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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ミラクル・草間武彦

0・混乱
「買い物から帰ってきたら・・・にににに・・・兄さんが木になっちゃいました!!」
草間零がオタオタと言った。
見ると、草間武彦がいつも座っていた席にちょこんとのった木が一本。
赤い細長い実をたわわにつけて鎮座している。
その木の前にはかすかに煙をなびかせてタバコが灰皿の中で燃え尽きようとしていた・・。

「どどどど・・・どうしましょう!!?」

1・作戦会議?
海原(うなばら)みなもはいつものように臨時の依頼がないかを聞きに来てこの事件を知った。
調査から帰ってきたばかりのシュライン・エマが「とにかく落ち着きましょうね、零ちゃん」と優しくなだめ、燃え尽きようとしていたタバコを揉み消した。
「そうそう。まずは零ちゃん帰ってきた時の状況をゆっくり思い出してみよう。魔法でもない限り人が木になんて・・・」と零の肩をぽんと叩いたのは何でも屋の五代真(ごだい・まこと)。
みなもは「でも、あたしも木になったことあるんですよね・・・」と溜息をついた。
「お客さんからの頂き物をおすそ分けしに来ただけなんですけど・・とりあえず台所の方に置いておきますね」氷女杜冬華(ひめもり・とうか)はそういって沢山のキウイフルーツを持って台所へと消えた。
「このぉ木なんの木気になる木ぃー・・・んん。いい感じに撮れましたー(ご機嫌)」と、歌いつつビデオカメラをしまった葛生摩耶(くずう・まや)。
零は少し落ちついた様で「皆さんにいていただけてよかったです・・」と言った。
「とりあえず、話を聞いてもいいかしら?零ちゃんが買い物に行く前は武彦さん、何してたの?」とエマが聞いた。
「えと・・報告書を作ってたと思います。その木が置いてある椅子に座って。」
「・・木を調べても良いでしょうか?」とみなもはエマに聞いた。
「あ、私も付き合うわ。その木、なんだかとっても魅力的!」摩耶がそう言ってみなもの肩を押した。妙に馴れ馴れしい女性だ。
「もし武彦さんなら木からタバコの匂いがするかもしれないわね。出来れば色々調べてくれるかしら。あ、あと椅子から落ちるといけないから下ろしておいてくれる?」
エマがテキパキと的確な指示を出す。
「わかりました」みなもはニコリと笑った。
「あ、私も手伝いますね!」冬華が台所から戻ってきて、みなもと摩耶に加勢した。
あの実を食べたら木になる経過が実体験できるかもしれない。・・お姉様のお土産になるかしら?
みなもは少々溜息をつきながらそんなことを考えていた。

2・調査
「そーっと下ろしてよ・・・はいオッケー!」
摩耶がバッチグーっと大きく親指を見せた。
「・・結構重かったですね・・・」と大きく息をついて冬華は胸を抑えた。
「摩耶さん・・手伝ってくれないんですもん・・・」みなもはそういうと摩耶を困ったように見た。
が、摩耶は「何をおっしゃる、うさぎさん。私は指揮という重要な役割をしていたのよ?」と別段悪びれるわけでもなく、みなもの頭をいい子いい子となでた。
「・・うぅ。なんだか騙されてる気がする・・」とみなもは呟いた。
「えと、じゃあ調べましょうか。とりあえず、市販の果実ではないみたいですけど・・・」
場を取り繕うように冬華は木への調査を開始した。
みなもが木の幹を触って内部の水を調べていたが、その手を離す。
「そうですねぇ。私も見たことありません。今、ちょっと水の流れを調べてみたんですけど特に人が内包されているような感じではないですけど・・。ちょっとこの木の事、ネットで検索してみましょう。」
みなもはそういうとパソコンの前へと陣取った。
「シュラインさんが言ってたタバコの匂いもしませんね」冬華が木の匂いを少し嗅いでそう言った。と。
「・・これ、実を取ったら駄目かしら?もしかしたらその実の中の種から草間さんが生えてくるかもよ?」
摩耶が唐突にそう言って実を1つもぎ取ろうとした。冬華が激しくブルブルと首を振り摩耶を制止した。
「もし本当に草間さんが木になってたらまずいじゃないですか!」
「あ、やっぱり?」摩耶は冗談よと付け加えたが、みなもには冗談に聞こえなかった。
摩耶はなお、じっくりと木を観察する。
「土は腐葉土に、培養土に・・少し赤玉土も入ってるかな?」
「なにか植物を育ててるんですか?」冬華とみなもは意外そうに摩耶に聞いた。
「・・なんか、すごく意外ってオーラ出てますけど・・」摩耶がそういうと「と、とんでもない!!」とみなもと冬華は即行で否定した。
ちょっと不満げな摩耶だったが、もう一度木をじっくりと見た。
冬華もまじまじと木を見ていたが思い当たることはないようだ。
と、突然摩耶が何かを思い出したのかみなもにこう言った。
「・・そうだ。あなた・・みなもさん。『ミラクルフルーツ』でGoogle検索してくれないかな。」
「『みらくるふるーつ』?」みなもが不思議に思いながらも検索をかけた。
「それ、聞いたことあります。確か、すっぱいものを甘くするって・・・。」冬華が摩耶に言った。
「うん。なんとなくだけど、それに似てるかなって思って・・。」
先ほどまでの冗談を言っていた摩耶とは別人のように真面目に考え込んでいる。
「でました!」
みなもは冬華と摩耶を呼んだ。
画面には椅子に鎮座していた植物に酷似している写真が映し出されていた・・。

3・結論
摩耶とみなもが木の調査結果をエマと五代に報告するとエマが頷きニコリと満足そうに笑った。
「こちらもあの木はただの送り物だという結論よ。」
「外国産のタバコが入ったダンボールがあってさ。それの送り主が多分送ったんじゃないかって・・。」
五代が言葉を続けようとした時、零が真っ青になって謝った。
「ごめんなさい!私が早とちりして・・。」
「零ちゃんが謝ることなんてないわ。誰だってあんな状況なら驚いちゃうもの。」
冬華が零を優しく諭した。
「そうね。書置きもせずに出掛けた武彦さんが悪いのよ」エマがそういうと全員が頷いた。
「それはそうと、当の草間さんはどこにいるのよ?」摩耶が至極当然の質問をした。
「それなら一番手っ取り早い手があるわ。携帯に電話をかければ一発だわ」エマはそういうと軽やかに受話器を上げ、ボタンを押すと草間の携帯へとコールする。
「・・・あ、もしもし。武彦さん?今どこに・・・」
「ここにいる。」
エマと草間の会話が全員の耳に聞こえた。
みなもはきょとんとしていたが、他の人が後ろを振り返ったのを見て振り返ってみた。
そこには草間が携帯を耳に当てて立っていた。

4・体験
「『全国草間武彦ファンの会』からミラクルフルーツが送られてきたんで、つい試したくなってな。」
草間はレモンを一個、左手に持っていた。
「なんでレモン1個で150円もするんだ?」
「兄さん・・せめて書置きくらいは残してください・・・。」
零が困ったように草間に言った。が、草間は特に謝る様子もなかった。
「で、何でこんなに集まってんだ?」
「兄さんが木になったのかと思って皆さんに協力を頼んだんです・・。」
「・・・」
草間がさすがに気まずいと思ったのか「そりゃ悪かった」と謝った。
「あ。そういえばお裾分けにもってきたキウイフルーツ。あれまだ若いので皆さんで試してみませんか?」
冬華が明るく場を取り繕った。
「それいいわねぇ。やろやろ!」摩耶がウキウキと促した。
「じゃあ切り分けてくるわ。ちょっと待ってて」とエマが台所へと足を向けると「あ、あたしも手伝います!」とみなもが続いた。
少し経って、2人が皿一杯に切り分けたまだ若いキウイフルーツを持ってきた。
「う・・見るからにすっぱそう・・」
五代が1つ手にとって食べると声にならないすっぱさを顔一杯に表現した。
さすがにそれに続く勇気をみなもは持っていなかった。
「ミラクルフルーツを口に含んで、飲み込まずに皮だけ破って舌に擦り付けるように転がす」草間がそう説明した。
一同それに従う。一時不思議な沈黙が訪れた・・。
「種以外は食べられるらしい。あとは己の勇気に従え。」
草間がさっさと一切れ取ったのを見て、五代、摩耶、みなも、エマ、冬華と次々にキウイフルーツを口へと運ぶ。
「・・・あっまーい!!」
「甘いですね。すごい。」
面白いほど口の中が甘い。口々に感嘆の声が上がる。
が、突然草間がむせこんだ。
「どうしたの?武彦さん」エマが草間の背中をさする。
と、「喉に入った瞬間にかなりすっぱいぞ」と切れ切れに言った。
ごくんと飲み込んだみなも、思わずむせ込むのを我慢するが我慢しきれるものでもなく激しくむせる事となった。
「だ、大丈夫!?水!水飲みな!」摩耶がコップに入った水をゆっくりとみなもに飲ませた。
「あ、ありあとうおざいまふ・・・」涙目のみなもを摩耶がいい子いい子と頭をなでた。
摩耶の目が冗談を言っていた時の目と打って変わった優しげな瞳だったのが印象的だった。

帰り際、みなもはキウイとミラクルフルーツを分けてもらった。
姉へのお土産のつもりだった。
だが、ホントのお土産は草間が木になったと騒いで調べていたあたしたちの話かもしれない・・・とみなもは一人恥ずかしげに笑った。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【1252 / 海原・みなも / 女 / 13 / 中学生】
【0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1979 / 葛生・摩耶 / 女 / 20 / 泡姫】
【1335 / 五代・真 / 男 / 20 / 便利屋】
【2053 / 氷女杜・冬華 / 女 / 24 / フルーツパーラー店主】

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■         ライター通信          ■
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海原みなも様
またお会いできて嬉しいです。
みなも様はとても可愛い方でつい苛めたくなるというか・・あわわ。
葛生様と組み合わせたらついそっち方向へ・・申し訳ないです。
ミラクルフルーツがお姉様へのよいお土産にあることを祈っております。
それでは、またお会いできる日を夢見て。
とーいでした。