされ
てますわね」
 内心ずばりな事を突かれて、一瞬表情にそれが出そうになるが
そこは草間も百戦錬磨の男、表情を変えずに首を傾げて見せる。
「確かに、様々な依頼は請け負っているがね。それはうちには物
好き達が沢山たむろしてるから‥‥‥だな」
 少女がそちらに視線を向けると、興味深げな視線がいくつか自
分に向けられているのが見えた。
 それに笑顔と会釈で答礼すると、少女はバックの中から一枚の
紙と通帳と印鑑を取り出してテーブルの上に置く。
 通帳には『八菱 暁』と書かれている。
「報酬と実費はこの通帳の中からご自由にどうぞ。なんなら一括
で引き落としてくださっても構いません。仕事をきちんとしてく
ださるのであれば」
 子供の通帳なんて、入っていても10万程度だろうな。子供に
したら、大金だ。そんなところだろう、この自信は。
 内心苦笑しながらそれを手にとって目を通してみる。
 いち、じゅう、ひゃく‥‥‥。
 ‥‥‥。
「千七百六十二万!?」
「私の会社の正当な報酬が溜まったものなので、特に不正な御金
ではありません」
 見ると、振りこみ人の所には結構有名な会社の名前が書かれて
いるのが見て取れた。
「驚かれたようですね、無理もありません。お金など使い時を誤
れはなんの意味も成さないものですからね。私にとっては今がそ
うなんです。お話をきいていただけますか?」
 紙は委任状で、通帳から自由に引き出せるような、とのものだ。
小切手にしなかったのは、恐らく残金を証明する手間を嫌ったの
であろう。
 ひとまずそれをテーブルにおいて、少女に話をはじめるように
促す。この仕事成功させれば、取りあえず溜まっている家賃と光
熱費など払って余りある。
「では。ある物を盗み出した女からそれを奪い返していただきた
いのです」
「ある物‥‥‥とは?」
「一冊の日記です。鍵のかかった」
「‥‥‥日記?」
 その日記がどう言うものかは判らないが、金をかけてまで奪回
するほど大切なものなのだろうか。
「失礼だが、日記にこれだけの金を?」
「使いどころで効果的に。そう言う事です。私にとってはわから
ないものですが、我が家にとってはきっと大切なものなのでしょ
うから。それは兎も角‥‥‥状況と犯人像ですが」
 鞄を開くと、中から数枚の写真を取り出して、テーブルの上に
置いた。
「実地での調査はもちろんしていただくと思いますが、参考まで
に撮ってまいりました」
 まあ、蔵といえば‥‥‥な、漆喰の壁に重そうな鉄の扉。
 入り口には祠があり、青っぽい花が生けられている。
 だが、蔵の中は誰かの部屋だったかのような佇まいで、箪笥や
鏡台を見るにそこにいたのは女性であった事を伺わせる。
 だが、窓には鉄格子。
「‥‥‥座敷牢?」
「はい、ここには大伯母が幽閉されていたと聞きます。なんで
も駆け落ちして失敗したとかしないとか‥‥‥」
 ふと、その床に何か青っぽいものが落ちているのを草間は見つ
けた。
「これは‥‥‥なんだろう」
「さあ、なんでしょうか。現場は保存しておりますので、来てい
ただければ確かめられると思います。他にご質問は‥‥‥」
「この祠は?」
 蔵の入り口にある祠。家の守り神としては場所が悪いし、泥棒
避けにしてもあまり威力を感じない。
「この場所で自殺した大伯母の霊を慰める為のものです。ところ
で犯人像ですが、盗まれたその日の昼に私の叔父が来てその日記
を調べる、との予定でした。なんでも、日記には大伯母が占術で
儲けた金で買ったという、ルビーで出来た像の隠し場所が記され
ているとのことです。叔父が吹聴していましたので、彼に近い人
間なら知っているでしょう。さて‥‥‥受けていただけますか?」
「‥‥‥誰か、請け負う人間がいたらな。俺は別件で今、電話待
ちだったりするんでね‥‥‥‥‥‥誰か、やるか?」

--------------------------------------------------------------------
 八菱家。
 東京の西部、西多摩郡彩色町に広大な邸宅を持つこの家は相当
の資産家であろうことは一見して理解できる。
 雨宮薫(あまみや・かおる)は普段広い自分の家を見ているの
であるからしてともかく、海原みなも(うなばら・みなも)と柚
品弧月(ゆしな・こげつ)は言葉を失っていた。
「こ‥‥‥これは‥‥‥お城ってヤツですか!?」
「城では無いようですが‥‥‥これは、また」
 その割には車はかなり型式の古いベンツで御世辞にも屋敷につ
りあうほど高そうとは言えない代物だった。
 だが、車好きな弧月は見逃さない。
 不相応に厚いガラス、そして車体の沈み具合。
 どうやら全体を防弾加工しているようだ。そして、乗ってきた
時の加速の具合から言って、エンジンも弄っているだろう事を。
 さて、入口から走る事数分。
 ようやく、予想通りだだっ広い駐車場が見えてきた。
 と、言うよりも砂利の敷き詰められた広場と言った感がある。
 促されるままに降りて砂利の広場を抜けると、玄関まで長い道
が続いている。
「すみません、田舎な物ですから」
「‥‥‥これから通されるのは応接間だったりするのか? 取り
あえず早いところ現場を拝見したいのだが」
 そう言う薫に、にっこりと暁は笑顔で答える。
「調査熱心なのは結構な事ですが、ここは私の家です。取りあえ
ずは従って頂きたいのですが宜しいですか?」
 何処かで同種の表情を見たことがある薫は思わず苦笑して頷く。
 そして、通された応接間のふかふかのソファーに腰を掛けて待
つ三人。
「どうぞ」
 静静と現れた御手伝いの女性が現れて、各自に飲み物の好みを
聞いて回る。晩秋とは言え暖かかった東京だが、ここ数日急に冷
えるようになっていた。
 とは言え車の移動だったので、それも余り関係無いといえば無
いのだが。
「それでは、お茶をお願いします」
「あ、あたしは紅茶で」
「コーヒーを」
 出された物に一つずつ、深い息を漏らす。
「紅茶美味しい!」
「これは‥‥‥深蒸玉露ですね‥‥‥」
「‥‥‥これは?」
 二人の声に微笑を浮かべていた御手伝いの女性は薫の問いにト
ラジャとモカのブレンドだと答える。
 味も去る事ながら、運ばれてきた器を見てどっきんどっきんな
弧月。
 こう言うものには目の無い性格らしい。
「湯のみは織部で、ティーカップはマイセンのブルーオニオン、
コーヒーカップはへレンドですか」
「御名答、です」
 驚いた様子で御手伝いの女性がそう答えると、ティーカップを
まじまじと見つめるみなも。
「これって‥‥‥高いんですよね、マイセンって良く聞きますも
のね」
「‥‥‥高いと言っても、骨董的な価値はございませんから」
 ちょうど入ってきた所でみなもの溜息交じりの声を聞いて、そ
れに答える暁。
「使ってこそでしょう? 器なんて物は」
「でも、なんか、いいですよね♪」
「さすがはマイセンといった色合いです‥‥‥しかし、へレンド
も‥‥‥これは柿右衛門の模写とされてるものですよね」
「‥‥‥‥‥‥悪いんだが!」
 咳払いと共に話題を遮る薫。
 この手の話は絶対に長くなると踏んでの事だったが‥‥‥にこり
と暁は笑みを返してくる。
「お気に召しませんでしたか、コーヒー?」

 ‥‥‥‥‥‥。

「我々は何の為に来たかと言う事を御忘れにならないように」
 わざわざ噛んで含めるようにそう言葉を発する薫。
「勿論判っておりますわ。ですが、随分と長らく車に乗っていただ
いたので少々御疲れかと思いまして。そんな状態では何か大切な事
を見落とさないとも限りませんので」
「まあ、いいじゃないですか。紅茶、美味しいですよ」
 そう言ってこくりと一口紅茶を含むみなも。
「ありがとう。それでは、まあ‥‥‥蔵のほうに行くのは皆さんが
飲み終わってからと言う事で」
 そう言って、自らも注がれた緑茶に口をつけようとしたその時。
「あの‥‥‥幾つか質問があるのですがよろしいですか?」
 遠慮がちに口を開くみなも。
「はい? なんでしょうか」
 そう言って一口飲んだ後、みなもに微笑みかける暁。
「今回の事件を調べるに当たり、いくつかの疑問点を纏めてきまし
た。判る範囲で構いませんのでお答え願えないでしょうか」
「判りました、どうぞ」
「では‥‥‥日記の鍵は誰が持って、同様に座敷牢の鍵はどうやっ
て管理されていたのか。あと、失礼ですが叔父さんはどのような性
格でらっしゃいますか? 日記を見てどうされるつもりだったので
しょう。そして、最後に暁さんが日記を取り戻そうとするのは、本
当のところどうしてですか? ルビーが理由なのでしょうか」
 一寸、考えたような表情をしてから、ポケットから何かを取り出
す。
「まずはこれをご覧下さい」
 暁がテーブルの上に置いたのは、古びた皮の巾着袋。
「この中に鍵が入っています。管理と言っても、家の者なら誰でも
取り出せる戸棚の中にこの袋はありました。中に誰もいない以上、
家に泥棒が入ったとしても他に盗る物はたくさんあるかなってこと
で。この袋には取り出した形跡はありますが、きちんと戻って来て
います‥‥‥もっとも、私も掃除の為に年に何度か入っているので
本当に取り出したと言えるだけの痕跡では無いように思いますけれ
ど。それと日記の鍵については判りません。鍵のついた日記本体が
あるのを見たことはありますが」」
「一寸よろしいですか?」
「ええ、構いません」
 皮紐を解いて、中から鍵を取り出す.
 くすんではいるが、錆は見当たらない金属の鍵。
 犯人が手にしたであろう、鍵。
 視線を鍵に合わせ、ゆっくりと周りと焦点をずらしていく。
 鍵以外の全体がぼやけてきた時、頭の中にはじける光景。

 ‥‥‥これは‥‥‥。
 この女性の後姿どこかで。
 顔は‥‥‥見えない。
 不自然に白い霧が掛る。ちらちらとノイズが走ったかのように絵
がゆれて‥‥‥そして、一点に吸いこまれるようにして消える。
「これは‥‥‥一体‥‥‥!?」
 戸惑う弧月に手を差し出すものが一人。
 暁ではない、薫だった。
「俺にも見せてくれないか?」
「あ‥‥‥ええ。では」
 手渡すと、薫は何故か窓に透かしてみるような様子で鍵を見ている。
「雨宮さん?」
「これは‥‥‥残滓‥‥‥何らかの術が掛けられていたか、強力な
術の影響を受けやすいような場所に置かれていたとか使い方をされ
ていたようだが、ほどけて消えかかっている。金属は精神に対する
記憶を持ちやすい物質だけに、恐らくは鍵自体が力を覚えているみ
たいだな」
「鍵が力を覚える?」
「判りやすく言えば‥‥‥だが」
 みなもが判ったようなわからないような表情で頷く。
「占術師といっても、大伯母は自分のことすら占える術師であった
と言います。外の情報を与えたくないとしたら、それを妨害する呪
いをしていてもおかしくはありません」
「‥‥‥自分のことを占えるってすごいことなんですか?」
 半ば生徒と先生のようになってきたみなもと薫と暁。
 そんな三人をぼんやりと見つつ、弧月は先ほどの後姿の女性につ
いて考えを巡らせる。

 かちゃ‥‥‥。

 静かにドアが音を立てて、女性が一人姿を見せた。
「ノックぐらいしなさいな。黎」
「あら、ごめんなさい。御友達かしら?」
「‥‥‥そんなものです」
 何となく、微妙な空気が流れるが、黎のほうがにっこりと笑って
会釈する。
「それでは。ごゆっくりどうぞ」
 暁にそっくりな‥‥‥と言うかうりふたつのその容姿。
 二人を見比べる弧月。
 そして‥‥‥重なったその姿。


2.[牢獄、そしてかつての住人の]
 黎と二言三言交した暁は皆が飲み終わったのを確認する。
「それでは、皆さん。行きましょうか」
 暁に案内されて部屋を出ると、黎が廊下の壁に寄りかかってこち
らを見ているではないか。
「黎‥‥‥なにか?」
「いえ、居間にショパンのCD置き忘れただけですから」
「そう、それじゃ」
 再び、妙な雰囲気にみなもは居心地悪そうに首をすくめる。
「なんか‥‥‥なんかですね」
「ですね」
 不思議な会話をするみなもと弧月。
 だが、それで十分通じているらしい。同時に溜息をついて首を振
った。
「‥‥‥あの娘、術者だな?」
 別な視点で黎を見ていた薫がそう呟く。
「‥‥‥ふふ、さすがは名高い草間興信所からいらっしゃった方で
すね」
 暁の口元から思わずこぼれ出た微笑。
「我が八菱の表の顔は私暁が、そして裏の顔はあの子黎なのです」
 そう言えば暁は日の出づる時の字で、黎はこれに明と字をつける
と夜明け前の空になるが、黎自体は黒と言う意味である。
「私には霊的才能がまったくと言って良いほど欠如しておりまして、
あの子がどれだけすごいかいまいち判らないのですが、まあ‥‥‥
周りの反応から言って物凄いのでしょう」
 それがコンプレックスになっているのか、少々寂しげな表情を浮
かべる暁。
「‥‥‥それはどうなんでしょうね」
 弧月が一言、何気に呟く。
「え?」
「暁さん、貴方の御名前は考古学的に申しますと、中国前漢代の物
と思われる白銅鏡に苗字の八菱紋と暁を現すと思われる銘文が刻ま
れています。御屋敷の建築様式を見るに風水建築の遺構を思い浮か
べるのですが‥‥‥となると、何か思うことがあってつけられた御
名前だと思いますよ」
 少々長い台詞を言いきった弧月に、暁がにこりと微笑みかける。
「有難うございます、お優しいんですね」
 と、話しているうちに問題の蔵の前についていた。
 他の蔵は見当たらず、恐らく日常的に使うものを置く蔵を改築し
て座敷牢にしたのだろう。
「ここから、皆さんにお見せした写真を撮りました」
 写真の蔵の前景と一致する。
 撮った本人が言うのだから、そりゃ間違いは無かろうが。
「あ、そうでした。叔父の性格と、私の真意でしたか」
 そう言って何故か苦笑する暁。
「申し訳ございません、身内の恥をあまり御話するのはどうかとも
思いますが、我々姉妹が現在の八菱を動かしているのが全てです。
父母が生きていればまた話は別だったのでしょうが。霊的能力が皆
無なのは私と一緒ですけれど、あまり物事を深く考えない方で‥‥
‥事業を任せれば失敗する‥‥‥」
 何か思い出したのか、一瞬険しい表情になる暁。
「女癖も酒癖も悪い浪費家で、何故に八菱の家にあのような人物が
いるかわかりません」
 と、そこまで言った瞬間、何者かが走ってきて暁に襲いかかろう
とする‥‥‥が、あっさりと男二人に捕まってしまう。
「よくもまあぺらぺらと人の悪口が言えたもんだな、あきちゃんよ
ぉっ!!」
「うわっ、酒臭っ!!」
 吐かれた息に思わず顔を背ける弧月。
「何だかんだいってお前もルビーの像が欲しいんだろ?」
「‥‥‥おじさん、前前から思っていたのですが‥‥‥ルビーが隠
されているって本当なのですか?」
 なんと、その部分は暁は半信半疑らしい。
「ふん、そんなこと言って俺から情報引き出そうとしたって無駄だ!」
「そうですか、やっぱり嘘だったんですね。誰にも構ってもらえな
いからってまた子供っぽい嘘を‥‥‥」
 ふう、やれやれと言わんばかりの勢いでそう言う暁に激昂する男。
 だが、二人に押さえつけられている物だから、じたばたするだけ
で何も出来ない。
「だ、黙れっ!! 姉さんが生きている時に聞いたんだ。叔母さん
は"こうぎょく
のぞう"の隠し場所を日記に書いたって聞いたって」
 こうぎょく‥‥‥紅玉と言えばルビーのことではある。
「そうですか、それで像は見つかりましたか?」
 その質問に微妙に顔を硬直させたように思えたのは気のせいだろ
うか。
 だが、すぐに元の酔っ払い顔に戻り、突然高笑いをする。
「まあ、子供の探偵ゴッコは好きにやれよ。もっととんでもない連
中連れてくるのかと思ってひやひやしてたぜ。はっはっはっは!」
 無理やり振りほどいて、その場を去っていく。
「‥‥‥見てのとおり、ですね。これ以上の説明は必要無いと思い
ますが」
 一同、言葉の発しようの無い程の説得力。
「さて‥‥‥後は私の真意、でしたか。まあ‥‥‥余り日記を他の
人間に読まれるって気分よくないと思いませんか? それが‥‥‥‥
‥‥いえ、なんでもありません」
 何かを言いかけて止める暁。
 止めたものを穿り返して聞いても、恐らくは何も語らないに違い
ない。
「現場は保存しているってことだったな?」
「ハイ、あれから鍵は私が持つ様にしておりますから。それでは、
見ていただきましょ
うか」
 そう言って、重厚な南京錠に鍵を差し込んで回転させる。
「開きました、どうぞ」
 暁が一足先に入ってスイッチを入れると、ぼおっと水銀灯に灯が
ともる。
「私はこの祠に何かあると思うのですが、調べて構いませんか?」
 戸口の脇にある、祠に視線を向けてみなもがそう言うと、苦笑し
て暁は肩をすくめた。
「余りそのような場所は調べて頂くようなものではないのでしょう
が。こちらから御願いしたわけですし、陰陽師の方もいらっしゃる
所で‥‥‥判りました、どうぞ」
 そんなやり取りをしている最中、弧月は開かれた南京錠に触れて
みていた。
 リズミカルな拍動は恐らく自らの心臓の音。
 そして、浮かんで見える何かの紋印。
 何かのもやもやが急激にそれに向かって収束していくのが見える。
「駄目だっ!!」
 誰かの声と衝撃にはたと我に返る。
「雨宮‥‥‥さん?」
「今、この錠に向かって何か力を使ったろう。恐らくこれには力を
吸収する術が掛けられている。対術者用の極めて厄介な種類の術が
な」
 と、言う薫も一見してそれが掛けられているという認識はまった
く無かったのだが、弧月の周りを取り巻いているオーラが一気に吸
収されて行くのを見て、気づいたと言う訳だ。
 まったく霊的能力のない人物にしか、この鍵は扱えないと言う罠
だ。
「中からは錠を触る事が出来ないというのに‥‥‥随分と周到な‥
‥‥」
 青ざめた顔で弧月が呟く。
「だが、中は居住空間でもある以上、そのようなものは無いと見て
もいいだろうが」
 中に入って、写真に写っていた青い物を取り上げる薫。
「押し花‥‥‥か?」
 乾燥しきっているそれは、わずかな力でほろほろと崩れ去ってし
まいそうな、儚い手触りで、それが長い年月押されていた事を物語っ
ている。
 しかし、随分と鮮やかな色を保っているが、光と空気から遮断さ
れた状態にあったと言う事なのだろう。
「これは何だか、判るかい?」
 傍らにいた暁にその押し花を見せると、一寸考えてぽんと手を打っ
た。
「ベルフラワーですね。祠のところにも供えてありますが。我が家
では昔から植えていました」
 ‥‥‥‥‥‥。
「何か判るかも知れない」
 そう言ってその押し花を弧月に差し出す薫。
「‥‥‥と、言われると言う事は私の能力について大方の検討はつ
いていると言う事ですね。ふふ‥‥‥判りました。では」
 微笑を浮かべつつ、弧月は集中に入る。

 何か‥‥‥音が聞こえる。
 鐘の音?
 そう、これは。
 教会の鐘の音。
 金髪碧眼の青年‥‥‥白のタキシード姿‥‥‥。
 そして。

  "I hinata take you warren for my lawful husband,
  to have and to hold from this day forward, for better,
  for worse, for richer, for poorer, in sickness and health,
  until death do us part. "

 
 ‥‥‥英語?
 恐らくは誓いの言葉。
 死が別つまでとかなんとか言っているのだろう。
 それから。
 1121と言う数字がぼんやりと浮かぶ。

「いちいちにいち」
 口にした自分の声が耳に届いた時、集中が解けて映像は散っていく。
「想い‥‥‥」
 駆け落ちの相手は外国人だったのだろうか。
 時代の正確な事はまだわからないが、第二次大戦の周辺の話で、英
語を使う国民とであれば、そんな結婚は祝福される言われも無い。
 恐らくは開戦前夜、と言ったところではあろうが‥‥‥国内にい
た、とするならば。
 さて、弧月がベルフラワーからそのような光景を読み取っている
頃、みなもは祠を調べていた。
「御神体‥‥‥?」
 古びた祠の中はがらんとしていて、絹のような光沢を持った布も
年代なりに古びている。そしてその上には、銅鏡が一枚置かれていた。
 手にとって確かめてみるが、鋳造品のようでこれと言った物理的
な仕掛けは無いようだが、術的仕掛けは良くわからない。
 大体にして、もし閉じ込められている人物がこれを置いたとする
ならば、他の人間にそうやすやすと気づかれるような細工はしない
はず。
 他にもいろいろ調べては見るが、特にこれと言って何か仕掛けが
あるかというとそういうわけでもなく、何か別なものがあるかと言
うと、見つけられない。
 と、なるとこの鏡が怪しいと、直感的に思うみなも。
「そう言えは、さっき袖品さんが言ってた八菱紋ってこんなのじゃ
ないのかな」
 丸い銅鏡だが、八枚の花弁のような模様がついているのが判る。
 そして、何か訳のわからない字のような何がが刻まれているよう
だが、みなもにはさっぱりで。
「見せたら何か判るのかな」
 御神体であるなら、余り素手で触っているのもどうかと思うので、
絹布で覆って持つことにする。
「袖品さん、ちょっとこれ‥‥‥」

 1121。
 4桁の数時から導き出されるもの。
「ひょっとして、誕生日ですかね?」
 ぼんやりした頭で、そんなことを考える弧月。
 残留思念が強すぎて、些か頭のほうにフラフラ来ていた。
「結婚‥‥‥したかったんでしょうね」
 その呟きを聞いて、ちくりと心が痛む薫。
 薫の祖母も若い頃にそう言う恋愛をしたことがあると言い、他人
事とは思えない事件であったからだ。しかも、結果は最悪なものに
終っているこちらは行かんともし難い悲恋であるだけに。
 部屋の中を一通り見て回っていると、日記があったと思われる本
棚がある。
 思われる、と言うのもちょうど一冊分の空間がその規則正しく並
べられた本棚の中にあったからだ。
「ここの近くに鍵があったら‥‥‥使いやすいはずだが」
 と一瞬思ったが、すぐに考え方を改める。
 自ら命を絶ったのであれば、断筆の日に鍵は絶対盗れないような
ところに置いたとて本人にはまったく害は無いのだから。
 そんな中、薫は一冊の本を手にしていた。
 英国式誕生花という本だ。
「あんた、さっきベルフラワーって言ったよな?」
「‥‥‥あ、はい。そうですね、あの花はベルフラワーです」
 暁にそう問うた薫はすぐに弧月の方に本を持って歩み寄る。
「さっき、いちいちにいちって言ったよな」
「え、ええ。1121と言いました」
 開いていたそのページを弧月に、そして暁に見えるように下ろし
て広げる。
「11月21日の誕生花の中に、乙女桔梗‥‥‥つまりベルフラワー
がある」
 重要な事かどうかはこの時点ではわからないが、そこに書かれてい
る花言葉を見て何か胸が締めつけられるような気分になっていた。

 唯一の恋、変わらぬ愛、貞節。

「正に‥‥‥貫いたと言う訳か」
 ふと、暁を見ると‥‥‥双眸からボロボロと大粒の涙が零れ落ちて
いるでは
ないか。「どう、されました?」
「なんでも、なんでもありません」
 口を真一文字に結んで涙をこらえる暁。
 そんな時、そろそろと現れたみなも。
 手には銅鏡を持っている。
「あの、見てもらえませんか‥‥‥って、二人して暁さん泣かせてる!?」
「ち、違いますよっ!?」
 別に慌てる必要はまったく無いのだが、女性の涙に余り強くないの
か弧月は覿面
に慌ててそう答えて、ハンカチを取り出すと、涙を吹くように勧めて
いた。
 が、一方の薫はそれよりも、みなもの持ってきた鏡に興味を示す。
「特別‥‥‥法具と言う訳でも無いようだが、何か匂うな‥‥‥」
 いや、別に匂いをくんくんしてる訳ではなく、怪しいと言っている
のだが。
「恐らく‥‥‥条件発動の眠り付与だな」
「え、今度は眠りの罠!?」
 と、驚くみなもに苦笑する薫。
「そうでは無い。ある条件が満たされるまでは込めた力が放散する事
の無い様ずっと眠ったように、何の反応も示さないような状態にする
事だ。かなりの難易度の術であるが、な」
 弧月が手にとって、書かれている文様に目を通してみる。
「うーん、即解出来るほどの専門ではないのですが‥‥‥」
 とは言え、昔と違い現代には便利な道具がある。
 カメラ付き携帯で銅鏡の文様を写す弧月。
 そして。

"教授、この文様なんて書いてあるか判りますか?"

 と、メールを打ってみる。 
 さて、弧月が鏡を調べている間、みなもは祠の事を暁に聞いていた。
「あの祠は誰がどのような目的で作ったんですか?」
「祖母が亡くなった大伯母の遺書に書かれていたように、黎を慰め
る為に作ったと聞いておりますが」
「‥‥‥失礼な話ですが、御祖母様と、大伯母様は仲がよろしかっ
たのですか?」
 問われて、にっこりと微笑む暁。
「ええ。とても仲が良かったと聞いています」
 程なくして、弧月の携帯が返信だとメロディを鳴らした。

"暁に輝く太陽を背中に受けて、城の門は開かれる"

 帰ってきた返信を皆に見せると、薫が一つ溜息をついた。
「決定的だな」
 弧月も大きく頷く。
「何かに対しての謎掛けに間違い無いですね。彼女が持っていた秘
密が何であるか全ては判りようもありませんが、ルビーの像、ある
いはそれに付いて書いた記述のある日記に関しての事と考えてもい
いのでは、と思います」
 みなもが鏡をじぃっと見つめて、呟いた。
「案外、この鏡が太陽だったりするかも。だって‥‥‥丸いし」
 弧月からみなもが鏡を受け取った瞬間、物凄い勢いで何かがみな
もの手からそれを奪い取っていく!
「あ、あれは‥‥‥式神!?」
 鵺のようにも見えるが、そのような禍禍しい霊圧は感じない。
「飛去飛去 包進去捉住抓 急急如律令!」
 簡易術式による刀印のみの呪文は、大きな布のようにその式神を
包み込もうとするが、すんでのところでそれをかわす式神。
「待ってください、雨宮さん。あの式神追いましょう!」
 弧月の声に大きく頷くと、符を空へと投げ上げた。
「式神召喚っ! 白虎 急急如律令!!」
 周囲に畏怖を振りまく咆え声を挙げた後、驚異的なスピードで銅
鏡を持つ式神を追いかけて行く白虎。
「見失っちゃいそうですね」
「案じるな。此方からでも何処に行ったかは判る」
 と、言うよりも白虎の視界で見ることが出来る、と言ったほうが
良いかもしれないが、その事は取りあえず説明している暇も無く。
 だが、意外にすぐ近くで白虎は止まった。あからさまに襲いたい
念をくるが、取りあえず押し留めておく。
「‥‥‥‥‥‥残念だが」
 暁の方に向き直り、そう言葉を吐く薫。
 寂しそうに笑う暁。
「結局‥‥‥身内の恥を晒すだけになりそうですね‥‥‥御手間を
おかけします」
 さて、薫の示す部屋の前。
 鍵がかかっているが、どのような呪文を使ったか判らないが、薫
はあっさりと開けてしまう。
 そのドアを開けるように暁に促すが、一瞬ためらった隙に入って
いったのは、なんとみなもだった!
 何かを後ろ手に隠した男の頬を平手で力いっぱいぶん殴る!
「あひゃああっっ!!」
 なんとも情けない声を出して尻餅をついた拍子に転がる‥‥‥銅
鏡。
「ふざけないでっ! 何をしているんですか!! 暁さんがどんな
気持ちでこのドア
の前に立ったか、貴方判ってらっしゃるんですかっ!?」
 大人しい雰囲気のみなもが、怒りを露にしてそう詰め寄ると、気
押されたように顔を逸らす。
「‥‥‥待ってください」
 そんな二人の間に割って入ってのは‥‥‥弧月。
「雨宮さん、お聞きしたいのですが、まったく才能無しで式神とい
うのは召喚して扱えるものなのですか?」
 問われて、肩を竦める薫。
「まったく不可能と言うわけじゃない。けれど、制御はできまいな。
予めそれを可能に出来るような術式で組みたてれば別だが」
 それを聞いた弧月は腰をかがめて視線の高さを尻餅をついて倒れ
ている男に合わせる。
「‥‥‥日記を盗み出したのは‥‥‥黎さんでしょう? それを貴
方に渡し、そしてルビーの像の話をした」
 その言葉を受けて、溜息と共に苦笑を漏らして首を振る。
「何だ。ただの子供じゃなくて、お前等も黎と同じ化け物だったと
はな」
 言い終わった瞬間、暁の右ミドルキックがこめかみを強打!!
 予測できなかった攻撃に男はもんどりうって床に倒れこみ、白目
を剥いて気絶する。
「す‥‥‥すごい‥‥‥‥‥‥」
「う‥‥‥わぁ」
「自業自得だ」
 誰がどの台詞を言ったかは取りあえず置くとして、開けられたま
まのドアのところに静かに立つ人物が一人。
「黎! これは一体どう言う事なの!?」
 怒りの目を向ける暁に、真っ直ぐな視線を返す黎。
「‥‥‥‥‥‥本当にわからないの? まだ」
 そう言って、握った右手を目の高さまで上げて、開く。
 ひらひらと舞い落ちたのは‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ベル
フラワーの花。
「ずっと、待っているのに」
 そう言って踵を返すと、次の瞬間には忽然と黎は姿を消していた。
 そして、代わりにそこにあったのは一冊の本で。
 がっちりと止められた帯紐には鍵穴が見える。
「まさか‥‥‥」
 みなもが歩み寄って拾い上げ、暁に手渡す。
「‥‥‥‥‥‥間違いありません。盗まれた日記です」

 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

 取りあえず、依頼は完了。
 でも、納得できます?
 あたしは出来ないし!!
 ちょっと複雑な心境のみなも。

 やれやれ、とんだ兄弟喧嘩だが。
 腑に落ちないな、何故そんな回りくどい事をする?
 疑問符を頭につけている薫。

 そして、床に落ちていた一輪の花を取り上げて、集中を試みる弧
月。
 きっと‥‥‥何らかのメッセージが込められているに違いない、
と。

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
 唐突に叫び声を挙げた弧月に一同の視線が集中する。
「輪廻転生の術!」
 突然、超高難度の術の名を言われ、きょとんとしてしまう薫。
 対して、みなもも名前としてそれは知っているので、弧月の次の
言葉を待つ。
「‥‥‥もしかして、ひなた‥‥‥」
 一言、呟く暁。
 弧月に見えたのはなんだったのだろう。
 落ちている鏡を取り上げて、暁に手渡す。
「貴方にはその日記の鍵を開ける義務があります」
「‥‥‥はい」
 暁の空。
 赤い背表紙に銅鏡を重ね合わせる。
 すると、かちゃりと音がして‥‥‥日記が開いた。
「鍵穴はダミーだったと訳か」
「と、言うより元々はきちんと鍵が合ったのでしょうが、最後は術
によって閉めたと言う事なのでしょうね」
 震える手で、日記を開く暁。
 日記と言うからには一年三百六十五日(経っているか判らないが)
毎日書かれているだろうから、そのうちの何処かを探すと言うので
あれば容易ではないだろう。
 だが、暁が探したのは、大伯母の断筆の頁。
 それは11月21日で。
 そして‥‥‥そこに記されていたのは。
          
      『It is only you forever.
            Let's meet in the next world!』

 無言で、その頁を皆に見えるように開く暁。
 そして声を絞り出すように、話を始めた。
「‥‥‥私の前世は‥‥‥大伯母と好きあって別たれた、ウォーレン
と言う名の魔術師‥‥‥普段の仕事は貿易関係のアメリカ人でした。
国際情勢の悪化の中、
前世の私は彼女をアメリカに連れていこうとしましたが敵わずに‥
‥‥アメリカの地で輪廻転生の術を行使したのです。それも彼女に1
番近くにいられる所に生まれ変われるようにと指定を掛けて」
 そう言って大きく溜息をつく。
「同時に、大伯母さん‥‥‥ひなたさんですね。彼女も貴方と同じ事
をしたのです。そして、術は成功して貴方たちは1番近しい関係とし
て再びこの世に生を受けた。一卵性双生児として」
 そう、弧月が言葉を続ける。
「真意はそう言う事だったんですね。でも、きっと‥‥‥黎さんは最
初から気づいてたんじゃないかしら。だから、こう‥‥‥なんて言う
んだろ、暁さんには居心地の悪い空気になったんじゃ。早く気がつけ、
早く気づけって」
 みなもの言葉にもう一つ大きな溜息をつく暁。
「みなさん‥‥‥本当に、本当に御手数をおかけしました」
 深く深くお辞儀をする暁。
 その彼女の手を取って、弧月は頭を挙げさせた。
「なんて言うか‥‥‥まあ。転がってる人には申し訳無いですが、実
に興味深い事件でしたので、どうか御気になさいませんよう」
「でも、前世の記憶を持ってこの先生活するのは不便ではありません?
 姉妹で結婚はできませんし」
 困った表情のみなも。
 それから、予想外の展開にさすがにやや戸惑った様子の薫。
「想いは繋がっていたのに‥‥‥皮肉と言えば皮肉だな。だが、一つ
‥‥‥方法が無いでも無い」
 その言葉に、全員の視線が薫に集まった。
 そう、何時の間にか再び現れた黎のものも‥‥‥。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−[エピローグ]
 チャンチャーチャチャーーーン、チャンチャーチャチャーン、チャン
チャーチャチャーチャーチャチャララララララー‥‥‥。
 あのおなじみの音楽の中、薫に手をひかれてきたのはなんと黎で。
 急ごしらえのヴァージンロード。
 花壇の花を集めて作ったブーケ。
 カーテンを使って作ったヴェール。
 暁の待つ道の先で、薫は彼女に黎を手渡す。
 そして、司祭役の弧月が厳かに‥‥‥メモを読み始める。
「神と証人の前に、新郎ウォーレン・フォレストは新婦ひなたを娶り、
今日から将来に向けて、貧しき時も富める時も、病める時も健やかなる
時も、愛しつづけることを誓いますか?」
「はい、生涯いついかなる時もひなただけを愛する事を誓います」
「はい、生涯いついかなる時もウォーレンだけを愛する事を誓います」

 ‥‥‥薫が考えたのは、二人を結婚させてしまおうと言う事、であっ
た。
 転生した魂が、いつまでも前世の記憶を留め続けるのは、余り好ま
しい事ではないので、最大の執着であった、結婚する事を果させるこ
とでそれを溶かして、納得してもらったところで
後は薫が封印する、という手段だった。
 さすがに誓いのキスはする事は無かったが、無事に結婚式は終了し
ようとしていた。
「じゃあ、これはあなたに」
 黎、というより大伯母のひなたが、ブーケをみなもに手渡す。
「まだ、だいぶ先の話かもだけれど、ね」
「あ‥‥‥あはは‥‥‥ありがとうございます」
 そろそろ、日が傾き始めた今日の日に。
 何か振りまわされた感も無きにしもあらず、だが‥‥‥取りあえず
HAPPYなEND。
 え?
 ルビーの像はどうしたかって?
 日記読めばついてるかもだけれど、ね?
 薫の封印が終った瞬間、青く染まり始めた空に流れ星が一つ降りて
行き、弧月は一輪のベル
フラワーをその思い出に手向け、高い高い空へ放った。


 
                          [おしまい]

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       登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0112/ 雨宮・薫 / 男 / 18 / 高校生
  (あまみや・かおる)
1582/ 袖品・弧月/ 男 / 22 / 大学生
  (ゆしな・こげつ)
1252/ 海原・みなも / 女 / 13 / 中学生
  (うなばら・みなも)

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              ライター通信       
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 なんか、解りづらい依頼となってしまいました。
 ですが、大体皆さんの考え方の方向性が当たっていたので、物語は
ハッピーエンドだなって思いつつ書いていました。3人とも目の付け
所が違って、それぞれが補完してるあたりが偶然とは言え素晴らしかっ
たです。
 さて、今回のお話の舞台となった彩色町は、いぬの怪談2の舞台で
もあります。
 とは言え、東京怪談の設定そのまま持ちこもうと思うので、いぬの
依頼に関しては異界は分けて考えていただかなくても結構です。
 それでは、今回は戌野足往の依頼をご利用下さいまして、誠に有難
うございます。またの御指名を心より御待ちしております。