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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


マヨヒガ

オープニング

マヨヒガ、それは迷い家とも言うその場所には、一人の女性が住んでいるという。
その場所に迷い込んだ者は、心の奥底に何らかの迷いがある者。
その迷いを断ち切るために無意識にマヨヒガに向かってしまう。

投稿者:サヨリ
題名:マヨヒガ
私の友達がこの間まで行方不明だったんだけど、昨日帰ってきたよ。
本人はマヨヒガにいたって言うんだけど、嘘っぽいよね?

投稿者:ケーゴ
題名:Re:マヨヒガ
マヨヒガって迷信だろ?

投稿者:サヨリ
題名:でも〜
私もそう思うけど。でもあるなら行ってみたいよね!
迷いを断ち切ってほしい〜(><)


これは数日前にゴーストネットで見た書き込みだった。
あなた自身もマヨヒガなんてものは迷信にしか過ぎないと思っていた。
けれど−…
今、貴方がいるのは紛れもなくマヨヒガだった。
さぁ……どうする?


視点⇒伍宮・春華


 ゴーストネットの書き込みで『マヨヒガ』の存在の事を知ったのは、つい最近のことだった。だけど俺には迷いはない。だから、マヨヒガに迷い込む事はない……と思っていたのだが…。


「どこだよ……ここは」
そう呟く春華の前には平安の世を思い出させるような大きな屋敷があった。
「……俺、こんな所に来た覚えはないぞ…」
春華は学校から帰り、友達と遊ぶ約束があったので出かけてきた。だが、どこをどう間違えればこんな場所に出てしまったのか思い出すことが全くできない。
「……携帯電話も全然通じないし…」
 携帯電話を取り出してみると電源が入ってない状態になっており、どのボタンを押しても動かない。…まぁ、通じたところで使い方が分からないのだから意味がないのだけれど…。
「どこなんだよ!ここは!」
 春華は半分ヤケになり大声を出して文句を言っている。それから少したった頃に一人の少女が屋敷から出てきた。ちりん、と頭に飾られている鈴が少女が歩くたびに心地良い音を鳴らす。手にはわずかな光を放つ提灯が持たれている。
「……ここはどこなんだよ」
 春華が言うと、少女はキョトンとした表情で「迷い家です。下界の人々にはマヨヒガとも言われている場所です」と答えた。少女はそれから中に入るように促す。春華は不審に思いながらも、このままここにいても仕方がないと思い中に入る。
 中も外見同様広かった。長い廊下が続いており奥が見えないほどだ。こんな屋敷を歩いていると平安の世に戻ったような錯覚が春華を襲った。
「こちらです」
 しばらく歩いたら他の部屋よりも数倍大きな部屋に案内された。
「お館様、お客様にございます」
 少女が襖ごしに言うと「分かりました。中へどうぞ」と女性の声が聞こえた。
「中にお入りください」
 少女が襖を開け、春華に中に入るように言う。春華は少女の言うまま中に入ると、中にいたのは白い髪に映える赤い着物を着た女性が部屋の中央に座っていた。目を患っているのか瞳は閉じたままだ。
「私は葛葉。この迷い家の主をさせてもらっているわ。下界ではマヨヒガとも呼ばれてるけれど」
「さっきの子に聞いた」
 春華は襖に寄りかかったまま話す。
「そんな所に立っていないでこっちに来て座らない?私は声が大きい方ではないの」
 葛葉は落ち着いた様子で淡々と話す。本人が言っている通り、声はどちらかというと小さいほうで春華の立っている場所からは聞き取りにくかった。
「……ちぇ…」
 口を尖らせながら渋々と葛葉の前に座る。
「飲み物はお茶でいいかしら?」
 春華は無言で頷く。葛葉はその様子をクスクスと笑いながら見ている。
「あなた、名前は?」
「……春華。伍宮、春華」
「そう、いい名前ね」
 葛葉はそう言ってにっこりと微笑んだ。
「自己紹介も終わったところで、あなたの迷い…その様子だと自分では気づいてないみたいね。懐旧と不安…ってところかしらね」
 葛葉の言うとおり、春華には何で自分がマヨヒガに迷い込んだのかわかっていなかった。だが、確実に不安はあった。平安の世に戻りたいと言う気持ちがないわけではない。今の生活に満足もしている。それなのに何の迷いがあるというのだろうか?
「…貴方は今の生活を失うのが怖いのね。いつか親しい人から嫌われるんじゃないか、という気持ちが大きいみたいね。それと、過去に戻りたいという気持ちの迷いがあるわ」
春華は葛葉の言葉に対して何も言う事ができなかった。実際にその通りだからだ。深く考えないようにしてはいたものの、やはり故郷懐かしむ気持ちがある。もし、今すぐに平安の世に帰れるといわれたら自分はどうするのだろうか?
「…過去に戻る事はできない。刻まれた時を戻す事などできはしないのだから」
「分かってるよ。別に帰りたいわけじゃ…」
 帰りたいとは思わない、はたしてそういいきれるのだろうか。孤独ではあったが心地良い闇のあった平安の世、明るくうるさい街だが、心地良い人間関係のある今。でも前者に戻る事はできない。葛葉の言った通り過去に戻る事はできないのだから。
「…怖い、と思う事はある。友達から嫌われたらどうしようかとか。今までが孤独だったから余計に考える」
 春華はポツリとつぶやくように答えた。
「それでいいんだと思うわ。全てが上手くいくことなんてないのだから。友人関係ならそれが当たり前だと思うわ。それに…友達とは喧嘩しないのが一番かもしれないけれど、喧嘩して終わりとは限らないでしょう?喧嘩するほど仲が良いという言葉もあるわ」
 葛葉は小さな子供に言い聞かせるように微笑みながら春華に話す。春華はというとジッと葛葉の言葉に聞き入っている。
「そっか」
 春華はこのマヨヒガにきて初めて笑顔を葛葉に見せた。
「私にはあなたの迷いは砕く事はできない。…うぅん、誰もあなたの迷いを消す事などできないわ。他の人はあなたではないのだから。自分の迷いはやっぱり自分で消してあげなきゃ」
 ね?と葛葉はにっこりと笑んだ。
「あなたが今のこの現実にいるということは何かあなたにもできることがあるからよ。っだから神様が与えた試練のようなものなのよ、きっと」
 そして葛葉は言葉の最後にこう付け足した。
「きっかけは神様でもそれから先はあなたが自分で切り開くものなのよ」
 わかった?と聞いてくる葛葉に春華はコクリと頷く。
「そう、ならもうこの場所はあなたにとって必要ない場所だわね。あるべき場所にお帰りなさいな」
 葛葉はそう言って後ろにある襖を指差す。その襖から抜ければ元いた場所に帰れると葛葉は言った。
「…じゃあな」
 春華は最後に「ありがとう」とつけたし、襖を開けた。




「…か……春華!どうしたんだよ」
 気がつくと友人達が自分を囲んでいた。
「確かにこの空き地に集合って言ったけど寝てろとはいってないぞ」
 一人の友人の言葉に他の友人が笑い出す。
「う、うるせーな!」
 顔を赤くして、春華は友人を追いかける。

 −自分がこの世界にいるのは何か意味があるのだとあの人は言った。ならそれを信じてみるのも悪くないと思う春華だった

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別/年齢/職業】
1892/伍宮・春華/男/75歳/中学生
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■         ライター通信          ■
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>伍宮・春華様
初めまして、『マヨヒガ』を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
このたびは発注をかけてくださり、ありがとうございます。
マヨヒガはいかがだったでしょうか…(どきどき
上手くプレイング通りにかけているといいのですけれど…。
それでは、またお会いできることを祈りつつ失礼します(^−^
                −瀬皇緋澄