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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ニワトリがいっぱい…

Opening:零からの電話

もしもし、もしもし?聞こえますか?

…草間興信所の草間零です。
いつもお世話になっております。

今あなたにお電話しているのは他でもありません。
また謎の動物がいつの間にか草間興信所を制圧しているのです。
まえは、ウサギの群れですが…聞こえますか?

(コケーコッコッコ…、クックドゥードゥー)

鶏です。そう鶏なんです。
うるさくて困ってます。
兄さんが行方不明で探さなければならないし、かといって他の仕事もしなくては行けません。
どうか、この鶏さん達を何とかしてください。
あからさまに…「食用」と書かれている名札が…。

兄さんが送ってくれたのでしょうか…(何となく力が抜けている声)
(コケー!ニャー!バキバキ…ボリ…)
焔ちゃん生で食べちゃ駄目!…ああああぁ(悲鳴)

あ、済みません…早くしないと焔ちゃんが…猫の本能で興信所が…鶏の血の海にされてしまいます(涙)
どうか手伝ってください。

…五月ちゃん鍋用意してどうするつもりなの?(焦り)
かわうそ?さんがいる…?いつものことだけど…なにか考えてくれる訳ではなさそうですね…(苦笑)


1.駆けつける人々
「あらら…」
ウサギ事件と同じような光景に唖然とするシュライン。
確かに零が言ったように、ニワトリの首に名札がある「食用」と。何かのプリントのようで直筆ではない。
「送りつけてきた相手のセンスが疑われるわ…よしよし、落ち着いてね零ちゃん」
頭を悩ますシュライン。零が泣きついてわんわん泣いているのを慰めながらである。
焔はなんとかすぴのゲージに入れてニワトリに被害が及ばないようにした。
さて、1人でも何とかなるのだが、後数人は呼んでいるらしい。
送りつけた人物の正体もこの状態の理由も分からないとなると、やることは分かり切っている。
ニワトリを売り飛ばす。それだけだ。また、いつもバイトなどで仕事の手伝いをする人に分ける。
おなじみに海原みなもがやってきた。
「電話で聞いただけでは分かりませんでしたが、これほどとは…」
彼女も電話で呼ばれた1人。
コケコケと鳴くこの家畜はみなもやシュラインが立っていても気にもせず、只ひたすら壁や床を突いている。
そして、次には鈴代ゆゆがやってきて、この状況に驚く。シュラインに事情を訊くと困った顔をした。
「どうしたらいいのかなぁ。確かに食用って書いているけど…此処でどうにかするのも可哀想」
といいながら、ニワトリに色々な幻術を見せ、隅に纏めようとするが、ニワトリは幻影に攻撃しているようで効果がない。もちろん他の人には、ニワトリがただ暴れているようにしか見えないわけだが。
「ゆゆちゃんは絞めるのは見ない方が良いかも」
「あたしは大丈夫です。お母さんとよく絞めていましたし」
「とりあえず、今はおとなしいけど何時どう猛になって襲ってくるか分からないから、気絶させちゃいましょ」
シュラインが今居る人に声を掛ける。
大きな声でニワトリたちを気絶させるのだ。
其れは簡単にできたので(音の振動で一部の家具にひびが入ったらしいが)、みなもの案で雄雌に分ける作業を開始した。ひよこの時はかなり難しいが成長したニワトリなら場合は鶏冠で分かるはずだ。

仕分けには流石にこの人数では難しい。
その時に丁度良い集団が現れた。零が呼んだと思われる子供達だ。
瀬川蓮とそのストリートキッズ十数名。
「わぁ、ニワトリいっぱいだよ」
「久々に肉にありつける!」
「お兄ちゃんお腹減った」
別の意味で、うるさくなってきた。
色々な事情で親の愛に恵まれない子供達、ストリートキッズ。
「蓮君、まず雄雌に分けて肉屋と養鶏所に売るつもりだから手伝ってくれる?」
と、シュラインがいう
「えー?」
いきなり不平の声を出す蓮。
「大丈夫よ、この作業が終われば残りでお鍋パーティをして、残りは好きなだけ持って行けばいいから」
「なら手伝う♪」
蓮とその仲間達はにっこり承諾した。
気絶したニワトリの分別程度など20人近くもなれば早いものだ。仕分けした後、20数羽はストリートキッズ用に、今日のご飯の為に人数分の絞めるのに数10羽、ゆゆのツテで養鶏所や蓮の父親の業者などに連絡し、縄で縛ってスムーズに事は運ぶ。
しかし、ニワトリを絞める場所に相応しくない興信所でニワトリ数10羽を鍋用や保存用に絞める訳だから、ビニールシートを敷いていく。
みなもとシュラインでニワトリを巧く絞めて羽をむしっていくところを蓮やその仲間は平然と見ていたが、暫くすると飽きてしまって、焔やすぴと遊んでいた(なで回していたが正しい)。かわうそ?は何とか其れに逃れたようでいつの間にか居ない。他の子供達は外で腹ごなしのため近くに遊びに行ったか、蓮の父親のスーパーまで食材をとりに行ったようだ。
ゆゆは惨劇を見ないようするため仮眠室にむかうが、そこには沢山の玉子が敷き詰められている事に気付き、ため息を吐いて、手頃な袋などで割らないよう拾い集めていった。しかも、シュラインの音波攻撃に逃れたらしいニワトリ1羽が、彼女の頭に乗っかってコケコーと鳴く。
鍋物パーティで浮かれている蓮の仲間は出かけるとき、
「鍋パーティ〜」
「暖かいお酒―♪」
と喜んで歌いながら駆けていった。

その時に和服姿の小さな女の子が興信所に入ってきた事に気が付かなかった。どこかに隠れているかわうそ?以外は…。


2.鍋パーティ
業者に渡す分は全て売ると、かなりの額になった。現金でなく後ほど興信所の銀行に振り込まれるようにした。これで冬は越せるだろう。なにせ此処を切り盛りしているのは零だからだ。
「皆さんありがとうございます」
感謝の言葉を延々言い続ける零。もうどうしようか自分では分からないほどに錯乱したこと、そして何も役に立たなかったことが要因だろう。
「いいのよ零ちゃん。あまり問題なかったし其れより、鍋を作りましょう」
「はい」
姉のように慕うシュラインの言葉に涙目で返事する零。
「もう準備OKだよ〜」
とすでに蓮やみなも達はビニールシートを片づけ、既に鍋パーティの準備を整えていた。
「お酒もあるのじゃ。水炊きには打って付けじゃこの冬はしばれるからのう」
と着物姿の女の子がいう。
しかしシュラインを除く皆は何時の間にいたのか気が付かないどころか、お酒のことで喜んだ。
「あなただれ?」
「本郷源じゃ、ある者の啓示でここに来た。馳走になってもいいかのう?酒も用意いておる」
シュラインと源だけ2人の間だけ沈黙。
その間にかわうそ?が、シュラインをじっーとみている。
深く考えない方が良いと訴えているようだ。
かなりの酒を持ってきているようなのでシュラインはいいかとかわうそ?を見て頷いた。
「いいわよ」
「よろしくのう、皆の衆」
そして、本格的に鍋パーティが始まった。

五月と零、かわうそ?が酒を暖め、新しく鶏肉を捌く。蓮の連れてきたストリートキッズは完全に戦いの場と化す。源が居るテーブルでは、彼女が既に鍋奉行として君臨していた。
純米酒の朱雀は美味く、シュラインもご機嫌になる。
違和感なく(?)いる源は朱雀を飲む源は、
「五臓六腑に染み渡るのう」
と言って、更にご機嫌だ。
ゆゆだけは、ジュースで我慢していた。しかし少しだけ鍋の出汁を飲んでみて美味しいと思った。
あらかた鍋を食い尽くした蓮とその仲間達。しかし底なしの腹はそれだけでは膨れない。
「ほかにない〜?」
と、駄々をこねる。
売りさばいてもまだまだある食材。何か変わった一品はないだろうか?
「なら【サムタゲン(参鶏湯)】がいいかのう」
と源がいう。
サムタゲンは韓国料理のスープ類の一種だ。韓国料理の中で日本人に根強い人気がある。若鶏の中に高麗人参・栗・なつめ・もち米・にんにくなどを詰めて長時間じっくりと煮た、韓国に昔から伝わるスタミナ料理。香辛料が控えめなのが特徴だ。
「作るのは時間がかかるが、何冬の夜長じゃ、ゆっくりしようではないか」
と源はさっさっと食材をかき集めて、台所に向かって行った。
その間、ゆゆが幻影を見せ、みなもの水芸でサムタゲンが出来るまで宴会を楽しむ。
その傍らだが、シュラインは零と話していた。
「兄さん何処に行ったのかなぁ…」
「そうね…あたしも探してはいるけど…なかなか見付からないのよ…」
「エルハンドさんにお願いしているのですが」
「あの、大きな座敷童子が探しても見付からないのね…」
と、草間武彦の身を案じていた。
其れに気付いたかわうそ?が近より、
「大丈夫。草間元気だ、信じろと神が言っていた。想いあれば必ず会える」
と2人を励ますかのように、お酒を持ってきた。
「ありがとう…かわうそ?さん」
零は瞳を潤ませながら、このナマモノを撫でた。
「出来たぞ〜」
かなり時間はかかったが、サムタゲンが出来たようだ。
そして、又無礼講でかつ戦場が始まった。
源は既に計算し尽くしていたかのようなサムタゲンをあの狭い台所で作っていたようだ。
これはこれで謎であったりするが…気にしない方が良い。
暖かくなった身体にマッコリやジンロで冷やして満足する源。
今は草間の安否を考えながらも皆で食事を楽しむシュラインと零。
お土産用として1羽貰ってからでも他の子供達の世話をする優しい少女みなも。
ジュースだけでは物足りなくなったので、お酒を飲み始めたゆゆ。
焔と遊びながらも仲間を大事にする蓮。
宴はかなり続いた。


3.宴会済んで死屍累々
食って遊んで疲れ果てた蓮や子供達に毛布をかけてあげるシュラインみなも。
所長のイスで疲れ果ててかつ、酔っぱらってぼうっとしているゆゆ。
そして…いつの間にか居なくなった本郷源。「大変馳走になった」と書き置きを残して。
「神出鬼没というのはあの子のことを言うのね」
と苦笑するシュライン。
かわうそ?並に謎の多い子供だった。
今でも、充分なほどのニワトリがいる。生きているモノや、既に解体されているもの暫く子供達も食べるだけでなく秘密基地で世話をしてくれると言うし、この興信所も保存食として置いておく。それに、雌は養鶏場で玉子を生んでくれる。生まれたての玉子が送られてくるらしい。

はた迷惑なことが多い動物制圧事件だが、解決されると興信所がやたら潤うのは何故だろうか?
結局、犯人も動機も謎のままである。
「この場合、結果オーライがいい」
後かたづけを手伝うかわうそ?はそう言った。
「謎」の存在のアンタが言っても説得力はないのだが…。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0428 鈴代・ゆゆ 10 女 鈴蘭の精】
【1108 本郷・源 6 女 オーナー 兼 小学生】
【1252 海原・みなも 13 女 中学生】
【1790 瀬川・蓮 13 男 ストリートキッド(デビルサモナー)】

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■         ライター通信          ■
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滝照です。
『ニワトリがいっぱい…』に参加していただきありがとうございます。
少ししんみりしているところもありますが、お鍋やサムタゲンになって供養されたニワトリ達でした。
後はそれぞれお持ち帰りして下さい。

本郷様、瀬川様初参加ありがとうございます。如何でしたでしょうか?

では又機会がありましたらお会いしましょう。

滝照直樹拝