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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


マヨヒガ

オープニング

マヨヒガ、それは迷い家とも言うその場所には、一人の女性が住んでいるという。
その場所に迷い込んだ者は、心の奥底に何らかの迷いがある者。
その迷いを断ち切るために無意識にマヨヒガに向かってしまう。

投稿者:サヨリ
題名:マヨヒガ
私の友達がこの間まで行方不明だったんだけど、昨日帰ってきたよ。
本人はマヨヒガにいたって言うんだけど、嘘っぽいよね?

投稿者:ケーゴ
題名:Re:マヨヒガ
マヨヒガって迷信だろ?

投稿者:サヨリ
題名:でも〜
私もそう思うけど。でもあるなら行ってみたいよね!
迷いを断ち切ってほしい〜(><)


これは数日前にゴーストネットで見た書き込みだった。
あなた自身もマヨヒガなんてものは迷信にしか過ぎないと思っていた。
けれど−…
今、貴方がいるのは紛れもなくマヨヒガだった。
さぁ……どうする?


視点⇒天薙・撫子



 その日は考え事をしていた。


 撫子はお使いからの帰り道を急いでいたら不思議な場所に迷い込んでしまった。
「……ここは…」
 その時、撫子の頭をよぎったのは、今ネットで騒がれている『マヨヒガ』なのではないかと言う事。ネットでの書き込みを見ていた時はどんな不気味な場所なのだろう、と思っていた撫子だったが、実際に目にして驚いた。大きな屋敷に手入れのされた庭。どこを見ても普通の屋敷にしか見えない。
「…本当にここがマヨヒガなのでしょうか…?」
 そう呟いた時に屋敷から一人の少女が出てきた。手には小さくて丸い提灯を持っている。頭に飾ってある鈴がチリンと少女が歩くたびに音を奏でる。
「ようこそ、中へどうぞ」
 少女はそれだけ言うと撫子に中に入るように促す。撫子はこうしていても仕方ないので中に入る事にした。
「お荷物はお預かりします」
 お使いで買ったものが入っている袋を少女に預け、撫子は中に入る。
「随分と大きなお屋敷ですのね」
 わたくしの家も大きい方なのですが、比べ物になりませんね…など歩きながら考えていた。いったいいくつの部屋があるのだろうと思うくらいの広さで撫子は驚きを隠せないでいた。
「こちらです」
 やがて案内されたのは他の部屋よりも数倍大きい部屋だった。
「お館様、お客様にございます」
 少女が襖ごしに言うと中からは「どうぞ」と上品な女性の声が撫子の耳に入ってきた。
「中へどうぞ」
 少女が襖を開けて部屋に入るようにいう。襖の奥から見えたのは白い髪に赤い着物を着た女性が部屋の中央辺りに座っていた。
「いらっしゃい。私は葛葉。ここを管理している者よ、とりあえずお座りになったら?お茶をご馳走するわ」
「分かりました」
 撫子は返事をして、葛葉と名乗る女性の前に座った。
「え…と。あなたのお名前は?」
「わたくしは、天薙 撫子と申します」
「撫子、いい名前ね。あなたにぴったりだわ」
 葛葉はお茶を点てて、撫子の前に湯飲みを渡す。
「下界にはないお茶だから口に合うかどうか分からないのだけれど…」
 お茶は薄い綺麗な緑色をしていた。撫子は渡されたお茶をコクリと一口飲んでみた。
「美味しいですね。このお茶…」
 「そう、それは良かった」
 葛葉がにっこりと笑い、撫子もつられるように笑う。
「…あの…ここはやはりマヨヒガなのでしょうか?」
「えぇ、下界ではマヨヒガとも呼ばれているわね」
 やっぱり、と撫子は少し溜め息をついて呟いた。
「ここに迷い込むのは迷いを持つもののみ。あなたの迷いが何なのか聞かせてもらえる?」
 葛葉の言葉に撫子は答える事ができなかった。普段は自分の事より他の人の事に真剣になる性格ゆえに自分の事となると戸惑ってしまうのだ。
「…多分…従兄の事だと思います。それと…」
 撫子は言いにくそうに次の言葉を紡いだ。
「…まだ、はっきりと聞いたわけではないのですけれど…お見合いの話が出てるらしいんです」
 人伝いに聞いたのは撫子に内緒で祖父がお見合い話を持ち出してきていると言う事。もし、それが本当なら近いうちに祖父から言われるだろう。だが、撫子には恋人未満という中途半端な関係の人物がいた。だから、お見合い話がきても、もちろん断ろうと考えている。
「会わずにお断りするのは失礼な事なのでしょうか?それとも何にも思ってない相手に対して思わせぶりなことをするほうが失礼なのでしょうか?」
 撫子はどちらの方法をとっても相手が傷つくのをひどく嫌がった。
「……あなたは優しいのね。でも…その優しさが時に残酷になることを分かっている?」
「え?」
 撫子は言われている事の意味が分からずに少し間の抜けた声を出してしまった。
「あなたのように相手のことばかり考える事の方が失礼…ということもあるのよ?あなたはどうしたいの?」
 そういわれて初めて葛葉の言った言葉の意味が分かった。撫子は相手が傷つくのを恐れて考えていたのだが、それが逆に相手に対して失礼だったという事だ。
「…一番大事なのは自分の気持ち。あなたの幸せはほかでもない、あなたにしか作れないのだから」
「……葛葉様…」
「それと従兄さんのことだけれど、私にはこうしなさいということはできないわ。だって…」
「一番大事なのは自分の気持ちですものね」
葛葉が言う前に撫子が少し悪戯っぽく笑いながら答える。
「えぇ、そうよ。それが分かったのなら、あなたは、もうこの場所に留まる必要はないわね」
 元いた場所にお帰りなさい、と葛葉は撫子に言った。撫子としてもお使いの途中だったのでみんなが心配しているかもしれないという気持ちがあった。
「今日はお話を聞いてくださってありがとうございました」
「いいえ、どういたしまして」
 撫子は残っていた半分のお茶を飲み、席を立った。
「後ろの襖から出れば元いた場所に戻れるわ。気をつけてね」
「はい。それではお邪魔しました」
 そう言って撫子は襖を開けてマヨヒガから出た。


「…あれ…あれからまだ一分もたってない…」
 時計を見ると、あれだけの時間をマヨヒガで過ごしたにも関わらず、過ぎた時間はわずか一分もたっていなかった。
「さぁて…早く帰らなければ…」
 そこで思い出す。預けていた買い物袋の事を…。
「…どうしましょう。今夜のご飯でしたのに…」
 仕方なく撫子は家へと向かう。
それから数十分後、玄関先に届けられた買物袋を見つける撫子の姿があったとか…。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号/PC名/性別 年齢/職業】
0328/天薙・撫子/女/18歳/大学生(巫女)
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■         ライター通信          ■
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>天薙・撫子様
初めまして、瀬皇緋澄です。
今回は『マヨヒガ』に発注をかけてくださいまして、ありがとうございます。
『マヨヒガ』はいかがだったでしょうか?
少しでも面白かったなど思っていただければ幸いです。
それでは、またお会いできる事を祈りつつ失礼します。
                −瀬皇緋澄